インシテミル

提供: miniwiki
移動先:案内検索
インシテミル
著者 米澤穂信
イラスト 西島大介
発行日 2007年8月30日
発行元 文藝春秋
ジャンル 推理小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判上製本
ページ数 448
公式サイト http://www.bunshun.co.jp/
コード ISBN 978-4-16-324690-1(ハードカバー)
ISBN 978-4-16-777370-0(文春文庫
テンプレートを表示

インシテミル』は、米澤穂信による日本推理小説クローズド・サークルを舞台とした殺人ゲームを主題とした作品であり、作者は「自分なりにとことんミステリを追究した」作品であると語る[1]

2007年度の第8回本格ミステリ大賞の最終候補作に残ったほか、本格ミステリ・ベスト10で4位、週刊文春ミステリーベスト107位に、このミステリーがすごい! で10位。島田荘司監修の黄金の本格にも選ばれた。2010年6月10日に文庫が発売され[注 1]、2010年11月時点で累積実売45万部[3]

2010年には『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』(インシテミル なのかかんのデス・ゲーム)のタイトルで映画化された。

あらすじ

「ある人文科学的実験の被験者」になり、7日24時間監視付きで隔離生活するだけで時給11万2000円がもらえるという募集に釣られ、何も知らずに「暗鬼館」に集った年齢も性別も様々な12人の男女。実験内容は、より多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う、殺人ゲームだった。

各々の個室には、殺人に利用できる、種類の異なる凶器が1つずつ用意され、夜間は部屋から出ることが禁じられるなど多くのルールがある。人を殺せばより多くの報酬が得られるが、犯人であることを指摘されれば報酬は減額する。何もしなくても報酬が貰えるならと、行動を起こさないことが参加者の間で暗黙の了解となり、落ち着いたように見えた。だが3日目の朝、参加者の1人が死体で発見されたことをきっかけに、第2・第3の事件が発生する。

登場人物

結城 理久彦(ゆうき りくひこ)
本作の主人公。ごく普通の大学生。基本的に楽天家であるが、時に鋭い洞察力を発揮することがある。英語と暗算と銀杏が苦手。
コンビニで出会った須和名祥子に頼まれ、アルバイト情報誌の確認を手伝ったことで、怪しげな実験モニターの募集を知り、車の購入資金のため実験に応募する。
映画版ではフリーター。暢気な性格である原作に対し、臆病な性格として描かれている。原作の応募動機であった車については、軽く触れられる程度。
須和名 祥子(すわな しょうこ)
本作のヒロイン。品位があり、世間一般の常識に欠けているお嬢様(結城曰く「住む世界が違う」)。いつも丁寧な口調で話しているが、時に冷たい口調をしたり、犯人と認定された岩井のことは呼び捨てにする。死体を見ても冷静沈着な様子を見せる。
コンビニで、アルバイト情報誌の見方を教えて欲しいと結城に声をかける。応募動機は、指を一本立てて「滞っている」からと他のモニターには話す。
映画版では自己紹介の際、OLと名乗っている。原作よりも人間味がある。
大迫 雄大(おおさこ ゆうだい)
大学3年生。参加者12人の中でも、群を抜いて大柄な男。リーダーシップを発揮し、監視するだけで何もしようとしない〈クラブ〉には怒りを覚える。応募動機は、若菜との結婚資金のため。
箱島と共にリーダーの立場になり、隠し通路を探そうとしたり、事件が起きてからは必ず3人以上で行動するようにと提案するなど、事件を防ぐために行動する。
映画版では「信頼される」という理由で研修医と騙っている。暗鬼館の状況を楽しんでいる様子を見せている。
若菜 恋花(わかな れんか)
幼い印象を与える大迫の恋人で、常に行動を共にする。渕のことを知っている。
映画版での名前は「橘 若菜(たちばな わかな)」。ネイリスト。
釜瀬 丈(かませ じょう)
小太りで猫背の男。大迫に頼りがいを感じ、付いていくことが多い。
映画版では未登場。
西野 岳(にしの がく)
くたびれた雰囲気の撫で肩の男。メンバーの中では年長の方で、38歳。3日目の朝、遺体で発見される。
映画版での名前は「西野 宗広(にしの むねひろ)」。色々な仕事を転々としていた。人の神経を逆なでするような言動をとったり、他の参加者の疑心暗鬼を煽っている。2日目の朝に遺体で発見される。
岩井 壮助(いわい そうすけ)
金髪の男。結城曰く「様になっていないビジュアル系」。西野とは3歳違い。他の参加者よりも、状況に恐怖している。
西野と最後まで一緒だった真木が西野殺害の犯人だと思い、ボウガンで射殺してしまう。
映画版では、原作と違い状況に恐怖しておらず、それどころか西野の遺体をみて笑顔を浮かべている。大迫に西野を殺した犯人と疑われ、監獄行きとなる。
箱島 雪人(はこしま ゆきと)
学生。女性的な容姿と声をしている美形の男。大迫とともに、メンバーの中心になり、金に釣られて損をする殺人を犯すのは馬鹿だと言い切る。
殺人事件をゲームのように割り切る態度から、結城や渕それに安東、および関水からは信頼されていない。
映画版では未登場。
真木 峰夫(まき みねお)
彫りが深く顎のラインが細い、綺麗な男。安東曰く「様になっているビジュアル系」。他のメンバーに対して壁を作っているようなところがあり、単独行動が多い。
2日目の夜に最後まで西野と飲んでいた。犯人を捕まえてやりたいと考えていたが、岩井によって殺害される。
映画版での名前は「真木 雪人(まき ゆきと)」。
関水 美夜(せきみず みや)
少年ぽさを持つ少女。機嫌が悪そうで刺々しい雰囲気を持つ。結城と同じく銀杏が苦手。
映画版では自己紹介でウェブデザイナーと名乗っている。渕のことを恐れている。
安東 吉也(あんどう よしや)
眼鏡をかけた飄々とした男。プライドが高い性格で、大迫や箱島に対抗するように、結城や須和名と行動を共にしている。
ビームライフル部に所属しており、相当な腕前を持つ。
渕 佐和子(ふち さわこ)
少しぽっちゃりした女。西野とともに年長の女性。若菜が通う大学の近くで弁当屋を営んでいた。メンバーへの配膳を進んで行っている。
映画版では自己紹介で世田谷在住の専業主婦と名乗っているが、実際は下町の弁当屋で、5人の子持ち。ミステリー小説の愛読者で、インディアン人形の意味に気づいている。

用語

SHMクラブ
ホストに依頼され、彼らの望む実験を代わりに運営している団体。「クラブ」と表記される。単行本では「実務連絡汎機構」または「機構」と表記されている。
主人
解決
事件に関しての推理を皆の前で披露し、探偵役(および助手)と犯人を除いたその場にいる人数のうち半数以上が賛成した場合、犯人が決定するというもの。
午後10時から午前6時までのこと。この間は自分の個室から出てはならないというルールがある。
ガード
「暗鬼館」内で、12人のモニターの他に活動するロボット。死傷者の回収や現場の清掃、暴力的な混乱を鎮めるような場合に呼ぶことができる。「監獄」に入ることが決まった者が抵抗した場合や、危害を加えられると、モニターに反撃することが可能。夜の間の見回りで自分の個室から出ている者に対しては、警告が行われ累積すると殺害が可能となる。最大速度は時速20キロメートル。
躊躇の間
施設内にある隠し通路から続く、外に通じる部屋。ここに1人でも入れば、館内のエネルギー供給は停止する。

実験の舞台

地下に作られた、洋館風の施設〈暗鬼館〉(あんきかん)が、実験の舞台となる。12人のモニターは、随所に仕掛けられた監視装置にて、常に行動を記録されている。実験開始時や、ルールについての説明、〈解決〉開始の宣言など、スピーカーから〈クラブ〉の指示が流れる。

暗鬼館は円状になっており、中央には、ラウンジ (Lounge)、レストルーム (Rest Room)、ダイニング (Dining Room) とキッチン (Kitchen) の4部屋がある。ラウンジから出る3つの出入り口は、円周上の17の部屋につながっている。部屋は1から12までナンバリングされた人数分の個室 (Private Room) と、霊安室 (Mortuary)、娯楽室 (Recreation Room)、監獄 (Prison)、守衛整備室 (Guard Maintenance Room)、金庫 (Vault) の5部屋がある。

ラウンジ
円型の部屋。ダイニングに通じる扉と3つの出入り口がある。深い飴色の円卓があり、そこには12体のネイティブアメリカン人形[注 2]が並んでいる。
ラウンジの天井には外部と繋がる出口があり、終了条件を満たすと梯子が降りてくる。
ダイニング
ラウンジの白木の扉から通じている、食堂として使われる部屋。
キッチン
コンロやシンクなどは無い。コーヒーや紅茶、酒類などの飲み物が置かれているほか、〈クラブ〉から供給される食料をランチボックスから取り出すことができる。
個室
12ある個室。部屋のドアは引き戸で鍵がかからない。ベッド、クローゼット、洗濯機、洗面室、ジャグジーがある。唯一ジャグジーだけは鍵がかかるようになっているが、室内の温度はサウナ並に高く、長時間中に籠もることは出来ないようになっている。
扉の開閉は静かで、閉め切ると内側の音が聞こえない完全な防音となっている。
"TOY BOX"と書かれた箱が置いてあり、部屋のナンバーが書かれたカードキーでのみロックを解除できる。その箱の中にあるものが、各人に与えられる武器で、「○殺」との言葉から始まる解説書(メモランダム)が添えられている。実験に関するルールブックも入っている。
霊安室
中には10個の棺桶が並んでいる。隣には12号室がある。
娯楽室
ビリヤードやトランプなどの遊具や、タイプライター風のワープロが置かれている。
守衛整備室
〈ガード〉が停留する部屋。夜になると巡回のために〈ガード〉が解放される。傷病者が発生すると〈ガード〉は傷病者を守衛整備室に運びこみ治療を行う。
監獄
〈解決〉で半数以上の賛成により犯人と認定された人物が、実験の残りの日数を過ごす部屋。
金庫
全員のカードキーをかざすと開けることができる。隣は1号室となっている。死亡または監獄に入ったモニターの所持武器を入れて使用不可能にする。
凶器
TOY BOXの中にあらかじめ用意されている。それぞれ、火掻き棒、手斧ニトロベンゼンスリングショット(パチンコ)、マンドリン、紐、ボウガン、拳銃、吊り天井のリモコン、氷のナイフ、空気ピストル、爆薬が仕掛けられたゴルフクラブ である(原作版)[注 3]

ルール

行動に関するルール

  1. モニターは、〈夜〉の間は、自分の個室から出てはならない。外や別人の個室にいるところをガードに発見された場合、3回までは警告を受ける。3回警告を受けた者が次に発見された場合、ガードによって殺害される。
  2. 事件が起きたら、モニターはそれを解決することができる。〈解決〉においては、直感によらない理由で犯人を指摘し多数決で決定する。
  3. 1人以上のモニターが館内にある秘密の通路から外に出た場合、残りの人数が2人になった場合、7日未満で実験を終了することがある。

報酬に関するルール

基本給は時給11万2000円であり、期間は最大7日間、毎日24時間分給与が発生する。一定の条件を満たすと、報酬が増減する。なお被験者が死亡しても報酬は支払われ、その場合は「被害者ボーナス」を加えた額が直近の家族へと送金される。

増額する条件
  • 犯人ボーナス - 他の参加者を殺害したものは、総額が2倍となる。累積する。
  • 探偵ボーナス - 殺人事件に対して、〈解決〉の場で正しい犯人を指摘したものは、総額が3倍となる。累積する。
  • 〈解決〉にあたって、証言が根拠として認定されたものは10万円のボーナスが与えられる。
  • 被害者ボーナス - 他の参加者に殺害されたものは総額が1.2倍となる。
  • 助手ボーナス - 〈解決〉の際に、助手として指名され役に立ったものは総額が1.5倍となる。
  • ガードの攻撃によって死亡した場合、3億円が支払われる。
減額される場合
  • 〈解決〉の際に、探偵として殺人を犯していない相手を犯人と指名してしまいそれを自身で訂正できなかった場合、探偵ボーナスを全て取り消しかつ総額が0.5倍になる。累積する。ただし〈実験〉終了までに自ら訂正した場合はこの限りではない。
  • 監獄に入れられた者は、以降の時給が780円となる。
  • 殺人を行おうとする際に第三者に見つかり制止されても従わなかった場合、全額没収となり、以降監獄に収容される。

映画

インシテミル
7日間のデス・ゲーム
監督 中田秀夫
脚本 鈴木智
原作 米澤穂信
製作 ウィリアム・アイアトン
堀義貴
宮崎洋
製作総指揮 小岩井宏悦
菅井敦
奥田誠治
出演者 藤原竜也
綾瀬はるか
石原さとみ
阿部力
平山あや
石井正則
大野拓朗
武田真治
片平なぎさ
北大路欣也
音楽 川井憲次
主題歌 May'nシンジテミル」 (flying DOG)
撮影 林淳一郎
編集 高橋信之
制作会社 ツインズジャパン
製作会社 「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」製作委員会
配給 日本の旗 ワーナー・ブラザース映画
公開 日本の旗 2010年10月16日
上映時間 107分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
興行収入 12.2億円[4]
テンプレートを表示

インシテミル 7日間のデス・ゲーム』(インシテミル なのかかんのデス・ゲーム)のタイトルで、ホリプロ50周年記念作品として2010年10月16日に松竹系ほかで公開された。キャストは全員ホリプロ所属者である。2010年10月16,17日初日2日間で興収2億573万7600円、動員は15万1558人になり映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第3位となった[5]。ワーナー・ブラザース映画初の日本映画海外配給作品としてフランス、オランダなど世界28か国地域で配給も予定されている[6]

2010年8月16日よりTSUTAYAで『インシテミルをもっと楽しむメイキングDVD』付前売券が発売。 aja.jpでは映画を記念した時給112,000円のアルバイトが実際に募集された[注 4]。2010年10月15日にはテレビ特番・金曜スーパープライム『天国と地獄ツアーin香港・超豪華&超珍品料理に絶叫!』と『映画情報シネマガ拡大版「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」公開記念SP!!』が放送、10月18日には『藤原竜也のオールナイトニッポンインシテミルスペシャル』がオンエアされた。

原作との相違点
  • 釜瀬と箱島が登場せず、実験の参加者は10人となっている。
  • 一部を除き、人物設定や配布された凶器が異なっている。ネイルガン筋弛緩剤が登場する。
  • 西野が遺体で発見されるのが実験の2日目である。
  • 「躊躇の間」は存在せず、生存者2名となるか7日目のタイムアップまで出入り口は封鎖されている。
キャッチコピー
  • 究極の心理戦。参加者10名決定!
  • 時給112,000円の心理戦、参加者10名。
  • 死ぬか、稼ぐか。
  • 死の推理ゲームを制し、生き残って大金を得るのは、誰だ?
  • 俺を殺すのは、誰だ?

登場人物

声の出演

スタッフ

Blu-ray / DVD

2011年2月23日発売。発売元はワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント

  • 【初回限定生産】インシテミル 7日間のデス・ゲーム ブルーレイ&DVDセット プレミアムBOX(4枚組)
    • ディスク1:本編Blu-ray
      • 映像特典
        • 藤原竜也インタビュー
        • 綾瀬はるかインタビュー&メッセージ
        • 石原さとみインタビュー&メッセージ
        • TVスポット
        • キャスト&スタッフ(メニュー)
    • ディスク2:本編DVD
      • 映像特典:本編Blu-rayと同様
    • ディスク3:特典DVD1
      • 綾瀬はるかグリーティング(NG編)
      • 初日舞台挨拶
    • ディスク4:特典DVD2
      • 新人 大野拓朗 撮影回顧録エンジテミル。
      • キャストインタビュー集
      • 綾瀬はるかの撮影現場で(^▽^)シテミル
      • バナナマン日村勇紀 ナレーション風景
      • 現ナマ1億円登場! プレミア試写会!
      • 監視映像(隠しコマンド)
    • 封入特典
      • フォトブック(20P)
    • 特製アウターケース付きデジパック仕様
  • インシテミル 7日間のデス・ゲーム ブルーレイ&DVDセット(3枚組)
    • ディスク1:本編Blu-ray
      • 映像特典:ブルーレイ&DVDセット プレミアムBOX・ディスク1と同様
    • ディスク2:本編DVD
      • 映像特典:ブルーレイ&DVDセット プレミアムBOX・ディスク2と同様
    • ディスク3:特典DVD(ブルーレイ&DVDセット プレミアムBOX・ディスク3と同様)
  • インシテミル 7日間のデス・ゲーム DVD版(1枚組)
    • 映像特典:ブルーレイ&DVDセット プレミアムBOX・ディスク2と同様

テンプレート:中田秀夫

脚注

注釈

  1. 同年10月公開の映画の宣伝用に、10人の映画出演者の写真がランダムに載った帯が巻かれた[2]
  2. 「『そして誰もいなくなった』を象徴する」と登場人物により説明されている。
  3. 映画版の凶器は「火掻き棒」(撲殺)、「拳銃」(銃殺)、「ネイルガン」(撃殺)、「ナイフ」(刃殺)、「」(斬殺)、「青酸カリ入りのカプセル」(毒殺)、「ボウガン」(射殺)、「吊り天井のリモコン」(圧殺)、「筋弛緩剤」(薬殺)、「アイスピック」(刺殺)である。
  4. 2次募集はなく公式サイトでなりすましメールヘの警戒を呼び掛けている。

出典

外部リンク

テンプレート:米澤穂信