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| [[ファイル:Fresco Iphigeneia MAN Naples.jpg|thumb|240px|イーピゲネイアを犠牲にしようとするカルカース。[[フレスコ画]]、[[ナポリ]]。]] | | [[ファイル:Fresco Iphigeneia MAN Naples.jpg|thumb|240px|イーピゲネイアを犠牲にしようとするカルカース。[[フレスコ画]]、[[ナポリ]]。]] |
− | '''カルカース'''({{lang-grc-short|'''Κάλχας'''}}, {{ラテン翻字|el|Kalchās}})は、[[ギリシア神話]]の[[占い師]]、[[予言者]]である。[[長母音]]を省略して'''カルカス'''とも表記される。予言者[[テストール]]の子で<ref>『イーリアス』1巻68行。</ref><ref>ヒュギーヌス、128話。</ref><ref name=Hy_190>ヒュギーヌス、190話。</ref>、[[レウキッペー]]、[[テオノエー]]と兄弟<ref name=Hy_190 />。 | + | '''カルカース'''({{lang-grc-short|'''Κάλχας'''}}, {{ラテン翻字|el|Kalchās}}) |
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− | カルカースは[[ミュケーナイ]]<ref>ヒュギーヌス、97話。</ref>、あるいは[[メガラ]]の人で、[[トロイア戦争]]のさいに[[アガメムノーン]]に乞われて[[ギリシア]]軍に従軍し<ref>[[パウサニアス]]、1巻43・1。</ref>、予言の術でギリシア軍を助けた。
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− | == 神話 ==
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− | === トロイア戦争前 ===
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− | ギリシア軍に加わったカルカースは[[アキレウス]]をギリシア軍に参加させることを提案したので、[[オデュッセウス]]は策略によってアキレウスを仲間に加えた<ref>アポロドーロス、3巻13・8。</ref>。
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− | また[[アウリス]]にギリシア軍が集結し、泉のそばに祭壇を築いて神々を祭祀したとき、祭壇の下から大蛇が現れて泉のそばの[[プラタナス]]の木に登った。そこには雀の巣があり、大蛇は8羽の雛を呑み込み、さらに巣の周りを飛びまわる母鳥を喰らった後、石と化して地に落ちた。カルカースは神意を悟り、大蛇は[[ゼウス]]が遣わしたもので、大蛇が雛と母鳥を9羽喰らったように我々も[[イリオス|トロイア]]で9年間戦い、10年目に勝利することができるだろうと予言した<ref>『イーリアス』2巻300行-332行。</ref><ref>アポロドーロス、摘要(E)3・15。</ref><ref group="注釈">[[キケロー]]はカルカースの解釈について反論している。</ref>。
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− | しかしギリシア軍はトロイアの場所を知らなかったため、誤って[[ミューシア]]に上陸し、[[テーレポス]]と戦った。その後、ギリシア軍は再び[[アルゴス (地名)|アルゴス]]に集まったが、テーレポスがアキレウスに受けた傷を癒してもらいにやって来たときにトロイアの場所を教えてもらい、カルカースは予言の術でその情報が正しいことを保証した<ref>アポロドーロス、摘要(E)3・17-3・20。</ref>。
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− | === イーピゲネイア ===
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− | そこでギリシア軍は再びアウリスに赴いたが、いつまでたっても順風が吹かなかった。そこでカルカースは予言の術によって、かつてアガメムノーンの父[[アトレウス]]が自分の持つ最も美しいものを[[アルテミス]]に捧げると誓いながら[[金羊毛]]の仔羊を捧げなかったことがあり、それについてアルテミスが怒っていることを明らかにし、アガメムノーンが娘の中で最も美しい[[イーピゲネイア]]を犠牲に捧げないかぎり風が吹かないだろうと予言した。アガメムノーンは仕方なくイーピゲネイアをアキレウスの妃にすると偽って呼び寄せ、アルテミスに捧げようとした。カルカースはそのときアルテミスの祭祀を取り仕切ったが、アルテミスは祭壇からイーピゲネイアをさらい、かわりに牝鹿を置いた。こうして風が吹き、ギリシア軍はトロイアに向けて出航することができた<ref>エウリピデース『[[アウリスのイピゲネイア|アウリスのイーピゲネイア]]』。</ref><ref>アポロドーロス、摘要(E)3・21-3・22。</ref>。
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− | === トロイア戦争 ===
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− | トロイア戦争においてはアポローンがギリシア軍に疫病を送ったさい、アガメムノーンが[[アポローン]]の怒りに触れたと述べ、[[クリューセース]]に彼の娘[[クリューセーイス]]を返還し、アポローンに供物を送らないかぎり疫病は止まないと予言した<ref>『イーリアス』1巻68行-100行。</ref>。
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− | アキレウスの死後もカルカースは予言の術によって[[ネオプトレモス]]の参戦や<ref>[[スミュルナのコイントス]]、6巻。</ref>、[[ピロクテーテース]]の復帰を提案し<ref>アポロドーロス、摘要(E)5・8。</ref><ref>スミュルナのコイントス、9巻。</ref>、トロイアを保護する予言について知っている[[ヘレノス]]を捕らえるよう勧めた<ref>アポロドーロス、摘要(E)5・9。</ref>。オデュッセウスが[[トロイアの木馬|木馬]]作戦を提案したときには、彼の作戦が勝利を導くことを保証した。ネオプトレモスとピロクテーテースは反対したが、ゼウスが激しい地震と雷を起したため、カルカースに従った<ref>スミュルナのコイントス、12巻。</ref>。さらにカルカースは木馬作戦にも参加した<ref>トリピオドーロス『トロイア落城』。</ref>。
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− | === カルカースの死 ===
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− | 戦後、カルカースは[[アムピロコス]]、[[レオンテウス]]、[[ポダレイリオス]]、[[ポリュポイテース]]とともに[[コロポーン]]に赴き、予言者[[モプソス]]の館に招かれた。カルカースは自分より優れた予言者に出会ったときに死ぬだろうと予言されていたが、モプソスと予言の技を競って敗れたときに落胆して死に、ノティオンに埋葬された<ref>アポロドーロス、摘要(E)6・2-6・4。</ref>。またカルカースらに従った兵たちは[[小アジア]]のパンピュリア人の祖となった<ref>[[ヘロドトス]]、7巻91。</ref><ref>パウサニアス、7巻3・7。</ref><ref>スミュルナのコイントス、14巻。</ref>。
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− | == 系図 ==
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− | {{タラオスの系図}}
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− | == 脚注 ==
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− | ===注釈===
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− | {{reflist|group="注釈"}}
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− | ===脚注===
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− | {{Reflist|2}}
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− | == 参考文献 ==
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− | {{Commonscat|Calchas}}
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− | * [[アポロドーロス]]『ギリシア神話』[[高津春繁]]訳、[[岩波文庫]](1953年)
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− | * [[コルートス]]・[[トリピオドーロス]]『ヘレネー誘拐・トロイア落城』[[松田治]]訳、[[講談社学術文庫]](2003年)
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− | * 『ギリシア悲劇集IV [[エウリピデス]](下)』[[松平千秋]]他訳、[[ちくま文庫]](1986年)
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− | * [[スミュルナのコイントス|クイントゥス]]『トロイア戦記』松田治訳、講談社学術文庫(2000年)
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− | * [[ヒュギーヌス]]『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年)
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− | * [[ホメロス]]『[[イリアス]](上・下)』松平千秋訳、岩波文庫(1992年)
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− | * 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、[[岩波書店]](1960年)
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| + | ギリシア神話の人物。アポロンの息子でその祭司でもあったテストルの子で,この神から予言の能力を授けられ,トロイ戦争でギリシア方の予言者をつとめて,アガメムノンの娘イフィゲネイアの犠牲,トロイの木馬の建造などの重要な託宣によって不可欠の貢献を果した。神託によって自分よりすぐれた予言者と出会えば死ぬと告げられていたが,トロイからの帰途,小アジアのコロフォンで[[モプソス]]と会い,予言比べに負けて,悲しみのあまり死んだという。 |
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