塚本晋也
塚本 晋也(つかもと しんや、1960年1月1日[1] - )は、日本の映画監督、俳優。東京都渋谷区出身[1]、豊島区在住。日本大学芸術学部卒業。現在は、多摩美術大学造形表現学部映像演劇学科教授。有限会社海獣シアター代表取締役[2]。コマーシャルのナレーターとしては大沢事務所所属[3]。
クエンティン・タランティーノ、ジェームズ・ワン&リー・ワネル、ギャスパー・ノエ、ダーレン・アロノフスキーといった映像作家も塚本フリークを公言している国際的評価の高い日本人監督の一人である[4][5]。 自ら製作・監督・脚本・撮影・美術・編集・出演を兼ねるスタイルを貫いている[6]。
Contents
人物
下北沢で生まれ原宿で育つ[7]。幼少の頃から観ていたウルトラQ(その他)に衝撃を受け、中学時代から自主映画を作り始める[8]。中学2年生(当時14歳)の時に水木しげるのマンガ『原始さん』を原案にして、8ミリフィルムで映画製作をする[9]。商業デザイナーだった父の影響で幼い頃から絵を描くことが好きで、高校・大学と美術学科を専攻[9][10]。だいたいの映画作品で自ら美術も手掛けている[11]。高校時代も4本の映画を制作し、日本テレビ主催のシネマフェスティバルで入賞を果たす[6]。
日本大学芸術学部に進学後、演劇に惹かれ唐十郎といった劇作家に影響され劇団を主宰[10]。しかし、映画監督の夢を捨てたわけではなく大学在学中に劇場映画の制作を目指すが叶わず、卒業後はCM制作会社に就職する[9]。CMディレクターとして働く一方、仕事を続けながら演劇がしたいと社長に相談するとあっさりと承諾を得るが、舞台と海外出張が重なるなど両立が難しくなり、4年間勤めた後に退社を決意する[7]。
退社後、劇団「海獣シアター」を結成、3本の芝居を興行する[6]。
1988年、海獣シアターの仲間とともに作った『電柱小僧の冒険』でPFFアワードのグランプリを獲得する[9]。
翌1989年、制作費1,000万、4畳半のアパートで廃物のSFXと少数のスタッフで制作された『鉄男』が、ローマ国際ファンタスティック映画祭のグランプリを受賞する[8]。一般公開1作目にして国際的評価を獲得、後の海外映画祭における多数の新世代の日本映画評価への先鋒となる(また、この作品は、主演・田口トモロヲの映画俳優としての活動の足掛かりにもなる[8])。
1992年、『鉄男II BODY HAMMER』が世界の40以上の映画祭に招待され、日本映画が長らく遠ざかっていた海外映画祭の再進出のきっかけとなる[6]。
1997年、ヴェネツィア国際映画祭で審査員を務めた[1]。
俳優としては、自身の作品のみに止まらず多数の映画やドラマに関わることも多く個性を発揮[12]。俳優としての自身の事は「聞き分けのいい俳優」だと話す[13]。2002年には大谷健太郎監督の『とらばいゆ』や三池崇史監督の『殺し屋1』などで第57回毎日映画コンクール男優助演賞を受賞している。
2003年公開の『六月の蛇』は、ヴェネツィア国際映画祭コントロコレンテ部門審査員特別賞を受賞した。
2015年、市川崑監督により1959年に映画化された『野火』を自主制作スタイルで再び映画化[13]。それまで都市と肉体をテーマにバーチャルリアリティな世界を描いてきたが、『野火』では観客にあえて戦場の生々しさ体感してもらい悲惨さを伝えるため、市川崑版では避けられた人肉を食べる表現にも向き合い容赦のない暴力を描ききった[5]。第70回毎日映画コンクール男優主演賞、監督賞を始め多くの評価を得た。
2016年、マーティン・スコセッシ監督の映画『沈黙 -サイレンス-』に出演。オーディションで役を獲得したが、もともと塚本が監督した映画を観ていたスコセッシは、同姓同名の別の役者がやってきたと思ったという[14]。前年、飢餓状態の一等兵を演じた『野火』では体重を53キロまで落としたが、この作品では命がけのシーンにも挑む過酷な役柄だった事もありさらに体重を40キロ台まで落とし臨んだ[15]。
映画音楽の石川忠とはほとんどの作品でタッグを組んでおり、2017年に石川が亡くなるまで塚本の映画に不可欠な存在であった[6]。
監督作品
- 蓮の花飛べ(1979年)
- 普通サイズの怪人(1986年)
- 電柱小僧の冒険(1988年)
- 鉄男(1989年、ローマ国際ファンタスティック映画祭グランプリ)
- ヒルコ/妖怪ハンター(1991年、主演 沢田研二)
- 鉄男II BODY HAMMER(1993年、第7回高崎映画祭若手監督グランプリ)
- 東京フィスト(1995年)
- バレット・バレエ(1999年)
- 双生児-GEMINI-(1999年)
- 六月の蛇(2003年、第60回ヴェネツィア国際映画祭コントロコレンテ部門審査員特別賞受賞)
- ヴィタール(2004年、第61回ヴェネツィア国際映画祭招待作品、第37回シッチェス・カタロニア国際映画祭Fantastic Noves Visions部門作品賞、フリュッセル国際映画祭銀鴉賞受賞)
- 玉虫(2005年、オムニバス映画「female」の中の1編)
- HAZE(2006年)
- 悪夢探偵(2007年、主演 松田龍平)
- 悪夢探偵2(2008年、主演 松田龍平)
- 鉄男 THE BULLET MAN(2010年、第66回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門選出作品)
- 妖しき文豪怪談 太宰治「葉桜と魔笛」(2010年)
- KOTOKO(2012年、主演 Cocco、第68回ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ賞受賞)
- 野火(2015年、兼主演、第71回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門選出作品)
- 斬、(2018年11月24日公開予定、第75回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門選出作品)[16][17]
出演作品
映画
- 電柱小僧の冒険(1988年)
- 鉄男(1989年)
- 鉄男II BODY HAMMER(1992年)
- 119(1994年、竹中直人監督)
- 我が人生最悪の時(1994年、林海象監督)
- 遥かな時代の階段を(1995年、林海象監督)
- 東京フィスト(1995年)
- 東京日和(1997年、竹中直人監督)
- あ、春(1998年、相米慎二監督)
- 完全なる飼育(1999年、和田勉監督)
- バレット・バレエ(1999年)
- サンデイドライブ(2000年、斎藤久志監督)
- 溺れる人(2000年、一尾直樹監督)
- さくや妖怪伝(2000年、原口智生監督)
- Dead or Alive 2 逃亡者(2000年、三池崇史監督)
- 殺し屋1 (2001年、三池崇史監督) - ジジイ 役
- 盲獣vs一寸法師(2001年、石井輝男監督)- 明智小五郎 役
- クロエ(2001年、利重剛監督)
- 連弾(2001年、竹中直人監督)
- とらばいゆ(2002年、大谷健太郎監督)
- 本作と「クロエ」、「殺し屋1」などの演技が評価され、2002年第57回毎日映画コンクール男優助演賞受賞。
- 六月の蛇(2003年)
- 稀人(2004年、清水崇監督)
- 恋の門(2004年、松尾スズキ監督)- 野呂 役
- HAZE(2006年)
- クワイエットルームにようこそ(2007年、松尾スズキ監督) - 元旦那 役
- 悪夢探偵(2007年) - 0(ゼロ) 役
- 鉄男 THE BULLET MAN(2010年)- ヤツ 役
- KOTOKO(2012年)-田中 役
- 「また、必ず会おう」と誰もが言った。(2013年、古厩智之監督) - 秋山荘介 役
- 野火(2015年、兼監督) - 田村一等兵 役
- シン・ゴジラ(2016年)- 間邦夫 役
- SCOOP!(2016年、大根仁監督) - 多賀 役
- 沈黙 -サイレンス- Silence (2016年、マーティン・スコセッシ監督) - モキチ 役
- 斬、(2018年、兼監督)
テレビドラマ
- 恋のためらい(1997年、TBS)- 小池新一 役
- 日曜日は終わらない(1999年、NHK)
- 私立探偵 濱マイク(2002年、日本テレビ)
- 演技者。「マシーン日記」(2003年、フジテレビ)- アキトシ 役
- 蝉しぐれ(2003年、NHK)- 三宅藤右衛門 役
- 劇団演技者。「雨が来る」(2004年、フジテレビ)- 登 役
- 秘太刀馬の骨(2005年、NHK)
- シナリオ登龍門2005「きたな(い)ヒーロー」(2006年、日本テレビ)- 柿本茂男 役
- 生物彗星WoO(2006年、NHK・円谷プロダクション制作)
- 慶次郎縁側日記第3シリーズ(2006年、NHK)
- セクシーボイスアンドロボ(2007年、日本テレビ) - 林竹男 役
- フルスイング(2008年、NHK) - 太田三郎 役
- 連続テレビ小説 ゲゲゲの女房(2010年、NHK)- 塚本(水木しげるの義兄) 役
- 坂の上の雲(2010年、NHK) - 明石元二郎 役
- 連続テレビ小説 カーネーション(2012年、NHK) - 原口猛 役
- 4号警備(2017年) ‐ 渋谷謙一
- 連続テレビ小説 半分、青い。(2018年、NHK) - 宇佐川乙郎 役[18]
- dele(2018年) ‐ 笹本清一
ゲーム
- メタルギアソリッド4(2008年) - ヴァンプ 役(※声の出演)
CM
- 東京ガス 「家族の絆 やめてよ」篇 - 父親役
関連書籍
著書
- 東京フィスト(1995年、扶桑社)
- 六月の蛇(2003年、マガジンハウス)
- 悪夢探偵(2006年、角川書店)
- 悪夢探偵2 怖がる女(2008年、角川書店)
- 鉄男 THE BULLET MAN(2010年、講談社)
- 鉄男全集 鉄男三作品純正シナリオ(2010年、ACクリエイト)
その他
- 塚本晋也読本―普通サイズの巨人(2003年、キネマ旬報社)
- 塚本晋也読本 SUPER REMIX VERSION(2010年、キネマ旬報社)
- 完全鉄男 『鉄男』から『鉄男 THE BULLET MAN』までの軌跡(2010年、講談社)
受賞歴
- 2003年
- 2015年
- 2016年
- 第70回毎日映画コンクール[20]
- 男優主演賞(『野火』)
- 監督賞(『野火』)
- 第25回日本映画プロフェッショナル大賞・監督賞(『野火』)[21]
- 第16回マラケシュ国際映画祭・トリビュート(功労賞)[22]
- 第70回毎日映画コンクール[20]
出典
- ↑ 1.0 1.1 1.2 本人の公式サイト・プロフィール
- ↑ 塚本晋也 TSUKAMOTO SHINYA OFFICIAL WEBSITE、2017年2月19日閲覧。
- ↑ “NA”. 塚本晋也 TSUKAMOTO SHINYA OFFICIAL WEBSITE. 海獣シアター. . 2017閲覧.
- ↑ “縦横無尽に広がる塚本晋也の世界”. マイナビニュース (2007年6月14日). . 2018閲覧.
- ↑ 5.0 5.1 “『野火』塚本晋也監督インタビュー「ファンタジーではない本当の暴力を」”. 映画ランド. . 2018閲覧.
- ↑ 6.0 6.1 6.2 6.3 6.4 “塚本晋也”. KINENOTE. . 2018閲覧.
- ↑ 7.0 7.1 “[https://jp.vice.com/others/who-are-you-tsukamoto Who Are You? 塚本晋也さん 映画監督]”. VICE JAPAN (2017年5月17日). . 2018閲覧.
- ↑ 8.0 8.1 8.2 “日本映画の海外進出を促進させた怪作『鉄男』”. シネマズ by松竹 (2017年5月12日). . 2018閲覧.
- ↑ 9.0 9.1 9.2 9.3 “塚本晋也監督が振り返る映画づくりの原点「いまだに最初の作品からテーマは変わらない」”. ログミー. . 2018閲覧.
- ↑ 10.0 10.1 “リアリティ経由、虚構行:塚本晋也インタビュー”. i-D. . 2018閲覧.
- ↑ “第1回 『野火』への道~塚本晋也の頭の中~”. シネマトゥデイ (2015年5月13日). . 2018閲覧.
- ↑ “[「俳優・塚本晋也は、 監督から見て実に良い俳優!」、『野火』Blu-ray&DVD発売記念、塚本晋也監督インタビュー [塚本晋也さん]母との絆 映画に投影]”. yomiDr (2013年11月17日). . 2018閲覧.
- ↑ 13.0 13.1 “[塚本晋也さん]母との絆 映画に投影”. シネマズ by松竹 (2016年5月12日). . 2018閲覧.
- ↑ “『沈黙−サイレンス−』塚本晋也さんインタビュー/スコセッシ監督に別人だと思われていたオーディション裏話”. フィルマーズ (2017年1月13日). . 2018閲覧.
- ↑ “塚本晋也『沈黙』で「40キロ台に」壮絶ダイエット!スコセッシ監督のために殉教覚悟”. ニュースウォーカー (2017年2月3日). . 2018閲覧.
- ↑ “池松壮亮×蒼井優、塚本晋也初時代劇『斬、』参戦!「かけがえのない作品に出会えた」”. シネマカフェ (2018年11月23日). . 2018閲覧.
- ↑ “塚本監督新作「斬、」がベネチア国際映画祭コンペ選出”. SANSPO.COM (産経デジタル). (2018年7月25日) . 2018閲覧.
- ↑ 塚本晋也監督「半分、青い。」でブッ飛んだ教授役「気合が入りました」大学生の律に影響与える - スポニチ、2018年4月28日
- ↑ “第7回TAMA映画賞”. 第25回映画祭TAMA CINEMA FORUM. TAMA CINEMA FORUM (2015年). . 2015閲覧.
- ↑ “毎日映画コンクール 大賞に橋口監督の「恋人たち」”. 毎日新聞 (2016年1月21日). . 2016閲覧.
- ↑ “「バクマン。」が日本映画プロフェッショナル大賞でベストワン&作品賞”. 映画ナタリー. (2016年3月25日) . 2016閲覧.
- ↑ “塚本晋也監督、スコセッシ監督と並ぶ功労賞獲得に驚き!”. シネマトゥデイ. (2016年11月17日) . 2016閲覧.
関連文献
- PUBLIC-IMAGE.ORG インタビュー
- ココロの旅(2010年5月18日放送)
外部リンク
- 塚本晋也公式サイト
- 塚本晋也 - allcinema
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