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{{Otheruses|酸と対になって働く一般の塩基|特に[[デオキシリボ核酸|DNA]]・[[リボ核酸|RNA]]の[[ヌクレオチド]]を構成する核酸塩基|核酸}}
 
{{酸と塩基}}
 
'''塩基'''(えんき、{{lang-en-short|base}})は[[化学]]において、[[酸]]と対になってはたらく[[物質]]のこと。一般に、[[水素イオン|プロトン]] (H<sup>+</sup>) を受け取る、または[[電子対]]を与える[[化学種]]<ref>[http://goldbook.iupac.org/B00601.html base] - IUPAC Gold Book</ref>。歴史の中で、概念の拡大をともないながら定義が考え直されてきたことで、何種類かの塩基の定義が存在する。
 
  
塩基としてはたらく性質を'''塩基性'''(えんきせい)、またそのような[[水溶液]]を特に'''アルカリ性'''という。酸や塩基の定義は相対的な概念であるため、ある系で塩基である物質が、別の系では酸としてはたらくことも珍しくはない。例えば[[水]]は、[[塩化水素]]に対しては、プロトンを受け取るブレンステッド塩基として振る舞うが、[[アンモニア]]に対しては、プロトンを与えるブレンステッド酸として作用する。塩基性の強い塩基を[[強塩基]](強アルカリ)、弱い塩基を弱塩基(弱アルカリ)と呼ぶ。また、[[核酸]]が持つ核酸塩基のことを、単に塩基と呼ぶことがある。
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'''塩基'''(えんき、{{lang-en-short|base}})
  
== アルカリ ==
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(1) 狭義には酸を中和する能力のある化合物,または水溶液中で OH<sup>-</sup> イオンを生成する化合物をいう。
[[アルカリ金属]]や[[アルカリ土類金属]]などの[[水酸化物]]、あるいはアンモニア、[[アミン]]など水溶液の[[水素イオン指数|pH]]が7より大きく塩基性を示す物質を総称して'''[[アルカリ]] ({{lang-en-short|alkali}})''' と呼ぶ<ref>『理化学辞典』 第五版, 岩波書店</ref>。[[アラビア]]の科学者[[ジャービル・イブン=ハイヤーン]]が生み出した概念である(「アルカリ」は[[灰]]を意味する[[アラビア語]]に由来する)。また、アルカリ性の水溶液やアルカリ金属のことを、単にアルカリと呼ぶことがある。アルカリ性の[[化合物]]は基本的に[[苦味]]を呈す。
 
  
== 塩基の定義 ==
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(2) 1923年にデンマークの物理化学者 [[J.N.ブレンステッド]]は塩基と酸の定義を拡大し,プロトンを受入れることのできる物質を塩基,プロトンを与えることのできる物質を酸と定義した ([[ブレンステッド=ローリーの定義]] ) 。たとえば OH<sup>-</sup> イオンは,H<sub>2</sub>S+OH<sup>-</sup>HS<sup>-</sup>+H<sub>2</sub>O のように,ほかの化合物からプロトンを受入れる力が強いので強い塩基であり,H<sub>2</sub>S は酸である。アンモニアは水溶液では NH<sub>3</sub>+H<sub>2</sub>ONH<sub>4</sub>
以下に、それぞれの塩基の定義を概略のみ述べる。{{main|酸と塩基}}
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<sup>+</sup>+OH<sup>-</sup> のようにふるまうので塩基であり,この場合,水は酸である。しかしカリウムアミド KNH<sub>2</sub> は,液体アンモニア中で KNH<sub>2</sub>+NH<sub>3</sub>KNH<sub>3</sub>
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<sup>+</sup>+NH<sub>2</sub>
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<sup>-</sup> のように反応するので,この場合にはアンモニアは酸であり,カリウムアミドが塩基である。このようにブレンステッドの定義は非水溶媒系にも適用され,相手次第で同一物質を塩基とも酸ともみることができる。
  
; アレニウス塩基 (Arrhenius base)
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(3) 1923年に [[G.N.ルイス]]は電子の授受に基づいて酸,塩基の定義をさらに拡張し,分子またはイオンを構成している原子の電子対により,相手と共有結合を形成できるものを塩基 ([[ルイス塩基]] ) ,そのような電子対を受けて共有結合をつくるものを酸 ([[ルイス酸]] ) と定義した。たとえば H<sub>3</sub>N:+BF<sub>3</sub>H<sub>3</sub>N:BF<sub>3</sub> の反応で,H<sub>3</sub>N: は塩基,BF<sub>3</sub> は酸となる。このルイスの定義による塩基,酸は,ブレンステッドの定義による塩基,酸を含むと同時に OH<sup>-</sup> や H<sup>+</sup> をもたない塩基や酸も含むので,非常に有用である。
: [[スヴァンテ・アレニウス|アレニウス]]の定義による塩基。水に溶けたときに[[水酸化物イオン]] (OH<sup>&minus;</sup>) を出す物質。下式において、[[水酸化ナトリウム]] (NaOH) はアレニウス塩基としてはたらいている。
 
: <ce>NaOH -> {Na^+} + OH^-</ce>
 
; ブレンステッド塩基 (Brønsted base)
 
: [[ヨハンス・ブレンステッド|ブレンステッド]]-[[マーチン・ローリー|ローリー]]の定義による塩基。プロトンを受け取る物質<ref>[http://goldbook.iupac.org/B00745.html Brønsted base] - IUPAC Gold Book</ref>。下式の反応で「'''B'''」、あるいは「'''B'''{{sup-}}」がブレンステッド塩基。
 
: <ce>B + H^+ -> B^+H</ce>
 
: <ce>B^- + H^+ -> BH</ce>
 
; ルイス塩基 (Lewis base)
 
: [[ギルバート・ルイス|ルイス]]の定義による塩基。電子対を与える物質<ref>[http://goldbook.iupac.org/L03511.html Lewis base] - IUPAC Gold Book</ref>。下式の反応で「'''B'''」がルイス塩基。
 
: [[Image:Lewis_acid-base_equilibrium.png|250px|ルイス酸塩基反応]]
 
  
== 英語 Base の語源 ==
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(4) 生化学では,広く有機塩基全体をさす。アミノ基,イミノ基,グアニジル基は,上の定義からも塩基性であるから,一級アミノ基をもつセロトニン,ノルアドレナリン,二級アミノ基をもつアドレナリン,四級アミノ基をもつカルニチンはすべて塩基性物質である。また,多くの植物アルカロイド (ニコチン,モルヒン,アトロピン,エフェドリン) やポリアミン類 (スペルミン,スペルミジン) も塩基性物質である。
錬金術の用語"the matrix"の類義語として、1717年にフランスの化学者 Louis Lémery が使用したのが最初である<ref name="Jensen">{{cite journal|author=Jensen, William B. |title=The origin of the term "base" |journal=The Journal of Chemical Education |year=2006 |volume=83 |page=1130 |url=http://www.che.uc.edu/Jensen/W.%20B.%20Jensen/Reprints/129.%20Base.pdf |issue=8 |deadurl=yes |archiveurl=https://web.archive.org/web/20160304023719/http://www.che.uc.edu/Jensen/W.%20B.%20Jensen/Reprints/129.%20Base.pdf |archivedate=4 March 2016 |df=dmy |bibcode=2006JChEd..83.1130J |doi=10.1021/ed083p1130 }}</ref>。錬金術師の[[パラケルスス]]は、普遍的な酸か潜在原理が土壌の matrix もしくは wombに含侵することで天然に存在する塩が地中で生まれると主張した。その理論を近代化学に導入したのが フランスの化学者 Guillaume-François Rouelle で、[[塩 (化学)|中性塩]]がアルカリ水溶液等と酸を混ぜ合わせる事で生成されることを明らかにした。18世紀における既知の酸のほとんどが揮発性か蒸留可能な"spirits"で、一方、塩基は酸を「結晶状態の塩か凝固した状態」の形を与え、定着させられる"Base"と考えられた。
 
 
 
== 出典 ==
 
{{Reflist}}
 
 
 
== 関連項目 ==
 
{{Wiktionary|塩基}}
 
{{Commonscat|Bases}}
 
* [[酸と塩基]]
 
* [[酸]]
 
* [[強塩基]]、[[超塩基]]
 
  
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(5) このほか窒素を含む複素環式化合物 (ピリジン,イミダゾール,インドールなど) も塩基と呼ばれる。 DNAや RNAの構成要素であるプリン塩基 (アデニン,グアニン) とピリミジン塩基 (シトシン,チミン,ウラシル) はこの意味で用いられている。
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[[Category:化学]]
 
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[[Category:溶液化学]]
 
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[[Category:塩基|*]]
 
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2018/10/18/ (木) 23:27時点における最新版

塩基(えんき、: base

(1) 狭義には酸を中和する能力のある化合物,または水溶液中で OH- イオンを生成する化合物をいう。

(2) 1923年にデンマークの物理化学者 J.N.ブレンステッドは塩基と酸の定義を拡大し,プロトンを受入れることのできる物質を塩基,プロトンを与えることのできる物質を酸と定義した (ブレンステッド=ローリーの定義 ) 。たとえば OH- イオンは,H2S+OH-HS-+H2O のように,ほかの化合物からプロトンを受入れる力が強いので強い塩基であり,H2S は酸である。アンモニアは水溶液では NH3+H2ONH4 ++OH- のようにふるまうので塩基であり,この場合,水は酸である。しかしカリウムアミド KNH2 は,液体アンモニア中で KNH2+NH3KNH3 ++NH2 - のように反応するので,この場合にはアンモニアは酸であり,カリウムアミドが塩基である。このようにブレンステッドの定義は非水溶媒系にも適用され,相手次第で同一物質を塩基とも酸ともみることができる。

(3) 1923年に G.N.ルイスは電子の授受に基づいて酸,塩基の定義をさらに拡張し,分子またはイオンを構成している原子の電子対により,相手と共有結合を形成できるものを塩基 (ルイス塩基 ) ,そのような電子対を受けて共有結合をつくるものを酸 (ルイス酸 ) と定義した。たとえば H3N:+BF3H3N:BF3 の反応で,H3N: は塩基,BF3 は酸となる。このルイスの定義による塩基,酸は,ブレンステッドの定義による塩基,酸を含むと同時に OH- や H+ をもたない塩基や酸も含むので,非常に有用である。

(4) 生化学では,広く有機塩基全体をさす。アミノ基,イミノ基,グアニジル基は,上の定義からも塩基性であるから,一級アミノ基をもつセロトニン,ノルアドレナリン,二級アミノ基をもつアドレナリン,四級アミノ基をもつカルニチンはすべて塩基性物質である。また,多くの植物アルカロイド (ニコチン,モルヒン,アトロピン,エフェドリン) やポリアミン類 (スペルミン,スペルミジン) も塩基性物質である。

(5) このほか窒素を含む複素環式化合物 (ピリジン,イミダゾール,インドールなど) も塩基と呼ばれる。 DNAや RNAの構成要素であるプリン塩基 (アデニン,グアニン) とピリミジン塩基 (シトシン,チミン,ウラシル) はこの意味で用いられている。



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