「稠密集合」の版間の差分
ja>ありゃりゃりゃ |
細 (1版 をインポートしました) |
(相違点なし)
|
2018/8/19/ (日) 17:20時点における最新版
数学の位相空間論周辺分野において、位相空間 X の部分集合 A が X において稠密(ちゅうみつ、英: dense)であるとは、X の各点 x が、A の元であるか、さもなくば A の集積点であるときにいう[1]。イメージで言えば、X の各点が A の中かさもなくば A の元の「どれほどでも近く」にあるということを表している。例えば、任意の実数は、有理数であるか、さもなくばどれほどでも近い有理数をとることができる(ディオファントス近似も参照)。
厳密な定義
位相空間 X の部分集合 A が X において稠密であるとは、X の各元 x に対し、x の任意の近傍が A の元を少なくとも一つ含むことをいう。同じことだが、A が X において稠密であるのは、A を含む X の閉集合が X 自身しかないときであり、かつそのときに限る。これは A の閉包が X に一致すると言ってもよい。あるいは、A の補集合の内部が空であるともいえる。
位相空間 X の稠密度 (density) とは、X の稠密部分集合の最小濃度をいう。
距離空間における稠密性
距離空間の稠密集合には、別な定義の仕方もある。X の位相が距離によって誘導されるものであるとき、X の部分集合 A の閉包 A は A および A 内の極限点全体の成す集合との和
- [math]\overline{A} = A \cup \{\ \lim_n a_n;\ a_n \in A\ \ \forall\ n \ge 0\ \}[/math]
で与えられる。このとき、A が X において稠密であるとは A = X を満たすことを言う。ここで、
- [math] A \subset \{\ \lim_n a_n;\ a_n \in A\ \ \forall \ n \ge 0\ \}[/math]
であることに注意。
- [math]\bigcap_{n=1}^{\infty} U_n[/math]
もまた X において稠密である。この事実は、ベールの範疇定理の同値な表現の一つである。
例
実数全体の成す集合に通常の位相を入れたものは、有理数全体の成す集合を可算稠密部分集合としてもつ。このことから、位相空間の稠密部分集合の濃度はもとの空間自体の濃度よりも真に小さくなりうることがわかる。同じく無理数の全体も別な稠密部分集合を成すから、位相空間はいくつか異なる、また互いに素な稠密部分集を持ちうることがわかる。
ワイエルシュトラスの近似定理によれば、閉区間 [a, b] 上の任意の複素数値連続函数は適当な多項式函数によって一様に近似することができる。これを言い換えれば、[a, b] 上の多項式函数全体の成す集合は、複素数値連続函数全体の成す集合 C([a, b]; C) 部分集合として稠密である(位相は上限ノルムの誘導する位相)。
性質
任意の位相空間は自身の部分集合として稠密である。集合 X に離散位相を入れたものは、全体集合 X がその唯一の稠密部分集合となる。集合 X に密着位相を入れたものは、空でない全ての部分集合が稠密になり、逆に空でない任意の部分集合が稠密となるような位相空間は密着空間でなければならない。
稠密性は推移的である。すなわち、位相空間 X の部分集合 A, B, C (A ⊆ B ⊆ C) で、A が B の、B が C のそれぞれ(相対位相に関する)稠密部分集合であるならば、A は C において稠密になる。
稠密部分集合の全射な連続写像による像はふたたび(写像の終域における)稠密部分集合となる。特に、位相空間の稠密度は位相不変量である。
連結な稠密部分集合を持つ位相空間は、必然的にそれ自身連結になる。
ハウスドルフ空間の中への連続写像は、その稠密部分集合における値によって決定される。すなわち、二つの連続写像 f, g: X → Y をハウスドルフ空間 Y への写像で、X の稠密部分集合上一致するならば、X の全域において一致する。
関連概念
位相空間 X の部分集合 A の点 x が、X における A の極限点であるとは、x の任意の近傍が x 以外に少なくとも一つ A の元を含むときに言う。さもなくば、x を A の孤立点という。孤立点を持たない部分集合はそれ自身稠密(自己稠密)であるという。
位相空間 X の部分集合 A が X において疎 (nowhere dense) であるとは、A がその上で稠密になるような X の近傍が存在しないことを言う。別な言い方をすれば、位相空間の部分集合が疎であるための必要十分条件は、その閉包の内部が空となることである。疎集合の補集合の内部は常に稠密である。また、閉疎集合の補集合は稠密開集合となる。
可算な稠密部分集合を持つ位相空間は可分であるという。位相空間がベール空間であるための必要十分条件は、それが可算個の稠密開集合の交わりが常に稠密となることである。位相空間が分解可能 (resolvable) であるとは、それが互いに素な二つの稠密部分集合の和となるときにいう。より一般に、位相空間が κ-分解可能であるとは、どの κ 個も互いに素であるような稠密部分集合の和にかけることをいう。
位相空間 X のコンパクト空間の稠密部分集合としての埋め込みは X のコンパクト化と呼ばれる。
位相線型空間 X, Y の間の線型作用素が稠密に定義されるとは、その定義域が X の稠密部分集合(で、その値域が Y の部分集合)であるときにいう。連続線型拡張も参照。
位相空間 X が超連結 (hyperconnected) であるための必要十分条件は、任意の空でない開集合が X において稠密になることである。位相空間が準最大 (submaximal) であるための必要十分条件は、その任意の稠密部分集合が開になることである。
関連項目
- 稠密関係(特に、稠密順序)
注記
- ↑ Steen, L. A.; Seebach, J. A. (1995), Counterexamples in Topology, Dover, ISBN 048668735X
参考文献
- Nicolas Bourbaki [1971] (1989). General Topology, Chapters 1–4, Elements of Mathematics. Springer-Verlag. ISBN 3-540-64241-2.
- Steen, Lynn Arthur; Seebach, J. Arthur Jr. (1995) [1978], Counterexamples in Topology (Dover reprint of 1978 ed.), Berlin, New York: Springer-Verlag, ISBN 978-0-486-68735-3, MR 507446