高齢化社会

提供: miniwiki
高齢化から転送)
移動先:案内検索
ファイル:Oecd-oldage supportratio.svg
OECD各国の老人(65-歳)一人あたり、生産年齢(20-64歳)人口[2]
濃橙は2012年時点、薄橙は2050年の予想

高齢化社会(こうれいかしゃかい)は、総人口に占めるおおむね65歳以上の老年人口(高齢者)が増大した社会のこと。65歳以上の高齢者人口(老年人口)が総人口に占める割合を高齢化率(こうれいかりつ)という。

人類社会は、一定の環境が継続すれば、ある一定の面積に生存している人口を養っていく能力に限界が訪れる。そして、人口を養う能力の限界に達し、ある程度の時間が経過すれば、必ず高齢化が顕在化してくる。高度に社会福祉制度が発達した国家にあっては、その負担に応じるため労働人口が子孫繁栄よりも現実にある高齢化対策に追われるため、少子化が進行して、さらなる高齢化を助長していく場合が多い。

高齢化と少子化とは必ずしも同時並行的に進むとは限らないが、年金医療福祉など財政面では両者が同時進行すると様々な問題が生じるため、少子高齢化と一括りにすることが多い。

国際連合2050年には世界人口の18%が65歳以上となると予測している[1]OECD諸国においては現加盟国の全てにおいて、2050年には1人の老人(65歳以上)を3人以下の生産人口(20-65歳)にて支える超高齢社会となると予測されている[2]

高齢化率による分類

高齢化社会という用語は、1956年昭和31年)の国際連合の報告書において、当時の欧米先進国の水準を基に、7%以上を「高齢化した (aged)」人口と呼んでいたことに由来するのではないかとされているが、必ずしも定かではない[3]。一般的には、高齢化率(65歳以上の人口が総人口に占める割合)によって以下のように分類される[4]

  • 高齢化社会 高齢化率7 - 14%
  • 高齢社会 同14 - 21%
  • 超高齢社会 同21% -
harvard_citation }}
2015年 2050年 2100年
年齢 0-14歳 15-59歳 60歳以上 80歳以上 0-14歳 15-59歳 60歳以上 80歳以上 0-14歳 15-59歳 60歳以上 80歳以上
全世界 26.0% 61.7% 12.3% 1.7% 21.3% 57.2% 21.5% 4.5% 17.7% 54.0% 28.3% 8.4%
日本 12.9% 54.1% 33.1% 7.8% 12.4% 45.1% 42.5% 15.1% 13.4% 45.6% 40.9% 18.5%
ドイツ 12.9% 59.5% 27.6% 5.7% 12.4% 48.3% 39.3% 14.4% 13.4% 46.9% 39.7% 16.2%
フランス 18.5% 56.3% 25.2% 6.1% 16.8% 51.4% 31.8% 11.1% 15.5% 48.6% 35.9% 14.7%
イタリア 13.7% 57.7% 28.6% 6.8% 13.0% 46.3% 40.7% 15.6% 13.7% 46.4% 39.9% 17.9%
韓国 14.0% 67.5% 18.5% 2.8% 11.4% 47.1% 41.5% 13.9% 13.3% 45.0% 41.6% 17.7%
スウェーデン 17.3% 57.2% 25.5% 5.1% 17.4% 53.0% 29.6% 9.5% 16.0% 50.4% 33.6% 13.0%
英国 17.8% 59.2% 23.0% 4.7% 16.6% 52.7% 30.7% 9.7% 15.2% 49.7% 35.1% 13.7%
米国 19.0% 60.4% 20.7% 3.8% 17.5% 54.7% 27.9% 8.3% 16.3% 51.1% 32.6% 11.5%

高齢化のメカニズム

・地域の人口構成は、発展途上段階から経済成長とともに、多産多死型多産少死型少産少死型と変化し、これを人口転換という。

ファイル:DTM Pyramids.svg
ピラミッド型(1種および2種)、釣り鐘型、つぼ形

発展途上段階では、衛生環境が不十分で乳幼児の死亡率が高いこと、単純労働需要が大きいため初等・中等教育を受けていない子供も労働力として期待されること、福祉環境が貧弱なため老後を子供に頼らなければならないことなどから、希望子ども数が大きい。また育児・教育環境や生活水準に比して予定子ども数も大きい。このとき人口ピラミッドは、底辺が高さに比べて大きい三角形の形状に近似し、ピラミッド型と言われる。

経済成長は衛生状態の改善と医療水準の向上をもたらすため、乳幼児の死亡が減り、平均寿命が延びる。そのため人口ピラミッドは、ピラミッド型を保ったまま拡大し、人口爆発が生じる。

経済発展による社会の変化が進むと、知的労働の需要が増して子供の労働需要が減退すること、福祉環境の充実により老後の生活を社会が支えるようになることなどから、希望子ども数が減少する。また育児・教育環境や生活水準に比して予定子ども数も小さくなる。一方、平均寿命の延びは鈍化するが、中年以下の死亡率はさらに低下する。このとき年少人口の低位安定と高齢人口の増加により、人口ピラミッドはつりがね型になる。

近代以降、人口爆発を経験した先進諸国は、人口安定的と予想された少産少死社会の実現を目標としてきた。しかし1970年代に急激な合計特殊出生率低下が生じて以降、出生率人口置換水準(2.08)は回復されず少子化が起きた。年少人口は減少し続け、1990年代後半には人口ピラミッドは口がすぼんだ壺型へと変化し、高齢化率が急上昇している。

このように、高齢化は総人口および年少人口が安定または減少する中で、高齢人口が相対的に増加していくことによって生じる。

平均寿命

平均余命とは、一定期間の(例えば1年間における)各歳のごとの死亡率が今後とも同じと仮定して、ある年齢の人が平均して後何年生きるかを表したものであり、特にゼロ歳の平均余命を平均寿命という。

平均寿命の延びの主な要因としては、乳幼児死亡率の低下、抗生物質による結核の死亡率の低下、公衆衛生の普及により生活環境が整備され伝染病による死亡率の低下、などである。また、最近の平均寿命の延びに大きく寄与しているのは、成人病、特に脳血管疾患の減少による中高年層の死亡率の改善である。

各国の高齢化

harvard_citation }}
順位 2015年 年齢(歳) 2030年予想 年齢(歳) 2050年予想 年齢(歳)
1位 日本 46.5 日本 51.5 その他の地域 56.2
2位 ドイツ 46.2 イタリア 50.8 韓国 53.9
3位 仏領マルティニーク 46.1 ポルトガル 50.2 日本 53.3
4位 イタリア 45.9 スペイン 50.1 ボスニア・ヘルツェゴビナ 53.2
5位 ポルトガル 44.0 ギリシャ 48.9 シンガポール 53
6位 ギリシャ 43.6 香港 48.6 香港 52.7
7位 ブルガリア 43.5 ドイツ 48.6 ポルトガル 52.5
8位 オーストリー 43.2 その他の地域 48.1 ギリシャ 52.3
9位 香港 43.2 スロベニア 48.1 キューバ 51.9
10位 スペイン 43.2 韓国 47.5 ポーランド 51.8

中国

国際連合人口部によると、中国の生産年齢人口(15-59歳)は、2015年頃にピークを迎え(67.6%)、2020年頃から急激に減少し、2050年には50.0%、2100年には46.9%まで減少すると、少子高齢化になることが予測されている[5]。中国の人口は2030年頃の14億6000万人がピークとなり、2100年には10億人にまで減少すると推測している[5]。 生産年齢人口のピークは2012年でった[6]

日本

ファイル:Population of Japan since 1872.svg
日本の人口統計。2009年現在(1872-2009)と将来予測(2010-)

日本は、国勢調査の結果では1970年(昭和45年)調査(7.1%)で高齢化社会、1995年平成7年)調査(14.5%)で高齢社会になったことがわかった[7]。また、人口推計の結果では、2007年(平成19年)(21.5%)に超高齢社会となった[8]

日本は、平均寿命、高齢者数、高齢化のスピードという三点において、世界一の高齢化社会といえる。総務省が発表した2016年9月15日時点の推計人口によると、65歳以上の人口は3514万人となり、総人口に占める割合は27.7%と過去最高を更新、人口の4人に1人が高齢者となった[9]

日本の少子高齢化の原因は、出生数が減り、一方で、平均寿命が延びて高齢者が増えているためである。日本の人口構成を人口ピラミッドで見ると、第1次ベビーブーム1947-1949年(昭和22-24年)生まれと第2次ベビーブーム1971-1974年(昭和46-49年)生まれの2つの世代に膨らみがあり、出生数の減少で若い世代の裾が狭まっている。また、第1次ベビーブームのいわゆる団塊の世代が、2012年から2014年にかけて高齢者の定義である65歳に到達するため、高齢化のスピードが最も早まる。それ以降は徐々に高齢化のペースは弱まるが、2020年には高齢化率は29.1%、2035年には33.4%に達し、人口の3人に1人が高齢者になると推計されている。

日本の高齢化率

1935年(昭和10年)の高齢化率が4.7%と最低であった。1950-1975年は出生率低下によって、それ以降は、死亡率の改善により高齢化率が上昇した。先進諸国の高齢化率を比較してみると、日本は1980年代までは下位、1990年代にはほぼ中位であったが、2010年(平成22年)には23.1%となり、世界に類を見ない水準に到達している。

また、高齢化の速度について、高齢化率が7%を超えてからその倍の14%に達するまでの所要年数(倍化年数)によって比較すると、フランスが115年、スウェーデンが85年、比較的短いドイツが40年、イギリスが47年であるのに対し、日本は、1970年(昭和45年)に7%を超えると、その24年後の1994年(平成6年)には14%に達している。さらに総務省2007年(平成19年)11月1日の推計人口において、75歳以上の総人口に占める割合が10%を超えたことを発表した。このように、日本の高齢化は、世界に例をみない速度で進行している。

高齢化社会の課題

1995年に高齢社会対策基本法が成立し、内閣府に高齢社会対策会議が設立されている。

シルバー民主主義の到来
高齢化社会の進展に伴い、政治家が高齢者を重視した政策を打ち出さなければならなくなり、現役労働者である若年・中年層よりも、引退し年金を受け取っている高齢者を優遇せざるを得ないという政治状況になりつつある。これは、一般にシルバー民主主義と呼ばれている(初出は1986年に発表された内田満著の「シルバー・デモクラシー」(有斐閣)と考えられる)。顕著な例としては、後期高齢者医療制度への反発が第45回衆議院議員総選挙における自民党大敗および民主旋風の一因になった。しかし、高齢者への偏重は若年層の不満を招き、世代間の対立を招く可能性があるという意見もある[10]

脚注

  1. 1.0 1.1 World Population Ageing: 1950-2050, United Nations Population Division.
  2. 2.0 2.1 Society at a glance 2014 (Report). OECD. (2014). Chapt.3.11. doi:10.1787/soc_glance-2014-en. 
  3. 大和総研 『最新版 入門の入門 経済のしくみ-見る・読む・わかる』 日本実業出版社・第4版、2002年、77頁。
  4. 松原聡 『日本の経済 (図解雑学シリーズ)』 ナツメ社、2000年、176頁。
  5. 5.0 5.1 国際連合人口部 2015, p. 18.
  6. 生産年齢人口が急激に減る中国、「不動産価格が維持できるわけない」=中国メディア”. . 2018年5月22日閲覧.
  7. 平成17年国勢調査 最終報告書「日本の人口」統計表(時系列表,都道府県一覧表)”. 総務省. . 2011閲覧. 20.年齢(3区分)別割合及び年齢構成指数-全国,都道府県(大正9年-平成17年) その3 65歳以上人口の割合(%) を参照。
  8. 人口推計(平成21年10月1日現在)年齢別人口”. 総務省. . 2011閲覧.表5. 年齢3区分別人口の推移(昭和25年-平成21年)を参照。
  9. 高齢者の人口”. 総務省 統計局. . 2014閲覧.
  10. 代表的な例としては、山野車輪の『「若者奴隷」時代-“若肉老食(パラサイトシルバー)”社会の到来』(晋遊舎2010年 ISBN 4863910703)において、2010現在の若者の不遇な現状は全て「強者である高齢者」のせいだと主張されている。

参考文献

関連項目

外部リンク

日本国内