日雇い

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日雇い(ひやとい)とは、雇用形態のひとつ。一日限りの有期労働契約で雇うこと。または、その雇われる人。法律上は、これより広い意味で用いられることもある[1]。「ニコヨン」などの俗称がある[2]テンプレート:日本の雇用者

日雇い労働者に対する法の適用

労働基準法

労働基準法では一般の労働者と日雇い労働者を特に区別していない。日々、雇い入れられる労働者の労働契約は、日々更新されると否とにかかわらず、明示的または黙示的に同一人を引き続き使用している場合は、社会通念上継続した労働関係が成立していると認められる。即ち、労働関係が継続しているものと客観的に判断されるが如き常用的状態にある日雇い労働者については、原則として期間を以て定められた労働条件に関する規定も就業規則その他で別段の定めなき限り、当該事業場における他の一般労働者と同様に適用があることは当然である。もっとも、継続した労働関係を有しない純然たる日雇い労働者については、日々の労働条件に関する規定のみが適用できて、期間を以て定められた労働条件に関する規定は適用の余地がない(昭和23年12月27日基収4296号)。

ただし、以下の規定については、「日々雇用される者」についての特則がある。

  • 平均賃金の算定に当たっては、その従事する事業又は職業について、厚生労働大臣の定める金額を平均賃金とする(労働基準法第12条7項)。具体的な計算方法は平均賃金#日々雇用の平均賃金を参照。
  • 労働基準法第20条に定める解雇予告の規定は、日々雇用される者に対しては適用しない。ただしこれに該当する者が1ヶ月を超えて引き続き使用されるに至った場合は、この限りでない(労働基準法第21条)。
    • 「1ヶ月」は、労働日のみならず、休日を含む暦月のことを指す。休日以外に当該事業場の業務に従事しない日が多少あっても1ヶ月間継続して労働したという事実を中断するものではない。労働しない日数が1ヶ月間中幾日あれば継続勤務の事実を中断するかということは、具体的な事情により判断する(昭和24年2月5日基収408号)。
  • 日日雇い入れられる者については、労働者名簿の調製は不要である(労働基準法第107条)。
    • 一方、同じく法定帳簿とされる賃金台帳(労働基準法第108条)については日日雇い入れられる者についても調製が必要であるが(一般の労働者は様式第20号、日日雇い入れられる者は様式第21号と異なる様式が用意されている)、項目中「賃金計算期間」は日日雇い入れられる者については記入するを要しない(労働基準法施行規則第54条4項)。

男女雇用機会均等法

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)は、雇用形態による労働者の区別をしていないため、一般の労働者・日雇労働者を問わずすべての労働者に適用される

育児介護休業法

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)では、育児休業介護休業の定義において労働者を「日々雇用される者を除く」としている(育児介護休業法第2条1号、2号)。そのため、事業所の就業規則等に特段の定めがない限り、日雇労働者は育児休業・介護休業及び同法に定める所定労働時間短縮等の措置を取得することはできない。

  • ここでいう「日々雇用される者」とは、とは、1日単位の労働契約期間で雇われ、その日の終了によって労働契約も終了する契約形式の労働者である。長期的な休業となり得る育児休業・介護休業の性質になじまない雇用形態の労働者であることから、対象となる労働者から除くこととしたものである。なお、労働契約の形式上日々雇用されている者であっても、当該契約が期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となっている場合には、実質的に期間の定めのない契約に基づき雇用される労働者であるとして育児休業・介護休業の対象となるものである(平成28年8月2日職発0802第1号、雇児発0802第3号)。

パートタイム労働法

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)では、同法の対象となる労働者を「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い労働者」(第2条)としているが、日雇労働者のように1週間の所定労働時間が算出できないような者は、同法の対象とならない。ただし、日雇契約の形式をとっていても、明示又は黙示に同一人を引き続き使用し少なくとも1週間以上にわたる定形化した就業パターンが確立し、1週間の所定労働時間を算出することができる場合には、同法の対象となる(平成26年7月24日基発2号)。

労働保険

労働者災害補償保険

労働者災害補償保険は、適用事業に使用される労働基準法上の労働者であれば、一般の労働者・日雇労働者を問わずすべての労働者に適用される。保険給付についても区別はない。

雇用保険

雇用保険において「日雇労働者」とは、次のいずれかに該当する労働者(前2月の各月において18日以上同一の事業主の適用事業に雇用された者及び同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用された者(公共職業安定所長の認可を受けた者を除く)を除く)をいう(雇用保険法第42条)。

  • 日々雇用される者
  • 30日以内の期間を定めて雇用される者

日雇労働者のうち、所定の要件を満たした者は日雇労働被保険者となる。日雇労働被保険者を主な対象とした失業等給付は、日雇労働求職者給付金である。また、移転費求職支援活動費教育訓練給付金(一般被保険者・高年齢被保険者でなくなった日から原則1年以内に限る。雇用保険法施行規則第101条の2の3)・常用就職支度手当を受給できる場合がある。また雇用保険二事業の利用も可能である。

社会保険

医療保険

健康保険において「日雇労働者」とは、以下のいずれかに該当する者をいう(健康保険法第3条8号)。一般の被保険者としての適用を除外されている者の一部が該当する。

  • 臨時に使用される者であって、日々雇い入れられる者(同一の事業所において1月を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)。
    • 「1月」の計算においては、事業所の公休日は労務に服したものとみなして計算する。
  • 臨時に使用される者であって、2月以内の期間を定めて使用される者(同一の事業所において、所定の期間を超え、引き続き使用されるに至った場合を除く)。
  • 季節的業務に使用される者(継続して4月を超えて使用されるべき場合を除く)。
  • 臨時的事業の事業所に使用される者(継続して6月を超えて使用されるべき場合を除く)。

原則として、適用事業所に使用される日雇労働者は、健康保険の「日雇特例被保険者」となる。日雇特例被保険者に対する保険給付は、一般の被保険者と一部異なるところがある。

船員保険においては、日雇労働者を適用除外としていないため、船員船員法第1条に規定する「船員」)として船舶所有者に使用される日雇労働者は雇い入れの当初から船員保険の被保険者となる。

厚生年金

日雇労働者は厚生年金に加入できない。厚生年金と健康保険は通常セットで手続きされるものであるが、健康保険法における「日雇労働者」は厚生年金ではそのまま適用除外となるためである(厚生年金保険法第12条)。

ただし同条において「船舶所有者に使用される船員を除く」としていているため、船員として船舶所有者に使用される日雇労働者は雇い入れの当初から厚生年金の被保険者となる。

労働者派遣法

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)において「日雇労働者」とは、「日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者」をいう(労働者派遣法第35条の4)。

2012年10月の改正法施行による同条において、「派遣元事業主は、その業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務のうち、労働者派遣により日雇労働者を従事させても当該日雇労働者の適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務として政令で定める業務について労働者派遣をする場合又は雇用の機会の確保が特に困難であると認められる労働者の雇用の継続等を図るために必要であると認められる場合その他の場合で政令で定める場合を除き、その雇用する日雇労働者について労働者派遣を行ってはならない」と定め、いわゆる「日雇い派遣」を原則禁止している。また「厚生労働大臣は、この政令の制定又は改正の立案をしようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならない」とされる。

  • 「当該日雇労働者の適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務として政令で定める業務」とは、労働者派遣法施行令第4条1項1~18号に定める各業務のことである。
  • 「その他の場合で政令で定める場合」とは、派遣元事業主が労働者派遣に係る日雇労働者の安全又は衛生を確保するため必要な措置その他の雇用管理上必要な措置を講じている場合であって次のいずれかに該当するときとする(労働者派遣法施行令第4条2項)。
    • 当該日雇労働者が60歳以上の者である場合
    • 当該日雇労働者が学校教育法第1条、第124条又は第134条1項の学校の学生又は生徒(同法第4条1項に規定する定時制の課程に在学する者その他厚生労働省令で定める者を除く)である場合(いわゆる「昼間学生」である場合)
    • 当該日雇労働者及びその属する世帯の他の世帯員について厚生労働省令で定めるところにより算定した収入の額が厚生労働省令で定める額(年収500万円)以上である場合

脚注

  1. 広辞苑第四版
  2. 1949年6月11日、東京都が失業対策事業の日当を240円に決定したことによる。

関連項目


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