強制わいせつ罪

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強制わいせつ罪
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法律・条文 刑法176条
保護法益 性的自由
主体
客体
実行行為 わいせつ行為
主観 故意犯
結果 結果犯、侵害犯
実行の着手 -
既遂時期 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした時点
法定刑 6ヶ月以上10年以下の懲役
未遂・予備 未遂罪(第180条)
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強制わいせつ罪(きょうせいわいせつざい)は、刑法176条に規定されている犯罪である。

概説

強制わいせつ罪(刑法176条)については性的自由に対する罪(個人的法益に対する罪に分類される)として位置づけられ[1][2]強制性交等罪とその罪質の多くを共有する。強制性交等罪と異なるのは、強制わいせつ罪の行為が「わいせつな行為」である一方で、強制性交等罪は「性交肛門性交又は口腔性交(「性交等」)」であることである[3]罪数を観念するとき、法条競合の特別関係にあたり、性交等の故意が認められれば、強制わいせつは評価されず、強制性交等罪のみで評価されることから、強制性交等罪は強制わいせつ罪の特別法の関係にあるともいえる。

刑法第176条の「わいせつ」について、判例は「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」とされる(名古屋高裁金沢支判昭和36年5月2日下刑集3巻5=6号399頁)。ただし、本罪の罪質は性的自由に対する罪であるので、性的感情の罪として分類される公然わいせつ罪等でいう「わいせつ」概念とはその内容の点においては異なるとみるのが通説である[4]。下級審にはキスをする行為について強制わいせつ罪の成否が問題となった事例において「すべて反風俗的のものとし刑法にいわゆる猥褻の観念を以て律すべきでないのは所論のとおりであるが、それが行われたときの当事者の意思感情、行動環境等によつて、それが一般の風俗道徳的感情に反するような場合には、猥褻な行為と認められることもあり得る」とした判例がある(東京高決昭和32年1月22日高刑集10巻1号10頁)。

犯罪類型

強制性交等罪
強姦罪および強制わいせつ罪を併合して非親告罪化
準強制性交等罪
準強姦罪および準強制わいせつ罪を併合して非親告罪化
監護者性交等罪
保護者などが監護者としての影響力により18歳未満の子に強制性交等罪に該当する行為をした場合の加重罰
監護者わいせつ罪
保護者などが監護者としての影響力により18歳未満の子に強制わいせつ罪に該当する行為をした場合の加重罰
強盗・強制性交等罪
強盗強姦罪などから強盗行為が後か先かによる分類の廃止
集団強姦罪・集団準強姦罪等の集団による犯罪を厳罰化に伴い一般犯罪に併合。

強制わいせつ罪

13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6ヶ月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする(刑法第176条)。

準強制わいせつ罪

人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による(刑法第178条1項)。未遂はこれを罰する(刑法第180条)。

強制わいせつ致死傷罪

強制わいせつ致死傷罪は、強制わいせつ罪又はその未遂罪を犯し、よって人を死傷させる罪で、強制わいせつ罪の結果的加重犯である(刑法第181条1項)。法定刑は無期又は3年以上の懲役である。

脚注

  1. 西田典之 『刑法各論』 弘文堂(1999年)84頁
  2. 林幹人 『刑法各論 第二版』 東京大学出版会(1999年)91頁
  3. 「強制性交等罪」は、「強姦罪」を平成29年に構成要件を拡大し改正されたものであり、改正前、強姦罪を構成する行為は「姦淫」とされ、その結果、強姦罪の客体は女性に限られるのに対して、強制わいせつ罪の客体は性別の制限はないと解されていた。
  4. 団藤重光 『刑法綱要各論 第三版』 創文社(1990年)490頁

関連項目