監査法人

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監査法人(かんさほうじん)とは、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明を組織的に行うことを目的として、公認会計士法34条の2の2第1項によって、公認会計士が共同して設立した法人をいう(公認会計士法1条の3第3項)。

概要

監査法人は、社員となろうとする5名以上の者によって設立され(このうち、少なくとも5名は公認会計士であることを要する)(34条の7第1項)、原則として公認会計士を社員とし(ただし、登録を受けた公認会計士以外の者も社員となりうる)(34条の4第1項)、公認会計士である社員が4名以下となった状態を法定解散事由とする(34条の18第2項)法人である。

監査法人には、法人に出資し社員として監査法人の重要事項の決定に参加する資格を持つ公認会計士のほか、従業員として法人と雇用契約を結ぶ公認会計士が在籍する。他に公認会計士でない社員及び従業員が在籍する。但し、公認会計士でない社員の割合は25%未満でなければならない(34条の4第3項、同施行規則19条)。

沿革

  • 1961年 大蔵省、協同組織体の研究を公認会計士協会に要請。
  • 1965年 山陽特殊製鋼倒産事件などの影響により、組織的監査の導入を求める動きが活発化。
  • 1966年 7月、監査法人として協同組織体としての業務を定める改正公認会計士法施行。
  • 1967年 監査法人の第一号として監査法人太田哲三事務所の設置承認。
  • 1968年 大蔵省、「一定規模以上の会社に係る証券取引法監査は監査法人に限ることが望ましい」との方針示す。
  • 2008年 有限責任監査法人の第一号として新日本有限責任監査法人が金融庁において登録される。

社員の権利義務

社員の責任について持分会社の規定を多く準用する(34条の22第1項)ほか、監査法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、各社員は連帯してその弁済の責めに任じ(34条の10の5第1項)、業務執行につき社員は全て業務を執行する権利を有し義務を負うとされる(34条の10の2)。他の士業法人と同様、合名会社に近似する法人形態である。

2004年4月1日に指定社員制度が導入され、法人と連帯して無限連帯責任を負う社員を法人の指定する監査証明業務を行う社員に限定することができるようになった。

有限責任監査法人

今日では、監査業務の専門化、高度化の進展によりそれぞれの社員が全ての監査法人の業務を相互に監視することが困難となってきたため、2008年4月1日からは有限責任監査法人と呼ばれる新たな責任形態の監査法人制度が導入された。これは欧米における職業的専門家による事業体が利用するLLCを参考に創設された制度である[1]

有限責任監査法人という名称から誤解されがちであるが、監査報告書に署名した指定有限責任社員は被監査会社からの訴訟に対して無限責任を負う(34条の10の4及び34条の10の5)。実質的には有限責任と無限責任の双方を具有する特殊な組織形態である。

有限責任監査法人は、第三者に対する損害賠償責任額を社員の出資の額を上限とするために、一定の財務要件や情報公開義務等を課すほか、名称に有限責任監査法人という文字を用いなければならない(公認会計士法34条の3)とされている。

業務

監査法人の業務の範囲は大きく以下の3つに分けられ、独立性保持の観点から詳細な規制が存する。

  1. 監査又は証明業務(34条の5本文、2条1項)
  2. コンサルティング業務(34条の5第1号、2条2項)あるいは「2項業務」
  3. 公認会計士試験に合格した者に対する実務補習(34条の5第2号)

監査証明業務

その他の業務

以下のような業務が行われている[6]

主な監査法人

グローバル化の進展により、現在では世界規模の大手会計事務所のネットワークであるBig44大監査法人)による寡占状態となっている。Big4の加入監査法人は、本部により提供される国際的に統一的な監査手法を用いてグローバル企業の監査(リファード業務等)を行っている。

日本

現在は、以下の4つの大手監査法人を指して、「4大監査法人」と呼ぶことが多い。あるいは、旧中央青山監査法人の流れを汲むPwCあらた有限責任監査法人をその規模や設立経緯等から除外し、同法人を除く3法人をもって「3大監査法人」と呼ぶことも多い。なお、かつて4大監査法人の一角を占めていた中央青山監査法人は、2006年に金融庁より業務停止処分を受けた。これを受け、一部のメンバーがあらた監査法人を設立し、中央青山監査法人はみすず監査法人に改称した。

その後、2007年2月に監査業務の継続を断念したみすず監査法人は、顧客企業や会計士を他の三大法人などへ移管し、2007年7月31日に解散した。

公認会計士・監査審査会では「上場会社を概ね 100 社以上監査し、かつ常勤の監査実施者が 1,000 名以上の監査法人」を「大手監査法人」と定義し、具体的には、

を大手監査法人としている[7]。これらは国際的な4大会計事務所とそれぞれ提携している。また、2018年5月にはこの4法人で「残高確認システム共同プラットフォーム化推進協議会」を立ち上げ、監査先の債権・債務に対する残高確認手続きの効率化を図ることとなった[8]

また同審査会は「大手監査法人以外で、比較的多数の上場会社を被監査会社としている監査法人」を「大規模な監査法人に準ずる規模の監査法人(準大手監査法人)」 と定義し、具体的には

を準大手監査法人としている[9]

その他の監査法人は公認会計士・監査審査会の定義では「中小規模監査事務所」とされており、例としては以下の監査法人がある。


これに加え、株式市場においてよく取り上げられる監査法人として、以下の監査法人がある。

監査の厳格化の中で、これら監査法人が注目されるのは、粉飾決算の疑惑などがある企業や、企業舎弟の標的にされている疑惑のある企業の法定監査を受託し、監査意見を表明することが比較的多い点にある。

なお、2017年5月現在、上場クライアントを1社以上持つ監査法人は136ある。

世界4大会計事務所

以下の4つは"Big4"と呼ばれ、それぞれ日本の大手・準大手監査法人と提携関係にある。

詳細は4大会計事務所を参照

かつてはアーサー・アンダーセンを加えて"Big 5"とされていたが、アンダーセンはエンロンの粉飾会計事件に関与したとして、大規模企業に対する監査業務が禁止されたため消滅した。

脚注・参照

  1. 当該制度の創設を受けて最初に組織変更した新日本有限責任監査法人の英文名称はErnst & Young ShinNihon LLCである
  2. 金融商品取引法193条の2第1項。
  3. 会社法328条、327条5項など。
  4. 独立行政法人通則法第39条。
  5. 国立大学法人法第35条
  6. 公認会計士制度委員会研究報告第6号(監査法人の提供業務について)」 (日本公認会計士協会2008年7月17日)
  7. (参考資料)監査事務所の概況(平成28年版モニタリングレポート)(公認会計士・監査審査会 2016年7月29日)
  8. 4監査法人が「残高確認システム共同プラットフォーム化推進協議会」を発足(2018年5月14日 有限責任監査法人トーマツ)
  9. 公認会計士・監査審査会検査の実効性の向上~大規模監査法人を中心に~」の公表について(公認会計士・監査審査会 2016年3月24日)

関連事項

外部リンク

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団体

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