ニオベー

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ファイル:Niobe JacquesLouisDavid 1772 Dallas Museum of Art.jpg
タンタロスの娘ニオベーの神話を描いたジャック=ルイ・ダヴィッドの1772年の絵画『ニオベーの子供たちを攻撃するアポロンとアルテミス』。ダラス美術館所蔵。
ファイル:Ağlayan Kaya, Spil Dağı.jpg
リューディア地方のシピュロス山(現在のトルコ西部、スピル山)にあるニオベーの泣き岩。パウサニアスはシピュロス山でこの岩を見たと述べている。

ニオベー古希: Νιόβη, Niobē)は、ギリシア神話に登場する女性である。長母音を省略してニオベとも表記される。主に

の2人が知られている。以下に説明する。

ポローネウスの娘

このニオベーは、ペロポネーソス半島の原初の王ポローネウスニュムペーのテーレディケー[1](あるいはキンナ[2])の娘で、アーピスと兄弟。河神イーナコスの孫にあたる。ゼウスに愛されてアルゴスを生んだが[1][3]アクーシラーオスによればペラスゴスをも生んだという[4]

ニオベーはゼウスが愛した最初の人間の女性といわれる[1][5][2]。ちなみに最後に愛したといわれるのはヘーラクレースの母アルクメーネーであり、ゼウスは人間の女性を愛することをニオベーから始め、その16代目の子孫にあたるアルクメーネーでやめたという[5]

タンタロスの娘

このニオベーは、ゼウスの子タンタロス[6][7][8]巨人アトラースの娘ディオーネーとの間に生まれた娘で[8][注釈 1]ペロプスと兄弟[7][10][11]。ゼウスとアンティオペーの息子であるテーバイアムピーオーンと結婚し、多くの子宝に恵まれた[6][12][13]。ニオベーは神に対して傲慢な態度をとったために神罰を受けたことで知られており、その物語はホメーロス叙事詩イーリアス』ですでに取り上げられている[14]

神話によると、ニオベーは女神レートーに対して子供が多いことを自慢した[14][6][7][9]。それだけでなくアポローンアルテミスの姿を馬鹿にして自分の子供たちが優れていると自慢した[8]。このため怒ったレートーは、アポローンとアルテミスに彼女の子供を殺させた[6][7][9]。嘆き悲しむニオベーの涙はとまらず、故郷のリューディア地方に帰り、シピュロス山English版でゼウスに願って石に変えられた[6]。。あるいはテーバイで石と化したニオベーは風によって故郷に運ばれた[9]。ニオベーは石になっても涙を流し続けた[6][9][15][8]

ニオベーの子供の数や名前については諸説あり、アポロドーロスヘーシオドスの20人(10子10女)、ヘーロドトスの5人(2子3女)、ホメーロスの12人(6子6女)[6]、またアイリアーノスはホメーロスの12人(6子6女)、ラソスの14人、ヘーシオドスの19人、アルクマーンの10人、ミムネルモスEnglish版ピンダロスの20人といった説を挙げている[16]

一般的にはニオベーの子供は14人(7子7女)であり[6][7][9][12]オウィディウスは7人の息子イスメーノス、シピュロス、パイディモス、タンタロス、アルペーノル、ダマシクトーン、イーリオネウスの名前を挙げ、彼らと7人の娘たち全員が殺されたとしている[9]

一方、アポロドーロスは息子たちの名前をシピュロス、エウピニュトス、イスメーノス、ダマシクトーン、アゲーノール、パイディモス、タンタロス、娘たちの名前をエトダイアー(あるいはネアイラ)、クレオドサ、アステュオケー、プティーアー、ペロピアー、アステュクライア、オーギュギアーとし、さらに別の伝承をもとに1子アムピーオーンと1女クローリスだけが死を免れたとしている[6]。しかし前6世紀ごろの女詩人テレシラEnglish版は、助かったのはアミュクラースメリボイアとし、アムピーオーンは射殺されたとしている[17]パウサニアスもテレシラと同様にアミュクラースとメリボイアが助かったとしているが、メリボイアはクローリスのことで、恐怖で青ざめた顔が元に戻らなかったので、クローリス(「青ざめた顔の女」の意)と呼ばれるようになったのだという[13]

ヒュギーヌスによれば息子はタンタロス、イスメーノス、エウピノス、パイディモス、シピュロス、シクトティオス、アルケーノル、娘はレルタ、キアデー、クローリス、アステュクラーティア、シボエー、エウドクサ、オーギュギアであり[12]、クローリスのみが助かったとする[8][18]

この事件の後、夫のアムピーオーンは自殺したとも[9]、アポローンの聖域を攻撃したためにアポローンによって射殺されたともいわれる[8]。生き残ったクローリスはピュロスネーレウスと結婚した[6][18]

系図

テンプレート:アガメムノーンの系図

脚注

注釈

  1. オウィディウスはニオベーの母の名前を述べていないが、アトラースの娘でプレイアデスの姉妹であると述べている[9]

脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 アポロドーロス、2巻1・1。
  2. 2.0 2.1 ヒュギーヌス、145話。
  3. パウサニアス、2巻22・5。
  4. アクーシラーオス断片(アポロドーロス、2巻1・1)。
  5. 5.0 5.1 シケリアのディオドロス、4巻14・4。
  6. 6.0 6.1 6.2 6.3 6.4 6.5 6.6 6.7 6.8 6.9 アポロドーロス、3巻5・6。
  7. 7.0 7.1 7.2 7.3 7.4 シケリアのディオドロス、4巻74・3。
  8. 8.0 8.1 8.2 8.3 8.4 8.5 ヒュギーヌス、9話。
  9. 9.0 9.1 9.2 9.3 9.4 9.5 9.6 9.7 オウィディウス『変身物語』6巻。
  10. ヒュギーヌス、82話。
  11. ヒュギーヌス、83話。
  12. 12.0 12.1 12.2 ヒュギーヌス、11話。
  13. 13.0 13.1 パウサニアス、2巻21・9。
  14. 14.0 14.1 『イーリアス』24巻。
  15. スミュルナのコイントス、1巻。
  16. アイリアーノス、12巻36話。
  17. テレシラ断片(アポロドーロス、3巻5・6による引用)。
  18. 18.0 18.1 ヒュギーヌス、10話。

参考文献

関連項目