土佐くろしお鉄道

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土佐くろしお鉄道株式会社(とさくろしおてつどう、: Tosa Kuroshio Tetsudo Co.,Ltd.)は、高知県で鉄道事業を行っている第三セクター方式の鉄道事業者である。本社は高知県四万十市中村駅に、登記上の本店は高知市の高知県庁に構える。

概要

高知県と沿線自治体で株式の9割以上を保有する自治体主導の第三セクター鉄道会社である。国鉄再建法の施行により工事が凍結された日本鉄道建設公団建設線の宿毛線及び阿佐西線(阿佐線〈ごめん・なはり線〉として開業)を引き受けるために設立されたが、後に第3次特定地方交通線に指定された中村線の運営も引き受けることとなった。

沿革

  • 1986年(昭和61年)
    • 2月8日:高知県が、阿佐・宿毛両線関係首長会議において、両線を一本化した第三セクターの設立について合意[1]
    • 5月8日:土佐くろしお鉄道株式会社設立(資本金4億4,000万円)[1]
    • 11月22日:第1回臨時株主総会を開催。日本国有鉄道(国鉄)中村線廃止転換後の運営引き受けを決定[1]
  • 1987年(昭和62年)
    • 2月5日:前年12月18日に申請していた宿毛線 宿毛 - 中村間の地方鉄道業免許が認可される[1][2]
    • 6月1日:資本金を5,900万円増資し、4億9,900万円とする[1]
    • 12月18日:同年12月3日に申請していた、中村線の第一種鉄道事業免許が認可される[1]
  • 1988年(昭和63年)
    • 1月28日:前年12月18日に申請していた、阿佐線 後免 - 奈半利間の第一種鉄道事業免許が認可される[1]
    • 4月1日:中村線 窪川 - 中村間開業[1]
  • 1989年平成元年)
    • 2月3日:中村駅旅行センターにて、旅行業事業開始[1]
    • 4月1日:消費税(税率3 %)導入に伴う運賃改定[1]
  • 1990年(平成2年)11月14日:自社発注による制御振子式特急形車両・2000系気動車が完成(4両)[1]
  • 1995年(平成7年)4月1日:運賃改定[1]
  • 1996年(平成8年)12月17日:列車集中制御所(中村駅制御所)運用開始[1]
  • 1997年(平成9年)
  • 1998年(平成10年)6月11日:中村線で立ち往生した列車に救援列車が追突する事故が発生。運輸省(現国土交通省)より警告書を出される。以後6月11日を「土佐くろしお鉄道 事故防止の日」に定め、毎年訓練を実施[3]
  • 2000年(平成12年)11月1日:運賃改定。通学定期旅客運賃および特別企画乗車券の割引率引き下げ[1]
  • 2002年(平成14年)7月1日:阿佐線(ごめん・なはり線)後免 - 奈半利間開業[1]
  • 2003年(平成15年)
    • 11月1日:nextstations、NPO砂浜美術館、大方町役場とのコラボ企画「ぶらぶら」実施[1]
    • 12月8日:中村線 荷稲駅 - 伊与喜駅間が土砂崩壊により不通に。
  • 2004年(平成16年)1月10日:中村線 荷稲駅 - 伊与喜駅間運転再開。
  • 2005年(平成17年)
  • 2006年(平成18年)
  • 2010年(平成22年)3月20日中村駅リノベーション工事完成(9月29日にグッドデザイン賞特別賞・中小企業庁長官賞、10月1日に国土交通省 日本鉄道賞 特別表彰 地方鉄道駅舎リノベーション賞を受賞)[1]

役員

社長

歴代の土佐くろしお鉄道社長
代数 氏名 在任期間 出身校 経歴 出典
中内力 1990年? 高知県立高知城東中学校 元高知県副知事
高知県知事(兼任)
岡村毅郎 1999年 - 2003年 東京大学法学部 日本国有鉄道四国総局長 [4]
新谷正雄 2003年 - 2005年6月28日 [5]
池田義彦 2005年6月29日 - 2011年6月2日 元近畿日本鉄道名古屋営業局次長
元メディアート社長
[5][6]
寺田敏春 2011年6月3日 - 2015年6月4日 京都大学大学院修士課程 元全日本コンサルタント社長
元近鉄軌道エンジニアリング社長
[6]
大原充雄 2015年6月5日 - 元高知県会計管理者兼会計管理局長 [7]

路線

下段は駅ナンバリングの頭文字

  • 中村線 : 窪川 - 中村(43.0km・第一種鉄道事業
  • 宿毛線 : 宿毛 - 中村(23.6km・第一種鉄道事業)
    上記2路線とも「土佐くろしお鉄道」(Tosa Kuroshio)からTK
  • 阿佐線(ごめん・なはり線) : 後免 - 奈半利(42.7km・第一種鉄道事業)
    愛称名の「ごめん・なはり線」からGN

中村・宿毛線とごめん・なはり線は起点駅基準で約75キロ離れており、両線区を直通運転する列車は2002年のごめん・なはり線開業時に団体列車が運行されて以来設定されておらず、車両の転属なども一切行われていなかったが、2017年11月に宿毛線開業20周年とごめん・なはり線開業15周年を記念して宿毛 - 奈半利間を結ぶ直通列車を運行することが決定した[8]

利用状況

年間の利用状況は以下の通り(全路線の合計)。

年度 輸送人員(千人) 平均輸送人員(人/日) 出典
定期券 定期外利用者 合計
2015 1,122 788 1,910 902 [9]
2016
2017

車両

海岸沿いの区間が多いことから防錆対策として、全車両ともステンレス車体となっている。オールステンレス車両は車両価格が高価なため、第三セクター鉄道の気動車に採用される例は少なく、土佐くろしお鉄道以外では智頭急行(特急車のみ)・伊勢鉄道井原鉄道阿佐海岸鉄道えちごトキめき鉄道[10]のみとなっている。

普通列車用車両は全てトイレつきである。

中村線・宿毛線用

土佐くろしお鉄道2000系2130(アンパンマン列車・オレンジ)
土佐くろしお鉄道2000系2030(宇野線 備中箕島-早島間、1990年11月)
土佐くろしお鉄道TKT-8000形8001 トンボ(中村駅、2010年5月27日)
土佐くろしお鉄道TKT-8000形8021 宝くじ号(窪川駅、2007年9月2日)

2000系

1990年に四国旅客鉄道(JR四国)2000系が登場し、相互直通運転が開始されたのに伴い、車両使用料の調整のためにJR保有車とほぼ同一仕様で新製した車両である。JR四国車との差異は、車番の十位が3であることと、2030の運転台側に電気連結器が残存(JR保有車からは撤去)していることである。運用管理全般をJR四国に委託しており、高知運転所に所属している。2000年にJR四国が土讃線に設定した「アンパンマン列車(ブルー)」が好評を博したため、翌2001年に土佐くろしお鉄道保有車4両にもラッピングを施し、「アンパンマン列車(ピンク)」とした。当初はJR四国車と共通で1両単位の運用を組んでいたが、「アンパンマン列車」となった後は全4両で1編成を組んだ編成単位の運用を行うようになった。なお、土讃線の「アンパンマン列車」は2009年9月頃にリニューアルされ、JR四国車が「グリーン」、土佐くろしお鉄道保有車が「オレンジ」になっている。「アンパンマン列車」のラッピングがされる前は、全車の側窓下に土佐くろしお鉄道のロゴマークのステッカーが、先頭車側面(トイレ部分)に高知県の鳥であるヤイロチョウのイラストタッチのステッカー(国民休暇県高知)が貼られていた。

TKT-8000形

1988年(昭和63年)の中村線転換開業に際して5両、1997年(平成9年)宿毛線開業時に2両、その後1999年(平成11年)に1両が投入された気動車である[11][12][13]。開業時に投入された5両とそれ以外ではエンジンなどが異なり[14]、最初の5両では新潟鐵工所製6H13ASディーゼルエンジンを183 kW(250 PS)に設定して、のちに製造された3両では新潟鐵工所製DMF13HZを242 kW(330 PS)に設定して採用した[15]。全車正面貫通式、両運転台、トイレあり[16]で、各車両に愛称がつけられている[11][12][13]。最後に製造された1両以外はセミクロスシート[16]、最後の1両はお座敷車としても使用できるイベント対応のロングシートである[17]2011年(平成23年)3月にイベント対応車を除く7両の外装が沿線自治体のラッピングに変更されている[18]

阿佐線用

土佐くろしお鉄道阿佐線用9640形9(土佐大津駅、2010年5月27日)
土佐くろしお鉄道阿佐線用9640形2S(後免町駅、2010年5月27日)

9640形

阿佐線開業に先立ち、2002年(平成14年)3月から製造された気動車である[19][20][21]。形式名「9640」は「くろしお」にちなんだものである[22]。同年3月に特別仕様車2両(9640-1S、2S)、一般車8両(9640-3 - 10)が製造[19]され、予備車確保のため2005年(平成17年)に1両(9640-11)が追加されている[23]第三セクター鉄道では製造者が準備した標準仕様に近いものを採用する事例が多かった[24]が、9640形は車体寸法、材質などが製造者の標準仕様と異なり、2002年(平成14年)製造の10両は5両ずつ富士重工業新潟鐵工所に発注されている[21][25][26]路線バス乗用車などの既存交通機関との対抗上四国旅客鉄道(JR四国)高知駅への乗り入れは必須と判断され、JR四国1000形と連結運転可能な性能をもっている[27]。全車エンジンなどの走行装置は共通で、小松製作所製SA6D140-H-1ディーゼルエンジンを331 kW(450 PS)に設定して採用した[27][28][29]。全車21 m級のステンレス製車体、正面貫通式、両運転台、トイレあり[25][26][30]だが、特別仕様車2両(1S、2S)はをイメージした流線型の先頭部をもち[22]、海側をオープンデッキ式の通路とした構造で、座席は転換クロスシート、一般車(3 - 10)は通常の平妻の車体で車内は御免寄りがロングシート、奈半利寄りが転換クロスシート[26]、2005年(平成17年)製の1両(11)はお座敷車として使用可能で、平妻車体、車内はロングシートとなっている[22]。開業時から高知駅乗入、JR四国1000形との併結運転が行われているほか、土讃線土佐山田駅まで乗り入れる運用にも使用されている[26]。特別仕様車のうち1両(9640-2S)とお座敷対応の1両(9640-11)は日本宝くじ協会の助成を受けた宝くじ号 [26][31]で、9640-11には「手のひらを太陽に号」の愛称がつけられている[31]

運賃

大人普通旅客運賃(小児半額・10円未満切り上げ)。2014年4月1日改定[32]

中村線・宿毛線
キロ程 運賃(円)
初乗り3km 170
4 - 6 210
7 - 9 250
10 - 12 330
13 - 15 400
16 - 18 470
19 - 21 540
22 - 24 620
25 - 27 700
28 - 30 770
31 - 35 870
36 - 40 980
41 - 45 1,090
46 - 51 1,200
52 - 57 1,330
58 - 63 1,460
64 - 67 1,600
阿佐線(ごめん・なはり線)
キロ程 運賃(円)
初乗り6km 250
7 - 12 400
13 - 19 550
20 - 27 710
28 - 35 910
36 - 43 1,070

阿佐線内で、隣り合う駅までの運賃は、上の表にかかわらず210円である。

身体障害者手帳療育手帳および精神障害者保健福祉手帳の提示により運賃が割引になる。

料金

大人特急料金(小児半額・10円未満切り上げ)。2014年4月1日改定[32]。特急列車の普通車を利用の場合は乗車券・特急券が必要。

中村線・宿毛線のみ
キロ程 指定席(円) 自由席(円)
初乗り25km 520 310
26 - 50 620 410
51 - 67 830 620

大人グリーン料金(小児同額)。2014年4月1日改定[32]。特急列車のグリーン車を利用の場合は乗車券・指定席特急券(この場合の料金は自由席特急券と同額)・グリーン券が必要。

中村線・宿毛線のみ
全線均一820円。小児同額。

脚注

  1. 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 1.11 1.12 1.13 1.14 1.15 1.16 1.17 1.18 1.19 1.20 1.21 沿革(企業情報)”. 土佐くろしお鉄道. 2012年5月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2013閲覧.
  2. 鉄道ジャーナル』第21巻第6号、鉄道ジャーナル社、1987年5月、 104頁。
  3. 3.0 3.1 安全報告書 2016 (PDF) - 土佐くろしお鉄道
  4. 高知新聞2016年6月24日
  5. 5.0 5.1 高知新聞2005年6月10日
  6. 6.0 6.1 毎日新聞2011年5月25日
  7. 別添 再就職の状況(総括表・一覧表) - 高知県公式ホームページ
  8. 宿毛線開通20周年 ごめん・なはり線15周年特別企画 中村・宿毛線 ごめん・なはり線直通太平洋横断列車の旅 土佐くろしお鉄道公式サイト
  9. 鉄道の輸送実績の推移 2.民鉄の事業者別輸送実績(平成27年度) - 四国運輸局、2016年10月27日閲覧
  10. えちごトキめき鉄道は全線電化されているが、旧北陸本線にあたる日本海ひすいラインは輸送密度が低いことと交直流電車を導入・維持するコストを配慮して気動車を導入している。
  11. 11.0 11.1 『新車年鑑1989年版』p147
  12. 12.0 12.1 『新車年鑑1998年版』p99
  13. 13.0 13.1 『新車年鑑2000年版』p118
  14. 『鉄道ピクトリアル』通巻658号p34
  15. 『レイルマガジン』通巻230号付録p25
  16. 16.0 16.1 『鉄道ピクトリアル』通巻658号p53
  17. 『新車年鑑2000年版』p154
  18. 『鉄道車両年鑑2011年版』p153
  19. 19.0 19.1 『レイルマガジン』通巻250号p43
  20. 『私鉄気動車30年』p135
  21. 21.0 21.1 『鉄道車両年鑑2002年版』p199
  22. 22.0 22.1 22.2 『私鉄気動車30年』p137
  23. 『鉄道車両年鑑2005年版』p112
  24. 『鉄道ピクトリアル』通巻658号p43
  25. 25.0 25.1 『鉄道車両年鑑2003年版』p175
  26. 26.0 26.1 26.2 26.3 26.4 『鉄道車両年鑑2003年版』p176
  27. 27.0 27.1 『鉄道車両年鑑2003年版』p174
  28. 『鉄道車両年鑑2003年版』p180
  29. 『鉄道ピクトリアル』通巻905号p22
  30. 『鉄道車両年鑑2005年版』p183
  31. 31.0 31.1 『鉄道車両年鑑2005年版』p182
  32. 32.0 32.1 32.2 消費税率引き上げに伴う運賃等の改定について (PDF) - 土佐くろしお鉄道、2014年1月23日(2014年4月9日閲覧)

参考文献

書籍

雑誌記事

  • 鉄道ピクトリアル』通巻512号「新車年鑑1989年版」(1989年5月・電気車研究会
    • 藤井 信夫・大幡 哲海・岸上 明彦「各社別車両情勢」 pp. 93-123
    • 土佐くろしお鉄道(株)運輸部長 岡 泰弘「土佐くろしお鉄道 TKT-8000形」 pp. 197
    • 「民鉄車両諸元表」 pp. 230-232
    • 「竣工月日表」 pp. 232-242
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻658号「<特集> レールバス」(1998年9月・電気車研究会)
    • 「第三セクター・私鉄向け 軽快気動車の発達 新潟鉄工所 NDC」 pp. 32-35
    • 高嶋修一「第三セクター・私鉄向け軽快気動車の系譜」 pp. 42-55
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻723号「鉄道車両年鑑2002年版」(2002年10月・電気車研究会)
    • 「2001年度車両動向」 pp. 190-200
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻738号「鉄道車両年鑑2003年版」(2003年10月・電気車研究会)
    • 岸上 明彦「2002年度民鉄車両動向」 pp. 109-130
    • 土佐くろしお鉄道(株)安芸運行本部運転車両課検修係 小松 和紀「土佐くろしお鉄道 ごめん・なはり線用9640形」 pp. 174-176
    • 「民鉄車両諸元表」 pp. 180-183
  • 『レイルマガジン』通巻250号(2004年7月・ネコ・パブリッシング)
    • 寺田 祐一「私鉄・三セク気動車 141形式・585輌の今!」 pp. 4-50
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻767号「鉄道車両年鑑2005年版」(2005年10月・電気車研究会)
    • 岸上 明彦「2004年度民鉄車両動向」 pp. 116-141
    • 土佐くろしお鉄道(株)安芸運行本部運転車両課検修係 小松 和紀「土佐くろしお鉄道 ごめん・なはり線用9640形増備車(お座敷対応車)」 pp. 182-183
    • 「民鉄車両諸元表」 pp. 186-191
    • 「各社別新造・改造・廃車一覧」 pp. 214-239
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻855号「鉄道車両年鑑2011年版」(2011年10月・電気車研究会)
    • 岸上 明彦「2010年度民鉄車両動向」 pp. 123-154
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻905号「【特集】 ディーゼルカー」(2015年7月・電気車研究会)
    • 「近年における気動車の技術動向」 pp. 21-27

関連項目

外部リンク