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閏秒

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ファイル:Leap Second - June 30, 2012.png
追加する場合は、通常は存在しない23時59分60秒(協定世界時での時刻)を追加し調整する

閏秒(うるうびょう、: leap second)は、現行の協定世界時 (UTC) において、世界時UT1との差を調整するために追加もしくは削除されるである[1][2] 。この現行方式のUTCは1972年に始まった。2015年までに実施された計26回の閏秒は、いずれも1秒追加による調整であった[3]

27回目の閏秒の挿入は、2017年1月1日午前9時直前(日本標準時)に行われた[4]

概要

1日の長さ LOD (Length of Day)

ファイル:Deviation of day length from SI day.svg
1962年から2014年までの1日の長さ (LOD) の変動(緑線が一日の長さから86 400秒を差し引いたものの365日移動平均)

地球の自転に基づく世界時は、太陽が朝に出て夕方に沈むといった、日常生活に関係する時間観念からは便利である。しかし、地球の自転の角速度、すなわち「1日の長さ (LOD : Length of Day)」は一定ではない[5]。なお「LOD」は、1日の長さそのもの(例えば、86 400.002秒)をいう場合もあるが、1日の長さから86 400秒を差し引いたもの(例えば、0.002秒または2ミリ秒)をいうことが多い[6]ので注意が必要である。

24時間×60分×60秒 = 86 400秒であるから、歴史的には1秒の長さは1日の長さの86 400分の1と定義されてきた。問題は、この1日の長さとして、いつの時点における1日の長さを採用するかである。1956年に秒の長さを1900年1月1日時点の地球の公転速度によって定義した(これを暦表秒という)とき、その秒の長さは、1750年から1892年までの間(約140年間)のLODの天文観測結果によっていた(これはほぼ1820年時点でのLODの1/86 400を1秒と定めたことになる)。

1955年頃に、アメリカ海軍天文台 (USNO) のウィリアム・マーコウィッツイギリス国立物理学研究所 (NPL) のルイ・エッセンは、セシウム原子の超微細遷移周波数と暦表秒との関係を研究し[7]、1秒が9192631770周期だという数値を得たのであるが、彼らが基準とした秒の長さは、上記の暦表秒であった。そして、1967年に国際原子時 (TAI) におけるの長さを決めたとき、その長さは、マーコウィッツとエッセンが求めた9192631770周期の通りに定義された。

LODは長期的な傾向として100年間(正確にはユリウス世紀 = 36 525日)につき約1.4ミリ秒/日だけ長くなる[8]。1967年は、暦表秒の基準であった1820年から約150年が経過しており、この時点ですでに、LODは86 400.002秒(つまり2ミリ秒だけ長い)程度になってしまっていたのである[9]。こういうわけで、国際原子時による秒の定義が1967年にスタートしたときには、1日の長さ (LOD) と86 400秒(国際原子時によるもの)との間には、すでに数ミリ秒の差が存在していたのである。

秒の定義の基であるセシウム原子の振動数(精度は10-11)は、いうまでもなく、地球の自転(1日の長さ)(精度は10-8)とは全く無関係であり、かつ精度が1000倍も違うのであるから、国際原子時世界時との差が1950年代からすでに生じていたことと、そして、その差(マイクロ秒 - ミリ秒単位)がそれ以降は不安定になることは、当初から予定されていたことなのである。

LODの変化

LODは、1820年から150年後の1967年に約2ミリ秒/日程度長くなっていた。そして閏秒が導入された1972年のLODは約3ミリ秒/日に、1990年のLODは約2ミリ秒/日となり、1820年時点と比べて約2 - 3ミリ秒程度長くなってしまった[5]。1秒 ÷ 3ミリ秒/日 = 333日 であるから1972年頃には約1年( = 約365日)おきに、1秒 ÷ 2ミリ秒/日 = 500日 であるから1990年頃には約1年半( = 約548日)おきに閏秒を挿入する必要があった。

更に2003年のLODは 約86 400.001秒であり、1990年頃と比べてLODは更に短くなった。1秒 ÷ 1ミリ秒/日 = 1000日 であるから、2003年頃には、約3年( = 約1095日)おきに閏秒を挿入することとなった。LODが約86 400.001秒程度である傾向は、2015年に至っても継続している。

LODが長期的には100年間につき約1.4ミリ秒/日だけ長くなることは前述のとおりであるが、上記の1972年(3ミリ秒/日)、1990年(2ミリ秒/日)、2003年以降(1ミリ秒/日)の値からわかるように、ここ40年間では、一日の長さ (LOD) はむしろ短くなっている(地球自転速度が速くなっている)のである。日々のLODが86 400秒と比べてどれほど長いかは、IERS(後述)のウェブページで見ることができる[10][11]。また、これまでの約50年間のLODの変動も、IERSのウェブページで見ることができる[12]。これらによれば、現在(2015年)の平均的なLODは、86 400.001秒程度であり、年間を通じると86 400秒より長いのであるが、6月 - 8月にかけては86 400秒より短くなる期間さえあることがわかる。

精度と歩度のずれ

上記のように、「1日の長さ」LODは一定でなく、10-8程度の精度しかない。このためUT1における1秒も一定しておらず、時間の精密な標準としては不適当である。この点では1秒の長さに10-11以上の精度がある国際原子時の方が適切である。しかし国際原子時の歩度(時間の進み方)は地球の自転とは全く無関係であるので、両者の歩度のずれは避けられないのである。

LODの変動要因

LODの変動に最も大きな影響を及ぼすのは、潮汐であり、朔望月の周期で0.6-0.8ミリ秒程度の変動がある[13]

1年から数年程度の周期のLOD変動の原因は、その大部分が大気(地殻の相互作用)によることが確かめられている[14]

一方、LODの年単位より長周期の変動の原因は分かっておらず、未解決の課題である[15][16]による潮汐摩擦、地震による地球内部の質量の分布変化、マントルと外核の相互作用[17]、氷床の消長[18]、地球内部の核、風、海水などによる影響が考えられているが、定量的には分かっていない。

閏秒による調整の概要

現行の協定世界時 (UTC) は、国際原子時 (TAI) とUT1という2つの時刻系を基にしており、TAIと同一のSI秒の定義を用いている。

国際原子時は「原子や分子が2つのエネルギー準位間の遷移によって、ある特定の振動数を持つマイクロ波を放射する」原理を利用した原子時計に基づいており[19]、他方、世界時であるUT1は地球の自転に基いている[1][19]

国際原子時の利点を保ちつつ、昼と夜という生活感覚に合わせる方法が、閏秒による調整である。協定世界時は、1秒の長さは国際原子時に合わせつつ、UT1との時刻の差を閏秒によって調整しているのである[20]

閏秒挿入の理由についての間違った理解

閏秒の必要性や閏秒挿入の理由については、次のような説明がしばしば見られる。

  1. 地球の自転速度が徐々に遅くなっているために、これと国際原子時との差を調整するために閏秒を挿入している[21][22]
  2. 頻繁に閏秒が挿入されてきたのは、地球の自転が徐々に遅くなっており、この遅れを調整するためである。

以上の説明は、間違った理解に基づくものである[23][24][25][26]

正しくは以下のとおりである。

  • セシウム遷移の9 192 631 770周期を1秒とする国際原子時の歩度は、1750年 - 1892年の間(平均的には、1820年頃)に行われた天文観測からサイモン・ニューカムTables of the Sunに基づいて計算した秒の長さに基づいて決められた。よって、1958年当時の地球自転の歩度(86 400.0025 SI秒程度)とは、合わなくなっていたのである[27]
  1. したがって、後知恵ではあるが、国際原子時の歩度を、セシウム遷移の9 192 631 770周期ではなく、9 192 631 997周期にしておけば、1972年以降、2回のマイナス(閏秒の削除)と1回のプラス(閏秒の挿入)の3回だけの閏秒の削除・挿入で済んでいたはずである[28][29]。ただし、もし1967年時点で9 192 631 997周期にしていたとすると、(9 192 631 997 - 9 192 631 770)/9 192 631 770 = 2.469×10-8だけ、秒の長さを長く定義し直すことになり、1967年までに蓄積されていた様々な物理定数の数値を変更しなければならなくなるという大きな問題が生じることになったはずである。
  2. 地球の自転が長期的な傾向としては徐々に遅くなる(LODが大きくなる)のは事実であるが、それは1ユリウス世紀につき1.7ms/日 程度の変化[30]USNOの解説では、1ユリウス世紀につき1.4ms/日 程度の変化としている[31])の極めて小さなものである[32]。1972年以降の地球自転速度の変化は、上記の遅れによるものではなく、数年ないし数十年周期の、もっと大きく、不規則な変動によるものである[33][34]

協定世界時の歴史

旧・協定世界時は、基本的に世界時 (UT1) の補正版である世界時 (UT2) を採用し[19]、現在とは異なる秒の定義を用いており、1971年まで使用された。

国際原子時 (TAI) が1958年1月1日0時(世界時での時刻)に開始されたときはTAI=世界時 (UT2) と起点を定めた[19]。その後1967年に1の定義がセシウム133原子を用いた現行の定義へ変更された[2][19]

1972年1月1日0時に現行の協定世界時 (UTC) が、TAIと同じくSI秒の定義を用い、UTC = TAI - 10秒として開始された[2]。その後、1972年7月1日実施の第1回から2017年1月1日実施の第27回まで、いずれも正の閏秒(1秒追加)による調整が実施され、現在はUTC = TAI - 37秒となっている[3]

時刻情報サービスでの対応

協定世界時と日本標準時

日本では、総務省が所管する(担当部局課は情報通信国際戦略局技術政策課)[35]国立研究開発法人情報通信研究機構 (NICT) 電磁波計測研究所の時空標準研究室が協定世界時 (UTC) を高精度で生成し ("UTC (NICT)")、これに9時間を加えたものを日本標準時 (JST) として提供している[36]

日本標準時では、閏秒による調整のタイミングは、実施日の8時台の最後(午前8時59分)となる。

標準電波

NICTによって運用されている、日本標準時を提供する標準電波(無線局コールサインJJY)は、電波時計の時刻校正などに広く利用されている[37]

標準電波の時刻送信フォーマット[38]には、閏秒の挿入(または削除)を予告する情報が含まれている。実際の電波時計では、単に00秒の1秒前(通常は59秒)を示すP0マーカーの次の1秒で00秒にリセットする動作だけが実装されていて、表示としては「9時00分00秒」(日本標準時。以下本節と次節で同じ)が2回繰り返される(または8時59分59秒が飛ばされる)という動作が多い。実際の電波時計は常時受信可能とは限らないため、1時間に1回、あるいは1日に1回程度しか校正しない場合がある。いずれの場合も、次の校正時刻でこのような動作になる。また標準電波を強制受信することにより、次回の校正時刻を待たずとも挿入後の時刻に合わせることができる[39]

NTTの時報サービス

NTT東日本NTT西日本の電話サービスにおける時報サービス(電話番号117)では、2012年7月現在、正の閏秒については標準電波と同様に「8時59分60秒」を挿入する形で対応している[40]

ただし、加入電話およびINSネットの電話サービスから発信された場合と、ひかり電話から発信された場合とで、9時のガイダンス方法が異なる。加入電話やINSネットから発信された場合は、8時59分57秒には予報音を鳴らさず、同58秒、同59秒および同60秒に予報音を鳴らし、9時に時報音(ポーン音)を1回鳴らす。これに対し、ひかり電話から発信された場合は、8時59分57秒、同58秒および同59秒に通常どおり予報音を鳴らし、時報音(ポーン音)を同60秒と9時に鳴らす(2回連続でポーン音が鳴る)[41]

なお、加入電話やINSネットから発信された場合、2009年1月1日実施の第24回閏秒調整までは、秒音を追加せずに、8時58分20秒より秒音間隔を1.01秒に伸ばし、9時の時報音で元の間隔に戻す対応が取られていた[42][43][44]。これは時報を1秒分遅れさせて調整する方法であるため、8時58分21秒の秒音から8時59分59秒の秒音までの99回は、正確な時報となっていなかった。

負の閏秒はこれまで前例がなく、対応方法が発表されたことはない。

NTP (Network Time Protocol)

NTP (Network Time Protocol) はコンピューター同士の時刻を同期させるプロトコルである。正確な時刻の同期が必要なサーバー系OSで広く使われており、現在ではMac OS・Windows系OS(「インターネット時刻に同期」)などパーソナルコンピュータでも利用可能である[45]

NTPサーバーは時刻を比較する相手となる他のNTPサーバーと時刻情報をやり取りするが、直前に閏秒が挿入・削除された場合にそれを示す警告情報も一緒にやり取りする。閏秒は1秒ステップさせるため、これがなければ突然他のNTPサーバーより時刻が遅れた(進んだ)ように見え、閏秒挿入・削除後しばらくの間、時刻精度に影響を及ぼすと考えられるからである。受け取った側がどう処理するかはNTPサーバープログラムの実装に任される。しかし、削除された1秒に自動起動するサービスがあるかもしれなかったり、外部要因で日付が変わると無効になるライセンスがありえたりするため注意が必要である[45]

また現実には、他のNTPサーバーの閏秒情報を鵜呑みにすると偽の閏秒情報で時刻が狂わされる危険が考えられるため、コンピューターの管理者が編集・設置する『閏秒情報ファイル』を使って時刻のオフセットを管理する場合がある[46]

うるう秒の挿入は過去に何度も問題を引き起こしている[47]ため、Googleの公開NTPサーバでは、一秒挿入するのではなく、うるう秒の前後20時間をかけてゆっくり一秒分の時間を伸ばすことで問題を回避している[48]

GPS (Global Positioning System)

GPS衛星航法に使われるシステムである。GPSのシステム時刻はGPS時刻と呼ばれる。GPS衛星に搭載された原子時計は、地上からの指令でGPS時刻に合うよう校正される。GPS受信機は、複数のGPS衛星から受信地点まで電波が届いた時間を計測して各衛星と受信地点の距離を求め、それから計算で受信座標および高精度の時刻を得る[49]

GPS時刻は、1980年1月6日時点ではUTCと同一(したがって TAI - 19秒)であった。その後UTCに閏秒が挿入されても、TAIと同様にGPS時刻は修正されていない。したがってGPS時刻はUTCに比べ、このとき以降挿入された閏秒の実施回数秒だけ進んでいる。

前述のように、GPS受信機は高精度の時刻を得ているため、基準時計として利用されることが多い。GPS衛星が送信するブロードキャストメッセージには、UTCとGPS時刻の差(閏秒の実施回数)が含まれており、GPS受信機は、閏秒の分を修正してUTCを出力している[45]

その他

ファイル:Koganei Nict Honbu Oodokei 1.jpg
情報通信研究機構の大時計。
閏秒が表示されている。

小金井市にある情報通信研究機構 (NICT) の本部建物正面中央上部にあるディジタル表示の大時計が日本では代表的だが、閏秒の「60秒」という時刻の表示に対応している時計がいくつかあり、閏秒による調整があった、というニュースを伝える写真などで使われることがある[50]

コンピューターソフトウェアへの影響

うるう秒の影響により、コンピュータ類で異常動作が起きることがある。特に常時稼働させているサーバ類で問題となりやすい。

2012年7月1日のうるう秒では、Linux のカーネルのスレッド関係のバグにより、JavaMySQL など各種プログラムで、高負荷になったり異常な動作をしたりした[51]。これにより、VPSなどの共有系のサーバーが過負荷になった。また、au、mixiGawkerStumbleUponYelpfoursquareLinkedIn[51][52][53]など世界中の様々なインターネットサービスで障害が発生した。Linux カーネル 2.6.29 で修正したはずであったが[54]、実際は、それよりも古いカーネルにバグ修正を加えたものではなく、それよりも新しいカーネルに未知のバグが存在しており、問題が発生した。

2015年7月1日は、日本では平日始業時間帯の実施になるため、東京証券取引所などはトラブルを警戒して、事前対策を講じた[55]

将来

廃止論と廃止反対論

閏秒の存廃については、国際電気通信連合で議論があり、2013年に閏秒を廃止することを目指す提案もなされていた[56][57][58]。しかし2012年1月の総会では2015年の総会まで結論を見送った[59][60]

2015年11月に開催された国際電気通信連合(ITU)の世界無線通信会議(WRC-15)総会において、うるう秒の廃止を含む新たな時系の導入・影響については一層の研究が必要との決定がなされた。今後の研究の結果を踏まえ、2023年のWRCで再び検討することとなった。この決定によって、うるう秒は当面の間、存続することとなった[61][62][63]

廃止するべき理由としては、次のようなものが挙げられている。

  • 閏秒があるとUTCは一様の尺度ではなくなる(例えば23:00 UTCから翌0:00 UTCの時間間隔が場合によって異なる)ので不便。
  • 閏秒の調整を手動で行わなければならず、間違いや時計間の不整合が起こりやすい。航空管制システムなどのトラブルにつながる可能性もあり、人命への余計なリスクとなる。
  • 一様の尺度が望ましい局面では、GPSの時系のように「ある時点のUTCと同期しつつ閏秒なし」という新しいシステムが用いられることがあるが、「ある時点のUTCと同期しつつ閏秒なし」は実際上、閏秒の数だけバリエーションがあり、時刻システムの乱立につながるうえ、相対的にUTCの価値・有用性・権威を低下させ、度量衡統一の観念にも反する。

一方、廃止に反対する理由としては、次のようなものがある。

  • 天体観測・アンテナ制御などのソフトウェア、ハードウェアなどにはUT1-UTCの絶対値が1秒を超えないという前提で設計されているものも少なくなく、その前提が破れると大きな改修が必要になり、予期せぬトラブルの原因ともなる。
  • 市民生活は依然地球の自転と同期しており、UT1-UTCの差が累積するのは好ましくない。

長期的な問題

地球の自転は、短期的にはさまざまな予測困難な小さい揺らぎを示しつつ、長期的には、潮汐力を主要原因として減速傾向にあり、変化率は過去2700年間の平均で (+1.70±0.05) ms/cy、つまり、1ユリウス世紀ごとに、LODは1.7ミリ秒ほど長くなってきたとされる[64]。この状態が続くと正の閏秒の挿入頻度は徐々に増加し、21世紀中には毎年1回ずつが当たり前になるかもしれない。[65]今後の地球の自転の変動をどう推定するかによって予測時期は変わるが、恐らく22世紀 - 23世紀には年2回の閏秒も一般的になり、西暦3000年 - 4000年ごろには年12回の閏秒が必要になると考えられ、それを超えると現在の閏秒の方法では平均的に間に合わなくなってしまうし、常にUTCとUT1の差を±0.9秒以内に保つという目標も、遅くとも同時期(場合によってはより早期)には達成不可能になる[66]。この問題について、いくつかの提案がなされている[67]

反対に、うるう秒を廃止した際の長期的な問題もあり、うるう秒がなくなることは、地球の自転に基づく時刻(天文時)と原子時計との同期が取れなくなるため、現在から100年経過すると原子時計のほうが15秒 - 70秒程度進むと考えられている。非常に長期的だがしまいには昼夜逆転の可能性もありうる。そのためうるう秒を廃止した場合も原子時計の時刻と天文時が同期されなくなり、時刻と昼夜の関係が崩れていく問題がある。

閏秒と閏日(閏年)

閏秒と閏日閏年)は全く無関係である。閏秒はLOD(1日の長さ)が一定ではない(すなわち地球の自転が一定ではない)ことにより生じる、原子時計とのズレの調整のためのものである。もし閏秒による時間調整がなければ、約12万年後には、昼夜の逆転があり得る(LODが86 400秒に比べて丁度1ミリ秒だけ長い状態が継続すると仮定すると、12時間 × 3600秒 / (0.001秒×365.2422日) = 118 278年となる)。

これに対して閏日(閏年に挿入される臨時の2月29日)は、地球の公転周期が約365.2422日と、365日に比べて0.2422日だけ長いことを調整するためのものである。閏日(閏年)を設けないとすると、0.2422日 × 750年 = 182日であるから、750年後にはカレンダー上は1月なのに、季節は7月というズレが起こってしまうのである。

このように閏秒と閏日閏年)、さらに閏月は全く関係のない現象であるのに、同じ名前(たとえば、日本語では「閏」、英語では "leap" )を使っているのは、暦を調節する事象という類似性によるものに過ぎない。なお、英語の "leap" は、平年では1日ずつずれる曜日と月日の対応が、閏日により閏年には2日ずれる(飛ぶ)ということに由来する。「閏」は余分の、という意味であり閏月に由来する。なお英語ではこれらによる暦の調整を intercalation と言う。

脚注

  1. 1.0 1.1 うるう秒に関するQ&A|2009年1月実施版”. 独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) 光・時空標準グループ 日本標準時プロジェクト. . 2008閲覧.
  2. 2.0 2.1 2.2 原子時と「うるう秒」”. 独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) 時空標準研究室. . 2018閲覧.
  3. 3.0 3.1 うるう秒実施日一覧”. 国立研究開発法人 情報通信研究機構 (NICT) 光・時空標準グループ 日本標準時プロジェクト. . 2015閲覧.
  4. 元日に「うるう秒」午前9時前に1秒調整”. NHKニュース. . 2017閲覧.
  5. 5.0 5.1 質問4-4) 1日の長さは変化しているの? 国立天文台 2012年12月7日閲覧
  6. [1] length of day (LOD)、IERS Glossary
  7. W Markowitz, RG Hall, L Essen, JVL Parry (1958). “Frequency of cesium in terms of ephemeris time”. Physical Review Letters 1: 105–107. doi:10.1103/PhysRevLett.1.105. http://www.leapsecond.com/history/1958-PhysRev-v1-n3-Markowitz-Hall-Essen-Parry.pdf. 
  8. [2] LEAP SECONDS, USNO "Through the use of ancient observations of eclipses, it is possible to determine the average deceleration of the Earth to be roughly 1.4 milliseconds per day per century. "
  9. アメリカ海軍天文台 (USNO) によるLEAP SECONDS の解説 「The Earth is constantly undergoing」から始まるパラグラフ及び次の「The length of the mean solar day has increased」から始まるパラグラフ "The length of the mean solar day has increased by roughly 2 milliseconds since it was exactly 86,400 seconds of atomic time about 1.88 centuries ago (i.e. the 188 year difference between 2008 and 1820). That is, the length of the mean solar day is at present about 86,400.002 seconds instead of exactly 86,400 seconds."
  10. [3] LATEST EARTH ORIENTATION PARAMETERS Excess of the length of day. y軸が、観測されたLODと86 400秒との差(ミリ秒単位)を示している。
  11. [4] 左側のグラフが最近1年間のLODと86 400秒との差を秒単位で示している。
  12. [5] (PDF) Length of Day (Earth rotation rate)
  13. TIDAL VARIATIONS OF UT1 & LOD 潮汐によるLODの変動状況を見ることができる。
  14. [6] 測地学テキスト、2-3-4-3自転速度の変化、日本測地学会
  15. [7] 未解決の課題 川崎一朗(京都大学防災研究所)京都大学理学部(理学研究科)地球物理学教室同窓のつどい、2010年2月13日
  16. [8]
  17. ニュートン 2012年6月29日閲覧
  18. [9] 自転速度の変動が地球磁場に与える影響を解明、独立行政法人 海洋研究開発機構、2013年9月11日
  19. 19.0 19.1 19.2 19.3 19.4 時空分野、時間に関する用語集”. 独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) 時空標準研究室 周波数標準グループ. . 2018閲覧.
  20. 質問4-3) 「うるう秒」ってなに? 国立天文台 2011年10月4日
  21. [10] 星を見る・宇宙を知る・天文を楽しむAstroArts、来月1日午前9時、3年半ぶりのうるう秒挿入、2013年7月7日閲覧
  22. [11] NHK解説委員室 解説アーカイブス、くらし☆解説 水野倫之解説委員、「うるう秒と時をめぐる対立」2012年6月29日、2013年7月7日閲覧
  23. 国際原子時・協定世界時とうるう秒 ここの記述にあるように「地球の自転が遅くなっているため」などの表現ではないことに注意。    ■協定世界時(UTC )とうるう秒調整、「地球の自転速度は、潮汐摩擦などの影響によって変化するため、世界時(UT)と協定世界時(UTC)との間には差が生じます。そこで、協定世界時(UTC)に1秒を挿入・削除して世界時UT1との差が0.9秒以上にならないように調整しています。」
  24. 「よく、閏秒が必要なのは、地球の自転が遅くなっているからだと言われている。本章や閏秒に関する他の文献を何の気なしに読めば、実際、地球は減速していて、時間がそれに合わせるために閏秒が必要になるのだと思うようになるかもしれない。しかしそうではない。1990年代の大半では、地球は速くなっていて(年ごとの比較だが)、この60年間でいちばん速くなっている。それでもこの27年間に22回の閏秒を置いてきた。となると、いったい閏秒はなぜ必要なのだろう。」、トニー・ジョーンズ (2000). 原子時間を計るー300億分の1秒物語. 青土社. ISBN 9784791759323. 
  25. Jones, Tony (2000). Splitting the Second - The Story of Atomic Time. IOP Publishing Ltd. ISBN 0750306408. 
  26. [12] アメリカ海軍天文台によるLEAP SECONDS の解説 "Confusion sometimes arises over the misconception that the regular insertion of leap seconds every few years indicates that the Earth should stop rotating within a few millennia. The confusion arises because some mistake leap seconds for a measure of the rate at which the Earth is slowing. The 1 second increments are, however, indications of the accumulated difference in time between the two systems. (Also, it is important to note that the current difference in the length of day from 86,400 seconds is the accumulation over nearly two centuries, not just the previous year.) As an example, the situation is similar to what would happen if a person owned a watch that lost 2 seconds per day. If it were set to a perfect clock today, the watch would be found to be slow by 2 seconds tomorrow. At the end of a month, the watch will be roughly a minute in error (30 days of 2 second error accumulated each day). The person would then find it convenient to reset the watch by one minute to have the correct time again. This scenario is analogous to that encountered with the leap second. The difference is that instead of setting the clock that is running slow, we choose to set the clock that is keeping a uniform, precise time. The reason for this is that we can change the time on an atomic clock, while it is not possible to alter the Earth's rotational speed to match the atomic clocks! Currently the Earth runs slow at roughly 2 milliseconds per day. After 500 days, the difference between the Earth rotation time and the atomic time would be 1 second. Instead of allowing this to happen, a leap second is inserted to bring the two times closer together."
  27. [13] (PDF) "THE PHYSICAL BASIS OF THE LEAP SECOND" (The Astronomical Journal, 136:1906–1908, 2008 November)、2.2. Ephemeris Time 及び4. THE LEAP SECONDの章
  28. トニー・ジョーンズ (2000). 原子時間を計るー300億分の1秒物語. 青土社. ISBN 9784791759323. 
  29. Jones, Tony (2000). Splitting the Second - The Story of Atomic Time. IOP Publishing Ltd. ISBN 0750306408. 
  30. [14] (PDF) "THE PHYSICAL BASIS OF THE LEAP SECOND" (The Astronomical Journal, 136:1906–1908, 2008 November)、4. THE LEAP SECONDの章、p.1907 右、下から6行目
  31. [15] 「The Earth is constantly undergoing」で始まるパラグラフの3行目
  32. 月#月の影響も参照。自転にともなう、月および太陽による潮汐現象による変形により、地球の角運動量の持つ運動エネルギーが熱エネルギーに変えられ発散していることと、変形のひきずりによる月の公転の加速(永年加速)により、月の公転軌道が遠くなっていることのカウンターである、とマクロには説明される。
  33. [16]
  34. [17] Deviation of day length from SI day
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  40. 時報サービス「117」の「うるう秒」調整の実施について
  41. 【別紙】加入電話、INSネット(電話サービス)とひかり電話(電話サービス)のうるう秒における時報サービス「117」のガイダンスについて
  42. つまり、8時59分59秒(実際は8時59分59.99秒)の秒音が8時59分60秒に一番近い秒音となる。
  43. "時報サービス「117」番の「うるう秒」調整の実施について" 東日本電信電話株式会社ならびに西日本電信電話株式会社 2005年12月16日ニュースリリース 2008年9月7日 閲覧。
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  53. 朝日新聞デジタル:交流サイトのミクシィで4時間障害 うるう秒直後に発生 - 社会
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  65. 前掲の「調整実施日(日本標準時の午前9時直前に実施)」を参照。
    この、「調整実施日(日本標準時の午前9時直前に実施)」によると、1秒を加えた年はあれども、逆の1秒を減らした年はない。
  66. Allen, Steve (2003年4月). “Mail to LEAPSECS on 2003-04-22: UTC is doomed”. . 2009年3月2日閲覧.
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関連項目

外部リンク