敷金

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敷金(しききん)は、法律用語で、不動産賃貸借の際、賃料その他賃貸借契約上の債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する停止条件付返還債務を伴う金銭である。

賃貸借契約が終了する場合には、賃借人に債務不履行がなければ明け渡し時に返還され、本来預り金的性格を有する一時金である。ただし、近畿地方以西の西日本では権利金(礼金)の性質を持ち、一部(多くは賃料の1ヶ月分)が返還されないことが多い。これを敷引と呼ぶ。敷引等は「権利金」「礼金」と同様の「賃料の前払的性格」を有するものである(『新・要説不動産鑑定評価基準』p.196~197)。

承継

賃貸借期間中に賃貸人が交代したとき、敷金に関する権利義務は新賃貸人に承継されるか。

  • 目的物の譲渡による場合 - 承継される。借地借家法により借家権を新所有者に対抗できるため(最判昭和44年7月17日民集23巻8号1610頁)。
  • 賃貸借に優先する抵当権の実行としての競売による場合 - 承継されない。借家権を対抗できないため。なお6ヶ月間の明渡猶予制度(民法395条)に留意する。
2003年の民法改正(平15法134)により短期賃貸借制度が廃止され、上記の通りとなった。本改正により創設された抵当権者の同意登記制度(民法387条)を利用することにより、抵当権設定登記後の不動産の賃貸借についても対抗力を付与することが可能となる[1]

賃借人の原状回復義務との関係

国土交通省の『原状回復をめぐるガイドライン』では賃借人に通常損耗等の修繕負担の義務を課す特約がなく[1]、入居者の故意、または不注意や過失による毀損、汚損等でなければ(通常損耗ならば)、入居者は修繕の負担義務(原状回復義務)はないという考え方を示している。これはこれまでの各種判決など[2]を総合してつくられたガイドラインであり、現在はこれを基礎に敷金精算を行うこととされている。[3]

賃借人に修繕負担の義務が無いとされる通常損耗の例
  • 畳の変色、フローリングの色落ち(日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの。しかし雨漏りの場合、賃借人が賃貸人への通知義務を怠っていた場合は除く)。
  • 通常による家具設置による床、カーペットのへこみ、設置跡(契約書などでへこみ、跡がつかないように板などを置くように特約をしている場合等を除く)。
国土交通省『通常消耗一般的例示』
関連ニュース

脚注

  1. 最一小判平成23年3月24日判例この判決では、明確に契約書にて賃借人の負担分を明示した上で、通常損耗等を賃借人の負担とする特約を認め敷金からその負担分を差し引き敷金を精算する事を命じている。
  2. 最二小判平成17年12月16日判例この判決では、賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものであるとした上で、通常損耗を賃借人の負担とする特約について成立要件を厳しく設定し、未返還分の敷金を返還することを命じている。なお、下級審で消費者契約法により同様の特約の成立を否定した事例も存在する(国民生活センターによる解説)。
  3. 国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』

参考文献

テンプレート:鑑定要説

関連項目

外部リンク