グリセロール1-リン酸
sn-グリセロール1-リン酸(グリセロール1-りんさん、sn-glycerol 1-phosphate)[1]は、リン酸とグリセロールから誘導されたリン酸エステルで、アーキア特異的エーテル型脂質の構成要素の一つである。同等に適切な名前として、グリセロ-1-リン酸(glycero-1-phosphate)、1-O-ホスホノグリセロール(1-O-phosphonoglycerol)、1-ホスホグリセロール(1-phosphoglycerol)がある[2]。また歴史的経緯によりL-グリセロール1-リン酸(L-glycerol 1-phosphate)、D-グリセロール3-リン酸(D-glycerol 3-phosphate)、D-α-グリセロリン酸(D-α-glycerophosphoric acid)とも呼ばれる[2]。
生合成と代謝
グリセロール1-リン酸は解糖系の中間代謝物のうち、ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)がグリセロール-1-リン酸デヒドロゲナーゼによって還元されて生じる。ブドウ糖ではなく、アミノ酸やTCA回路中間体などから糖新生経路を通ってDHAPを作り、同様にグリセロール1-リン酸を得ることもできる。[3]
グリセロール1-リン酸はアーキアのエーテル型脂質新規合成の出発物質であり、細胞質に局在するホスホグリセロールゲラニルゲラニル基転移酵素によってまずsn-3位にゲラニルゲラニル基がつく。ついでsn-2位にもゲラニルゲラニル基がついて不飽和アーキチジン酸となり、各種のエーテル型脂質の生合成へと続く。[3]
- G1P + GGPP → ゲラニルゲラニルグリセロールリン酸 + PPi
鏡像異性体
グリセロール1-リン酸の鏡像異性体がグリセロール3-リン酸である。この2つは生体内で区別されており、通常見出されるのはグリセロール3-リン酸だが、アーキアではグリセロール1-リン酸が見出される。
脚注
- ↑ 本項目では特に立体配置の表示がない場合には立体特異的番号付けを用いている。
- ↑ 2.0 2.1 G. P. Moss: “Nomenclature of Phosphorus-Containing Compounds of Biochemical Importance”. . 2015閲覧.
- ↑ 3.0 3.1 古賀洋介 (2009). “アーキアの脂質膜の特性と生物の進化” (pdf). 蛋白質核酸酵素 54 (2): 127-133 .