ヒョウ

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ヒョウ(豹、Panthera pardus)は、哺乳綱食肉目ネコ科ヒョウ属に分類される食肉類。

ネコ科の構成種では最も広域分布し、サバンナ熱帯雨林・半砂漠など様々な環境に生息する。体長は100cmから150cm、体重は30kgから90kg。全身は柔らかい体毛で密に被われており、黒い斑点が見られる。主に小型から中型の有蹄類を摂食するが、霊長類、鳥類爬虫類魚類昆虫など多様な食性である。狩猟などにより生息数は減少しており、1975年のワシントン条約発効時からワシントン条約附属書Iに掲載されている。

分布

アフリカ大陸からアラビア半島東南アジア・ロシア極東にかけて[1]

ネコ科の構成種では最も広域分布する[1]


形態

体長100 - 150センチメートル[1]。尾長80 - 100センチメートル[1]。体重30 - 90キログラム[1]。体重30-80kg[2]。全身は柔らかい体毛で密に被われる。背面の毛衣は淡黄褐色や淡褐色で[3]、腹面の毛衣は白い[4]。頭部や頸部、腹面には黒い斑点が入り、背面や体側面には黒い斑点が花のように並ぶ斑紋が入る[3][4]。 四肢は体長や体高に対してやや短い[4]。また、出産直後の幼獣は体重0.4 - 0.6キログラム[3]で、乳頭の数は4個[1]である。

毛衣が黒い個体は「クロヒョウ」と呼ばれ、これは劣性遺伝により突然変異した黒変種(こくへんしゅ)であり、クロヒョウという種が存在しているものではない[3][4]。突然変異のため、親兄弟が通常のヒョウであっても発生する。なお、クロヒョウもヒョウ特有の斑紋を有しており赤外線照射により視認できることが分かっている[5]

分類

ファイル:Leopard3.jpg
ペルシャヒョウ(ドイツハノーバーの動物園)

以下の分類・分布はStein & Hayssen(2013)に、和名はBertram・今泉訳(1986)に従う[1]

Panthera pardus pardus (Linnaeus, 1758)
アフリカ大陸(主にスーダンのサヘル地域からガボン以南)。サハラ砂漠にはほとんど分布しないがアルジェリア南東部・エジプト東部・ニジェール・モロッコのアトラス山脈に小規模な個体群が隔離分布し、ナイジェリアからセネガルにかけても分布する。
ザンジバルヒョウP. p. adersi、バーバリーヒョウP. p. pantheraはシノニムとする。
Panthera pardus ciscaucasica Satunin, 1914
アゼルバイジャン、アフガニスタン、アルメニア(ナゴルノ・カラバフ共和国含む)、イラン、ジョージア、トルクメニスタン、トルコ、パキスタン、ロシア(コーカサス地方北部)
P. p. saxicolor、アナトリアヒョウP. p. tullianaはシノニムとする。
Panthera pardus delacouri Pocock, 1930
東南アジア、中華人民共和国南部[6]
Panthera pardus fusca (Meyer, 1794)
インド
Panthera pardus japonensis (Gray, 1862)
中華人民共和国北部
Panthera pardus kotiya Deraniyagala, 1956
スリランカ
Panthera pardus melas (Cuvier, 1809)
ジャワ島[6]
Panthera pardus nimr (Hemprich & Ehrenberg, 1833) アラビアヒョウ
アラビア半島
シナイヒョウP. p. jarvisiはシノニムとする。
Panthera pardus orientalis (Schlegel, 1857) チョウセンヒョウ Amur leopard
中華人民共和国北東部、ロシア極東部、朝鮮半島[6]

生態

サバンナ熱帯雨林・半砂漠など様々な環境に生息し[4]、都市部の郊外に生息することもある[3]夜行性[4]。群れを形成せず単独で生活する[3][4]

食性

主に小型から中型の有蹄類を食べインパラウォーターバックセーブルアンテロープローンアンテロープ・ゴーラルNaemorhedus goralスプリングボックニアラパサンブッシュダイカーハーテビースト属などのウシ科、アカカワイノシシカワイノシシ・イボイノシシ類などのイノシシ科、アクシスジカマエガミジカホエジカ属Muntiacusなどのシカ科、ミズマメジカHyemoschus aquaticusなどを食べる[1]。一方で多様な獲物を襲い他の哺乳類ではケープハイラックスウスゲアブラヤシリスProtoxerus stangeriアカアシアラゲジリスXerus erythropusなどの齧歯類、アフリカジャコウネコCivettictis civettaヨーロッパジェネットGenetta genettaシママングースコビトマングースHelogale parvulaなどの食肉類、オナガセンザンコウManis tetradactylaキノボリセンザンコウManis tricuspisサバンナセンザンコウManis temminckiiなどの鱗甲類、アヌビスヒヒ・チャクマヒヒ・ダイアナモンキーボノボなどの霊長類、鳥類爬虫類魚類、糞虫などの昆虫なども食べる[1]人間の居住地域である場合はや人間も襲う[4][2]。捕えた獲物を樹上へ運び、数日にわたって食べたり保存することもある[3][4]トラライオンドールリカオンブチハイエナに、本種の幼獣も含めて殺されることもある[1]。 上述の捕らえた獲物を樹上に運ぶ行為は、ライオンやハイエナ等の他の捕食者から獲物を横取りされるのを防ぐのが主な狙いであるとされる。

繁殖

繁殖様式は胎生。イランでは1月中旬から2月中旬、アムール地方では1 - 2月、ネパールでは11 - 12月に交尾を行う。妊娠期間は88 - 112日[1]。岩の隙間や樹洞・藪の中などで1回に1 - 6頭(平均2 - 3頭)の幼獣を産む[3][4]。幼獣は生後18 - 24か月で独立する[4]。生後2年6か月から3年で性成熟する[3][4]

人間との関係

ファイル:Leopard Sangangelo MAN Napoli.jpg
ディオニューソスの象徴の一つとして豹を描いたローマ時代のモザイクポンペイ近郊)

狩猟対象とされることもあり、アフリカでは欧米の狩猟者にとってサイスイギュウゾウライオンと並びビッグファイブ(五大猟獣)とされる[3]。 害獣としての駆除、毛皮目的や娯楽としての狩猟などにより生息数は減少している[3]。1975年のワシントン条約発効時からワシントン条約附属書Iに掲載されている[7]


逸話

  • 古代ローマではヒョウの息は芳しい香りを放つので、動物たちはこれに魅了され、ヒョウに狩られてしまうと信じられていた。この香りに抗することができるのはユニコーンだけであるとされた。これが転じてキリスト教では、人々をキリストに導く伝道者の象徴とされた。だが実際はヒョウの息にそのような芳香はない。普通の獣臭である。
  • 人の態度などがだしぬけに変わることを「豹変」という。これは易経の「君子豹変、小人面革」(君子は豹変し、小人は面を革むる)に由来する。元来、豹の毛が抜け変わり鮮やかな模様が現れる様に、君子は自らの過ちをはっきりと改める(しかし小物は表面だけ変えてみせる)という、良い意味であったが、現在ではむしろ悪い方向への変化を指すことが多い。
  • 英語やドイツ語でヒョウのことを「Leopard」(レパード、レオパルト)というが、日本のファッション誌・業界では「ヒョウ柄」模様のことを「レオパード柄」という。これはLeopardの読み間違いから生まれた造語である。また、英語では「panther」(パンサー)と呼ばれることもあるが、イギリスではヒョウを、アメリカではピューマを指している。
  • 豹の和名は「なかつかみ」というが、これは八将神の中心(中つ神)が豹尾神であることからという。
  • 日本には生息していないが、虎とともに豹は浮世絵に多く描かれている。高島春雄は、当時は分類の知識がなく豹を虎の雌と考えていたと説明している。

出典

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  2. 2.0 2.1 動物 - ヒョウ - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト(ナショジオ)
  3. 3.00 3.01 3.02 3.03 3.04 3.05 3.06 3.07 3.08 3.09 3.10 引用エラー: 無効な <ref> タグです。 「bertram」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません
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  5. クロヒョウの隠れた斑点模様、撮影方法を偶然発見 - AFP通信社 2015年7月15日
  6. 6.0 6.1 6.2 引用エラー: 無効な <ref> タグです。 「iucn」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません
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参考文献

  • 今泉忠明 『野生ネコの百科』 データハウス、1992年、ISBN 4-88718-121-3、85- 86頁。

関連項目