特別急行列車

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特別急行列車(とくべつきゅうこうれっしゃ)は、鉄道における急行系統の列車であり、急行列車の上位に位置する列車種別である。略して特急列車(とっきゅうれっしゃ)、または単に特急という。

鉄道会社鉄道路線ごとに多少の違いはあるものの、概ねその路線で最も早く目的地に到達する列車に与えられる呼称である[注釈 1]

本項では、特急料金が必要な優等列車長距離列車)としての特急列車のほか、以下についても取り扱うこととする。

  • 特急電車 - かつて日本国有鉄道(国鉄)で運行されていた特急料金不要の列車(普通列車
  • 特急料金不要の「特急」 - 現在日本の私鉄で運行されている列車であり、国鉄・JRでは広義の普通列車に含まれる列車[注釈 2]
  • 鉄道以外の「特急」

日本国外の例

列車種別の分類は国や鉄道事業者によってまちまちであるが、そのうち他の列車より速い、専用車両を用いる、特別料金を必要とするなど、日本の特急に近い性格を持つもののことを、日本語で「特急」と表記することがある。ただし正確を期する必要のある場合には原語表記やその直訳、仮名転写などが用いられる。また TGVICE などの高速鉄道の列車は「超特急」や「新幹線」と訳されることもある。

韓国では、1984年まで韓国国鉄において「トゥックプ(特急)」という種別が存在した。同年以降、長らく韓国に「特急」という種別は存在しなかったが、2017年より首都圏電鉄1号線京釜線京仁線)の速達列車として「特急」が新設された。なお、現在の韓国鉄道公社(KORAIL)の長距離座席指定列車であるKTXITX-セマウルなどの列車では、観光ガイドなどで便宜的に「特急」という表現が使われることがあるものの[2]、愛称が列車種別を兼ねているため、正式には「特急」の名称は使用していない。

米国には、豪華な列車に、特別料金を支払って乗車する上等客のみを扱う "LIMITED" と呼ばれる列車が1910年代から運転されたが、「特急」に該当する列車種別は無い。

欧州では、古くから日本の特急に相当する列車の運転が盛んである。イタリアでは1936年から電車による特急列車が運転された。1957年にはヨーロッパ各地を日帰りで行き来できるビジネスライクな TEE 列車網が整備され、これらの列車には特別急行券を必要とした。その後はインターシティ "InterCity (IC)" 列車に変更された。これは都市間連絡を主たる目的とする在来線優等列車であり、21世紀において欧州では TGV や ICE などのいわゆる新幹線タイプの特急列車が中心である。しかし、かつては「ラインゴルト」、「ミストラル」、「ゴールデンアロー」、「セッテベッロ」などの著名な特急列車が運転され、高速なだけでなく、その走行区間において最も豪華な列車として運転されていた。これらの特急列車はほとんどが一等(三等級時代は一、二等)のみで編成され、パーラーカーや食堂車やバー、ブチックやラウンジを備えていた。これらの列車には他の列車より高額であり、特別急行券を必要としていた。

特急の訳語

通常英訳には、かつての米国の例に倣い「Limited Express」が当てられるが、米国では鉄道旅客輸送の衰退に伴いほとんど死語になっている。ただし、Sunset Limited のようにアムトラックが引き継いだ列車愛称の一部にその名残が見られる。

事業者によってはこれを“Limited Exp.”, “Ltd. Express”, “LTD. EXP.” などと略すが、京王電鉄ではSpecial Express となっている[3][4]

国鉄・JRの特別急行列車

沿革・概要

戦前特別急行列車の創始とその終焉

特別急行(特急)列車が設定される前、急行列車より速い列車には「最急行」という種別をつけることがあった。その中でも1906年明治39年)4月16日に、国有鉄道の新橋駅 - 神戸駅間で設定された「最急行 1・2 列車」は、運賃以外に初めて速達サービスのための料金を徴収する列車となるなど、現在の有料特急・急行の元祖と位置づけられるものであった。

特別急行」の種別を初めて用いたのは、1912年(明治45年)6月に前述した「最急行 1・2 列車」を区間延長する形により、関釜連絡船を介して中国・欧州などへの国際連絡運輸の一翼を担う「大陸連絡列車」として、新橋駅-下関駅間で運転を開始した 1・2 列車である。編成内容も一等車二等車のみで展望車が最後尾に連結されるなど[5]、「日本の国威」を対外宣伝するためのような存在であった。1914年大正3年)12月東京駅が開業すると、1・2 列車も東京駅始発となった。

1923年(大正12年)7月、同区間に三等車のみで構成された 3・4 列車が運転開始される[6]。そこからも分かるように、この列車はどちらかと言えば大衆向けの設定であった。昭和に入ると特急列車に「列車愛称」が付けられるようになり[7]、新しい列車の設定も見られたが、間も無く戦争に突入したため、結局戦前の特急列車は下記の 4 種のみにとどまった。また戦前の特急列車は、東京以西の路線(東海道本線山陽本線鹿児島本線長崎本線)のみで設定されていた。そして太平洋戦争の激化により、1944年昭和19年)4月を以て「富士」を最後にそれらは全て廃止され、日本の特急列車は一旦消滅した。

この時期の特急列車
  • 富士(ふじ) - 1929年(昭和4年)9月、当時の国有鉄道を運営していた鉄道省は前述した 1・2 列車に「富士」と命名した[7]。これは日本初であり、また公募によるもので(公募については列車愛称を参照)、後述する「櫻」・「燕」もそこから命名されている。「富士」は戦前の日本を代表する列車となり、一等展望車を最後尾に連結していた。1942年(昭和17年)11月関門トンネルの開業により「富士」は運転区間を長崎駅まで延長、翌年博多駅までに短縮し、1944年(昭和19年)4月に廃止された。
  • 櫻(さくら) - 1・2 列車に「富士」と命名されると同時に、3・4 列車には「櫻」と命名[7]1934年(昭和9年)12月までは、「富士」に対して十数分先行するような時刻で運転された。前述した「大衆列車」としての使命を全うして運転されていたが、1942年(昭和17年)11月に急行列車に格下げられた。
  • 燕(つばめ) - 1930年(昭和5年)10月、東京駅-神戸駅間に一・二・三等の各等をすべて連結した列車として運転を開始。この列車には所要時間を短縮するために様々な工夫がなされ[8]、1934年(昭和9年)12月には東京駅-大阪駅間を 8 時間で運転、戦前の最高記録を打ち立てた。1943年(昭和18年)10月に廃止。
  • (かもめ) - 1937年(昭和12年)7月、東京駅-神戸駅間に運転を開始。前述した「櫻」・「燕」の補助的性格の強い列車であった。1943年(昭和18年)2月に廃止。

太平洋戦争後の復活とその後の展開

終戦直後は、石炭・車両・整備の状況が戦時中以上に悪化したこともあって、特急列車どころか普通の列車すらまともに運転できない状態となり、1947年(昭和22年)の1月から4月に掛けては急行列車まで全廃された。その後、それらの状況がやっと好転して来た1949年(昭和24年)9月、東京駅-大阪駅間に「へいわ」が運転開始される。同区間を9時間で結び、速度こそ戦前の水準に及ばなかったが、この時1944年(昭和19年)以来 5 年振りに展望車・食堂車が復活するなど、見るべきことは多かった。

特徴のある特急列車

その後、特急列車は次第に各線で設定・増発され、特徴ある物も増えた。戦後の特急列車史に残る列車としては、下記の列車などが挙げられる。(新幹線は除く)

  • 「つばめ」・「はと」 - 1950年(昭和25年)1月、前述した「へいわ」を運転開始 3 か月で「つばめ」と改称し、戦前の名列車の名前が蘇った(戦後は「つばめ」と平仮名書き)。同年6月、同区間にその姉妹列車として「はと」が登場する。さらに同じ年の10月には東京駅-大阪駅間の所要時間を戦前同様の8時間とし、1956年(昭和31年)11月には 7 時間 30 分にまで短縮する。後述する「こだま」が登場するまで、「つばめ」・「はと」は戦後の国鉄を象徴する列車として走り続けた。
  • あさかぜ - 1956年(昭和31年)11月、東京駅-博多駅間に戦後初の夜行特急列車として登場した。関西圏を深夜時間帯に通過したりするなど、話題に尽きない列車であった。2年後の1958年(昭和33年)10月には使用車両を新型の20系客車に置き換え、初の「ブルートレイン」となった。
  • はつかり - 1958年(昭和33年)10月に上野駅-青森駅間、即ち戦前戦後を通じて初めて東京以北へ向かう特急列車として設定された。当初は客車を使用していたが、2年後の1960年(昭和35年)12月にこれまた日本で初めての気動車による特急列車となった。1968年(昭和43年)10月の改正で電車特急となる。
  • こだま - 1958年(昭和33年)11月、東京駅-大阪駅間に電車を使用した特急列車として登場。当初同区間を、それまでの機関車列車の所要時間より 40 分も早い 6 時間 50 分で結び、電車の優位性を見せ付けた。2年後の1960年(昭和35年)6月には、それをさらに 6 時間 30 分にまで短縮している。これによって東京-大阪間の日帰りが可能となったことから「ビジネス特急」と呼ばれ、東海道新幹線の開業まで東海道本線の代表列車として疾走した。

特急列車運行の全国展開

特急列車が普及したダイヤ改正として著名なものには、1961年(昭和36年)10月1日の改正(通称「サン・ロク・トオ」ダイヤ改正)と、1968年(昭和43年)10月1日の改正(通称「ヨン・サン・トオ」ダイヤ改正)がある。1961年(昭和36年)の改正ではそれまで東北・東海道・山陽・鹿児島・長崎の各本線と常磐線でしか運転されていなかった特急列車が全国の幹線を走り始め、1968年(昭和43年)の改正では、それまではその名の通り「特別」な列車であった特急列車が、需要の多い線区では1964年(昭和39年)10月に開業した東海道新幹線と同様ネットダイヤ化が進み、大衆化をも推し進めることになった。

この時期の著名な列車
  • 白鳥 - 1961年(昭和36年)10月、大阪駅-青森駅・上野駅(信越本線経由)間を結ぶ気動車による特急列車として登場。直江津駅で上野編成と青森編成とを切り離し・併結すると言う、同時に登場した「かもめ」とともに、日本初の分割・併結を行う特急列車となった。1965年(昭和40年)10月に、上野への編成が上野駅-金沢駅間の「はくたか」として独立、そして1972年(昭和47年)10月には使用車両を電車に変えるが、その後も2001年(平成13年)3月まで大阪駅-青森駅間 1040.0 km を結ぶ、在来線では日本最長距離を走る昼行特急列車として君臨し続けた。
  • 富士 - 1964年(昭和39年)10月に、東京駅-大分駅間を結ぶ寝台特急列車として登場、翌1965年(昭和40年)10月から運転区間を西鹿児島駅(現、鹿児島中央駅)まで延長し、1980年(昭和55年)10月に運転区間を短縮するまでは、東京駅-西鹿児島駅間を日豊本線経由で 1574.2 km を走る、日本最長距離走行の特急列車であった。

エル特急の登場とその後の展開

1972年(昭和47年)10月より一部の昼行特急には、「エル特急」と言う愛称が与えられた。後に従来の急行列車を昇格して特急列車とした際にもこの扱いを行うことが多かった。しかしJR東日本2002年(平成14年)12月にエル特急を名称上全廃するなど、その数は次第に減少しつつある。なお、JR東海2017年時点でもエル特急の名称を用いている。

1972年(昭和47年)- 1985年(昭和60年)に掛けて、山陽新幹線東北新幹線上越新幹線といった新幹線が次々と開通するにつれ、長距離を走る特急列車は新幹線に取って代わられる形で次第に減少し、それと引き換えに新幹線の沿線から離れた都市と、新幹線との連絡・接続を図る、中-短距離の列車が増えていった。

1985年(昭和60年)3月 - 2002年(平成14年)12月までの間、東北本線(宇都宮線)高崎線などでは同線内相互間の輸送を目的とした一部のエル特急を「新特急」と称していた。元々は、短・中距離の急行列車を増収のためほとんど停車駅は変えず特急列車に格上げした物で、定期券でも乗車できることとし、料金も 50 km 以下の区間は急行料金と同額とするなど、特急と急行の中間的な設定にされた。しかし前述のような理由で設定された特急であり、使われていた185系電車はそれまでの特急列車の車両より設備が劣り、関西では快速列車に使うような車両にデッキを付けただけのような物であったが、後に座席は通常の特急用と同じものに交換された。2001年(平成13年)12月にそれ以外の列車と特急料金が同額になり、「新特急」を列車名に冠する必要が無くなったためか翌年消滅した。因みにその頃までには東北本線の新特急は朝夕の時間帯を除いて一般車使用の快速に格下げされ、高崎線の新特急もアコモデーションのリニューアルや日中時間帯の停車駅の大幅な削減などの改善策が行われた。また、湘南新宿ラインの開通後は東北・高崎線の快速・普通列車においてもグリーン車の連結が行われるようになったため、旧「新特急」が担当していた高崎線内相互間の着席輸送においては、快速・普通列車のグリーン車の拡充を重視する傾向になっている。

2004年(平成16年)3月に九州新幹線が開通して以来、JR九州は「きりしま」のうち霧島神宮・国分発着のものや、「はやとの風」、また2009年10月10日から運転の「海幸山幸」といった臨時特急列車などが存在するが、これらの列車は停車駅こそ限定されてはいるもの、いずれも同区間を走る普通列車と同等か、それより遅い便も存在する。これは速達性を意味する「特別な急行列車」の意味ではなく、新幹線との接続性を重視しているものや、また車内設備のサービスに対して料金を取るか取らないかどうかや、観光に特化したサービスの提供などといったサービスの違いで「快速列車」・「普通列車」などと区分するために、「特急列車」を名乗らせているものである。このような観光に特化した特急列車のことをJR九州では便宜的に「観光特急」などと呼ぶことが多い。

編成について

1950年代までは客車による長大編成が組まれた。しかし、1960年代以降、速達化を計る観点から、昼行列車から使用車種を電車気動車へ変更してゆく事となった。

この初例としては、運用の効率化を図った登場時の151系電車を用いた「こだま号」の編成がある。詳細はこちらを参照されたいが、これは、簡易食堂「ビュフェ」付き三等車と二等車を編成中央に組み込んで8両編成で運用するものであったが、速達化・快適性の向上がなされたため、在来特急列車の電車化を行う際には、運用の効率化よりも在来編成との摺り合わせがなされたため、10 - 12両で運用された。

しかし、利用者が少ないとされた線区での使用が予想されたキハ82系気動車では食堂車一等車(後のグリーン車)を各1両備えた 6 両編成を基本とした編成が基本とされた[注釈 3]

電車でも二等車(→普通車)の両数の差があるものの、編成が短くなり、おおむね8 - 12両程度で運用される従来のものから大きく変容するようになる。

その初例として、1976年(昭和51年)に設定された佐世保線エル特急みどり」では485系電車新製車両では最も短い4両編成で運用される事例がみられるようになった。ただし、「みどり」の事例は「かもめ」と併結運転を行う多層建て列車として運行する関係もあり、線路容量が小さい路線での措置として異例とされた。

本格的な短編成化として知られるようになったのは、高速バスとの競争が激しくなった鹿児島本線エル特急「有明」である。この列車群では、車種統一を図った1984年(昭和59年)以降改造車両を用い、1本あたりの編成組成を短くする代わりに本数を増発する手法を採ったため、1986年(昭和61年)には「3両編成を組んだ特急」が運行されるようになった。

ただし、電車による短編成化には運用上の限界があり、2両編成の電車特急列車は1990年(平成2年)登場の札幌駅旭川駅間運行の臨時特急「モーニングエクスプレス」があったものの、1994年(平成4年)には使用車両であるJR北海道785系電車の当時の所定編成であった4両編成に戻され、以降電車での短編成運行は485系・183系JR東日本253系電車JR東海373系電車による3両編成が最小になったが、2010年8000系電車の付属編成を2両に減じたため、2両編成電車特急が復活。後継となるJR四国8600系電車では、2両または3両編成で製作、運用されている。

しかし、気動車ではキハ82系気動車の編成を元に設計したキハ181系気動車キハ183系気動車では「大出力エンジンを積む」や(後者のみであるが)「極寒地仕様のため先頭車両は非貫通」とした事もあり、例えばキハ181系気動車は2両で運行することは可能であるが、「便所がない」・「座席数が少ない」という問題もあった。

そこで、1986年(昭和61年)に運用を開始したキハ185系気動車は2両編成で運用可能とした設計とし、実際に四国旅客鉄道(JR四国)は高徳線のエル特急「うずしお」の運用開始時に運用を実施した。なお、同車両は2016年(平成28年)現在2 - 3両の短編成で運用される事が多く、当初よりの所有会社であるJR四国では主に徳島県内の特急列車群で、一部は 九州旅客鉄道(JR九州)が購入し久大本線豊肥本線を運行する特急列車群で運用されている。

また、西日本旅客鉄道(JR西日本)では「急行形気動車の置き換え」ないしは「地域輸送の高速化」という観点から、キハ185系気動車以降にて2両固定編成での運用を前提としたJR西日本キハ187系気動車を新製した。また、キハ181系気動車を最後まで使用していた「はまかぜ」ではグリーン車連結の4両編成であったが、JR西日本キハ189系気動車では普通車のみの3両編成で置き換えた。

客車については定員が少ない寝台車を中心にして運行されたこともあるため、食堂車、電源荷物車を込みで10 - 15両程度の長大編成を組んでいたが、14系客車ではサービス電力を高出力ながら乗客を乗せない専用の電源車ではなく、編成の端に連結する緩急車より供給する関係で6両程度で組成をすることとなり、その編成単位の組み合わせで運行されるようになった。

しかし、1980年代以降、長期的な夜行列車寝台列車の凋落傾向から必ずしも10両程度の需要がないことから、短編成化された列車も存在した。中には廃止直前の「彗星」の様に開放式B寝台車のみの4両編成で運行された列車もあった。また、「富士」・「はやぶさ」は、運行末期である2005年(平成17年)より2009年(平成21年)の廃止までは門司駅以降のJR九州管内においては6両編成、東京駅 - 門司駅間ではそれを2編成組み合わせた12両で運行されていた。

なお、末期の寝台列車で運用されたものの編成は以下の通りであった。

編成の長短について

なお、2017年3月4日現在で最長編成の列車は以下の通りとなる。

電車列車

新幹線列車の扱い

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新幹線(写真はN700系)

新幹線で運行される列車も特急列車として分類される。

1975年(昭和50年)3月まで速達タイプの「ひかり」と各駅停車タイプの「こだま」は料金に区別があった。また、1972年(昭和47年)3月までは「ひかり」は超特急、「こだま」は特急として区別していた。

1992年(平成4年)3月に登場した「のぞみ」も「ひかり」・「こだま」とは料金に格差が設けられている。ただし、2003年(平成15年)10月1日に「のぞみ」にも自由席を設定したが、これについては「ひかり」・「こだま」と同一料金である。

在来線と直通する列車も特別急行列車と定義されている。このため、博多南線運行列車や「つばさ」・「こまち」も特別急行列車である。

特急料金

沿革にある通り、JR の場合特急列車を利用する場合、乗車券のほかに特別急行券(特急券)が必要である。料金などの詳細については、「特別急行券」の項を参照されたい。

特急列車への定期乗車券での乗車は原則として認められていないが、近年は特例として一部の列車・路線で定期乗車券に自由席特急券ないしは立席特急券を追加すれば乗車が認められるようになってきている。現在では、自由席については昼行列車の全列車が定期乗車券との組み合わせで乗れるようになった。しかし、指定席は認めていない場合も多い。

特急料金が不要な区間

普通列車が一切ないなどの理由で、特急列車に乗車しても特急料金がかからない区間がある(ただし、新幹線車両使用区間を除く)。詳細は「特別急行券#特急料金不要の特例区間」を参照のこと。

車両

他の種別の列車の車両と異なる特急形車両を使っており、高速性能や、座席などの車内設備が他の種別の列車用より優れている[9]。原則として特急列車に専用されるが、利用客の少ない末端区間で普通列車になる場合や、運用の関係で全区間普通列車として運転される場合もある。

トレインマーク

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国鉄エル特急の「つばさ」とトレインマーク(上野駅

国鉄時代の特急の特色として、綺麗なデザインが施されたヘッドマークがある。丸い金属製のもので、客車端部に設置したものである。戦前にすでに運行されていた「富士」「さくら」の列車愛称命名時に取り付けを行ったのが端緒である。

戦後、1950年(昭和25年)に復活した特急「へいわ」号以降、特急列車のシンボルとして牽引機関車と最後尾客車に取り付けられるようになった。以降、特急列車である「つばめ」・「はと」・「さくら」・「かもめ」・「あさかぜ」・「はつかり」・「さちかぜ」・「平和」「はやぶさ」まではスハ44系ナハ10形を含む在来形客車による列車のみであったため、半ば必然的にトレインマークとしてのヘッドマーク・テールマークが用意された。

しかし、"ビジネス特急「こだま」"用として1958年(昭和33年)に登場したモハ20系→151系電車(のちの181系電車)には、「特急マーク」と称される「T」をモチーフにしたエンブレムや、日本国有鉄道である「JNR」をモチーフにしたロゴを制定したものの、ヘッドマーク自体は、列車ごとに制作されたイラスト付きのヘッドマークは制定されず、列車名のみのものとなった。

以降、新設の特急列車では、気動車初の特急形車両であるキハ81系気動車では151系電車の特急マーク・国鉄ロゴ・ボンネットスタイルを踏襲し、ヘッドマークについては列車名のみとなった[注釈 5]

客車列車は寝台車の電車化が1967年(昭和42年)登場の581系電車であることから、それ以前の設定列車は客車列車のみとなり、牽引機関車にこそイラスト付きのヘッドマークが用意された。しかし、20系客車では、電源車緩急車ついては当初地色を列車ごとに変えたが[注釈 6]、のちに白地に濃紺(ローマ字表記は赤)で列車名のみを表示する形とした。また、後継であった14系24系といったブルートレインでも当初は列車名のみの表記となっていた。

そのため、機関車取り付けのヘッドマークは寝台特急のシンボルとなり好評を博した。その一方で、取り外しが面倒、費用が嵩む、あるいは盗難に合うなどの理由で1975年(昭和50年)には東京・西日本 - 九州方面のブルートレイン7列車以外はすべて廃止されてしまった。

しかし、このトレインマークは軒並み鉄道ファンや子供たちの間で評判で、ブルートレインブームを巻き起こした。加えて漫画『銀河鉄道999』のヒットなどにより、鉄道による長距離旅行が大流行した。それを受け、自動車、航空機など移動の多様化にともなう旅客減少により、採算が悪化、事業再興の機を窺っていた国鉄は千載一遇のチャンスとばかり、1978年(昭和53年)10月にはすべての電車特急にイラストを施した絵付きトレインマークを採用することになる。このトレインマークは子供達だけでなく、鉄道ファンやその他一般人にも大きく受け入れられ、ブルートレインと並んで旅客特急にブームを呼び寄せ、トレインマークをデザインしたグッズや特急を掲載した図鑑や絵本が人気を呼び、鉄道写真に興味を持つ人も多く誕生した[注釈 7]

高山本線の「ひだ」を除いて、絵入りのトレインマークは採用されていなかったが、1985年(昭和60年)1月には全路線の気動車特急にも絵入りトレインマークが採用されるようになった。

しかし、1987年(昭和62年)4月1日に国鉄が分割民営化され、JR が発足すると各社はこぞって脱国鉄色を目指すようになり、加えて鉄道車両の老朽化、陳腐化などに伴い、高速性、居住性の改善など性能に優れた近未来的な新型車両を採用していく中で、JR東日本を中心に LED を利用したマークが採用されたり、トレインマークを掲げないものも増加していったりした。

一方で、車両を特徴付けるサインやロゴマークは重視された。

JR四国キハ185系気動車のように図案をより簡略化したり、JR西日本の北近畿ビッグXネットワークの各特急列車のように、図案を統一化したものも増えてきた。また、かつてそのブームの旗手となった寝台特急が次々と廃止に追い込まれていく中で、多くの鉄道ファンや子供たちが魅せられたイラスト付きのトレインマークは過去を回想させるものとなりつつある。

特急電車

急行列車に対する「急行電車」と同様に、特別急行列車とは別に「特急電車(とっきゅうでんしゃ)」と呼ばれる普通列車が、昭和初期より阪和電気鉄道[注釈 8] で運行されていた。阪和間の都市間列車であり、特急料金不要の転換クロスシート車を用いたなど、列車としての性格は現在の特別快速列車に相当する。なお、同鉄道には超特急なる列車種別も存在した。

戦時中にいったん廃止されるが、1944年(昭和19年)5月に国有化され阪和線となったあと、1950年(昭和25年)10月に流電こと52系電車を投入して復活する。その後、1958年(昭和33年)10月の称号改正で快速直行となる(直行は、1969年〈昭和44年〉4月より「区間快速」に改称)。この列車は現在の紀州路快速に相当する。

現在は私鉄のみが料金不要の「特急」を運行しているが、これについては次項「私鉄の特別急行列車」を参照のこと。

私鉄の特別急行列車

私鉄では南海鉄道(現・南海電気鉄道)1926年(大正15年)12月3日に、初めてこの名前の列車を運転したといわれている[10]。また、料金を別途必要とする有料制の特急列車については、近畿日本鉄道1947年(昭和22年)に名古屋 - 上本町間において運転を開始した[注釈 9] のが最初である。

利用するためには、鉄道会社によってJRと同様に乗車券のほかに特急料金(またはそれに類した追加料金)が必要なものと、乗車券だけで利用できるもの、および座席指定車と料金不要の自由席車の両方を連結したものの3種類がある。

また、私鉄にはオリジナルの列車種別が設定されていることも多く、用途や行先を冠することで、複数の「特急」(例:名鉄の場合ミュースカイ・快速特急・特急)が設定されているケースも少なくはない。また、近年では、ラッシュ時に「通勤ライナー」的な性格の列車が運転されているケースも多い。

有料特急列車

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有料特急列車の例:近鉄特急

種別としての性格は、東武鉄道など特別急行料金を徴収する JR の特急列車と同等のものと、名古屋鉄道京浜急行電鉄京阪電気鉄道など本来特別急行料金は設定していなかったが、座席指定料として運賃とは別に料金を徴収するようになったものとがある。

JR と同様に、高速性、車内設備などが他の種別に使用している車両に比べて優れている特急用の専用車両が使用されており、差別化を図っている。一部の私鉄や第三セクター鉄道には、JR線から特急列車が乗り入れている(一部は相互直通運転を実施)。

なお、事業者によっては指定席車と自由席車の両方を連結する列車も運行されているが、これについては次項「#指定席・自由席連結列車」を参照。

自社の専用車両を用いて運行する列車

関東地方
運行会社 ブランド名・通称 運行路線 列車愛称など その他
小田急電鉄 小田急ロマンスカー 小田原線 「はこね」
「スーパーはこね」
「さがみ」
「はこね」「スーパーはこね」は箱根登山鉄道に乗り入れ。
「メトロはこね」
「メトロさがみ」

「メトロホームウェイ」
東京地下鉄(東京メトロ)千代田線に乗り入れ。
なお以前は臨時列車として、有楽町線乗り入れの「ベイリゾート」も運行されていた(2013年より運行中止)。
「メトロホームウェイ」はホームライナー的性格列車。
小田原線
江ノ島線
「えのしま」  
全線 「ホームウェイ」 ホームライナー的性格列車。
東武鉄道   日光線系統 スペーシア(きぬ・けごん)
リバティ(きぬ・けごん・会津)
「きりふり」
「ゆのさと」
「スカイツリーライナー」

アーバンパークライナー
しもつけ
使用車両の差違による料金の差違がある。
伊勢崎線系統 りょうもう
リバティりょうもう
 
西武鉄道 レッドアロー 池袋線
西武秩父線
狭山線
「ちちぶ」「むさし」「ドーム」 「ドーム」は、西武ドームでの埼玉西武ライオンズ主催野球開催日、およびその他イベント時に運行される臨時列車。
新宿線 小江戸  
京成電鉄 スカイライナー 成田スカイアクセス系統 「スカイライナー」 京成には無料の特急も運転されているため、特急より上位の列車種別としての「ライナー」と考えたほうがよい。
「モーニングライナー」・「イブニングライナー」はホームライナー的性格列車。
「シティライナー」は臨時列車のみ。
本線系統 「シティライナー」
「モーニングライナー」
「イブニングライナー」
中部地方
運行会社 ブランド名・通称 運行路線 列車愛称など その他
富士急行   富士急行線 フジサン特急
富士山ビュー特急
旧称「ふじやま」。
特急専用車両が使用できない場合には代替として運行される。
長野電鉄   長野線 ゆけむり
スノーモンキー
 
富山地方鉄道   本線
立山線
うなづき
アルペン特急
「たてやま」
名古屋鉄道 ミュースカイ 広見線
各務原線
犬山線
名古屋本線
常滑線
空港線
ミュースカイ 「ミュースカイ」は当該車両の愛称であると同時に列車種別でもある。
近畿地方
運行会社 ブランド名・通称 運行路線 列車愛称など その他
近畿日本鉄道 近鉄特急 線区多数
(別項参照)
特色のある車両については車両愛称があるが、列車愛称は付与していない。
ただし観光特急「しまかぜ」「青の交響曲(シンフォニー)」は車両愛称を列車愛称としても使用している。
詳細は近鉄特急を参照。
南海電気鉄道   南海本線
空港線
ラピート(α・β) 全車座席指定制を採用。
高野線 「こうや」
「りんかん」
泉北ライナー 全車座席指定制を採用。全区間の運行を南海に委託している。
泉北高速鉄道 泉北高速線
WILLER TRAINS
(京都丹後鉄道)
  宮福線
宮豊線
たんごリレー

定期的に JR との乗り入れの特急列車を運行

JRからの直通のみ
運行会社 ブランド名・通称 運行路線 列車愛称など その他
富士急行   富士急行線 成田エクスプレス 臨時列車扱いであるが殆どの土休日に運行
富士急行線相互の利用は普通車の空席に限定される
伊豆箱根鉄道   駿豆線 踊り子 特急料金の設定なし
伊勢鉄道   伊勢線 南紀 特急料金のみ設定
グリーン料金の設定なし
伊勢線内相互の利用は自由席に限定される
IRいしかわ鉄道   IRいしかわ鉄道線 サンダーバード
能登かがり火
特急料金のみ設定
グリーン料金の設定なし
私鉄からの直通のみ
運行会社 ブランド名・通称 運行路線 列車愛称など その他
小田急電鉄 小田急ロマンスカー 小田原線 ふじさん
相互直通
運行会社 ブランド名・通称 運行路線 列車愛称など その他
東武鉄道 スペーシア 日光線
鬼怒川線
「スペーシア日光」
「スペーシアきぬがわ」
JR 車両の場合は「スペーシア」は用いない。
伊豆急行   伊豆急行線 「踊り子」
「スーパービュー踊り子」
「リゾート踊り子」
2100系電車「リゾート21」による「リゾート踊り子」登場前までは類型3。
ただし、同列車は臨時列車である。
WILLER TRAINS
(京都丹後鉄道)
  宮福線
宮豊線
はしだて JR 所有車両は電車、自社車両は気動車と、乗り入れ車両種が異なる。
智頭急行   智頭線 スーパーはくと
スーパーいなば
自社車両の管理を JR 西日本に委託
土佐くろしお鉄道   中村線
宿毛線
南風
しまんと
あしずり
自社所有車両の管理を JR 四国に委託。

観光特急

近鉄では、伊勢志摩や吉野の観光地へ向かう旅客のための「観光特急」として、「しまかぜ」と「青の交響曲」を運行している。なお、これらの車両に乗車するには乗車券・特急券の他に専用の車両券が必要。ちなみにしまかぜの場合は「しまかぜ特別車両券」、青の交響曲の場合は「特別車両券」となる。詳細は近鉄特急を参照されたい。

指定席・自由席連結列車

中間1両のみ座席指定車を連結する京阪特急 指定席車・自由席車の両方を連結する名鉄特急
中間1両のみ座席指定車を連結する京阪特急
指定席車・自由席車の両方を連結する名鉄特急

名古屋鉄道(「ミュースカイ」を除く)と南海電気鉄道(「サザン」のみ)および京阪電気鉄道(8000系のみ)では、指定席車と自由席車の両方を連結する列車が運転されている。この場合、自由席については一般車両が使用され、かつ普通乗車券のみで乗車できる。

運行会社 ブランド名・通称 運行路線 列車愛称など その他
名古屋鉄道 名鉄特急
名鉄快速特急
線区多数
(別項参照)
  特別車はリクライニングシート、一般車は通常転換クロスシート車または転換セミクロスシート車、およびロングシート車のいずれか[注釈 10]
南海電気鉄道   南海本線
和歌山港線
「サザン」 指定席車はリクライニングシート車であるが、自由席車は通勤形のロングシート。
全便がこの編成で運転される。
京阪電気鉄道 京阪特急 京阪本線
鴨東線
  プレミアムカーはリクライニングシート、自由席車は転換セミクロスシート車。

料金不要の「特急」

ファイル:京王7000系電車@長沼駅.JPG
通勤形車両を使用する京王特急

他の列車種別より停車駅が少ないもの、いわゆる最速達列車として「特急」を運行している事業者も存在する。そのため、他種別の列車と同じく通勤形車両を用いるのが一般的である。ゆえに、このタイプの「特急」は JR における「特別快速」または「新快速」(いわゆる普通列車の一種)と同義の種別であると考えることができる(「急行列車#料金不要の「急行」」も参照)が、一部の私鉄には快速に相当する種別を「特急」として、その上に「快特(快速特急)」といった、さらに上位の種別を設定している事業者もある。しかし、競合する他事業者の鉄道路線がある場合には、料金不要の列車といえども車内設備や性能の優れた専用車両を充当することがある。

こうした例は、東海道線横須賀総武快速線と競合する京浜急行電鉄京成電鉄中央線快速と競合する京王電鉄、中京地区で東海道本線と競合する名古屋鉄道JR京都線JR神戸線と競合する阪急電鉄京阪電気鉄道阪神電気鉄道山陽電気鉄道鹿児島本線と競合する西日本鉄道に見られる。

料金不要の「特急」もしくはそれに類する種別の列車を運行する事業者
運行事業者 運行線区 使用車両の座席配置 備考
京成電鉄 本線押上線東成田線成田スカイアクセス 基本的にロングシート車[注釈 11]
京急の場合、時間帯によっては転換クロスシート車(2100形)。
 
北総鉄道 北総線  
芝山鉄道 芝山鉄道線 京成線直通列車種別
東京都交通局
都営地下鉄
浅草線 乗り入れ列車種別がそのまま援用されるが、例外もある。
当該運行項目およびエアポート快特を参照のこと。
京浜急行電鉄 本線久里浜線
空港線逗子線
夕方以降に運転される「京急ウィング号」は、
品川駅から乗車する場合に着席料金が必要。
京王電鉄 京王線高尾線相模原線 ロングシート車
東京急行電鉄 東横線 ロングシート車 通称「東横特急」「Fライナー」。
横浜高速鉄道 みなとみらい線
相模鉄道 本線いずみ野線 全てがロングシート車の車両(7000系(2017年3月17日まで)、新7000系10000系11000系)と、一部にセミクロスシートが採用されている車両(新7000系の一部、8000系9000系)がある 詳しい運行パターンについては相鉄特急より。
名古屋鉄道 名古屋本線
常滑線空港線
河和線知多新線
河和線・知多新線系統は基本的に転換クロスシート車(5300系・5700系
それ以外は一定でない。名鉄特急#特急に使用される車両を参照。
阪急電鉄 京都線 基本的に3扉転換セミクロスシート車(9300系)中心だが、時間帯によってはロングシート車でも運用することもある(基本的に8両編成限定運用)。 「京とれいん」は2扉クロスシート車(6300系)、土曜日・祝日のみの運行。
なお、天下茶屋 - 嵐山間は臨時便のみの運行。
神戸線神戸高速線 ロングシート車
ただし8000系の一部編成(同系の宝塚線所属車は8両編成のすべて)のみ転換セミクロスシート車での運用もある。
今津線は阪急京都線・嵐山線直通の臨時便のみ。
宝塚線 阪急宝塚線・能勢電鉄直通「日生エクスプレス」を参照のこと。
能勢電鉄 妙見線日生線
大阪市高速電気軌道 堺筋線 ロングシート車 阪急京都線・嵐山線直通の臨時便のみ。
京阪電気鉄道 京阪本線鴨東線 転換セミクロスシート車8000系(2017年8月19日まで。20日からは指定席・自由席連結列車)、3000系、ロングシート車6000系7200系9000系(いずれも基本的に8両編成限定運用)。 中之島発着は臨時便のみの運転。詳細は京阪特急を参照のこと。
南海電気鉄道 南海線和歌山港線 ロングシート車7100系8000系8300系9000系 難波-和歌山市(一部は和歌山港)間の特急は、特急「サザン」が指定席と自由席ロングシート車の混結で運転される。
平日・休日とも2往復が全車自由席ロングシート車で運行されていたが、2012年4月1日のダイヤ改正で全車自由席特急は消滅した。
阪神電気鉄道 本線神戸高速線 かつてはロングシート車のみであったが、2000年代以降はセミクロスシート車または転換セミクロスシート車が増えている。  
山陽電気鉄道 本線 阪神電気鉄道と直通するため、山陽電気鉄道の特急用車両はすべてセミクロスシート車(クロスシート部は固定・転換の双方がある)となっている。
一畑電車 北松江線大社線 転換クロスシート車またはロングシート車 転換クロスシートの車両は「スーパーライナー」として平日のみ運転。大社線は土・日・祝のみ運行。
西日本鉄道 天神大牟田線 転換クロスシートの専用車両(8000形)が中心であるが、ラッシュ時にはロングシートタイプの通勤形車両が使用されることがある。 詳細は西鉄特急を参照のこと。

「特急」を冠する列車種別のバリエーション

ここでは「特急」を冠する派生種別、並びに「特急」を名乗らないが「特急」に比肩する列車種別の名称を記する(ただし、「快速急行」は除く)。なお、「」内の事業者では過去に運行をしていたとされる。

「特急」を冠する列車種別のバリエーション
類型 種別名称 運行会社 その他
別途料金を徴収する 別途料金不要
「特急」より
上位
スカイライナー 京成電鉄 - 全席指定
シティーライナー 京成電鉄 -
モーニングライナー・
イブニングライナー
京成電鉄 -
アクセス特急 - 京成電鉄  
京急ウィング号・
モーニング・ウィング号
京浜急行電鉄 - 定員制
エアポート快特 - 京浜急行電鉄
東京都交通局
 
S-TRAIN 東京急行電鉄
横浜高速鉄道
- S-TRAINを参照のこと
京王ライナー 京王電鉄 - 京王ライナーを参照のこと
快速特急
- 京成電鉄
芝山鉄道
別項快速特急も参照のこと 2010年7月17日「快特」より改称
名古屋鉄道 名古屋鉄道 指定席と自由席が併結
名鉄特急も参照
- 阪急電鉄 土休日(定期列車)
行楽期(臨時列車)
京阪電気鉄道 京阪特急参照
快特 京浜急行電鉄 -
ミュースカイ 名古屋鉄道 - 名鉄特急参照
D特急 東武鉄道 - 東武1720系電車使用の特急で一時期使用された種別。「D」はデラックスを意味する[11]
けごん (列車)を参照のこと
A特急 長野電鉄
東武鉄道
- 長野電鉄長野線けごん (列車)を参照のこと
デラックス特急 「名古屋鉄道」 - 名鉄特急#デラックス特急を参照のこと
直通特急 - 阪神電気鉄道
山陽電気鉄道
直通特急 (阪神・山陽)を参照のこと
- 阪急電鉄
大阪市高速電気軌道
臨時列車のみ
阪急京都本線#嵐山線直通臨時列車を参照のこと
ライナー 京阪電気鉄道 - 全席指定 京阪特急参照
K特急 - 「京阪電気鉄道」 京阪特急参照
超特急 - 阪和電気鉄道
新京阪鉄道
「京阪電気鉄道」
愛知電気鉄道
すべて昭和初期のもの
超特急を参照のこと
「特急」より
下位
準特急 「小田急電鉄」
「近畿日本鉄道」
京王電鉄 準特急を参照のこと
通勤特急 - 京成電鉄 「通勤特急」の一員として
いわゆるホームライナーを指す場合もあるが、
本稿では正式に列車種別として
使用したもののみとする。
現在3代目
過去の2代目は特急より上位
阪急電鉄 京都本線のものは現在3代目
過去の2代目は特急より上位
東京急行電鉄
横浜高速鉄道
 
C特急
D特急
E特急
長野電鉄 - B特急の下位種別として使われた
長野電鉄長野線を参照のこと
S-TRAIN 西武鉄道 - S-TRAINを参照のこと
拝島ライナー - 拝島ライナーを参照のこと
S特急 - 山陽電気鉄道 山陽電気鉄道本線を参照のこと
高速 - 「名古屋鉄道」
「近畿日本鉄道」
名鉄特急近鉄特急を参照のこと
「特急」と同格
(千鳥運転など)
B特急 長野電鉄
東武鉄道
- 長野電鉄長野線けごん (列車)を参照のこと
区間特急 - 阪神電気鉄道 朝ラッシュ時のみ運転
特急とは千鳥停車を行っているため、特急と停車駅数・所要時間に大差なし
西大阪線特急 - 「阪神電気鉄道」 阪神なんば線#西大阪線特急を参照のこと
直行 - 「西日本鉄道」 詳細は直行 (列車)も参照のこと
その他 特快速 - 神戸電鉄 当初は特急と快速の中間に位置する列車として設定された。
現在は特急が廃止されたため、特快速が同線内で最上位の列車種別となっている。

特急乗務員

鉄道事業者によっては、特急列車に専用乗務員を充て、かつ特急乗務員専用行路を与えていることもある。特に運転士にいたっては、運転技術で選抜された者や、特別な研修・実地訓練を受けた者に対してその任務が充てられることがある。

  • JR 各社(在来線)の場合 - 概ね制限はない(新任運転士でも乗務することがある)。
  • JR 各社(新幹線)の場合 - 在来線運転士を数年間経験し、選抜試験を通過して研修と実地訓練を受け、操縦免許の転換試験に合格した者。ただし例外もある。
  • 近畿日本鉄道の場合 - 運転士と車掌を 5 年以上経験した者で、研修と実地訓練を受けた者。
  • 京阪電気鉄道の場合 - 一般列車を半年以上乗務した者。(8000系0番台30番台使用で淀屋橋-出町柳の全区間運転列車のみ)
  • 南海電気鉄道の場合 - 南海本線では選抜された者。高野線では希望調査。
  • 西日本鉄道の場合 - 一般列車を1年以上乗務し、研修を受けた者。

鉄道以外における「特急」

ファイル:Nihon Kotsu Tottori 0430.jpg
特急バスの例:山陰特急バス(日本交通)

バスにおいても、特に停車する停留所を限定している系統が「特急」を名乗る場合がある(例:特急仙台・山形線山陰特急バス)。ただしその中でも高速道路を主として走行する物は「高速バス」と呼ばれることが多い。「高速バス」「急行バス」の項目も参照のこと。

ちなみに阪急バスでは、高速バスの方向幕表示を通常「高速 高知」「高速 長野」などと表示しているが(LED 幕車では行き先のみ表示)、スーパーノンストップ便に関しては「特急 福岡」「特急 有馬温泉」と標示し、「特急」を「高速」よりも格上の存在と位置づけている。

フェリーに関しては1971年から2005年まで、「特急」と冠した「大阪高知特急フェリー」が存在した。

脚注

注釈

  1. 例外ではあるが2015年3月のダイヤ改正時点でも有料特急の所要時間が通勤快速と同等の路線がある(JR 京葉線 特急/東京 18:00 発→蘇我 18:33 着 所要時間 33 分 、通勤快速/東京 18:16 発→蘇我 18:49 着 所要時間 33 分)。また、特急停車駅の「海浜幕張駅」を通勤快速は通過するのも異例である[1]
  2. 私鉄では速達列車は料金徴収の有無を問わず優等列車として扱われることもあるが、料金不要列車も優等列車の範疇に含めるかどうかは事業者によって異なり、京王電鉄のように料金不要列車には速達列車であっても優等列車という表現を用いない事業者もある(優等列車#私鉄も参照)。
  3. なお、鉄道ファン1991年12月号のキハ80系・キハ181系の記事によると、当時の時刻表の編成図には、一等車は「ロ」、二等車は「ハ」、食堂車は「シ」と記載されていたため、編成は「ハ・ハ・ハ・シ・ロ・ハ」となり、「はっ、はっ、はっ白歯」と駄洒落めいた表現で編成内容を覚えることができたとされる。
  4. なお、「やまびこ」・「つばさ」の東京駅 - 福島駅間の17両編成でも車両の両数上同数となるが、E2系電車E3系電車E5系・H5系電車E6系電車の先頭車両の差により、「はやぶさ」・「こまち」となる。
  5. なお、キハ81系気動車の改良型であるキハ82系気動車では、ボンネットデザインは踏襲されず、先頭車両は貫通式のデザインとし、以降北海道専用とされたキハ183系 0番台ジョイフルトレインを除きボンネットデザインの車両は存在しない。
  6. 「あさかぜ」は薄水色、「さくら」は桃色、「はやぶさ」は黄色、「みずほ」は水色で文字が黄色。
  7. 一方で、低年齢層に媚びる様、あるいはあからさまな大衆迎合路線に対し、国鉄特急の威厳を知る古くからの鉄道ファンは拒否反応を示し、鉄道友の会吉村光夫鉄道ファン誌への寄稿に際し、「踊り子に用いられた図案は鼻詰まりの少女のよう。」と、冗談を交えながらも苦言を呈している。
  8. 1940年12月に南海鉄道に合併され山手線となる。
  9. ただ、当時は名古屋線大阪線で軌間が異なっていたため、伊勢中川駅での乗り換えを要していた。近鉄において名阪間の直通運転が可能になったのは1959年12月のことである(近鉄特急史も参照のこと)。
  10. 名鉄ではミューチケットを必要とする特別車両を「特別車」、それ以外を「一般車」と呼称する。
  11. 「基本的にロングシート車」については、車端部のみ固定クロスシートを備えている車両も含む。鉄道車両の座席を参照のこと。

出典

  1. JTBパブリッシング 『JTB時刻表』2015年3月号 京葉線のページを参照。
  2. 一例として、ソウルから地方への行き方~鉄道編~ - コネスト
  3. 路線図|東急電鉄”. 東京急行電鉄. . 2017閲覧.
  4. 路線図|京王グループ”. 京王電鉄. . 2017閲覧.
  5. 『鉄道旅行案内. 大正5年版』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  6. 『鉄道省年報. 大正12年度』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  7. 7.0 7.1 7.2 『鉄道省年報. 昭和4年度』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  8. 『鉄道省年報. 昭和5年度』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  9. PHP研究所 梅原淳『雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 特急列車のすべて』p.78
  10. PHP研究所 梅原淳『雑学3分間ビジュアル図解シリーズ 特急列車のすべて』2010年7月 p.30 - p.31
  11. JTBパブリッシング 花上嘉成『キャンブックス 東武デラックスロマンスカー』p.122

参考文献

関連項目