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− {{Otheruses|ギリシア神話の英雄|その他のヘクトールやヘクトル}}
− '''ヘクトール'''({{翻字併記|grc|'''Ἕκτωρ'''|''Hektōr''|n}}、 {{lang-la|Hector}})は、[[ギリシア神話]]の[[英雄]]である。[[日本語]]では[[長母音]]記号を省略し、'''ヘクトル'''ともいう。[[イリオス|トロイア]]の王子であり、[[トロイア戦争]]におけるトロイア勢最強の戦士。トロイアを築いた[[ダルダノス]]と[[トロース]]の末裔[[プリアモス]]王と王妃[[ヘカベー]]の間に生まれた<ref>[[イーリアス]]第20歌 215.</ref>。妻[[アンドロマケー]]との間に一子スカマンドリオス(トロイアの人間は[[アステュアナクス]]と呼ぶ)をもうけた。[[イーリアス]]において、兜きらめくヘクトールと称される。
− トロイア防衛の総大将として軍勢を指揮し、また個人の勇猛さをもってアカイア勢を敗走寸前にまで追い込んでいる<ref>イーリアス第12歌</ref>。アカイアの戦士を31人殺したと伝わる<ref>[[ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌス]]「神話集」115.</ref>。
+ '''ヘクトール'''({{翻字併記|grc|'''Ἕκτωρ'''|''Hektōr''|n}}、 {{lang-la|Hector}})
− 善き夫、善き父でもあり、戦争に負けた後に起こる妻子の処遇を案じている<ref>イーリアス第6歌</ref>。トロイア戦争の元凶となった弟[[パリス]]についても、叱りこそすれ見放すことはなかった。国のことを第一に考えるヘクトールに対し、自身が原因にもかかわらずパリスは飄々としている<ref>イーリアス第3歌、第6歌、第13歌</ref>。
+ ギリシア神話の英雄。ホメロスの叙事詩『イリアス』に歌われるトロヤ戦争におけるトロヤ方最大の勇士。トロヤ王プリアモスとヘカベの長男。無骨だが責任感が強く、ギリシアから美女ヘレネを奪い帰って戦争の原因をつくった弟パリスをののしりながらもつねに前線にたち、トロヤを1人で守り支えたとたたえられる。ギリシア方のアキレウスが、総大将アガメムノンに対する私怨(しえん)から戦列を離れている間、彼はギリシア軍を海辺まで撃退し、アキレウスの親友パトロクロスをも討ち取ったが、そのことがアキレウスの戦列復帰を促す結果となった。トロヤ城壁の上から息子に逃げてくれるよう両親が必死で嘆願したが、ヘクトルは踏みとどまってアキレウスを迎え、ついに決戦となって倒される。アキレウスはヘクトルの踵(かかと)に革紐(かわひも)を貫き、死体を戦車で引き回したが、神々がその死体の損傷を防いだ。
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− [[パトロクロス]]の猛反撃も打ち破るが<ref>イーリアス第16歌</ref>、[[アキレウス]]に敗北し遺体を辱められる<ref>イーリアス第22歌</ref>。父であるプリアモス王がアキレウスの陣まで出向き、ヘクトールの遺体を引き取る。
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− トロイアの陥落後、妻アンドロマケーはアキレウスの子[[ネオプトレモス]]の戦利品となった。そして、アステュアナクスは殺された。
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− 中世ヨーロッパにおいてジャック・ド・ロンギオンは[[九偉人]]の一人に挙げている。ジェームズ・レッドフィールドは「国に殉じた男、かけがえのない日常生活を守るため死んでいった英雄」と述べている<ref>James M. Redfield, Nature and Culture in the Iliad: The Tragedy of Hector. (Durham: Duke University Press, 1994), ix.</ref>。
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− ==系図==
− {{トロイアの系図}}
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− ==ギャラリー==
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− File:Hector brought back to Troy.jpg|トロイアに運ばれるヘクトールの遺骸。[[ローマ時代]]の石棺。[[ルーヴル美術館]]所蔵
− File:Ilium-02.jpg|トロイアで見つかった硬貨、177-192年ごろ。表: [[コンモドゥス]]の半身像 裏: 2頭立ての戦車に乗り、盾と槍を振り回すヘクトール。上にEKTΩP、下にIΛIEΩNと刻まれている
− File:Hektor wirft Paris seine Weichlichkeit vor (Tischbein).jpg|「''Hector Admonishes Paris for His Softness and Exhorts Him to Go to War''」( 軟弱なパリスを戦場に行くよう戒めるヘクトール)、 ヨハン・ハインリヒ・ティッシュバイン作
− File:Ajax and Hector exchange gifts.jpg|贈り物を交換する[[大アイアース]]とヘクトール(木版画)、[[アンドレーア・アルチャート]]「[[エンブレマタ]]」より
− File:Hector Astyanax MN Jatta.jpg|妻子への別れの挨拶(アプリア赤絵式陶器)、紀元前370年から紀元前360年ごろ
− File:THAM-Battle at the ships sarcophagus.jpg|船の戦い、ローマ時代の[[サルコファガス|棺]]に描かれたもの、3世紀ごろ
− File:Triumph of Achilles in Corfu Achilleion.jpg|アキレウスの凱旋、戦いに敗北し戦車に引きずり回されるヘクトール、[[ケルキラ島]]のアヒリオン宮殿
− File:Jacques-Louis David- Andromache Mourning Hector.JPG|ヘクトールの死を嘆き悲しむアンドロマケー、[[ジャック=ルイ・ダヴィッド]]作
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− {{wikisourcelang|en|The Iliad|イーリアス(英語)}}
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− {{Commons category|Hector}}
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− ==脚注==
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− {{イーリアスの登場人物}}
+ また彼がアイアスとの一騎打ちに出かける前に、妻のアンドロマケと幼児アステアナクスとの間で交わす思いやりの場面(『イリアス』第六歌)はことに美しい。
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[[Category:ギリシア神話の人物]]
[[Category:ギリシア神話の人物]]
[[Category:イーリアスの登場人物]]
[[Category:イーリアスの登場人物]]
ヘクトール (Ἀρχαία ἑλληνικὴ : Ἕκτωρ , Hektōr 、 ラテン語 : Hector )
ギリシア神話の英雄。ホメロスの叙事詩『イリアス』に歌われるトロヤ戦争におけるトロヤ方最大の勇士。トロヤ王プリアモスとヘカベの長男。無骨だが責任感が強く、ギリシアから美女ヘレネを奪い帰って戦争の原因をつくった弟パリスをののしりながらもつねに前線にたち、トロヤを1人で守り支えたとたたえられる。ギリシア方のアキレウスが、総大将アガメムノンに対する私怨(しえん)から戦列を離れている間、彼はギリシア軍を海辺まで撃退し、アキレウスの親友パトロクロスをも討ち取ったが、そのことがアキレウスの戦列復帰を促す結果となった。トロヤ城壁の上から息子に逃げてくれるよう両親が必死で嘆願したが、ヘクトルは踏みとどまってアキレウスを迎え、ついに決戦となって倒される。アキレウスはヘクトルの踵(かかと)に革紐(かわひも)を貫き、死体を戦車で引き回したが、神々がその死体の損傷を防いだ。
また彼がアイアスとの一騎打ちに出かける前に、妻のアンドロマケと幼児アステアナクスとの間で交わす思いやりの場面(『イリアス』第六歌)はことに美しい。
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