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| − | '''カラギーナン''' (carrageenan {{IPA-en|ˌkærəˈɡiːnən|}} ) は[[直鎖]]含硫黄[[多糖類]]の一種で、<small>D</small>-[[ガラクトース]]（もしくは 3,6-アンヒドロ-<small>D</small>-ガラクトース）と[[硫酸]]から構成される[[陰イオン]]性[[高分子]]化合物である。'''カラギナン'''、'''カラゲナン'''、'''カラジーナン'''、'''カラゲーナン'''、'''カラゲニン''' (carrageenin) とも呼ばれる。[[CAS登録番号]] 9000-07-1。ふつう[[紅藻]]類からアルカリ抽出により得られる。[[化学式|組成]]は同じく紅藻類から得られる[[アガロース]]（[[寒天]]の主成分）に似るが、硫酸を多く含む点で異なる。 | + | '''カラギーナン''' (carrageenan {{IPA-en|ˌkærəˈɡiːnən|}} ) |
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| − | [[アイルランド]]産の[[紅藻]] ''[[:en:Chondrus crispus|Chondrus crispus]]''（ヤハズツノマタ、英語で Irish moss または carrageen moss、[[アイルランド語]]で carraigín）から[[1844年]]に初めて抽出され命名された。
| + | ツノマタなどの紅藻類から抽出される多糖類。食品のゲル化剤として利用される。 |
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| − | == 性質と利用法 ==
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| − | カラギーナンは[[弾力]]のある高分子で二重らせん構造を作って互いにからみあっており、これにより[[室温]]で[[ゲル]]を形成する。[[食品]]その他の[[工業]]で[[ゲル化剤]]、[[増粘剤]]、[[増粘安定剤]]などとして使われる。
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| − | 特徴としては、力（[[せん断応力]]）をかけると容易に流動し、静置すると[[粘性]]を回復してゲル状になる性質（[[チキソトロピー]]）がある。この性質は工業的利用に有利で、特に食品に用いた場合には食感が滑らかになるという利点もある。これから以下のような用途に用いられる。
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| − | * [[デザート]]、[[アイスクリーム]]、[[乳製品]]、[[飲料]]、[[ソース (調味料)|ソース]] - 増粘・ゲル化剤（ゲル化剤としては[[寒天|アガー]]（agar）と呼ばれることがある）、分離を防ぐための安定剤（増粘安定剤）
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| − | * 肉製品（[[パテ (料理)|パテ]]、[[コンビーフ]]など） – 脂の代わりに添加するゲル化剤
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| − | * [[ビール]] – 濁りの原因となるタンパク質を除去する[[清澄剤]]
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| − | * [[歯磨剤]]、[[シャンプー]]、化粧クリーム – 安定剤
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| − | * 泡[[消火器]] – 泡の強化剤
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| − | * 芳香剤のゲル化剤
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| − | * 靴クリーム – 増粘剤
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| − | カラギーナンには次の3つのタイプがある。
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| − | * κ（カッパ） – 硬く強いゲルを作る。''[[w:Kappaphycus cottonii|Kappaphycus cottonii]]'' （[[オオキリンサイ属]]）から得られる。
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| − | * ι（イオタ） – 軟らかいゲルを作る。''[[w:Eucheuma spinosum|Eucheuma spinosum]]'' （[[キリンサイ属]]）から得られる。
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| − | * λ（ラムダ） – 水ではゲル化しないが、タンパク質と混ぜたときに軟らかいゲルを作り、乳製品の安定剤に使われる。よく使われる原料は南欧産の''[[w:Gigartina|Gigartina]]'' （[[スギノリ属]]）である。
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| − | 多くの紅藻は[[世代交代]]の各段階で異なるタイプのカラギーナンを作る。たとえば ''Gigartina'' 属は配偶体世代では主にκカラギーナンを作るが、胞子体世代ではλカラギーナンを作る。
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| − | いずれのタイプも熱湯には溶けるが、冷水に溶けるのはλだけである。ただし[[ナトリウム]]の[[塩 (化学)|塩]]にすれば他の2タイプも溶ける。
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| − | == 食品添加物としてのカラギーナンと安全性 ==
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| − | カラギーナンは少なくともヒト[[消化器|消化管]]ではほとんど分解されないとされて[[食物繊維]]の一種とみられており、また多くの国で食品添加物として扱われている。工業的規模で利用されるようになったのは1930年代からだが、最初は[[中国]]で[[紀元前600年]]頃 (''Gigartina'')、次いで[[アイルランド]]で西暦[[400年]]頃、食用に用いられた。[[日本]]では、[[コトジツノマタ]]や[[ツノマタ]]、[[カギイバラノリ]]などを煮溶かして固め、「[[海草 (食品)|海草]]」、「[[ぶど]]」などの名で食用としてきた。
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| − | [[げっ歯類]]（[[ラット]]、[[テンジクネズミ|モルモット]]など）を用いた動物実験では、カラギーナンの分解物が消化管に[[潰瘍]]および[[悪性腫瘍|がん]]を引き起こすこと、またこの分解物は未分解カラギーナンから消化管で生成しうることが示されている。また未分解カラギーナンも[[発がんプロモーション]]作用があると報告されている。なおカラギーナンをげっ歯類に皮下注射すると[[炎症]]を惹起することが古くから知られ（カラゲニン浮腫と呼ばれ炎症の研究用モデルとしても用いられる）、この性質が潰瘍や発がんプロモーションに関係する可能性も考えられる。現在 [[国際がん研究機関|IARC]] における[[IARC発がん性リスク一覧|発がん性リスク分類]]は、未分解カラギーナンについてグループ3（ヒトに対する発がん性は不明）、カラギーナン分解物についてはグループ2B（ヒトに対して発がん性の疑いがある）となっている<ref name="addendum 1">World Health Organization, Geneva , 1999. IPCS - International Programme on Chemical Safety: Carrageenan (addendum). [http://www.inchem.org/documents/jecfa/jecmono/v042je08.htm リンク（英語）]</ref><ref name="addendum 2">WHO Food Additives Series: 48. Safety evaluation of certain food additives and contaminants; Carrageenan and processed eucheuma seaweed (addendum). [http://www.inchem.org/documents/jecfa/jecmono/v48je08.htm リンク（英語）]</ref><ref>Tobacman, J. K. (2001). "Review of Harmful Gastrointestinal Effects of Carrageenan in Animal Experiments". ''Environmental Health Perspectives'' '''109'''(10): 983–994. [http://ehp.niehs.nih.gov/members/2001/109p983-994tobacman/tobacman-full.html 本文（英語）]</ref><ref name="Carthew">Carthew, P. (2002). "Safety of Carrageenan in Foods & Joanne K. Tobacman: Carrageenan in Foods: Response". ''Environmental Health Perspectives'' '''110'''(4). [http://ehp.niehs.nih.gov/docs/2002/110-4/correspondence.html 本文（英語）]</ref>。
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| − | しかし、
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| − | * 多くの動物実験はヒトでは不可能なレベルの大量投与により行われている
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| − | * カラギーナンによる発がんプロモーション作用はげっ歯類特有の[[腸内細菌]]叢による証拠がある
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| − | * カラギーナンによる炎症は[[サル]]では容易に起きない
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| − | などの理由から、カラギーナンによる悪影響はげっ歯類の特殊な性質であり、ヒトでは問題ないとする考えが現在では有力である。これに基づき[[FAO/WHO合同食品添加物専門家会議]] (Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives, JECFA) の第57回会議（2001年）では、1日許容摂取量を「特定せず」（つまり毒性リスクは事実上ゼロとみてよい）と決定した<ref name="addendum 1" /><ref name="addendum 2" /><ref name="Carthew" /><ref>Cohen, S. M.; Ito, N. (2002). "A critical review of the toxicological effects of carrageenan and processed eucheuma seaweed on the gastrointestinal tract". ''Crit. Rev. Toxicol.'' '''32'''(5): 413–444. PMID 12389870</ref>。
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| − | ==生産==
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| − | 現在最も多く生産しているのは[[フィリピン]]で、海藻生産量で世界の約 80% を占める。最も普通に用いられるのはコットニー (''Eucheuma cottonii'') とスピノサム (''Eucheuma spinosum'') で、この2種で世界の生産量の約 75% である。これらは水深2メートル付近で栽培され、普通は竹の浮きの間に張られたナイロンロープに生やして、3か月ほど経って各海藻の重量が約1キログラムになったときに収穫される。
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| − | なお、コットニーは従来[[キリンサイ属]] (''Eucheuma'')とされていたが、Maxwell Doty (1988) はκカラギーナンの存在によって[[オオキリンサイ属]] (''Kappaphycus'') を立て、コットニーを ''Kappaphycus cottonii'' と[[生物の分類|分類]]している。
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| − | 海藻を収穫後に乾燥し梱包して工場へ輸送する。工場では海藻をすりつぶしふるいにかけて砂などの不純物を除き、よく洗う。次に抽出、[[遠心分離]]と[[濾過]]によってカラギーナンと[[セルロース]]を分離する。できたカラギーナン溶液を蒸発によって濃縮し、乾燥して適宜すりつぶす。
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| − | ==脚注==
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| − | ==関連項目==
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| − | *[[イクラ#人工イクラ（人造イクラ）|イクラ]]
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| − | ==外部リンク==
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| − | *[http://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv_agreement.html?569 カラギーナン、カラゲニン - 「健康食品」の安全性・有効性情報] （[[国立健康・栄養研究所]]）
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| − | * [http://www.mcft.co.jp/usage/03_02.html 三菱商事フードテック株式会社 | 増粘多糖類]
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