合略仮名

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合略仮名(ごうりゃくがな)は、複数の仮名文字を1つの文字で表現した仮名である。

概要

江戸時代以前は多く使用されていたが、明治33年に仮名は1音につき1文字とするという明治政府政令により使用されなくなった。仮名合字つづきかなとも呼ばれる。

ウィーン王立印刷局1876年に出版した文字活字の総合見本帳『Alfabete des gesammten Erdkreises』には平仮名の合略仮名79文字、片仮名の合略仮名14文字が収録されている。

コンピュータにおいては外字の利用などでしか扱えなかったが、2000年JIS X 0213が制定され、そこで「(コト)」および「(より)」が定義され、その2文字については使用可能となった。Unicodeでは2002年のバージョン3.2より対応。その後、2009年にUnicode 5.2で「[[とも|テンプレート:拡張漢字]](トモ)」も定義され使用可能となったが、CJK統合漢字拡張Cとして登録されてしまった。

片仮名

片仮名の合略仮名のほとんどは、2文字の仮名を左と右にのように組み合わせた文字で構成される。ただし「コト」のような例外もある。

文字 読み 画像 解説 使用例
コト 20px 「事」の省字[1][2] 将門記訓、後深草院御記點圖[1][2]
テンプレート:拡張漢字 シテ ファイル:Ligature shite.gif 「為」の省字[1][2] 将門記訓[1][2]
ニシテ [ファイル:Ligature shite.gif]
トキ ファイル:Ligature toki.gif 古語拾遺古本訓点[1][2]
トキ [ト/ヽ] 拾芥抄訓点[1][2]
[[とも|テンプレート:拡張漢字]] トモ 20px 朗詠要抄[1][2]
テンプレート:拡張漢字 ドモ 20px 三国通覧図説
トイフ |云 大正時代には既に使われなくなっていた[3] 興福寺延年舞[1][2]
トテ |テ 同上[3]
ヨリ ヨリ[1][2]
モノ 「物」の省字[1][2] 類聚名義抄字訓[1][2]

平仮名

平仮名の合略仮名は、草体の上下の組み合わせで構成される。多くは書簡に使われており、書簡体文字の一部となっている[4][5]。「まゐらせさうらふ」(まいらせそうろう)を1文字で表すような特殊な物もある。

文字 読み 画像 解説 使用例
より ファイル:Ligature yori.gif 「より」の合略体[5][4]
  こと ファイル:Ligature hiragana koto.gif 「こと」の合略体 山口県聚珍堂版 培養秘録巻二
には [[[:テンプレート:変体仮名フォント]]/テンプレート:変体仮名フォント] テンプレート:変体仮名フォントテンプレート:変体仮名フォント」の合略体 山口県聚珍堂版 培養秘録巻二
かしこ
さま 「さテンプレート:変体仮名フォント」の合略体[5]
まゐらせ 奉の草体である「テンプレート:変体仮名フォント」の略体[5]
さふらふ 候の略体[5][4]
まゐらせさうらふ ファイル:Ligature mairasesoro.gif 奉の略体と候の略体の合字
られ 被の略体[5][4]
テンプレート:拡張漢字 なり ファイル:Ligature nari.gif 「也」の草書体[1][2]

類似の文字

  • 「シテ」の合略仮名とされる文字「ファイル:Ligature shite.gif[6]を「為」の省字として説明する文献があり[1][2]Unicode には文字情報基盤[7]を典拠に漢字として提案されている[8]
  • 「なり(ファイル:Ligature nari.gif)」は合略仮名ではなく「也」の草体(草体漢字)である[9]が、合略仮名に分類する文献もある[3]
  • 」は「ます」と呼ぶが、これは計量に使用する枡を記号化した物であり、合略仮名とは異なる。
  • 漢字の部首と仮名を組み合わせた漢字と構造を同じくする字が存在するが、これらは合略仮名とは異なる。
    • 例:「機」20px、「議」20px、「摩」または「魔」20px →「略字」を参照。
  • インターネットスラングで、既存の文字の偏と旁が他の文字として読める場合、当該文字1字を他の文字2文字の代わりとして用いる場合がある。
    • 例:「托い」(キモい)「モルール」(モノレール)など。

脚注

  1. 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 1.11 1.12 國語學大系 第七巻 文字(一) P.302-303 福井久蔵 1939年
  2. 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 2.11 2.12 仮字本末 伴信友 1850年
  3. 3.0 3.1 3.2 国語漢文自習要覧 : 附・仮名遣詳解 手島継蔵 1916年
  4. 4.0 4.1 4.2 4.3 ことばの泉 : 日本大辞典 (21版) P.3 落合直文 1904年
  5. 5.0 5.1 5.2 5.3 5.4 5.5 日本大文典. 第1編 P.42-45 落合直文 1894年
  6. 伊木壽一『古文書学』新装版 慶應義塾大学出版会 1981年に、「トシテ 「片仮名の合字」」とある。 大石学『古文書解読辞典』改訂新版 東京堂出版 2000年に、「(と)シテ 合字」とある。
    これらの類書のほか、古文書・古典文学等の翻刻本の凡例はほぼ片仮名の「合字」であると説明しており、この項目「合略仮名」の定義に合致する。
  7. "MJ文字情報検索システム (MJ056854)"”. . 2016閲覧.
  8. Draft additional repertoire for ISO/IEC 10646:2016 (5th edition) CD.2 (pdf)” (2015年12月14日). . 2016閲覧. “2CF00 ファイル:Ligature shite.gif JMJ-056854”
  9. 児玉幸多『くずし字解読辞典〔普及版〕』東京堂出版 1993年 ほか。 田島毓堂「法華経為字和訓考—資料編(三)—」名古屋大学文学部研究論集 1990年。

参考文献

  • 蛇蔵海野凪子日本人の知らない日本語 なるほど〜×爆笑!の日本語"再発見"コミックエッセイ』 メディアファクトリー、1989年。ISBN 978-4-8401-2673-1。 - 「まいらせそうろう」について言及。
  • 『[[[:テンプレート:近代デジタルライブラリーURL]] 日本文典初歩]』 益田多米彦編、益田多米彦、1902-06-30。 - 合略仮名ついての説明。

関連項目

外部リンク

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