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| [[ファイル:Überseemuseum Bremen 2009 238.JPG|thumb|right|200px|葉緑体の[[模型]]の一例]] | | [[ファイル:Überseemuseum Bremen 2009 238.JPG|thumb|right|200px|葉緑体の[[模型]]の一例]] |
| [[ファイル:Chloroplast in leaf of Anemone sp TEM 12000x.png|thumb|200px|right|[[透過型電子顕微鏡]]による葉緑体の画像]] | | [[ファイル:Chloroplast in leaf of Anemone sp TEM 12000x.png|thumb|200px|right|[[透過型電子顕微鏡]]による葉緑体の画像]] |
− | '''葉緑体'''(ようりょくたい、{{lang-en-short|Chloroplast}})とは、[[光合成]]をおこなう、半自律性の[[細胞小器官]]のこと<ref name='I-bio-dic'>{{Cite book|和書 | + | '''葉緑体'''(ようりょくたい、{{lang-en-short|Chloroplast}}) |
− | |year = 1996
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− | |title = 岩波生物学辞典第4版
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− | |publisher = 岩波書店
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− | |id = ISBN 4-00-080087-6
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− | |chapter = 葉緑体
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− | }}</ref>。<!--[[植物]]や[[藻類]]にみられる[[細胞小器官|細胞内小器官]]で[[光合成]]の機能を担っている。-->カタカナで'''クロロプラスト'''とも表記する。
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− | == 概説 ==
| + | 葉緑素 (クロロフィル) を含む色素体で,真核生物の細胞内にある光合成器官。分裂によって増殖する。葉緑素のほかに,カロテノイド (カロテンとキサントフィルと呼ばれる黄色色素) を含むが,通常緑色を示す。斑 (ふ) 入り葉などで色素を欠くと白色体になり,またトウガラシやトマトなどの果実が熟すと,葉緑体のクロロフィルが失われて赤や黄の有色体になる。葉緑体の外形は高等植物では直径約5μmのレンズ形であるが,藻類などでは板状,星状,螺旋状,網状など種類によって特徴ある形となり,かなり大きいものもある。電子顕微鏡的には2重の膜で包まれ,内部は下等植物では膜状構造であるラメラだけのものが多く,デンプンの形成と貯蔵に関与する核様体をもつものもあるが,高等植物では層状のラメラのほかに,小面積のラメラがコイン状に積重なったグラナ構造も有し,核様体はない。ラメラやグラナは色素を含み,光合成の明反応を行い,それ以外の基質,すなわちストローマでは暗反応を行い,デンプンなどをたくわえる。 |
− | 光合成生物にみられる細胞小器官であり、[[プラスチド]]の一種である。[[黄色]]の[[カロチノイド]]や多量の[[クロロフィル]]を含むので一般的には[[緑色]]に見える<ref name='I-bio-dic' />。ただし[[褐藻]]の葉緑体はクロロフィルのほかに[[フコキサンチン]]を持っているため[[褐色]]に、[[紅藻]]は[[フィコビリン]]色素をもっているため[[紅色]]に見える<ref name='I-bio-dic' />。
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− | [[原始褐藻]]のように細胞体制が下等な藻では、[[細胞]]ひとつあたり1個の[[球形]]の葉緑体を含んでいる<ref name='I-bio-dic' />。それが紅藻、褐藻、緑藻などになってくるとカップ状、[[星型|星状]]、[[螺旋]]形、板状など様々な形の大きな葉緑体を、1個ないし数個ほど含むようになる<ref name='I-bio-dic' />。これがさらに[[多細胞]]の緑藻や[[陸上植物]]ともなると、細胞ひとつあたり、通常10 - 数百個ほど含まれることになる<ref name='I-bio-dic' />。
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− | その大きさや形状について言えば、多細胞植物の多くでは、直径が5 - 10[[マイクロメートル|μm]]程度厚さが2 - 3μm程度の[[凸レンズ]]形である<ref name='I-bio-dic' />。内部構造は掲載図を参照のこと。
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− | == 一般的特徴 ==
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− | [[クロロフィル]](葉緑素)等の'''[[光合成色素]]'''を含むので、はっきりした色があり、生体観察でももっとも確認しやすい細胞小器官である。
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− | [[維管束植物]]の場合、葉緑体は、非光合成細胞では、色素体として存在する。色素体には、アミロプラスト、クロモプラスト、白色体などさまざまな種類があるが、すべての色素体は、二重の包膜で囲まれ、葉緑体DNAを持つことが特徴である。
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− | 葉緑体の形は分類群によって様々であるが、一般的には藻類において多様性が高い。高等植物のものは、ほとんどがやや扁平な円盤状である。藻類においては、様々な形のものが知られている。もっとも有名なのは、[[アオミドロ]]にみられる、リボン型で円筒形の細胞内に螺旋状に入っているものであろう。他にも、星型になったホシミドロのものや、板状になって常に光の方に面を向けるサヤミドロのものなど、様々な形のものが知られている。
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− | [[種子植物]]の場合、葉緑体の形は単純な円盤状である。大きさは直径約5μm程度、顕微鏡で見ると、細胞の外周に並んで見えることが多い。これは、細胞の中央部を[[液胞]]が占めているからでもある。[[原形質流動]]によって移動するのが見られる。
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− | 種子植物の葉緑体は外側を二重の膜によって覆われており、その内側の部分をストロマという。ストロマ内には、多数の膜でできた薄い袋状の構造が並んでいる。この袋をチラコイドと呼ぶ。多数の小さなチラコイドは積み重なった構造があちこちにあって、これをグラナという。
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− | ストロマには独自のDNA(葉緑体DNA、cpDNA)が含まれ、それと対応して独自のリボソームがここに含まれている。チラコイド膜には、[[光合成色素]]や、光合成の光にかかわる反応に関する酵素が位置している。
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− | == 働き ==
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− | 光合成が最もよく知られた主要な機能であるが、その他に窒素代謝、アミノ酸合成、脂質合成、色素合成など、植物細胞における代謝の重要な中心となっている。
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− | 独自の[[ゲノム|ゲノムDNA]]や[[リボソーム]]を持ち、真核光合成生物の共通の祖先が光合成をおこなう[[真正細菌]]や[[真核生物]]を細胞内に共生させたことに由来すると考えられている。これについては,下記の「起源」を参照のこと。
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− | 葉緑体DNAは,さまざまなタンパク質とともに核様体を作っており、細胞核の染色体と同様、核様体は葉緑体DNAの複製,転写,分配の単位となっている。ただし、ヒストンはない。また、細菌のDNA結合タンパク質として知られるHU, DPSなどのタンパク質も、緑色植物の葉緑体には、基本的には存在しない。代わりに亜硫酸還元酵素がDNA結合タンパク質として機能している。
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− | == 色素体の起源 ==
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− | 色素体の起源となる共生体としては、同じ酸素発生を行う[[シアノバクテリア]]の一種と考えられているが、現生のシアノバクテリアのどれに近いか、またはそれらの祖先種の近縁種に由来するのかは、まだわかっていない。
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− | ちなみに[[シアノバクテリア]]の起源としては、光化学系1と2を供給したものとして[[ヘリオバクテリア]]と[[緑色非硫黄細菌|クロロフレクサス]]が考えられているが、実際の光化学系1・2とこれらの光合成細菌の光化学系はかなり異なるので、系統的に関連があるということを除けば,構成タンパク質の機能がそのまま対応するわけではない。また,光合成以外の機能に関しては、細胞の起源はわかっていない。
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− | 葉緑体は、細胞核遺伝子の産物がなければ機能できないので、昔考えられていたような葉緑体の培養ができることはない。しかし、葉緑体が細胞から分離した状態でも機能できる証拠として、[[ウミウシ]]の例がある。ウミウシの仲間の[[嚢舌類]]は、[[海藻]]の細胞内物質を吸い込むように食べるが、ある種において、藻類の葉緑体を分解せずに細胞内に取り込む例が知られている。こうして動物細胞に取り込まれた葉緑体は、ここで[[光合成]]を行ない、動物細胞にその産物を供給するという。
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− | == 藻類の葉緑体 ==
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− | 上述のように、[[藻類]]においては葉緑体の形質は多様である。[[光合成色素]]も群によっては異なったものを持っている。比較的共通する形質としては、[[ピレノイド]]という構造がある。色素体の中に1-数個ある丸い粒状の構造で、タンパク質性で、光合成産物を貯蔵物質に変えるのに関与しているとされる。[[緑藻]]類では[[デンプン]]合成がここで行われる。
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− | 植物界のものと藻類とで大きく異なる点に、藻類の葉緑体が、往々にして三重以上の膜で覆われている点がある。また、葉緑体のDNAがはっきりした塊に見える場合がある。これらは、近年では重複的な細胞内共生によるものと考えられるようになった。そこで「植物界や藻類の二重膜葉緑体を持つものは、葉緑体を持たない[[真核生物]]にシアノバクテリアのような原核藻類が共生したのが起源」と考えられる。二重の膜は内側が原核光合成生物の細胞膜、外側が植物細胞の細胞膜に由来すると考えるとわかりやすい。ただし、確証は得られていない<ref>千原編1999、p.148-149</ref>。
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− | それに対して、たとえば[[クロララクニオン藻]]の葉緑体は、四重の膜に包まれ、外側から二枚目と三枚目の間に、[[ヌクレオモルフ]]と言われる、核様の構造がある。これに関して内側の二重膜が本来の葉緑体であり、その外の膜はそれを所有していた藻類の細胞膜、最外層がこの藻類自体の細胞膜に由来する<ref name="chihara-p257">千原編1999、p.257</ref>。つまり、真核藻類を、非光合成性の真核生物が細胞内に取り込んだことで、藻類化したと判断できる<ref>千原編1999、p.150</ref>。ヌクレオモルフは、取り込まれた藻類の核の名残である。この藻類の場合、取り込まれたのは[[緑藻]]類と判断されている<ref name="chihara-p257" />。
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− | == 出典 ==
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− | <references />
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− | == 参考文献 ==
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− | * {{Cite book|和書
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− | |year = 1996
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− | |title = 岩波生物学辞典第4版
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− | |publisher = 岩波書店
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− | |id = ISBN 4-00-080087-6
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− | }}
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− | * {{Cite book|和書
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− | |author = 千原光男編集;岩槻邦男・馬渡峻輔監修
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− | |year = 1999
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− | |title = 藻類の多様性と系統
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− | |publisher = 裳華房
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− | |id = ISBN 978-4-7853-5826-6
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− | }}
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| == 関連項目 == | | == 関連項目 == |
| * [[細胞内共生説]] | | * [[細胞内共生説]] |
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