PK戦

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PK戦(ピーケーせん)とは、サッカーにおいて、規定の試合時間を終了して決着がつかなかった際に行うものである。英語では"Kicks from the penalty mark" (KFPM) と呼ぶ。

大会によって異なるが、主にノックアウトトーナメントなど、勝ち上がりチームを必ず決めなければならない場合に行われる。

この方式が導入される以前は勝負が決まるまで再延長(再々延長)をくり返したり、後日の再試合またはコイントスなどの抽選で勝ち上がりチームを決定していた。

PK戦にまでもつれた試合は、PK戦の結果に関わらず公式記録上は引き分け扱いとなる[1]

進め方

まずコイントスを行い、勝ったチームが、使用するゴールを選択する(2016年改正以前は選択は主審に一任されていた)。次にもう一度コイントスを行い、トスに勝った主将のチームが先に蹴るか後に蹴るかを決める。主審は行われたキックの記録をつける。下記条件に従って、両チームが5本ずつのキックを行う。

  • キックは両チーム交互に行う。
  • 通常の試合におけるペナルティ・キックとは違ってインプレーの概念がないため、ゴールキーパーやゴールポストなどに跳ね返されたボールをキッカーが再びゴールに蹴り込むことはできない。ドリブルしながら蹴り込むようなこともできない(蹴れるのは一度のみ)。
  • 両チームが5本のキックを完了する以前に、他方が残りキックをすべて成功させたとしても、一方の現在の得点を下回ることが確定したときは、その時点で試合終了となり、以後のキックは行わない。したがって、3本ずつのキックを一方がすべて成功、他方がすべて失敗すれば、最短の3-0でPK戦終了となる。
  • 5本ずつのキックの後に両チームの得点が同じである場合は、同数のキックで一方のチームが他方より多くの得点を挙げるまで、それまでと同じ順序でキックを続ける(いわゆるサドンデス方式の一種)。
  • 一度キックを行った者は、チーム全員(ゴールキーパーを含む)が蹴り終えるまで再び蹴る事ができない。なお、キッカーが一巡しても決着がつかず二巡目に入る場合のキッカーの順番は一巡目と同じでなくてもよい。
  • ゴールキーパーがペナルティーマークからのキックの進行中に負傷して、ゴールキーパーとしてプレーが続けられなくなったときには、そのチームが競技会規則に定められた最大数の交代を完了していない場合は、氏名を届けられている交代要員と交代することができる。
  • PK戦に出場できるのは、試合終了時点で現にプレーしていた選手である(プレーしていない控え選手や、途中交代や退場などで退いた選手は出場できない)。一方のチームが相手チームより競技者が多い人数で試合が終了したとき、競技者のより多いチームは相手チームの人数と等しくなるように競技者数を減らす。除外するそれぞれの競技者の氏名と、背番号を主審に通知する。チームの主将がこの責任を持つ(例えばAチームが11人全員が揃っているのに対し、Bチームは退場者が出たことで9人しかいない場合はAチームはそのメンバーの中から9人を選ぶ。即ち2名はPK戦に出場できない)。

なお、大会によっては1人目からサドンデス方式のPK戦を行うことがある(1991年のコニカカップ1992年のヤマザキナビスコカップなど)。またビーチサッカーのPK戦はしばしば「1人目からサドンデス方式」で行われる(FIFAビーチサッカーワールドカップなど)。フットサルは「3人ずつのシュート」で決着を付ける(同点の場合は4人目からのサドンデス)。

歴史

1970年のワットニー杯、ハル・シティマンチェスター・ユナイテッドの試合において、初めてPK戦が行われ、マンチェスター・ユナイテッドが勝った。初めてのキッカーはジョージ・ベストであった。

主要な国際大会の決勝戦で優勝チームを決めるために、PK戦が初めて導入されたのは、1976年のUEFA欧州選手権1976におけるチェコスロバキア西ドイツの試合であった。5-3でチェコスロバキアが勝利した(2005年12月31日18:20の英語版より、一部翻訳)。FIFAワールドカップでの初めてのPK戦は1982年大会準決勝、西ドイツとフランスの試合で、西ドイツが勝利を収めている。

名称の由来

PKという言葉は「ペナルティーキック(Penalty Kick)」の略称である。これは上述のように、ペナルティーキックと同じ位置および方法によってキックを行うことから来ていると考えられるが、PK戦におけるキックは反則によって与えられるものではないため、正確にはサッカーのルールにおけるPKを行っているわけではない。ルール上ではペナルティーマークからのキック(kicks from the penalty mark)と呼ぶ。

先攻有利説

イギリスの教育・研究機関ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)により、以下のような研究結果が発表されている。

  • 1970年から2000年にかけて国内外で行なわれた主要な大会のPK戦2,820件を分析した結果、最初に蹴ったチームの60%が勝利している。言いかえれば後攻の勝率が40%ということであり、先攻の勝率は後攻の1.5倍ということである。
  • PKの先攻・後攻を決めるトスに勝った主将は、20人に19人(95%)の割合で先攻を選んでいる。
  • プロやアマの選手や監督240人を対象に行なったアンケートでも、ほぼ全員が先攻を望む。

研究を主導した教授のイグナシオ・パラシオス・ウエルタは「ポイントを先行されることからくる精神的なプレッシャーが、後に蹴るチームのパフォーマンスに明らかに影響をおよぼしている」と分析している[2]

先攻有利を解消するため、従来の先攻後攻が交互に蹴る方式ではなく、先攻→後攻→後攻→先攻の順番でキックを行う「ABBA方式」でPK戦を行うやり方もテストされている[3]

よく似た趣旨の試合形式

  • ハンドボールの「7mスローコンテスト」……延長戦で決着が付かない場合はまず3人ずつ行う。それでも決着しない場合は3人ごとに先攻・後攻を決めるが、4人目から後はサドンデス。得点は通常の試合方式と7mスローの合計となる。
  • アイスホッケーの「ゲームウィニングショット(シュートアウト)」……延長戦で決着が付かない場合はまず3人ずつ行い、4人目からはサドンデス。勝ったチームが延長戦を制したとみなされ、シュートの成功数にかかわらず得点は勝利チームに1点が加点される。
  • ラグビーの「キッキング・コンペティション」……延長戦で決着が付かない場合はまず5人ずつ行い、6人目からはサドンデスとなる。
  • 水球の「ペナルティースロー合戦」

脚注

  1. ワールドカップの決勝トーナメントなど、ノックアウトトーナメント方式の説明の際、マスメディアが「決勝トーナメントに引き分けはありません、延長、PK戦で必ず決着を付けます。」と説明することがあるが、PK戦になった試合は試合結果としては引き分けになるため、この説明は厳密には誤りである。
  2. PKは先攻が圧倒的有利、ルール改正を研究機関が提唱(欧州通信) - livedoor スポーツ 欧州通信 2010年12月17日
  3. ゲキサカ FUJIゼロックススーパーカップ特集ページ

関連項目