サッポー

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サッポー古代ギリシア語アッティカ方言 (en: Σαπφώ / Sapphō紀元前7世紀末 – 紀元前6世紀初)

 古代ギリシャの女性詩人。プサッポーPsapphōとも呼ばれる。レスボスの人。おそらくは貴族階級の出身。3人の兄弟がいて,長兄のカラクソスは,ヘロドトス(『歴史』巻2.135)にも言及され,エジプトの芸妓ロドピスと浮名を流したことで有名。レスボスのもう一人の代表的詩人アルカイオスとほぼ同時代人である。政治的な変革期にあったレスボスでアルカイオスが政治活動に深く関わっていたのに反して,サッポーでは政治に対する言及がほとんど見られない。しかし変革の波を避けることもできなかったようで,前604年と前598年との間のある時追放を受けてシチリアに行ったと伝えられている。詩人にはクレイスという名の娘がいたと伝えられている。

 ヘレニズム期に9巻の詩集が編集され,その最後の巻は『祝婚歌集』Epithalamiaと呼ばれていたようであるが,確証があるわけではない。現在では2つの詩を除けば完全な詩は残っていない。しかしパピルス断片が多数発見され,彼女の詩について比較的多くを知ることができる。彼女は多様な韻律を駆使して,リュラ(竪琴(たてごと))に合わせて歌う単唱詩のジャンルの,アルカイオスと並ぶ完成者である。2人の詩が完成された形で登場するには,テルパンドロスに代表されるレスボスの文芸の伝統があったにちがいない。サッポーの詩は,アドニス祭の歌,あるいは『祝婚歌集』の歌のように,合唱詩として共同体の行事に用いられた場合を除き,ほかはほとんど詩人の個人的な感情の表現されたものである。しかも詩のテーマは,詩人の周りにいる少女たちをめぐる恋である。少女たちと詩人との関係は具体的なことはまったく不明である。詩人が未婚の娘たちのための一種の修養所を開いていたとする見方も古くからあるが,概して現在では認められていない。例えば断片31では,詩人の愛している少女が親しそうに一人の男と話している姿を見て,突然に激情にとらわれる。胸の鼓動は高まり,口はものも言えなくなり,体の中には焰(ほむら)が燃え,目も耳も感覚を失い,全身から汗が溢(あふ)れ,顔も蒼白(そうはく)となり,まるで死に臨む時のようになる経験を語っている。あるいは断片16では,アナクトリアという少女が詩人のもとを去っていったのを懐かしんで再度の出会いを祈っている。断片94では,親しかった少女との別れの場で2人のこれまでの親交を思い出として別れの悲しみを慰めようとする。アッティスという名の少女がサッポーのライバルである女性のもとに去ったのを恨めしげに歌う句も残っている。断片1では恋の苦しみをかつて救ってくれたアプロディテに呼びかけ,現在の恋人のつれなさのゆえに苦しむ心を救ってくれるようにと祈る。このような直接的な恋愛感情が若い女友達に向けられているので,すでにヘレニズム期において同性愛の詩的表現と見なされるようになったが,その実態は不明である。奔放な同性愛表現であるか,もっと異質なわれわれの知らない世界であるかは解釈の分かれるところである。パオンとの恋愛で詩人がレウカスの岬から身投げした話は単なる作り話であって,これもヘレニズム期においてすでに生まれていた。パオンはアドニスと同格の神格であって,アプロディテとアドニスとの関係が,サッポーの詩でしばしば言及されるアプロディテとサッポーの関係と結び付いたものであろう。



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