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− | [[File:Akhilleus Aias Staatliche Antikensammlungen 1417.jpg|thumb|アキレウスと[[アイアース]]。紀元前500年頃]]
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| {{Greek mythology}} | | {{Greek mythology}} |
− | '''アキレウス'''({{lang|el|'''Ἀχιλλεύς'''}}、{{lang-la|Achilles}})は、[[ギリシア神話]]に登場する英雄で、[[ホメーロス]]の[[叙事詩]]『[[イーリアス]]』の主人公である。[[ラテン語]]では'''アキレス'''。 | + | '''アキレウス'''({{lang|el|'''Ἀχιλλεύς'''}}、{{lang-la|Achilles}}) |
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− | [[プティーア]]の出身で、プティーア王[[ペーレウス]]と海の女神[[テティス]]との間に生まれた。[[アイアコス]]の孫にあたる。[[スキューロス島]]の王[[リュコメーデース]]の娘[[デーイダメイア]]との間に[[ネオプトレモス]]をもうけた。[[トロイア戦争]]には[[ミュルミドーン人]]を率いて50隻の船と共に参加し、たった一人で形勢を逆転させ、敵の名将を尽く討ち取るなど、無双の力を誇ったが、戦争に勝利する前に弱点の踵を射られて命を落とした。足が速く、『イーリアス』では「駿足のアキレウス」と形容される。
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− | == 幼年時代 ==
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− | アキレウスが生まれると母テティスは、息子を不死の体にするために冥府を流れる川[[ステュクス]]の水に息子を浸した。そのとき、テティスの手はアキレウスのかかとを掴んでいたためにそこだけは水に浸からず、かかとのみは不死とならなかった<Ref>[[スタティウス]]の叙事詩『アキレイス』 i. 269</ref>。それゆえ、アキレウスはトロイア戦争でかかとを[[パリス]](一説には[[アポローン]])に射られて死に到ることになる。踵からふくらはぎにかけての[[腱]]である[[アキレス腱]]はこの挿話にちなんでいる。テティスはアキレウスを養育しなかったので、ペーレウスはアキレウスを、[[ケンタウロス]]の賢者[[ケイローン]]に預けた。
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− | == 『イーリアス』以前 ==
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− | [[File:Akhilleus embassy Staatliche Antikensammlungen 8770.jpg|left|thumb|[[オデュッセウス]]と女装するアキレウス。紀元前480年頃]]
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− | テティスは、アキレウスがトロイア戦争に加わると命を落とすことを[[予言]]し、アキレウスをスキューロス島に送り女の格好をさせておいた。アキレウスはここで、スキューロス王リュコメーデースの娘デーイダメイアとの間に[[ネオプトレモス]]をもうけた。そこに、商人のなりをした[[オデュッセウス]]が勧誘に来た。彼は女向けの商品の中に武器をまぜて展示した。女たちが見向きもしない中、アキレウスだけが武器に手を出したため、彼は正体をあばかれてトロイア戦争に引きずり出された。
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− | [[イリオス|トロイア]]遠征のために集結した[[ギリシア]]軍であったが、逆風のため[[アナトリア]]へ渡れなくなってしまった。そこで総大将[[アガメムノーン]]が神託を求めたところ、娘[[イーピゲネイア]]を女神[[アルテミス]]に[[生贄]]として捧げれば解決するとの[[予言]]を賜る。アガメムノーンは苦悩したものの、結局家族への愛情よりも名誉欲と大将としての責任を優先させ、イーピゲネイアをアキレウスとの縁談を名目に呼び寄せた。このことはアキレウスにはまったく知らされておらず、イーピゲネイアについてきた彼女の母[[クリュタイムネーストラー]]が挨拶に来たために初めて知ることになった。
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− | 勝手に名前を使われたアキレウスはアガメムノーンに憤ると同時に騙されて生贄にされかけているイーピゲネイアに同情し、クリュタイムネーストラーと共に必死の助命運動を行った。しかし二人の嘆願も空しくイーピゲネイアは生贄となったため、両人はアガメムノーンに深い遺恨を抱くにいたった。
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− | == 『イーリアス』におけるアキレウス ==
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− | [[File:Akhilleus Patroklos Antikensammlung Berlin F2278.jpg|left|thumb|矢で負傷した[[パトロクロス]]を治療するアキレウス。紀元前500年頃]]
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− | アキレウスは、友人[[パトロクロス]]と共に、ミュルミドーン人たちを率いてトロイア戦争に参加していた。ギリシア勢がトロイア戦争を開始してから十年目、ある事情により、戦利品で愛妾の[[ブリーセーイス]]を総大将[[アガメムノーン]]に奪われた。理不尽な行為に腹をたてたアキレウスは、それ以降戦いに参加しなくなる。
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− | アキレウス退陣とともに神々の加護を失ったギリシア勢は、名だたる英雄たちも傷つき総崩れとなり、陣地の中にまで攻め込まれる([[ゼウス]]がギリシア勢に味方する振りをして[[イーリオス]]勢に味方したため)。これを見たパトロクロスは、出陣してギリシア勢を助けてくれるようアキレウスに頼んだが、アキレウスは首を縦に振らない。そこでパトロクロスはアキレウスの鎧を借り、ミュルミドーン人たちを率いて出陣する。アキレウスの鎧を着たパトロクロスの活躍により、ギリシア勢はイーリオス勢を押し返す。しかし、パトロクロスはイーリオスの王[[プリアモス]]の息子で、事実上の総大将である[[ヘクトール]]に討たれ、アキレウスの鎧も奪われてしまう<ref>[[イーリアス]]16巻-17巻</ref>。
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− | パトロクロスの死をアキレウスは深く嘆き、ヘクトールへの復讐のために出陣することを決心する。テティスはアキレウスのために新しい鎧を用意し、アキレウスに授ける<ref>[[イーリアス]]18巻</ref>。出陣したアキレウスは、イーリオスの名だたる勇士たちを葬り去る。形勢不利と見てイーリオス勢が城内に逃げ去る中、門前に一人、ヘクトールが待ち構える。
| + | ホメロスの叙事詩『イリアス』のなかで,主人公として活躍する,ギリシア神話の英雄。テッサリアのフティアの王ペレウスと海の女神テティスの結婚から生れ,赤子のときに母に冥府の川ステュクスの水につけられたため,テティスがつかんでいたかかとの部分だけを除き,不死身になった ([[アキレス腱]] ) 。ケンタウロスのケイロンに養育され,トロイ戦争が計画されると,最初はこの遠征に参加すれば息子が死ぬ運命にあることを予知したテティスに勧められて,女装してスキュロス王リュコメデスの宮廷に隠れ,王女の一人デイダメイアと通じ息子ネオプトレモスを生ませたが,オデュッセウスに正体を見破られ,結局親友[[パトロクロス]]とともに,[[ミュルミドン人]]と呼ばれる精鋭を率いトロイの攻囲に参加した。戦争の 10年目にアキレウスは,彼がそれまでにあげたはなばなしい武功にもかかわらず,アガメムノンに不当な侮辱を受け,愛人のブリセイスを奪われたことを怒って,いったん戦闘から手をひき,そのためギリシア方は苦境に陥った。パトロクロスはこのありさまを見かね,アキレウスの武具と軍勢をかりて敵を撃退したが,深追いしすぎヘクトルに打取られると,アキレウスは友の仇を討つため再び参戦し,ヘクトルと壮烈な一騎打ちを演じ,ついにこの敵の総大将を倒した。しかしその後,なお多くの手柄をあげながら,最後に彼は,アポロンに助けられたパリスに,唯一の弱点のかかとを射られ,トロイ落城を待たずにあえなく戦死した。 |
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− | [[File:Achilles Hector Louvre G153.jpg|thumb|[[ヘクトール]]の死体とアキレウス。紀元前490年~480年頃]]
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− | ギリシア勢とイーリオス勢が見守る中、アキレウスとヘクトールの[[一騎討ち]]が始まる。アキレウスはヘクトールを追いまわし、ヘクトールは逃げ回ってイーリオスの周りを三度回る。しかし、ついにヘクトールはアキレウスに冷酷な殺し文句と共に討たれる。アキレウスはヘクトールの鎧を剥ぎ、彼を戦車の後ろにつなげて引きずりまわす。復讐を遂げて満足したアキレウスは、さまざまな賞品を賭けてパトロクロスの霊をなぐさめるための競技会を開く。
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− | 競技会が終わった後も、アキレウスはヘクトールの遺体を引きずりまわすことをやめない。ヘクトールの父プリアモスはこれを悲しみ、深夜アキレウスのもとを訪れ、息子の遺体を返してくれるように頼む。アキレウスはプリアモスをいたわり、ヘクトールの遺体を返す。ヘクトールの葬儀の記述をもって、『イーリアス』は終わる。
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− | == 『イーリアス』以後 ==
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− | [[File:Akhilleus Penthesileia Staatliche Antikensammlungen 1502.jpg|left|thumb|[[ペンテシレイア]]と戦うアキレウス。紀元前520年頃]]
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− | ヘクトール亡き後イーリオス勢は意気消沈するが、[[アマゾーン]]の女王で女神のごとき[[ペンテシレイア]]の加勢により、再び勢いを盛り返す。ペンテシレイアはギリシア勢の名だたる英雄をなぎ倒して暴れまわるが、無謀にもアキレウスに挑戦し、命を落とす。アキレウスは遺体となったペンテシレイアの美貌に目を奪われ、殺してしまったことを後悔する。[[テルシーテース]]がそれを笑うと、逆上したアキレウスはテルシーテースを撲殺した。
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− | ペンテシレイアの死後、再びイーリオス勢は意気消沈するが、[[エチオピア]]勢を率いてきた[[メムノーン]](暁の女神[[エーオース]]と[[ティートーノス]]の子)の加勢により、元気を取り戻す。メムノーンは[[ネストール]]の子[[アンティロコス]]を倒すなどして活躍するが、アキレウスに討ち取られてしまう。王を失ったエチオピア勢は戦場を去っていく。
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− | [[File:Odysseus Ajax Louvre F340.jpg|thumb|アキレウスの武具を争うアイアースとオデュッセウス。紀元前520年頃]]
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− | メムノーンを葬り去ったあくる日、アキレウスはイーリオスのスカイアイ門の前で戦っていたが、急所のアキレス腱をイーリオスの王子パリス(一説によると彼の暴虐に憤ったアポローン)に射られ、瀕死の重傷を負って倒れた。しかしアキレウスは再び立ち上がり、イーリオス勢を追い回す。が、ついに予言どおり死の運命が彼を捉えた。パリスをはじめとするイーリオス勢は、アキレウスの遺体を奪おうとしたが、[[大アイアース]]とオデュッセウスに阻まれた。アキレウスの遺体を確保して後、アキレウスの甲冑をめぐってオデュッセウスと大アイアースが争い、オデュッセウスが勝ちを収める。これが原因で、後に大アイアースは命を落とすこととなる。その後、アキレウスの子[[ネオプトレモス]]と[[ピロクテーテース]]の持つ[[ヘーラクレース]]の弓なしにはイーリオスを落せないという予言が下り、今度はネオプトレモスが引きずり出される。
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− | == 死後 ==
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− | イーリオス陥落後、[[ネオプトレモス]]の夢の中にアキレウスが現れ、「プリアモス王の娘[[ポリュクセネー]]を、自分の墓に奉げてほしい」と語った。さもなければギリシア勢の帰路を妨げるというのである。生前アキレウスはポリュクセネーに恋焦がれ、未練が残っていたのだ。このため、ネオプトレモスはポリュクセネーを手にかけ、アキレウスの墓に奉げた。
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− | 『[[オデュッセイア]]』において、オデュッセウスは冥府を訪れる。オデュッセウスは死人となったアキレウスと語り合う。アキレウスは死人の王になるよりも、生きてつまらぬ男に仕えることのほうがましだと語り、一子ネオプトレモスの活躍と安否を問う。オデュッセウスが、ネオプトレモスの活躍について語ると、喜び満足して去っていったという。なお、一説には、アキレウスは死後、神々の楽園[[エーリュシオン]]にむかえられたという。
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− | ;鎧
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− | アキレスの死を書いた[[オウィディウス]]の[[変身物語]]中、アイアスとオデュッセウスとの間で所有権争いが起きる<ref>著:オウィディウス 変身物語 Book XII 「The Death of Achilles」-Book XIII</ref>。
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− | ==系図==
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− | {{アキレウスの系図}}
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− | == 出典 ==
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− | {{Reflist|2}}
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− | == 関連項目 ==
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− | {{commonscat|Achilles}}
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− | * [[アキレウスの盾]] - アキレウスが[[ヘクトール]]と戦う時に用いた[[盾]]。
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− | * [[ゼノンのパラドックス]]「アキレスと亀」
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− | * [[アキレス腱]]
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− | * [[アキレス数]]
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− | * [[ジークフリート]]
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− | * [[トロイ (映画)|トロイ]]
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