力学的エネルギー

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力学的エネルギー(りきがくてきエネルギー、: mechanical energy)とは、運動エネルギー位置エネルギーポテンシャル)の和のことを指す[1]

保存力の場での質点の運動では力学的エネルギー(運動エネルギーと位置エネルギー(ポテンシャル)の和)が一定となる。これを、力学的エネルギー保存の法則(力学的エネルギー保存則)と言う[2]

これを式で書くと次のようになる。ただし、運動エネルギーを K、ポテンシャルを U、力学的エネルギーを E とする。

[math]K+U=E[/math]

一般にこれが保存するとき(即ち、保存力のみが仕事をし、非保存力が仕事をしないとき)によく使われる概念である。エネルギーが保存する場合、エネルギーの総和は初期条件で決まる。運動エネルギー K は、

[math] K = \frac{m}{2}v^2 \gt 0 [/math]

なので、

[math] U = E - K \lt E[/math]

となり、ポテンシャルの範囲が決まってしまう。ポテンシャルは位置に依存する量なので、これは運動の領域が決まることになる。ポテンシャルの概形が分かれば運動の様子がある程度推測できる。例えば、調和振動のポテンシャルは、

[math] \frac{k}{2}(\boldsymbol{x} - \boldsymbol{x}_0)^2[/math]

である。(x0 は振動中心の位置ベクトル)これは変位の二乗の形になっている。これを知っているならば、ポテンシャルの底が x2 の形になっている場合は単振動をすることが分かる。単振り子のポテンシャルは三角関数で書ける。

[math] U = A(1 - \mathrm{cos}\,\theta) = A \left( \frac{\theta^2}{2}-\frac{\theta^4}{4!} + \cdots \right)[/math]

十分に振幅が小さいときには単振動で近似できることが分かる。

力学的エネルギーは、熱力学での内部エネルギー摩擦などを通してやりとりされる)や他のエネルギーに変わりうる。この場合、力学的エネルギーの保存は成立しなくなるが、エネルギー全体としては保存している。つまりこの場合は、より広義の意味でエネルギーは保存している(→エネルギー保存の法則)。

力学的エネルギーの散逸

保存力でない力を非保存力という。非保存力が仕事をする場合、力学的エネルギーは保存しない。 具体的な非保存力の例は、

動摩擦力
[math]-\mu \hat{\boldsymbol{v}}[/math]
粘性抵抗力
[math]-\gamma \boldsymbol{v}=-\gamma v \hat{\boldsymbol{v}}[/math]
慣性抵抗力
[math]-\beta v \boldsymbol{v}=-\beta v^2 \hat{\boldsymbol{v}}[/math]

ただし、[math]v=\left| \boldsymbol{v} \right|[/math][math]\hat{\boldsymbol{v}}=\boldsymbol{v}/v[/math]である。

一般に非保存力f[math](f(v)\gt 0)[/math]として、

[math]\boldsymbol{f}=-f(v) \, \hat{\boldsymbol{v}}[/math]

と表される。

運動方程式
[math] m \dot{\boldsymbol{v}}= -\nabla U + \boldsymbol{f}[/math]

である。 この式の両辺に速度をかけると、

[math]\begin{align} m \dot{\boldsymbol{v}} \cdot \boldsymbol{v} &= -(\nabla U)\cdot \boldsymbol{v} + \boldsymbol{f} \cdot \boldsymbol{v} \\ \frac{d}{dt} \left(\frac{1}{2} mv^2\right) &= -\frac{dU}{dt} - f(v) v \\ \frac{d}{dt}E &= -f(v) v \end{align}[/math]

力学的エネルギーの時間変化率は、[math]-f(v)\,v[/math]である。非保存力が仕事をすると、力学的エネルギーは必ず減少する。 非保存力により力学的エネルギーが減少することをエネルギーの散逸という。

脚注

  1. 原康夫『物理学通論 I』 学術図書出版、2004年、p58
  2. 原康夫『物理学通論 I』 学術図書出版、2004年、pp92-93

関連項目