味の素

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味の素株式会社(あじのもと、英語: Ajinomoto Co., Inc.)は、日本の食品企業。「味の素」は、同社が製造販売するL-グルタミン酸ナトリウムを主成分とするうま味調味料で、同社の登録商標(登録番号第34220号他)。

現在のコーポレートスローガンは「Eat Well, Live Well.」。

概要

事業内容

味の素は食品会社として広く認知されており、日本国内だけでなく世界各地にグループ企業や工場を持つ[1]化粧品ブランド「Jino」などアミノ酸生産技術を活用したケミカル事業、医薬事業も行っている。

食品事業

「味の素」「ほんだし」「クノール」「Cook Do」など

アミノ酸事業

グルタミン酸をはじめ、発酵法によるアミノ酸製造技術をもつ。

  • アミノ酸事業
  • 栄養食品事業:アミノバイタル
  • 甘味料事業:アスパルテーム
  • 化成品事業:香粧品事業(「Jino」ブランド)、ケミカル事業(電材)。かつては化学薬品(カセイソーダ塩素塩酸次亜塩素酸ソーダ)、肥料(アミノ酸を活用した「エスサン肥料」)、殺虫剤(DDT、リンデン)を川崎工場で展開していたが、現在は撤退。
  • 医薬中間体事業
  • 飼料用アミノ酸事業

医薬事業

主に以下の3分野がある。

沿革

  • 1907年(明治40年) - 鈴木三郎助合資会社鈴木製薬所を設立。
  • 1908年(明治41年) - 池田菊苗グルタミン酸ナトリウムの製造法特許取得。
  • 1909年(明治42年)5月20日 - 「味の素」(中瓶30gで50銭だった)の一般発売開始(創業の日)。
  • 1912年 - 合資会社鈴木商店に社名変更(双日などの前身の鈴木商店とは無関係)。
  • 1914年(大正3年)9月 - 川崎工場開設。
  • 1917年(大正6年)
  • 1923年(大正12年)9月1日 - 関東大震災により本社社屋焼失、川崎工場全壊。
  • 1925年(大正14年)12月17日 - 株式会社鈴木商店と合資会社鈴木商店を統合し株式会社鈴木商店を新設(設立の日)。
  • 1932年(昭和7年) 10月- 味の素本舗 株式会社鈴木商店に社名変更。
  • 1940年(昭和15年)12月 - 鈴木食料工業株式会社に社名変更。
  • 1943年(昭和18年)
    • 5月 - 大日本化学工業株式会社に社名変更。
    • 12月 - 佐賀工場(現在の九州事業所)開設。
  • 1946年(昭和21年)2月 - 味の素株式会社に社名変更。
  • 1951年(昭和26年) - それまでの単なる「瓶入り」から現在のような穴付き容器の「ふりかけ式」に容器を変更。これにより売り上げを伸ばす。
  • 1958年(昭和33年)1月 - 日本コンソメ株式会社(現:クノール食品株式会社)設立。
  • 1960年(昭和35年)10月 - 調味塩「アジシオ」を発売。
  • 1962年(昭和37年)11月 - 複合調味料「ハイミー」を発売。
  • 1963年(昭和38年)5月 - アメリカケロッグ社との提携により「ケロッグコーンフレーク」を発売。
  • 1964年(昭和39年)1月 - 「クノールスープ」を発売(ドイツクノール社との提携による)。
  • 1968年(昭和43年)3月 - 当時の国産マヨネーズとしては珍しい全卵を使用した「味の素KKのマヨネーズ」(現:味の素ピュアセレクトマヨネーズ)を発売。
  • 1970年(昭和45年)
  • 1972年(昭和47年)3月 - 冷凍食品事業に参入。
  • 1973年(昭和48年)
  • 1978年(昭和53年)
    • 5月 - 中華料理の素「Cook Do」シリーズを発売。
    • 11月 - 中華風調味料「中華あじ」を発売。
  • 1979年(昭和54年)5月 - アルギニン配合の栄養ドリンク「アルギンZ」を発売、飲料事業に参入。
  • 1981年(昭和56年) - 医薬事業に参入。
  • 1986年(昭和61年) - 消費者向け商標を「味の素KK」から“AJINOMOTO”(黒ベース)に変更、同時に新キャッチコピー「生活のごちそうは、きっと笑顔だ。」を制定(1月)。
  • 1991年(平成3年) - カルピス食品工業(現:カルピス)の第三者割当増資を引き受け、味の素グループ傘下に収める。
  • 1993年(平成5年)10月 - 「マリーナ」の販売・商標を日本リーバ(現:ユニリーバ・ジャパン)へ譲渡、マーガリン事業から撤退。
  • 1995年(平成7年) - 「アミノバイタル」を発売。
  • 1999年(平成11年)10月1日 - 現行のロゴ(赤ベース)に変更。同時にコーポレートスローガンを「あしたのもと AJINOMOTO」に変更。
  • 2000年(平成12年)10月 - 冷凍食品事業を分社化、味の素冷凍食品株式会社を設立。
  • 2002年(平成14年)4月 - 関連会社の味の素製油株式会社が、株式会社ホーネンコーポレーションと経営統合、持株会社として株式会社豊年味の素製油が発足。
  • 2003年(平成15年)4月 - 株式会社豊年味の素製油に吉原製油株式会社が経営参加、豊年味の素製油は株式会社J-オイルミルズに商号変更。
  • 2004年(平成16年)7月 - 株式会社J-オイルミルズが子会社3社の事業を完全統合。
  • 2007年(平成19年)3月 - 鰹節メーカーのヤマキ業務・資本提携を締結、ヤマキを持分法適用会社化した。
  • 2007年(平成19年)10月1日 - カルピス株式会社を完全子会社化した。
  • 2009年(平成21年)5月20日 - 創業100周年。
  • 2010年(平成22年)4月1日
    • 前年10月から創業100周年記念スローガンとしてTVCM等で用いていた「おいしさ、そして、いのちへ。(英文表記:Eat Well, Live Well.)」が当社の新しいコーポレートスローガンとなる。
    • 当社の医薬事業部、味の素ファルマ、味の素メディカが統合し、味の素製薬が発足。
  • 2012年(平成24年)10月 - カルピスの全株をアサヒグループホールディングスに譲渡(2016年1月に同社子会社のアサヒ飲料へ吸収合併され機能子会社化)。
  • 2014年(平成26年)10月 - 英文表記のコーポレートスローガンに実質全面統一される。以降に制作される分のTVCMについてもこの表記に変更された。
  • 2016年(平成28年)4月 - 味の素製薬がエーザイの消化器疾患領域事業の一部を吸収分割によって承継し、EAファーマが発足。エーザイからEAファーマへの出資により、持分法適用会社へ移行。
  • 2017年(平成28年)
    • 3月 - 味の素物流の100%子会社だった北海道エース物流の全株式を当社およびカゴメ日清フーズハウス食品グループ本社の4社で均等取得して合弁会社化され、F-LINEに商号変更される。
    • 4月 - 味の素物流の100%子会社だった九州エース物流の全株式をF-LINEが取得して子会社され、九州F-LINEに商号変更される。
    • 10月 - コーポレートブランドロゴを改定。Aとjを組み合わせたグループ共通のグローバルブランドロゴが導入され、「AJINOMOTO」のロゴも太字化された(なお、提供番組(後述)のクレジット表記は12月25日よりグローバルブランドロゴ付の新ロゴに変更、製品パッケージへは同年2月にパッケージリニューアルされた「Cook Do」を皮切りに、同時期以降発売の新製品やリニューアル品から順次表記される)[2]
    • 12月 - 農心との合弁会社味の素農心フーズの設立を発表。

歴代社長

歴代のコーポレートスローガン

  • おいしく食べて健康づくりの味の素K.K.
  • 生活のごちそうは、きっと笑顔だ。AJINOMOTO
(提供スポンサー読みは『生活に笑顔をお届けする味の素』であった)
  • ちゃんとちゃんとのAJINOMOTO(1996年4月~1999年6月)
  • あしたのもとAJINOMOTO(1999年7月~2010年3月)
  • おいしさ、そして、いのちへ。 Eat Well, Live Well. AJINOMOTO(2010年4月~2014年9月)
  • Eat Well, Live Well. AJINOMOTO(2014年10月~)
(TVCMでは2009年(平成21年)10月から創業100周年記念スローガンとして先行導入されていた。30秒版・60秒版のTVCMや提供読みでは2010年4月から2014年9月までは日本語表記の『おいしさ、そして、いのちへ。』のみを用いた。2014年10月以降は英文の"Eat Well, Live Well."を用いる。30秒以上のTVCMではサウンドロゴの前にスローガンがナレーションされるが、企業CM以外はサウンドロゴと重なり、一部は当社のCM出演者がスローガンの読み上げをする場合もあった。2017年10月のコーポレートブランドロゴの改定に伴い、2018年1月からはグローバルブランドロゴが一筆書きによって現れる新しいサウンドロゴとなり、30秒以上のTVCMでは従来通り"Eat Well, Live Well."のナレーションもある)

グループ会社

事業所

主要工場・研究施設は川崎事業所にあり、現在は部分的に改築を進めている。
川崎事業所の所在地である「鈴木町」の地名は、創業者鈴木三郎助に由来する。

関連企業

  • 味の素エンジニアリング
  • 味の素コミュニケーションズ
  • EAファーマ - 消化器疾患に特化した医薬品の製造・販売。2016年(平成28年)4月にエーザイの消化器疾患領域事業を味の素製薬(2010年(平成22年)4月に、味の素本体の医薬品事業部と、味の素ファルマ・味の素メディカの両社が統合して発足)が吸収分割により継承し、新たに発足。エーザイの子会社であるが、当社の持分法適用会社でもある。
  • 味の素AGF(AGF)
  • 味の素トレーディング
  • 味の素トレジャリー・マネジメント
  • 味の素物流 - 味の素グループの他にも食品メーカーや、外食チェーンの物流も受託している。
  • 味の素ベーカリー
  • 味の素ヘルシーサプライ
  • 味の素冷凍食品
  • ジーノ
  • J-オイルミルズ - 旧味の素製油・ホーネンコーポレーション・吉原製油の3社が統合
  • 味の素アニマル・ニュートリション・グループ
  • 味の素ニュートリション
  • 北海道味の素
  • 日本プロテイン
  • デリカエース
  • NRIシステムテクノ - かつて味の素100%子会社であったが、51%の株式を野村総合研究所に譲渡し、持分法適用会社となった。
  • 味の素パッケージング
  • 味の素ファインテクノ
  • クノール食品
    • クノールトレーディング
    • クノールサービス
  • ヤマキ
  • 沖縄味の素
  • Ajinomoto Aminoscience LCC - Ajinomoto USA, Inc.の子会社。Ajipureブランドで、アメリカのcGMPs(医薬品適正製造基準)品質のBCAA等を製造。
  • プリマハム - 味の素が大株主
  • 伊藤ハム - 2008年(平成20年)に業務提携。伊藤ハム米久ホールディングス傘下。
  • 日本ケロッグ - 一部商品を味の素が販売する業務提携
  • シマダヤ
  • 黒川乳業

過去の主なグループ会社

調味料「味の素」

テンプレート:基礎情報 食品・飲料 1908年(明治41年)、東京帝国大学教授の池田菊苗昆布のうま味成分はグルタミン酸ナトリウムであることを発見、創業者の二代目鈴木三郎助が工業化に成功した。

開発当初は「味精」という名称であり、中国など漢字文化圏では、現在も「味精」と呼ばれている。「味の素」を商標登録した際には、石油系材料の表記を巡って争われた。登録後は「味の素」は、日本ではうま味調味料の代名詞とされるほど普及した。

「味の素」の主な原材料はL-グルタミン酸ナトリウム。グルタミン酸ナトリウム(グルタミン酸ソーダ)はグルタミン酸ナトリウム塩のことで、この物質のL体調味料として使用されている。現在ではうま味調味料(現在「アミノ酸等」と商品には表示)と呼ばれる。製品には鰹節シイタケのうま味成分である5'-リボヌクレオタイドナトリウム呈味性ヌクレオチドイノシン酸ナトリウムとグアニル酸ナトリウムなど)を2.5%配合している。一般向けの「味の素」はL-グルタミン酸ナトリウムを97.5%配合しているが、業務用の「味の素S」は一般向けと処方が異なり、L-グルタミン酸ナトリウム99%、5'-リボヌクレオタイドナトリウムを1%配合している。

製法

食用グルタミン酸ナトリウム生産の先駆けである味の素社は当初小麦などのグルテン加水分解することによって生産していた。しかし、コストが非常に高くつくため、石油由来成分(アクリロニトリルなど)による合成など様々な手法が試みられた[3]。しかし協和発酵工業(現・協和発酵キリン)によりグルタミン酸生産菌が発見され、これに廃糖蜜サトウキビもしくはトウモロコシキャッサバから砂糖を搾り取った残滓)あるいはなどをエネルギー源として与え発酵させてグルタミン酸を得る手法が安全性、コスト面において優れていることから、現在ではこのグルタミン酸生産菌による発酵法が主流となっている。発酵過程でビオチンを阻害するなどの、グルタミン酸生産菌のグルタミン酸生産を活性化する添加剤や、窒素源(硫酸アンモニウムなど)、発泡を調整する薬剤(消泡剤)が加えられる。[4]


害性・安全性

味の素は、1970年代までは石油製法で製造しており、1960年代から1970年代にかけて、その害毒性が議論された。1969年(昭和44年)には第61回国会 科学技術振興対策特別委員会でもとりあげられた[5]。 当時、味の素にはグルタミン酸ソーダになるノルマルパラフィンを原料とした石油製品が入っていて、成分の3割を占めた。1969年(昭和44年)当時、グルタミン酸ソーダは、味の素株式会社だけが石油製法によって製造していた[6]。石油由来原料のアクリロニトリル、またノルマルパラフィンからは醋酸が生成され、それらによって、グルタミン酸が製造されていた[7]

アクリロニトリルやノルマルパラフィンを使用した石油製法の害性について、メーカー大手である協和醗酵工業(現:協和発酵キリン)は、石油(具体的には灯油、軽油)の中に含まれている有害なタールをどうしてなくすかといった技術的な問題が残されていると言明[8]。タールは、発ガン性が強く、グルタミン酸ソーダが99度の純度とすると、残り1%の不純物があり、その不純物の中に有害なタール分が残留していないかどうかについては、当時は検査されていなかった。これについて味の素のアミノ酸開発部長は「研究を進めていないといえばうそになるでしょう。」「毒性試験を進める過程で動物一代だけの実験結果ではだめ。二代目、三代目の影響、ひいてはこれを食用にする人間も二世、三世にどのような影響があるか、これをデータで納得させねばいけない。」「これらデータを作成するには、一企業だけでは無理」と答弁した[9]

1972年(昭和47年)に味付昆布にグルタミン酸ナトリウムを「増量剤」として使用し、健康被害が起きた事故があった。その症状は後述の中華料理店症候群に似たものであった(頭痛、上半身感覚異常等)が、問題の商品には、製品の25.92%~43.60%のグルタミン酸ナトリウムが検出され「調味料としての一般的な使用」とは程遠いものであった。[10]

JECFA(国際連合食糧農業機関は1971年大会および1974年大会にて、一日許容摂取量 (ADI) を 120 mg/kg 以下と定めた。また動物実験で新生児への影響が指摘され、この制限に当てはまらないとした。その後ADIを超える摂取事例が報告されたため73年以降の研究に基づいた再協議がJECFA1987年第31回会議にて行われた。その結果、通常の経口摂取では幼児も含めヒトに対する毒性はなく、JECFAはグルタミン酸ナトリウムの一日許容摂取量を「なし」とした。ただし一度の大量摂取は注意すべきとしている。米国食品医薬品局 (FDA)、ヨーロッパ食品情報会議 (EUFIC)、欧州連合食品科学委員会 (SCF) なども同様にADIを特定しないとする評価を90年代に下している。[11]

中華料理店症候群

中華料理を食べた人が、頭痛歯痛、顔面の紅潮、体の痺れなどの症状を訴えた中華料理店症候群 (Chinese Restaurant Syndrome) があり、料理にグルタミン酸ナトリウムが含まれたため関連が疑われたが、臨床実験の結果からは関連性は見られなかった[11]

緑内障の原因の可能性

2002年(平成14年)に発表された弘前大学の大黒浩らの報告によると、高濃度のグルタミン酸ナトリウムを摂取させたラットの目には障害が発生しやすいという。大黒らは、このことがグルタミン酸ナトリウムが欧米に比べて広く使われているアジアで(正常圧)緑内障が多い原因のひとつではないかと推測している[12][13]。ただし食品安全委員会の評価では、上記はマウスおよびラットの新生児の事象であり、サルを含めた他の動物では発生が確認されないため、グルタミン酸ナトリウムが添加物として適切に使用される限り障害は起こらないと判断されている。[11]

味覚飽和の問題

グルタミン酸ナトリウムの性質として、味覚から過剰摂取を感知できないという問題がある。通常、塩などの調味料は投入過剰状態になると「塩っぱすぎる(辛すぎる)」状態となり、味の濃さを感じることで過剰摂取に気づくことができるが、グルタミン酸ナトリウムはある程度の分量を超えると味覚の感受性が飽和状態になり、味の濃さが変わらず同じような味に感じるため、過剰摂取に気づきにくく、また飲食店も過剰投入してしまいがちになってしまう。その結果、調味料としての通常の使用では考えられない分量のグルタミン酸ナトリウムを摂取してしまう場合があり、注意が必要である[14]

「うま味調味料」には「ハイミー」(味の素)、「シマヤだしの素」(シマヤ)、「フレーブ」「日東味の精」(ヤマサ醤油)、「いの一番」(武田薬品工業武田食品工業→武田キリン食品→キリンフードテック→キリン協和フーズ→MCフードスペシャリティーズ)、「ミタス」(旭化成日本たばこ産業富士食品工業)、「味楽」(新進)、「グルエース」(キリン協和フーズ→MCフードスペシャリティーズ)、「味元」(韓国大象)、「味全」(台湾味全食品工業)などがあり、類似商品・商標に対して法的手段に訴えたこともある。「ハイミー」はリボヌクレオタイドナトリウム呈味性ヌクレオチド)の含有量を8%にまで引き上げた派生商品である。

その他

  • 1909年(明治42年)の発売当初は、新製品だったことに加え、なかなか売れずに苦戦を強いられたが、鈴木が販売促進のために大阪に出掛けたところ、うどんが食文化として定着していたことや、またうどんの出汁を昆布で取ることから、昆布のうま味成分を抽出した味の素は格好の市場となり、鈴木は大阪市内のうどん屋や高級料亭などに向けて、味の素を売り込みに回ると共に、大阪で大きな足掛かりを築き、これがその後の味の素の評判につながることになる。また「大阪の食文化への貢献」もあり、1996年(平成8年)には「ほんだし うどんおでんだし」(通称・どんでん、現在は販売終了)の発売に際し、吉本興業の所属タレント・坂田利夫をテレビCM[15]に起用したり、1993年(平成5年)には「ほんだし かつお・こんぶだし」のテレビCMには吉本興業所属のタレント・間寛平が出演した。また関西テレビの制作で関西ローカルで放送された「素のよしもと」のスポンサーを担当するなど、今日に至るまで吉本興業との関係が続いている[16]
  • 「原料は石油」と噂が広がった。グルタミン酸は石油由来原料のアクリロニトリルからも製造されていた時代もあった(上記節「毒性」参照[17])。
  • 1917年大正6年)頃には、「味の素の原料はヘビだ」というが流れた。大道商売の薬売りが、売り口上として面白おかしく語ったことに端を発するのだが、これが宮武外骨が刊行していた『滑稽新聞』に取り上げられ、一般に広まった為、売り上げが激減した。これを受け、当時の製造元であった鈴木商店は、東京朝日新聞などの新聞広告でこの噂はだと反論したが、逆にこれが噂をさらに広げる結果となり、売上減は続いたが、関東大震災の際、原材料だった小麦粉救援物資として放出したことで、この噂は沈静化した。
  • 企業における柔軟な発想の転換の重要性を表す例として「味の素は売上(消費)促進の為にの穴を大きくした」、との逸話または都市伝説が語られることがあるが、これは公式には否定されており、湿気による穴の目詰まりを防ぐためだとされている[18]。また英国生まれのフードジャーナリスト、マイケル・ブースによる取材に対しては、より具体的に、消費者から味噌汁に振りかける時に湿気で穴が詰まると言う苦情が出たからと説明している[19]
  • 2015年(平成27年)5月12日付の日本経済新聞などの報道によると、味の素株式会社は同社の川崎工場で製造されている「味の素」の生産(精製工程のみ)を2015年度内に撤退し、1世紀に及ぶ日本国内での製造に幕を下ろすことが報じられた。「味の素」の精製に使われる原材料の高騰が撤退の理由とされており、今後はインドネシアブラジルで原材料を精製し、倍散化工程と包装についてはこれまで通り日本国内で行う[20]。2016年現在、「味の素」の日本国内での生産は味の素株式会社九州事業所(佐賀県佐賀市)のみでおこなわれており、それを味の素パッケージングの川崎工場もしくは関西工場(大阪府高槻市)、業務用(味の素S)はエース構内サービス(佐賀市)で容器に充填する体制が採られている。

「味の素」のラインナップ

  • 「味の素」70g瓶(アジパンダ瓶)
  • 「味の素」30g袋
  • 「味の素」50g袋
  • 「味の素」100g袋
  • 「味の素」400g袋
  • 業務用「味の素S」1kg袋
  • 業務用「味の素S」3kg袋
  • 業務用「味の素S」20kg箱
※過去には「味の素」1kg缶(金色缶)が発売されていた。1kg缶は1927年(昭和2年)から発売が開始された、味の素社製品の中では最も息の長い商品であったが、「味の素」のラインナップ見直しにより2015年(平成27年)8月の出荷分を以て87年に及ぶ歴史に幕を下ろした。

味の素をめぐる事件

国際カルテル事件

2000年、長年に渡って飼料添加物リジンを巡る国際カルテルに加担していたことがFBIによって暴露された。

「競合企業は友、顧客企業は敵」を合言葉にアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)が主導し、協和発酵味元第一毛織など、リジンに関するあらゆる世界的企業が参加した価格設定の会議に味の素の重役も出席していたことが、FBIの盗撮によって明らかになった。証拠として少なくとも1993年から1995年の映像が存在した[21]

後にスティーブン・ソダーバーグによって映画化された(『インフォーマント!』)。

総会屋への利益供与事件

1997年(平成9年)に商法違反事件が発覚し、総会屋に対し利益供与を行っていたとして、担当社員が起訴された。起訴事由の供与金額は1千万円ほどだったが、実際には1億円もの金額が動いたという説もあり、経営陣の関与も取りざたされた。当時は、大手証券会社などが同様の事案で次々と立件され社会問題となっていたが、同社は国民生活に密着した企業だけに、イメージダウンは大きかった。「ちゃんとちゃんとの味の素」というキャッチフレーズを使用したテレビCMの放送が中止され(公共広告機構(現:ACジャパン)に差し替え)、日本テレビ系の「ごちそうさま」などメインスポンサーを務めていた番組が打ち切りになった。当時、同社で総会屋対策に当たっていた石神隆夫が『汚れ役 -「味の素総務部」裏ファイル』(太田出版)という本を出版している。

味の素追放事件

2000年(平成12年)、インドネシアで、「味の素」の原料にイスラーム禁忌[22]とされている豚肉が使用されている疑いがあるという噂が流れた。材料としての成分を使用してはいなかったが、発酵菌の栄養源を作る過程で触媒として豚の酵素を使用していたために、現地法人の社長が逮捕され、味の素製品は同国の食料品店から姿を消した。同社は2001年(平成13年)2月に商品の回収を終了、触媒を変更したことにより販売許可(Halal)が下り、社長も釈放され、製造販売を再開した[23]

特許報奨金訴訟

2002年(平成14年)9月20日、人工甘味料アスパルテームの製造法を開発した元社員が、発明特許の対価として20億円を請求する旨の訴えを東京地裁に起こした。元社員は退職時に特許報奨金として1,000万円を受け取っていたが、2004年(平成16年)2月24日、同地裁は、発明に対する相当対価額は1億9,935万円であるとして、会社側に対し、支払い済みの1,000万円を差し引いた1億8,935万円の支払いを命じた。この一審判決に対して味の素、元社員ともに控訴したが、二審の東京高裁で強い和解勧告を受け、会社側が元社員に1億5,000万円を支払うことで決着した。

社章

ファイル:AG mark 2017.gif
2018年に導入された新社章

1970年までは漢字の「三」と「S」を組み合わせたものが用いられたが、これは創業者・鈴木三郎助のイニシャルに由来する(かつての商品だった「エスサン肥料」も同様)。当時関連企業だった三楽オーシャン(現・メルシャン)も○で「三」と「S」を囲んだマークを用いていた。

1970年9月1日から、勝井三雄デザインによる「●」に「a」を白抜きであしらったマークに変更され[24]株券や医薬品のパッケージ、タンク車の荷主表示部分にも使用された。

2010年からは創業100周年を迎えたことにより、1999年から使用している「AJINOMOTO」の現行ロゴマーク先頭の”A+∞”を正式な社章として使用していた。

味の素グループ・グローバルブランド(2017年10月2日プレスリリース)の導入とともに、2018年1月より新社章を使用している。

命名権

以下の3つの施設の命名権(ネーミングライツ)を取得している。

提供番組

※ ●印は一社提供、★印は60秒提供。

現在

日本テレビ
  • スッキリ!!→スッキリ(~2012年10月は隔日提供。2012年11月からは全日提供。)
  • ヒルナンデス!(2016年10月より金曜の12時枠に提供開始→2017年4月より13時枠の隔日。曜日は不明だが、かつては12時枠も提供していた。)
  • 土曜ドラマ(2009年4月期から、火曜ドラマから移動しCanonから提供枠を引き継いだ。)[28]
TBS
フジテレビ
テレビ朝日
  • ドラえもん
  • ごはんジャパン(2013年4月 - 『ほんパラ!関口堂書店→ほんパラ!痛快ゼミナール』→『ウチゴハン』→『ミラクルレシピ!』から移動、CMには字幕表記入り)
テレビ東京
その他

過去

フジテレビ土曜19時台
「爆笑レッドカーペット」~「(株)世界衝撃映像社」の放送期間は木曜劇場と同様、隔月=奇数月担当でAGF=偶数月担当と交互にクレジットされていた。「世界衝撃映像社」までは隔週毎に前後半入れ替えたが、「リアルスコープ」から後半枠に固定。また、「世界衝撃」まではAGFのCMが放映されたが、「リアルスコープ」から稀にヤマキのCMが流れる。)
※ただし、同枠がプロ野球中継などに急遽差し替わる場合、CMとスポンサー枠を返上し、年末年始を含む単発特番へ提供番組変更することもあり。

CM出演者

現在

過去

脚注

  1. M&Aなどにより、2020年度に世界の食品企業上位10社に入ることを目標としている。「味の素、成長投資に5000億円 世界トップ10狙う」『日本経済新聞』2017年2月17日(2018年5月21日閲覧)。
  2. “~グローバル食品企業トップ10クラス入りに向けてコーポレートブランドを強化~味の素(株)、グループ共通の “グローバルブランドロゴ” を導入” (プレスリリース), 味の素株式会社, (2017年10月2日), https://www.ajinomoto.com/jp/presscenter/press/detail/2017_10_02.html . 2017閲覧. 
  3. グルタミン酸の原料は各社で異なり、サトウキビトウモロコシキャッサバテンサイイネコムギが使われている。Basic knowledge of AJI-NO-MOTO
  4. なお、発酵法で得られるのはグルタミン酸であるので、実際にはこれに水酸化ナトリウムと反応させてナトリウム塩にすることによってグルタミン酸ナトリウムを得ている。
  5. 第061回国会 科学技術振興対策特別委員会 第14号 1969年6月12日
  6. 第061回国会 科学技術振興対策特別委員会 第14号 1969年6月12日
  7. 第061回国会 科学技術振興対策特別委員会 第14号 1969年6月12日。
  8. 木下常務の発言。第061回国会 科学技術振興対策特別委員会 第14号、前掲リンク。
  9. 化学工業日報 1968年11月5日
  10. 食品添加物(グルタミン酸ナトリウム)の使用に関する指導の徹底について 昭和47年4月25日 環食第255号
  11. 11.0 11.1 11.2 食品安全委員会「添加物評価書 L-グルタミン酸アンモニウム」
  12. Ohguro, H. et al. "A High Dietary Intake of Sodium Glutamate as Flavoring (Ajinomoto) Causes Gross Changes in Retinal Morphology and Function." New Scientist 75:307-15. DOI: 10.1006/exer.2002.2017
  13. Duncan Graham-Rowe. 2002 "Too much MSG could cause blindness." Experimental Eye Research 75:307)
  14. 『スタンダード口腔生理学』 学建書院 1994年。グルタミン酸ナトリウムのうまみは耳かき一杯程度で十分感じることができる
  15. 他にも阪神タイガース選手・監督として知られる岡田彰布(出演当時はオリックス・ブルーウェーブコーチ)もテレビCMに出演していた。
  16. この他、吉本興業が所有するNGKの緞帳に、味の素から発売されている「ほんだし」のロゴがあしらわれている他多数の場で、協賛している。因みにそれ以前に緞帳に協賛スポンサーとして参加していたのは、同じく「だしの素」で知られるシマヤであった。
  17. 第061回国会 科学技術振興対策特別委員会 第14号 1969年6月12日
  18. 昔、販売量を増やすために「味の素」の瓶の穴を大きくしたと聞きました。本当ですか?”. 味の素. 2012年4月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2015-3-29閲覧.
  19. マイケル・ブース 著 / 寺西のぶ子訳 2014年 『英国一家、ますます日本を食べる』 亜紀書房 第2章 - なおブースは一部の欧米人の間にあるように、グルタミン酸ナトリウムの健康被害について強い懸念を持つ一人であったが、取材の結果誤りを知ることとなった。
  20. うま味調味料「味の素」の国内生産体制の再構築について 味の素株式会社プレスリリース 2015年6月5日
  21. http://www.nikkeibp.co.jp/archives/105/105161.html
  22. 「Haram」:豚由来のすべての物は食用のみならず、それらを取り扱った食器や調理器具の使用をも忌み嫌われる。[1]
  23. 宗教徒食”. 北海道新聞. . 2014閲覧.
  24. 『味の素社史2 1972年』より。
  25. 施設ガイド - 味の素スタジアム
  26. 26.0 26.1 ~国立施設として日本初のネーミングライツ導入~
    「味の素ナショナルトレーニングセンター」
    「JOCゴールドパートナー」契約も併せて締結
    (味の素 2009年5月11日)
  27. 西が丘サッカー場の新名称、味の素フィールドに(スポーツニッポン 2012年5月3日)
  28. 但し、「高校生レストラン」(2011年5月7日~7月2日)では休止
  29. 1997年3月27日に放送された『とんねるずのみなさんのおかげです』最終回スペシャル(22時台)は提供クレジット自粛
  30. 池田菊苗として登場

関連項目

外部リンク

1968年、味の素社の企画の下で東京シネマが制作したPR映画《現在、上記サイト内に於いて無料公開中》。


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