四国旅客鉄道

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四国旅客鉄道株式会社(しこくりょかくてつどう、英称:Shikoku Railway Company)は、1987年昭和62年)4月1日日本国有鉄道(国鉄)から旅客鉄道事業を引き継ぎ発足したJR旅客鉄道会社のうちの一つ[1]

旧国鉄四国総局の流れを汲み、四国地方を中心に855.2 kmの鉄道路線を有する。本社は香川県高松市。通称はJR四国(ジェイアールしこく)。コーポレートカラー水色。会社スローガンは「Always Railways」である[2]

概要

本州と四国を結ぶ本四備讃線が通る瀬戸大橋南備讃瀬戸大橋

旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律」(JR会社法)に拠る特殊会社である。JR旅客6社の中では最も規模が小さい。独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構国鉄清算事業本部(発足当初は日本国有鉄道清算事業団)が全株式を保有しており、現在までのところ株式上場の目処は立っていない。経営支援策として経営安定基金(2082億円、元本の使用はできない)を造成しており、固定資産税減免を受けている。

2011年6月、改正旧国鉄債務処理法により経営安定基金積み増し(20年後に返済)が行われた。鉄道・運輸機構から1,400億円が無利子貸付され鉄道・運輸機構の債券を購入(10年間は年率2.5%固定)することによって債券の利率を補助代わりに得る仕組みとなっている(債券の金利である年間35億が経常利益に含まれる)。同時に老朽化した設備更新のため、400億円の助成金および無利子貸付(1/2を助成金、1/2を無利子貸付)がおこなわれた。

発足当初の時点では、黒字路線は鉄道路線と自動車路線をすべて含めても自動車路線の松山高知急行線だけという状況であった[3]。その後、1988年の瀬戸大橋の開通効果などで売上げを伸ばし、四国内の高速道路の急速な整備に対抗して世界初の振子式気動車を投入するなど積極的なスピードアップ策を打ち出したものの、その後利用客は減少傾向が続いている。特に、明石海峡大橋開通後、そのメリットが最大限となる徳島県内からだけでなく、四国各地と京阪神方面を結ぶ高速バス路線が数多く開設され、順調に利用客を伸ばす中、瀬戸大橋線利用客の減少傾向が見られるようになる。そのため、新型車両の導入・既存車両のリニューアルや企画乗車券の発売などのてこ入れをしており、一定の効果が見られる。四国島内輸送についても、高速バス網の充実や少子高齢化の影響で減少傾向にある。また2009年3月から始まった高速道路料金のETC割引制度である休日特別割引の上限1,000円による打撃を受けている。

これに対応するため、様々な経費節減策を実施している。2009年10月以降、普通列車のワンマン運転が段階的に増やされており、2010年3月のダイヤ改正では快速マリンライナーを除く普通列車の半分以上がワンマン運転となった。さらに、民主党政権がマニフェストに掲げている高速道路無料化が実現した場合、年間での減収額が44億円になるという試算を2009年9月に発表した。公的補助などがなされなければ、運行の縮減や路線の見直しなども検討せざるを得ないとしている[4]。2010年1月にはJRグループでは初めて客室乗務員(アテンダント)として車掌業務に契約社員を当てることを発表した[5][6]。2010年4月26日に発表した2009年度の鉄道営業概況によると、鉄道収入は前年比10.3%減で、下げ幅は発足以来最大となった。松田清宏社長(当時)は高速料金割引の影響による減収を23億円程度と説明した[7]。2010年度の事業計画では、高速料金割引による減収が前年の2倍に拡大するという想定から、経常損益で22億円の赤字を見込んでいた[8]。2010年6月21日には経費節減のため、10月1日までに29駅を無人駅化することを発表した[9]。経営状況を理由に駅を無人化するのは民営化後初めて。2011年4月28日に発表された2010年度の決算では、連結経常損失は想定よりは減ったものの7億円(単体では14億円)を計上、旅客運輸収入は東日本大震災の影響で前年比0.5%の227億円となった[10]。同発表では2011年度も赤字決算を見込んでいたが[10]、国の経営支援措置により最終的には1億8500万円の経常利益を計上した[11]。ただし、鉄道収入ならびに売上高は前年に続き、東日本大震災などの影響で減少となった。

一方で、四国島外からの観光客呼び込みによる増収と沿線活性化も図っている。「伊予灘ものがたり」など観光列車を導入するとともに、2017年には地元4国立大学や、日本郵便四国支社と観光や沿線振興のための協定を相次ぎ結んだ[12][13]

バス(自動車)部門は2004年に分社化し「ジェイアール四国バス」として、バス部門の経営基盤と路線の強化を図っている(分社化前の1995年には、現在タクシー専業の「香川県交通」から貸切バス部門を譲り受け、香川県内エリアの貸切バス事業を強化している)。高速バスはJR四国グループにとっては鉄道に次ぐ主力事業として位置づけられており、順調に売上を伸ばしてきたが、こちらも2009年からは高速道路料金のETC休日特別割引の影響を受けている。2010年4月26日に発表した2009年度の営業概況では、運輸収入は前年比10%減となり、分社化以来初の減収となった[7]

鉄道事業以外にも通信販売事業を行っており、四国の特産物等を販売している[14]。事業開始当初は電話、FAXでの受注のみであったが、現在ではネット販売も行っている。他にも、2016年からは分譲マンション事業にも参入、高松市昭和町二丁目の自社社宅跡地で第1号物件となる「J.クレスト高松昭和町」を販売した(完売済み)。

また2018年には簡易宿泊施設「4S STAY」を、鉄道の営業エリア外である京都市を皮切りに展開を開始[15]。地元では宿泊特化型ホテル「クレメントイン高松」も開業する予定である。

JR旅客6社の中で唯一、独自のクレジットカードを発行していない。主要駅ではJR西日本の「J-WESTカード」の申込書を配布している。

JRグループ各社で唯一、社名のデザイン文字に通常の「鉄」の文字を使っている(他社は「鉃」〈「金」偏に「矢」〉)。 また、JRグループ各社で唯一社歌が存在しない。

IC乗車カードの導入

IC乗車カードの発行については、2002年2月に、「四国共通カード(仮称)」を2014年を目処に発行することで、高松琴平電気鉄道伊予鉄道土佐電気鉄道(当時。現・とさでん交通)と合意していた[16][17]。しかし、その後具体的な進展はみられなかった。JR四国の自社サイトには、当面IC乗車カードの導入予定はない、という見解が2010年12月当時も記されていた[18]。そのため2012年3月16日まで、JR旅客鉄道会社で唯一「Suica」などJR他社やそれと相互利用可能なIC乗車カードが一切使用できなかった。なお四国共通カードで合意していた他の3社は、高松琴平電気鉄道が「IruCa」(イルカ)、伊予鉄道が「ICい〜カード」、土佐電気鉄道が「ですか」という、各社それぞれのバスや鉄道で使えるIC乗車カードを発行している。

2010年5月25日に、新たに社長に就任することが決まった泉雅文専務(当時)は記者会見で、将来的にIC乗車カードの導入を進めたい考えを示し、「4 - 5年程度でセットしないといけないだろう」と述べた[19][20]

その後2011年6月に、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄建機構)の剰余金によるJR四国を含むJR関連4社への支援が盛り込まれた改正旧国鉄債務処理法が成立したのを受け、この支援を原資としたIC乗車カードの導入を検討すると報じられた[21]。これにあわせて2011年6月27日に、泉雅文社長(当時)は定例会見において、まずは香川地区から西日本旅客鉄道(JR西日本)の「ICOCA」あるいは東日本旅客鉄道(JR東日本)の「Suica」などと同様の形式のIC乗車カードを、2014年度までに導入することを検討する方針である、と表明した[22]

2011年9月26日にJR四国とJR西日本の両社は、2012年春に高松駅坂出駅の両駅と、ICOCAの岡山・福山エリア間で、ICOCAが利用可能となる予定と発表した(専用自動改札機の設置などの導入費用はJR西日本が負担)。

そして2012年3月17日より、高松駅にICOCA専用の自動改札機1台、坂出駅に入場用と出場用のICOCA専用の簡易改札機各1台を設置して、前述の通り両駅でICOCA(相互利用可能なSuicaTOICASUGOCAPiTaPaも、2013年3月23日以降はKitacaPASMOmanacanimocaはやかけんを追加)の利用が可能になった。ただし、この両駅ではチャージは専用チャージ機を各1台ずつ設置してSMART ICOCAのみ対応し、ICOCAは発売しない。また定期券の取り扱いも行わない。エリア面でも制約があり、両駅間にある香西駅 - 八十場駅の各駅では利用できない(この時点。後述の通り2014年から利用可能になる)。さらに両駅と、ICOCAの広島エリア(山陽本線本郷駅、呉線須波駅以西)を行き来することはできない[23][24][25]

なお、これに先立って、2012年2月1日より四国エリアのすかいらーくグループ各店に、また2月7日より四国エリアのローソン各店(約420店)に、それぞれICOCA電子マネーが導入された[26][27]。さらに2013年3月1日からは、四国地区のセブン-イレブン各店でも利用可能になった。

この時点で泉雅文社長は、高松・坂出両駅でICOCAを先行対応させた後に、2014年度までに独自のIC乗車カードを導入の上、「発行する独自のICカードは、JR5社や私鉄のカードと共通で使えるようにしたい」と表明していた[28]

その後、2012年7月30日にJR四国はJR西日本とともに、2014年春以降、予讃線の一部と瀬戸大橋線へICOCAを導入する予定であると発表した[29]。また、独自のICカードは導入しない予定であり、定期券の導入や対象駅の拡大は、導入後の利用状況を精査した上で検討するとしている[30]

2013年8月26日、JR四国とJR西日本は、2014年春に予讃線高松駅 - 多度津駅間と本四備讃線(瀬戸大橋線)児島駅 - 宇多津駅間でのサービス導入時に発売する四国地区用のオリジナルデザインICOCAカードの名称「SHIKOKU ICOCA」とデザインを発表した[31]。発表によると、「SHIKOKU ICOCA」には定期乗車券機能は付加されない。両区間でのサービスは2014年3月1日から開始された[32]

国土交通省は2015年7月15日に公表した「交通系ICカードの普及・利便性拡大に向けた検討会 とりまとめ」の中で、IruCa・ICい~カード・ですかを含む(相互利用対象外となっている)「地域独自カード」について、全国相互利用可能となっているICOCAを含む10カードの「片利用共通接続システム」を構築することで、相互利用可能10カードを独自カード導入交通機関で利用可能にすることを検討するとしており[33]、IruCaについては2018年3月3日より、琴電の電車区間において、全国相互利用ICカードの「片乗り入れ」による利用が導入された[34]

企業理念

四国とともに光り輝く。四国想いの「総合サービス企業」として。

歴代社長

歴代の四国旅客鉄道社長
代数 氏名 在任期間 出身校
初代 伊東弘敦 1987年 - 1998年 東京大学工学部
第2代 梅原利之 1998年 - 2004年 京都大学工学部
第3代 松田清宏 2004年 - 2010年 東京大学工学部
第4代 泉雅文 2010年 - 2016年 京都大学法学部
第5代 半井真司[35] 2016年 - 神戸大学工学部

歴史