独立国家共同体

提供: miniwiki
移動先:案内検索
独立国家共同体
独立国家共同体の旗独立国家共同体の紋章
(エンブレム)

300px

公用語ロシア語
加盟国
本部所在地ミンスク
最大の都市モスクワ
事務総長セルゲイ・レベジェフ
面積22,100,843 km2
設立1991年12月8日

独立国家共同体(どくりつこっかきょうどうたい、ロシア語: Содружество Независимых Государств, СНГ英語: Commonwealth of Independent States、英略称: CIS)は、ソ連崩壊時に、ソビエト社会主義共和国連邦を構成していた15か国のうちバルト三国を除く12か国(発足当初は10か国)によって結成されたゆるやかな国家連合体(コモンウェルス)。当時の欧州共同体 (EC) 型の組織をモデルにしたが、独自の憲法や議会は持っていない。本部はベラルーシの首都ミンスクに置かれている。日本では英語名の略称であるCISの名で言及されることが多い。

沿革

ファイル:Commonwealth of Independent States CSTO vs GUAM.svg
  CSTO加盟国
  GUAM加盟国
  その他の加盟国

創設

1991年12月8日ロシアボリス・エリツィン大統領、ウクライナレオニード・クラフチュク大統領、ベラルーシスタニスラフ・シュシケビッチ最高会議議長はベラルーシベロヴェーシの森で、ソビエト社会主義共和国連邦の消滅と独立国家共同体 (CIS) の創立を宣言した(ベロヴェーシ合意)。続いて12月21日、カザフスタンでの首脳会議にジョージア(グルジア)を除く8か国も参加してアルマトイ宣言に合意した[1]。1993年にはジョージアも含めて12か国すべてが加盟した。

ソ連を構成した全15国のうち、バルト三国はCIS設立前に独立したため加盟せず、2004年5月1日欧州連合に加盟した[注釈 1]。ジョージアは当初より反露・親欧米路線を主張してCISへの参加を拒否したが、国内の南オセチアアブハジア問題を契機として1993年に加盟した。トルクメニスタンは現加盟国だが永世中立国を宣言し、加盟資格を永久停止して準加盟国として参加している。ウクライナは加盟国であったが、CIS憲章の批准を拒否し、客員参加国として参加していた。

初期の活動

ソ連崩壊によって誕生したCISであるが、加盟各国および西側諸国にとって最大の懸案は、各地に置かれた膨大な軍事施設、戦略核弾道ミサイルであった。特に核戦力がベラルーシウクライナカザフスタンによって大量に保管されていたことは脅威であったが、CISによってロシアが一括管理することが取り決められた。カザフスタンのICBM用核弾頭650発は1995年4月に撤去。ベラルーシは核弾頭18発を1995年末、ICBM18基を1996年に撤去。ウクライナにはICBM176基、戦略爆撃機46、核弾頭は実に1592発が存在していたが、第一次戦略兵器削減条約のリスボン議定書に基づいて、全てロシアの管理下におかれた。またカザフスタンに建設したバイコヌール宇宙基地ロシアカザフスタンに使用料を支払うこととした。

1992年バルセロナアルベールヴィルにおけるオリンピックでは、統一した選手団を送ることとした。ジョージアが当時はまだ加盟していなかったため、地域名はCISフランス語Communauté des États indépendants (CEI) も用いられず、英語のUnified Team にあたるフランス語のÉquipe Unifiée からEUNと表記された。日本のマスメディアでは、漢字名で「独立国家共同体」或いはCISと呼ばれたりしたが、事実上「旧ソ連統一チーム」として扱われた。

ユーラシア経済共同体 (EurAsEC)と民主主義と経済発展の機構 (GUAM)

設立からしばらくは、ボリス・エリツィンのロシアが安定しなかったこともあり、共同体としての連携は目立たず、その間に、新設国は概ね強大な権力を持った大統領が治める独裁国家となった。ベラルーシ、カザフスタン、タジキスタン、キルギス、アルメニアはロシアとの緊密な関係を保ち、5か国で関税同盟を基礎にして、2000年10月ユーラシア経済共同体 (EurAsEC) を結成した。これに対し、ジョージア、ウズベキスタン、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバはロシアから距離を置く政策を採り、ウズベキスタンを除く4か国は、ロシアに対抗して1997年にこれら諸国の頭文字を採ったGUAMを結成した[2]。この組織には1999年にウズベキスタンも参加し、GUUAMと呼ばれるようになったが、2005年にウズベキスタンは脱退し、残った4か国は2006年にこの組織を「GUAM 民主主義と経済発展のための機構」へと改称した。これらの国は、2006年7月のCIS首脳会談に欠席している。こうしてCIS内に、ロシアを中心とする統合派と、ウクライナやジョージアなどからなる反統合派の2つのグループが成立することとなった。

バラ革命、オレンジ革命

2000年ウラジーミル・プーチンがロシア大統領となると、周辺国との連携を強化しようと試みるが、2001年アメリカ同時多発テロが発生したため、国内のテロ対策も踏まえ、対テロ戦争に同意してアフガニスタン戦争のため、ウズベキスタンタジキスタンへのアメリカ軍駐留を黙認したが、中央アジアでのアメリカの覇権が強まると考えられた。

プーチンは2003年イラク戦争には反対して米国と対立する。イラクサッダーム・フセイン政権打倒を果たし、西欧のNGOなどと共にCIS域内の民主化勢力の支援を行った。この結果、ジョージア(バラ革命)、ウクライナオレンジ革命)、キルギスチューリップ革命)で独裁政権が倒れて民主化が達成された。しかし、米軍が駐留していたウズベキスタンでは、市民運動が革命に繋がらずに失敗、その結果アメリカはウズベキスタンのイスラム・カリモフ大統領の怒りを買い、(アフガン作戦が一段落したこともあるが)同国から米軍を撤収させることとなった。

ウクライナやジョージアは北大西洋条約機構 (NATO) 加盟の意思を表明しているが、実現していない。以前よりCISへの嫌悪を隠さなかったジョージアは、2008年8月の南オセチア問題をきっかけとしてCISからの脱退を表明した[3]。このときロシアは南オセチアに爆撃を開始したジョージアに対して住んでいるロシア人を守るためと称して爆撃・侵攻したが、CISはこれに対して声明を発せず、また各国も沈黙(賛成も反対もしない)を通している。

機構

  • 国家元首会議
  • 政府議長会議
  • 外務相会議
  • 国防相会議
  • 国境軍司令官会議
  • CIS議会間総会
  • 経済裁判所

加盟国

国名 CIS加盟 CISへの加盟批准 CIS憲章の批准 CISにおける現在の状況 ユーラシア経済共同体(EurAsEC)加盟(CIS内経済統合派) 集団安全保障条約(CSTO)加盟(CIS内軍事統合派) 民主主義と経済発展のための機構GUAM加盟(CIS内軍事分離派) 中央アジア協力機構 (OCAC)加盟
 ベラルーシ 1991年12月8日 1991年12月10日 1994年1月18日 創設時加盟国 加盟国(2000年以降) 1993年12月31日 - -
ロシアの旗 ロシア 1991年12月8日 1991年12月12日 1993年7月20日 創設時加盟国 創設時加盟国(2000年以降) 1992年5月15日 - 加盟国(2004年以降)
アルメニアの旗 アルメニア 1991年12月21日 1992年2月18日 1994年3月16日 加盟国 オブザーバー(2003年以降) 1992年5月15日 - -
アゼルバイジャンの旗 アゼルバイジャン 1991年12月21日 1993年9月24日 1993年12月14日 加盟国 - 1993年9月24日、1999年に撤回 創設時加盟国(1997年以降) -
 カザフスタン 1991年12月21日 199年12月23日 1994年4月20日 加盟国 創設時加盟国(2000年以降) 1992年5月15日 - 創設時加盟国(2002年以降)
キルギスの旗 キルギス 1991年12月21日 1992年3月6日 1994年4月12日 加盟国 創設時加盟国(2000年以降) 1992年5月15日 - 創設時加盟国(2002年以降)
モルドバの旗 モルドバ 1991年12月21日 1994年4月8日 1994年6月27日 加盟国 オブザーバー(2003年以降) 未批准 創設時加盟国(1997年以降) -
 ウズベキスタン 1991年12月21日 1992年1月4日 1994年2月9日 加盟国 加盟国(2006-2008)、脱退(2008年以降) 1992年5月15日 加盟国 (1999-2005)、脱退(2005年以降) 創設時加盟国(2002以降)
タジキスタンの旗 タジキスタン 1991年12月21日 1993年6月26日 1993年8月4日 加盟国 創設時加盟国(2000年以降) 1992年5月15日 - 創設時加盟国(2002年以降)
 ウクライナ 1991年12月8日 1991年12月10日 未批准 創設時加盟国(1991-1993)、参加国(1993-2014)、脱退(2014年以降) オブザーバー(2000年以降) 未批准 創設時加盟国(1997年以降) オブザーバー(脱退?)
トルクメニスタンの旗 トルクメニスタン 1991年12月21日 1991年12月26日 未批准 正式加盟国(1991-1993)、参加国(1993-2007)、準参加国(2007年以降) - 未批准 - -
ジョージア (国)の旗 ジョージア 1993年12月3日 1993年12月3日 1994年4月19日、2008年に撤回 加盟国(1993-2008)、脱退(2008年以降) - 1993年12月9日、1999年に脱退 創設時加盟国(1997年以降) オブザーバー(脱退?)

2018年現在、独立国家共同体に加盟しているのはロシア、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、ベラルーシ、アルメニア、アゼルバイジャン、モルドバの9か国である。

ウクライナは2014年3月19日に脱退を宣言。2016年11月には、パヴロ・クリムキン外相が、同国のニュースチャンネル112ウクライナとのインタビューで、脱退に向けた準備を進めていることを確認した[4]

なお、議長国は持ち回りで務めるが、客員参加国でも議長国となることが可能である。実際に2012年トルクメニスタンが議長国を務めている。また2014年の議長国はウクライナであったが[5]2014年ウクライナ騒乱およびその後のクリミア危機の影響で議長国の座から退いた。2014年の議長国はベラルーシ2013年の議長国)とカザフスタン2015年の議長国予定)が共同で務めた[6]

執行書記

ファイル:CIS meeting 2008.jpg
ビシュケクで2008年に集合したCIS加盟各国の指導者
執行書記 出身国 在任期間
Ivan Korotchenya  ベラルーシ 1991年12月26日 – 1998年4月29日
ボリス・ベレゾフスキー ロシアの旗 ロシア 1998年4月29日 –1999年3月4日
Ivan Korotchenya  ベラルーシ 1999年3月4日– 1999年4月2日
ユーリ・ヤロフ ロシアの旗 ロシア 1999年4月2日 – 2004年6月14日
ウラジーミル・ルシャイロ ロシアの旗 ロシア 2004年6月14日 – 2007年10月5日
セルゲイ・レベジェフ ロシアの旗 ロシア 2007年10月5日 – 在任中

加盟各国の経済データ

人口

(2015年)

GDP 2007年

(USD)

GDP 2012年

(USD)

GDP成長率

(2012年)

一人当たりGDP

(2007年)

一人当たりGDP

(2012年)

ベラルーシ 9,475,100 45,275,738,770 58,215,000,000 4.3% 4,656 6,710
カザフスタン 17,417,447 104,849,915,344 196,642,000,000 5.2% 6,805 11,700
キルギス 5,776,500 3,802,570,572 6,197,000,000 0.8% 711 1,100
ロシア 146,270,033 1,294,381,844,081 2,022,000,000,000 3.4% 9,119 14,240
タジキスタン 8,610,000 2,265,340,888 7,263,000,000 2.1% 337 900
ウズベキスタン 31,025,500 22,355,214,805 51,622,000,000 4.1% 831 1,800
アゼルバイジャン 9,356,100 33,049,426,816 71,043,000,000 3.8% 3,829 7,500
モルドバ 3,558,200 4,401,137,824 7,589,000,000 4.4% 1,200 2,100
アルメニア 3,022,000 9,204,496,419 10,551,000,000 2.1% 2,996 3,500
このデータは、国際連合の統計部門とアメリカ中央情報局のデータによる。[7]

その他

CIS諸国の交通

これらの鉄道は1520mm広軌であるために今でも頻繁に国際列車が運行され、ソ連時代からのエレクトリーチカや客車が各国で使用され、各国で様々な内装や塗装に変更され、個性が出来ている。CISは広大であるが電化率は高く、中央アジアでも電気機関車やエレクトリーチカが走っている。しかしEUに加盟したバルト三国NATOに加盟をしようとしているウクライナではヨーロッパの標準軌ではないためにボトルネックとなり、フリーゲージトレインが使用されている区間がある。

現在ロシアではモスクワサンクトペテルブルクを結ぶドイツICEをモチーフにした高速列車・サプサン号が、ウズベキスタンではタシュケントサマルカンドを結ぶスペインタルゴを元にした高速列車のアフラシャブ号が、カザフスタンでは同じくスペイン製のタルゴが高速列車として走っている。

関連項目

現在存在する組織・条約・構想

かつて存在した組織・条約

脚注

注釈

  1. バルト三国はソ連併合の歴史的経緯からCISに加盟する方針はなく、また軍事同盟である北大西洋条約機構 (NATO) に加盟している。

出典

  1. 「現代国際関係の基礎と課題」内第8章「ロシア・旧ソ連諸国」野田岳人 p143 建帛社 平成11年4月15日初版発行
  2. 「現代国際関係の基礎と課題」内第8章「ロシア・旧ソ連諸国」野田岳人 p152 建帛社 平成11年4月15日初版発行
  3. http://www.afpbb.com/articles/-/2505376 『「永遠にさらばだ、ソビエト連邦よ」、グルジアがCIS脱退へ』AFPBB 2008年08月13日 2017年3月12日閲覧
  4. Украина – СНГ: полувыход из полуобъединения, что в итоге?」РИА Новости Украина 2016年11月10日(ロシア語)
  5. http://www.cis.minsk.by/page.php?id=19109 (ロシア語)
  6. Belarus, Kazakhstan may take over CIS presidency from Ukraine (英語)
  7. The World Factbook”. . 2017年3月17日閲覧.

外部リンク