小野不由美

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小野 不由美(おの ふゆみ、1960年12月24日 - )は、日本小説家同人作家。女性。

大分県中津市出身、京都市在住。血液型はO型。夫は推理作家綾辻行人。代表作はテレビアニメ化された『悪霊シリーズ』、『十二国記シリーズ』、『屍鬼』。

経歴

1960年昭和35年)12月24日大分県中津市に生まれる[1][2][3]。父親は設計事務所を経営し、幼いころから図面に馴染みがあり、長じて建物に対する興味が湧く。また、出身地には怪奇伝説や伝承が多く、幼少期から両親にせがんで怪奇話を聞く[4]1976年大分県立中津南高等学校に入学。アニメーション&漫画研究部を設立、初代会長を務めた。

1979年大谷大学文学部仏教学科に入学する[5]。在学中に京都大学推理小説研究会に所属する。当時のペンネームは宇野冬美。同時期の部員には、後に小説家となる綾辻行人法月綸太郎我孫子武丸がいる。1986年、部員仲間の綾辻行人と学生結婚する。同年、大学を卒業。大学院に在籍するも、学資が尽き自主退学[6]。目標を見失うが、大学時代に書いた小説を読んだ編集から小説を書かないかと誘われる[6]。それまで小説家になろうと積極的に考えたことはなかったという[6]1988年、『バースデイ・イブは眠れない』で講談社X文庫ティーンズハートからデビューする。1989年悪霊シリーズ第1作『悪霊がいっぱい!?』を発表。足掛け5年つづく人気シリーズとなり、後にコミック化、テレビアニメ化された。1992年、十二国記シリーズの第1作『月の影 影の海』を発表。著者の代表作となるが2016年現在も未完。

1993年、『東亰異聞』が第5回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作になる。後に新潮社より刊行。1996年、『図南の翼』が「本の雑誌」のベスト10に選出。北上次郎が週刊誌の書評欄で絶賛するなど、少女小説の範疇を越えて注目を集める[4]1998年、原稿用紙3500枚の大作である『屍鬼』を発表。ベストセラーとなり、世間に広く名が知られるようになる。1999年、『屍鬼』が第12回山本周五郎賞日本推理作家協会賞の候補作になる。2010年、悪霊シリーズが、メディアファクトリーより『ゴーストハント』として刊行スタートする。全面的に改稿され、題名も変更された。2012年、『十二国記』が、新潮文庫に版元を変えて刊行スタートする。一部テキストにも手が加えられている。2013年6月には、12年ぶりのシリーズ最新作となる短篇集『丕緒の鳥』が出版される。書き下ろしの新作も続刊。講談社版とあわせて約800万部のベストセラーとなる[7]2013年5月、『残穢』で第26回山本周五郎賞を受賞する[8]

作風

  • ホラー的な要素を強めた本格ミステリーや、山海経の伝説や妖怪の世界と併せて、中国古代史に範を取った重厚な世界観を構築するハイ・ファンタジー、十二国記シリーズがある。
  • 十二国記シリーズは、新潮社で『魔性の子』を書いたときに、背景となる想定世界として作られ、地図や年表、図表なども作っていた[4]。それをファンタジーを書くことを提案した講談社編集者に話したところ、小説化するように勧められ、結果として好評でシリーズが生まれた。本編としては、あと長編1冊で完結する[4]
  • 『残穢』では、ドキュメンタリー・ホラーに踏み込み、ルポルタージュ文体で書き、山本周五郎賞を受賞した。選考会では、「今まで読んだ小説の中で一番怖い」、「手元に本を置いておくことすら怖い」(唯川恵)と高い評価を受けた[9]
  • 小説の執筆は、きっかけはあっても、他者の作品のシーンや好きな話に触発されたり、その話や構成を自己展開するなど、技術を駆使して作品の形にしている。小説の技術論が日本では確立していないと思っている。技術的にすごいので、藤沢周平篠田節子を尊敬している。物語を主軸にしてキャラクターは「記号」「パーツ」として扱うが、少しは共感しないと作品内で存在できず、こちらから歩み寄るようにしている。文章を書くのに、「不必要に言葉を省略しないこと」、「言葉の意味を共有するために辞書に載っている意味通りに言葉を使う」、「多くの資料をあたる」ようにしている。また、後継者育成のシステムがないと心配し、なるべく若い相談者の作品を読む。[10]
  • ミステリを好み、ファンタジーは小説の依頼を受けて初めて入ったが、あまり読まない[6]ディーン・R・クーンツスティーヴン・キングの大きな影響がある。アーサー・ランサムJ・R・R・トールキンにも影響を受けている。作品ではロジャー・ゼラズニイ真世界アンバーシリーズを愛読した[10]。また、C.S.ルイスナルニア国ものがたり』も自身のファンタジーの理想形の形成に大きく寄与している[6]

エピソード

  • デビュー以来、基本的に人前には出ず顔写真も公開していない。山本周五郎賞を受賞した際も、会見は行わず電話インタビューのみだった[7]。講演も1999年11月9日の母校である大谷大学仏教学会の「仏教学部卒業生はいま - 作家になった小野不由美さんの場合」のみである[11]。雑誌「ダ・ヴィンチ」の特集インタビューで着物を着た後姿が掲載された[4]。「波」1998年9月号の京極夏彦との対談では、俯いて顔を隠した写真が掲載されている。
  • 竹本健治『ウロボロスの基礎論』で 小野不由美は同作品の登場人物の1人になった(1994年、「メフィスト」8月増刊号)。
  • テレビゲームにはまった時期があり、関連著書もある[12]

関連人物

文学賞受賞歴・候補歴

ミステリ・ランキング

著作

小説

  • バースデイ・イブは眠れない(1988年9月 講談社X文庫ティーンズハート
  • メフィストとワルツ!(1988年12月 講談社X文庫ティーンズハート) - 『バースデイ・イブ…』の続編。
  • 悪霊なんかこわくない(1989年1月 講談社X文庫ティーンズハート)
  • 悪霊シリーズ(講談社X文庫ティーンズハート) → ゴーストハント(メディアファクトリー【改作】単行本全7巻)
    • 悪霊がいっぱい!?(1989年7月 講談社X文庫ティーンズハート)
      • 【新装版】ゴーストハント1 旧校舎怪談(2010年11月 メディアファクトリー)
    • 悪霊がホントにいっぱい!(1989年10月 講談社X文庫ティーンズハート)
      • 【新装版】ゴーストハント2 人形の檻(2011年1月 メディアファクトリー)
    • 悪霊がいっぱいで眠れない(1990年2月 講談社X文庫ティーンズハート)
      • 【新装版】ゴーストハント3 乙女ノ祈リ(2011年3月 メディアファクトリー)
    • 悪霊はひとりぼっち(1990年8月 講談社X文庫ティーンズハート)
      • 【新装版】ゴーストハント4 死霊遊戯(2011年5月 メディアファクトリー)
    • 悪霊になりたくない!(1991年2月 講談社X文庫ティーンズハート)
      • 【新装版】ゴーストハント5 鮮血の迷宮(2011年7月 メディアファクトリー)
    • 悪霊とよばないで(1991年9月 講談社X文庫ティーンズハート)
      • 【新装版】ゴーストハント6 海からくるもの(2011年9月 メディアファクトリー)
    • 悪霊だってヘイキ!【上・下】(1992年8月・9月 講談社X文庫ティーンズハート)
      • 【新装版】ゴーストハント7 扉を開けて(2011年11月 メディアファクトリー)
    • 悪夢の棲む家 ゴースト・ハント【上・下】(1994年3月・4月 講談社X文庫ホワイトハート
  • 呪われた十七歳(1990年7月 朝日ソノラマ パンプキン文庫 - イラスト:生嶋 美弥)
    • 【改題】過ぎる十七の春(1995年4月 講談社X文庫ホワイトハート - イラスト:波津 彬子)
    • 【新装版】過ぎる十七の春(2016年3月 講談社X文庫ホワイトハート - イラスト:樹 なつみ)
  • グリーンホームの亡霊たち(1990年11月 朝日ソノラマ パンプキン文庫 - イラスト:生嶋 美弥)
    • 【改題】緑の我が家 Home, Green Home(1997年6月 講談社X文庫ホワイトハート - イラスト:山内 直実)
    • 【新装版】緑の我が家 Home, Green Home(2015年8月 講談社X文庫ホワイトハート - イラスト:樹 なつみ)
  • 十二国記
    • 魔性の子(1991年9月 新潮文庫 / 2012年7月 新潮文庫【完全版】) - 「十二国記」前日譚という位置づけ
    • 月の影 影の海(1992年6月・7月 講談社X文庫ホワイトハート【上・下】 / 2000年1月 講談社文庫【上・下】 / 2012年7月 新潮文庫【上・下】)
    • 風の海 迷宮の岸(1993年3月・4月 講談社X文庫ホワイトハート【上・下】 / 2000年4月 講談社文庫 / 2012年10月 新潮文庫【上・下】)
    • 東の海神 西の滄海(1994年5月 講談社X文庫ホワイトハート / 2000年7月 講談社文庫 / 2013年1月 新潮文庫)
    • 風の万里 黎明の空(1994年7月・8月 講談社X文庫ホワイトハート【上・下】 / 2000年10月 講談社文庫【上・下】 / 2013年4月 新潮文庫【上・下】)
    • 図南の翼(1996年2月 講談社X文庫ホワイトハート / 2001年1月 講談社文庫 / 2013年10月 新潮文庫)
    • 漂舶(1997年6月 講談社X文庫ホワイトハート - 「ドラマCD 東の海神 西の滄海」付録)
    • 黄昏の岸 暁の天(2001年5月 講談社X文庫ホワイトハート【上・下】 / 2001年4月 講談社文庫 / 2014年4月 新潮文庫)
    • 華胥の幽夢(2001年9月 講談社X文庫ホワイトハート / 2001年7月 講談社文庫 / 2014年1月 新潮文庫)
    • 丕緒の鳥(2013年7月 新潮文庫)
  • 倫敦、1888(1994年3月) - アンソロジー『架空幻想都市【上】』(ログアウト冒険文庫)収録
  • 東亰異聞(1994年4月 新潮社 / 1999年5月 新潮文庫)
  • 屍鬼(1998年9月 新潮社【上・下】 / 2002年2月・3月 新潮文庫【1 - 5】)
  • 黒祠の島(2001年2月 祥伝社 ノン・ノベル / 2004年6月 祥伝社文庫 / 2007年7月 新潮文庫)
  • くらのかみ(2003年7月 講談社〈ミステリーランド〉)
  • 鬼談百景(2012年7月 メディアファクトリー / 2015年7月 角川文庫)
  • 残穢(2012年7月 新潮社 / 2015年7月 新潮文庫)
  • 営繕かるかや怪異譚(2014年12月 KADOKAWA
  • 怪談えほん(10) はこ(2015年5月 岩崎書店 - nakaban(絵)、東 雅夫(編))

エッセイ

  • ゲームマシンはデイジーデイジーの歌をうたうか(1996年3月 ソフトバンククリエイティブ、1992年 - 1996年 「Theスーパーファミコン」)- 単行本の挿絵・イラストエッセイと対談相手は水玉螢之丞
  • 小野不由美&菅浩江スペシャル・メールエッセイ(1994年、『小説あすか』)
  • 小野家の家訓(1994年、『小説現代』11月号)
  • 陰謀かもしれない(2000年、『IN★POCKET』1月号)
  • 隅っこの人(2002年、角川書店刊、『綾辻行人 ミステリ作家徹底解剖』に収録)
  • 鮎川哲也」を偲んで(2002年、東京創元社山前譲編『本格一筋六十年、 思い出の鮎川哲也』に収録)
  • すべての本を一列に並べよ (2006年、『yom yom』vol.1)

作品解説

その他

  • 装画
    • 綾辻行人『霧越邸殺人事件』(1990年、新潮社)
  • 図面作成
    • 綾辻行人『霧越邸殺人事件』『暗黒館の殺人』
    • 竹本健治『眠れる森の惨劇』
    • 笠井潔『オイディプス症候群』
  • 漫画原作

同人誌

以下のように同人作家としても活動している。

  • 小野不由美ファンクラブ
    • 『悪霊になりたくない!』のあとがきでファンクラブができたと記載されたが、初期に問い合わせた読者しか入会できなかった。オフィシャルファンクラブと認定をしない代わりに小野不由美自身もファンクラブに参加。作品やキャラクター作成の裏話等をファンクラブ代表がインタビュー形式や設問形式で会報に掲載していた。1991年1月 - 1992年9月に創設号 - NO.15、解散時に記念として同人誌が1冊、便箋2種、テレホンカードが発行された。
  • 京都私設情報局
    • 小野不由美のファンクラブを創設するも落選者が多数生じたため、代わりに情報ペーパーを発行することになった。1992年 - 1997年、に0号 - 15号が発行された。悪霊シリーズや十二国記シリーズの短編が掲載され、同人誌「中庭同盟」にまとめられている。
  • 「中庭同盟」
    • 国会図書館収蔵が確認されている[13]
    • いちばん見えない横顔(悪霊シリーズ)
    • 白いカラスのための告悔(悪霊シリーズ)
    • GENKI(悪霊シリーズ)
    • 千年の王国(悪霊シリーズ)
    • 彼の現実(悪霊シリーズ)
    • 衛星の軌道(悪霊シリーズ)
    • The Green Home(悪霊シリーズ)
    • Eugene(悪霊シリーズ)
    • 書簡(十二国記シリーズ)
    • 函丈(十二国記シリーズ)
  • 麒麟都市
    • 小野不由美オンリーイベントを記念して発行された同人誌に寄稿したもの
      • 帰山(十二国記シリーズ)

メディア・ミックス

漫画

テレビアニメ

映画

舞台

ラジオドラマ

CD

ゲーム

関連図書

  • 『小野不由美ゴーストハント読本』幽BOOKS、「ゴーストハント」編集委員会 編(2013年7月 メディアファクトリー)

脚注

  1. ニュースリリース | 角川書店 | KADOKAWA
  2. 典拠詳細 立川市図書館
  3. 小野不由美とは - コトバンク
  4. 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 「ダ・ヴィンチ」2012年9月号「特集 小野不由美」
  5. 大谷大学広報 2004 春
  6. 6.0 6.1 6.2 6.3 6.4 Fuyumi Ono, Author of The Twelve Kingdoms Mar 18th 2007 Anime News Network
  7. 7.0 7.1 読売新聞 2013年5月28日「山本周五郎賞に小野不由美さん」2013年7月22日閲覧
  8. 第26回山本周五郎賞|新潮社”. . 2013-5-16閲覧.
  9. 「小説新潮」2013年7月号第26回 山本周五郎賞 決定発表2013年7月22日閲覧
  10. 10.0 10.1 1999年大谷大学仏教学会の講演会発言
  11. 大谷学会『大谷學報』2000年9月第79巻第4号022彙報(終了後の掲載)
  12. 『ゲームマシンはデイジーデイジーの歌をうたうか』1996年3月 ソフトバンククリエイティブ
  13. 「読書メーター」「中庭同盟」閲覧証言] 2018年4月20日web.archive差し替え 2013年7月22日閲覧
  14. 竹内結子“怖すぎるホラー”で橋本愛と初共演!中村義洋監督とは5度目のタッグ”. 映画.com (2015年6月20日). . 2015閲覧.

外部リンク