春雨 (食品)
春雨(はるさめ)とは、リョクトウ(緑豆)やジャガイモやサツマイモから採取されたデンプンを原料として作られる乾燥食品である。英語で glass noodles。またはPotato noodle
中国語では「粉条」(拼音: ; フェンティアオ)と呼ぶほか、台湾では「冬粉」(閩南語音では「タンフン」)、北京では「粉絲」(拼音: ; フェンスー)とも称する。春の雨になぞらえた美称は日本で名付けられたものだという[1]。
中国では主にリョクトウを材料とする。山東省竜口市の「龍口春雨」が知られているが、実際の産地は隣接する招遠市が主である。
日本では主にジャガイモなどの芋デンプンを材料とする。奈良県が主産地で、桜井市と御所市で全国の生産の約6割を占めている。
見た目は乾燥させた葛切りに似ているが、異なる食品である。また、マロニーもジャガイモデンプンとコーンスターチを原料とするが、メーカーは異なる食品だとしている[2]。
歴史
春雨は西暦1000年前後には中国で作られていた食品である。日本には、禅宗の精進料理の材料として鎌倉時代に伝来したとされる[1]。
製法
リョクトウ、ジャガイモ、サツマイモなどから採取されたデンプンを熱湯で練った糊に、さらにデンプンと湯を加えながら練り上げて生地を作る。この生地を、直径が1mmほどの穴の開いた容器から熱湯中に押し出して煮沸し、水冷後に凍結(冷凍製法[3])させ、それをさらに天日乾燥して作られる。したがって、完成後の水分含有率は低く、乾燥状態を保っていれば長期保存が可能である。
なお、春雨とモヤシ(豆もやし)がリョクトウの代表的な用途である。
食べ方
春雨は乾燥したままでは食用に向かないので、食べるには何らかの調理を必要とする。一般的なのは、水か湯で少し戻してから加熱し、煮物や炒め物にすることである。また、戻したものを春雨サラダのような和え物料理にもする。
中華料理では炒め物や汁の少ない鍋料理などの主役になるほか、春巻きなどの具にしたり、麺料理として使ったりする。水で戻さずに乾燥した状態のまま油で揚げると、白くなり、数倍のかさに膨れる特性があるため、皿と料理の間に敷き付け合わせにするなどの調理法がある。春雨を使った一般的な料理に、春雨を挽き肉と煮込んで唐辛子で味付けた四川料理である螞蟻上樹(マーイーシャンシュー)がある。また、歯ごたえやスープを吸う特性を生かしてフカヒレの代用として使う事もある。
タイ料理では「ウンセン」(テンプレート:Lang-th)と呼び、ヤムウンセンなどの和え物や鍋物にする。トムヤムクンなどのスープ料理に春雨を入れることもある。
ベトナム料理では「ミエン」(ベトナム語: Miến)と呼び、フォーやブンと同じように麺料理として利用する。
朝鮮料理では「タンミョン」(唐麺、朝鮮語: 당면)、または「ホミョン」(胡麺、朝鮮語: 호면)と呼び、水で戻した春雨を野菜類と一緒にごま油で炒めたチャプチェとして供することが多い。
日本では鍋料理の具として使うほか、煮戻してごま油や少量の唐辛子などで中華風に味付けし、「中華サラダ」とすることが多い。短く切った春雨を揚げ物の衣とすることもあり、これを春雨揚げと呼ぶ。麻婆春雨は春雨を炒め煮にした日本風の中華料理である(前述の螞蟻上樹に近い)。
熊本県中部の郷土料理である太平燕(タイピーエン)は春雨を主体にした麺料理であり、春雨を麺類として利用する点が日本においては珍しい料理ともされる。
近年ではインスタント食品の一種として、カップ型の春雨ヌードルも普及している。小麦粉の麺類を用いたインスタント麺類よりも低カロリーであることから、日本国内でも人気が高く、さまざまな味付けの商品が多数販売されている。ほか、小麦麺を春雨で代替した低カロリーなラーメンや焼きそば風のスナックなども見ることができる。
粉皮
シート状に蒸して作るものを「粉皮」(フェンピー、fěnpí)と呼び、主に和え物に用いる。俗に板春雨(いたはるさめ)と呼ばれることもある。
注釈・出典
- ↑ 1.0 1.1 “西日本食品工業株式会社”. 西日本食品工業. . 2016閲覧.
- ↑ “マロニーQ&A”. マロニーを知る. マロニー. . 2016閲覧.
- ↑ “森井食品 トップページ”. 森井食品. . 2016閲覧.
文献
- 語源海(東京書籍)- 【春雨】はなぜハルアメではなくハルサメなのか、など ISBN 978-4-487-79743-1
外部リンク
- 特集記事 「商品知識」 春雨の調理適性 - ウェイバックマシン(2009年9月23日アーカイブ分) - 広報誌『大きな目小さな目』48号、農林水産消費技術センター、1999年11月。