ナガイモ

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ナガイモ(長芋)は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属Dioscorea polystachyaの肥大した担根体の通称である。漢名の山薬(さんやく)、薯蕷(しょよ)とも呼ばれる。

ヤマノイモとまとめて扱われる事が多いが「大和いも」「伊勢いも」など産地で呼び分けられている「山芋(ヤマノイモ)」とは別種である。

概要

ヤマノイモ科の作物は熱帯から温帯と広範囲に分布し、特にヤマノイモ属はきわめて種の数が多く、約600種にも及ぶ。その内の数十種類は食用作物として利用されている。 熱帯地域での栽培に適した品種が多いが、ナガイモは寒冷地での栽培も可能である。

ナガイモは中世以降に中国大陸から日本に持ち込まれたとの説もあるが、中華人民共和国にもヤマノイモ科の作物は複数あるものの、本項と同種のナガイモは確認されていない[1]。現在日本で流通しているナガイモは日本発祥である可能性もあり、現状は日本産ナガイモと呼んでいる[1]。なお、中華人民共和国で栽培するヤマイモの品種は普通のヤマイモ、いわゆる「家ヤマイモ」と「和田イモ」の2種類が主である[2]。産地は広東省広西チワン族自治区が総生産量の約5割を占め、南方地方を中心に生産を行う[2]。中国市場でのヤマイモ類への関心はあまり高くなく、一見では大和芋に似た外見の薯蕷品種を、店頭で「山葯(山薬)」と表示し販売する方法を取っている[2]

日本においてナガイモは消費生産ともに内需型に発展してきた作物だったが、近年では台湾アメリカ合衆国で流行している薬膳や健康志向を好む食生活の影響で、徐々に好評を得て輸出量を伸ばしている[3]

生産

栽培は比較的容易な品種であり、1年で収穫可能なことから別名で一年芋とも呼ぶ[4]。主な産地は青森県上北地方、北海道帯広市幕別町長野県中信・北信地方など、関東より北の地方が大部分となる。取りわけ青森県と北海道が秀でており、2010年(平成22年度)の出荷量の統計によると青森県が42%、北海道が37%、2道県で全体の80%近くを占める[4]。付作面積もこの2道県が広く、青森県が2,330ha、北海道が1,900haと半数を超える[4]

品種改良ではヒゲ根や毛穴がほとんどなく、皮ごと調理可能なナガイモが品種登録されている。

輸出

ナガイモは日本での生鮮野菜輸出の主要品目に入り、レタス大根キャベツサツマイモ・ナガイモの5品目のうち、最も外国に輸出されている野菜である[5]。しかし、2008年平成20年)を頂点に減少傾向にある[5]。輸出先は多い順から台湾、アメリカ合衆国、香港シンガポール共和国、その他の地域となっており、全体の約6割にとどく台湾と、2,5割を超えるアメリカ合衆国がナガイモの主要輸出先として際立っている[5]

生育

つる性多年草雌雄異株。ヤマノイモ属の中では比較的低温性のある植物で、高冷地や寒冷地でも栽培を行っているが、茎葉は寒さに弱く、0℃以下の環境では凍害を受ける。

土壌条件は耕土が深く、排水のよい肥沃な土壌が適している。ナガイモは肥大根が地中深くまで伸びるため、耕土の深い土地が望ましい。実る芋の形状は土壌条件に左右され、砂質や火山灰など軽い土壌では長く伸びた良い形を期待できるが、粘土含量の多い重い土壌では形が劣ってしまう。

利用法

生食

ヤマノイモ同様、長く伸びる根茎を食用にする。すりおろしてとろろとしたり、細く刻んで生食する方法が代表的である。すりおろしたとろろは麦とろご飯、山かけ、とろろ蕎麦などに用いられ、焼き上がりをよくするためにお好み焼きなどの生地に混ぜられることもある。また、通常の芋のように適度な大きさに切り分けて煮込む用法もある。エビイカマグロといった海産物との相性がよいためこれらと一緒に食べることも多い。 練り切りかるかん薯蕷饅頭など、和菓子の材料としても用いる。中国料理では、山芋の飴炊きという、大学芋や関西の中華ポテトに類似した点心が作られる。

ヤマノイモ同様、むかご(葉の付け根に生える芽)も食用になる。

薬用

ナガイモ、あるいはヤマノイモの皮を剥いた根茎を乾燥させたものを山薬といい、生薬として利用される。日本薬局方にも収録されている生薬で、滋養強壮、止瀉、止渇作用があり、八味地黄丸(はちみじおうがん)、六味丸(ろくみがん)などの漢方方剤に使われる。また胃の保護にもなり整腸効果もあると考えられている。

ハーブティーにも使われる。ハーブとしては英語名のチャイニーズヤムで呼ぶことが多い。

ギャラリー

とろろ  
とろろそば  
ナガイモの畑  
長芋のツルとムカゴ  
収穫したムカゴは種芋にしたり、塩で炒ったりご飯と炊き込んでムカゴ飯にする。  
加賀丸いも(ツクネイモ群)  
大和の伝統野菜「大和いも」  

脚注

関連項目

外部リンク