テラモーン

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ファイル:Aeacus telemon.jpg
アイアコスとテラモーン。ジャン=ミシェル・ルモーen)画。

テラモーン古希: Τελαμών, Telamōn), は、ギリシア神話に登場する英雄である。サラミース島の王で、カリュドーンの猪狩り[1][2]アルゴナウタイ[3][4][5]ヘーラクレーストロイア攻略に参加した[6][7]長母音を省略してテラモンとも表記される。

アイギーナ島の王アイアコスエンデーイススケイローンの娘)の子で、ペーレウスと兄弟。ポーコスとは異母兄弟である。一説ではテラモーンはキュクレウスの娘グラウケーアクタイオスの子で、ペーレウスとは友人だったとされる[8]。グラウケーはテラモーンの最初の妻ともいわれる[9]アルカトオスの娘ペリボイアとの間に大アイアーストロイアの王女ヘーシオネーとの間にテウクロス[10]、また一説にトロイアの女テアーネイラとの間にトラムベーロスをもうけた[11][12]。大アイアースとテウクロスはトロイア戦争の英雄である。

神話

ポーコス殺害と亡命

神話によるとテラモーンとペーレウスは競技に優れたポーコスをねたんで、ポーコスの殺害を計画した。すなわち競技の最中にポーコスの頭に円盤を投げつけて殺した後、遺体を隠すというものである。実際に殺害を実行したのはテラモーンであり、2人は森の中にポーコスの遺体を隠したが、殺害が露見し、アイギーナ島を追放された[10]

このため、テラモーンは母方の曽祖父にあたるキュクレウス王を頼ってサラミース島に亡命し、王の娘グラウケーと結婚した[9]。そしてキュクレウスが後継者が生まれないまま死んだときに、王国を譲り受けた[10]。テラモーンもまた子どもに恵まれなかったが、妻との死別後、アルカトオスの娘ペリボイア(ペロプスの孫にあたる)と再婚すると、2人の間に大アイアースが生まれた[9]。この息子にアイアースと名付けたのは、ヘーラクレースがテラモーンに息子が授かるように祈るとワシが現れたことによる、という話が伝わっている[10][注釈 1]

トロイア攻略

その後、テラモーンはヘーラクレースに従ってトロイア攻略に参加した。テラモーンはこの戦争で城壁を越えて一番乗りを果たす活躍をしたが、アポロドーロスによるとヘーラクレースは一番乗りを奪われたことに腹を立て、テラモーンを殺そうと考えたという。殺意を感じたテラモーンがとっさにその場に転がっていた石を集めだしたので、ヘーラクレースがテラモーンに何をしているのかと尋ねると、偉大なるヘーラクレースのための祭壇を作っているのだと答えた。ヘーラクレースはこの返答に満足して殺すのをやめた。戦争がヘーラクレースの勝利で終結すると、テラモーンは報酬として王女ヘーシオネーを与えられ[6][7]、この女性との間にテウクロスをもうけた。またテアーネイラもこの戦争で得た捕虜だった。

晩年

後に2人の息子たちはサラミース島の軍勢を率いてトロイア戦争に出兵したが、大アイアースはアキレウスの鎧をめぐる争いが原因で非業の死を遂げた。テラモーンはテウクロスが帰国したさい、大アイアースの死に怒り、テウクロスを追放した[13]。そしてテウクロスが連れ帰った大アイアースの遺児エウリュサケースに王国を継がせた。一方、テウクロスはキュプロス島に渡り、サラミース市を創建した[14][15]

なお、サラミース島の王権はエウリュサケースの孫のピライオスによってアテーナイに譲渡されたと伝えられている[16][注釈 2]

系譜

テンプレート:アキレウスの系図

脚注

注釈

  1. aias の語源を aietos (ワシ)の語で解釈する古代の俗説(高津による注釈、p.224、注釈No.138)。ワシは大神ゼウスシンボルで、ヘーラクレースの祈りに対してゼウスが吉兆としてのワシを遣わしたということである。『オデュッセイア』ではゼウスはオデュッセウスに対してで応えている。
  2. プルタルコスソローン伝」(10)によるとピライオスはエウリュサケースの兄弟。プルタルコスはこの2人によって譲渡されたとしている。

脚注

  1. アポロドーロス、1巻8・2。
  2. ヒュギーヌス、173。
  3. ロドスのアポロニオス、1巻93。
  4. アポロドーロス、1巻9・16。
  5. ヒュギーヌス、14話。
  6. 6.0 6.1 アポロドーロス、2巻6・4。
  7. 7.0 7.1 ディオドロス、4巻32・5。
  8. アポロドーロス、3巻12・6。
  9. 9.0 9.1 9.2 ディオドロス、4巻72・1。
  10. 10.0 10.1 10.2 10.3 アポロドーロス、3巻12・7。
  11. 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p,169a。
  12. 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p,174a。
  13. クレータのディクテュス、6巻2。
  14. ストラボン、14巻6・3。
  15. クレータのディクテュス、6巻4。
  16. パウサニアス、1巻35・2。

参考文献

関連項目