「ヘヴィサイドの展開定理」の版間の差分
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ヘヴィサイドの展開定理(ヘヴィサイドのてんかいていり、英: Heaviside's expansion theorem[1])は、ある種の関数のラプラス逆変換を与える定理である。オリヴァー・ヘヴィサイドはイギリスの電気技師。有理関数に関するもののみを指す場合が多いが、より一般の有理型関数に対する主張へ拡張される[2]。以下では、有理関数のみ扱うものとする。
Contents
概要
P(s), Q(s) は共通因子を持たない実数係数多項式で、次数は P の方が小さいとし、有理関数 F(s) = P(s) / Q(s) のラプラス変換による原像を求めたいものとする。代数学の基本定理より、分母 Q(s) は複素数の範囲で一次式の積に分解できて
- [math]F(s)=\frac{P(s)}{(s-a_1)^{n_1} \cdots (s-a_r)^{n_r}}[/math]
となる。これを部分分数分解すれば
- [math]F(s)=\sum_{i=1}^r \sum_{j=1}^{n_i} \frac{A_{ij}}{(s-a_i)^j}[/math]
の形になる。ここに、各係数は
- [math]A_{ij}=\frac{1}{(n_i-j)!} \lim_{s \to a_i} \frac{d^{n_i-j}}{ds^{n_i-j}}((s-a_i)^{n_i}F(s))[/math]
で与えられる。各部分分数の原像は
- [math]\mathcal{L}^{-1}\left[ \frac{A}{(s-a)^n} \right] = \frac{A}{(n-1)!}t^{n-1}\exp(at)[/math]
で与えられるので、F(s) の原像が求まる。
以上より、有理関数のラプラス逆変換は理論的には求まるが、計算しやすい公式の形で与えられたものを「展開定理」と称することが多い。その式の形は文献によって多少の差異があるが、本質的には同じものである。
Q(s) が虚根を持つ場合、一旦は虚数が現れるが、オイラーの公式を用いて三角関数に変形すれば、実関数の範囲で原像が求まる。計算上は、複素数の範囲で一次式に分解するのではなく、実数の範囲で高々二次式にまで分解しておき、
- [math]\mathcal{L}^{-1}\left[ \frac{\omega}{(s-a)^2+\omega^2} \right] = \exp(at) \sin (\omega t)[/math]
- [math]\mathcal{L}^{-1}\left[ \frac{s-a}{(s-a)^2+\omega^2} \right] = \exp(at) \cos (\omega t)[/math]
などを用いる方が実践的である場合もある。
分母が単根のみを持つ場合
分母が単根のみを持つ有理関数
- [math]F(s)=\frac{P(s)}{Q(s)}=\frac{P(s)}{(s-a_1) \cdots (s-a_r)}[/math]
の原像は
- [math]\mathcal{L}^{-1}[F(s)]=\sum_{i=1}^r \frac{P(a_i)}{Q'(a_i)} \exp(a_i t)[/math]
で与えられる。Q′(ai) は、より具体的には
- [math]Q'(a_i) = \prod_{j \neq i} (a_i-a_j)[/math]
として計算できる。
分母が重根を持つ場合
分母がn重根 a を持つ有理関数
- [math]F(s)=\frac{P(s)}{Q(s)}=\frac{\phi(s)}{(s-a)^n}=\sum_{j=1}^n \frac{A_j}{(s-a)^j}+R(s)[/math]
に対しては、
- [math]A_j=\frac{1}{(n-j)!} \lim_{s \to a} \frac{d^{n-j}}{ds^{n-j}}((s-a)^nF(s))[/math]
であるから、
- [math]\mathcal{L}^{-1}[F(s)]=\exp(at)\sum_{j=1}^n \frac{\phi^{(n-j)}(a)}{(n-j)!(j-1)!}t^{j-1}+\mathcal{L}^{-1}[R(s)][/math]
が成り立つ。右辺第1項は
- [math]\frac{1}{(n-1)!}\lim_{s \to a} \frac{d^{n-1}}{ds^{n-1}}(\phi(s)\exp(st))[/math]
と同じものである。
脚注
参考文献
外部リンク
- テンプレート:高校数学の美しい物語
- Heaviside の展開定理 (PDF) - 数学玉手箱
- 部分分数分解のやりかた (PDF)