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| − | '''カール・ヒルティ'''（Carl Hilty、[[1833年]][[2月28日]] - [[1909年]][[10月12日]]）は、[[スイス]]の[[下院議員]]を務め、[[法学者]]、著名な[[文筆家]]としても知られる。日本では『[[幸福論]]』、『眠られぬ夜のために』の著者として有名。<br> | + | '''カール・ヒルティ'''（Carl Hilty、[[1833年]][[2月28日]] - [[1909年]][[10月12日]]） |
| − | 敬虔な[[キリスト教徒]]として、[[神]]、[[人間]]、[[生]]、[[死]]、[[愛]]、などの主題を用いて、現代の預言者とも評されるほどの思想書を書き残した。
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| − | == 経歴 ==
| + | スイスの政治法学者，福音伝道者，哲学者。ベルン大学教授，国会議員，国際仲裁裁判所判事などを務めた。政治学の分野での著作活動のほか，プロテスタントの立場から宗教や道徳について，特に倫理的な自由主義と宗教的な敬虔（けいけん）を説く著作を残した。『幸福論』Glück（３巻，1891−99），『眠られぬ夜のために』Für schlaflose Nächte（２巻，1901−19），『永遠の相の下（もと）に』Sub specie aeternitatis（08），『キリストの福音』Das Evangelium Christi（10）などで人生の意義を説き，悩める人に心の慰めをあたえた。 |
| − | *[[1833年]]：スイスの[[ザンクト・ガルレン州]]の[[ヴェルデンベルク]]に生まれる。
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| − | *[[1844年]]：州立[[ギムナジウム]]に入学。宗教教育を受け、古典学、英文学、仏文学を学ぶ。
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| − | *[[1851年]]：[[ドイツ]]の[[ゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲン|ゲッティンゲン大学]]に入学。法律学、哲学、歴史を学ぶ。
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| − | *[[1852年]]：[[ハイデルベルク大学]]に移り、法律の研究に専念。
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| − | *[[1854年]]：[[ドクトル]]（''Dokor''）の称号を得た後、ロンドン、パリに遊学。
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| − | *[[1855年]]：キュール市で[[弁護士]]を開業。
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| − | *[[1856年]]：歩兵将校として法務に就く。
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| − | *[[1857年]]：ヨハンナ・ゲルトナーと結婚。
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| − | *[[1873年]]：[[ベルン大学]]正教授となり、スイス国法、国法学、国際法を講義。
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| − | *[[1890年]]：ウェルデンベルク区選出の代議士となる。
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| − | *[[1892年]]：スイス陸軍裁判長。
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| − | *[[1909年]]：ハーグ[[常設仲裁裁判所|国際仲裁裁判所]]のスイス委員に任命される。
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| − | *[[1909年]][[10月12日]]：心臓麻痺で永眠（77歳）。
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| − | ==思想 ==
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| − | ヒルティについて最もよく知られている業績は、『[[幸福論]]』、『眠られぬ夜のために』などに代表される宗教的倫理的著作である。その他、法律家、政治家として著した著作も、すべて一貫した[[キリスト教]][[信仰]]の精神に基づいている。ヒルティのキリスト教思想の特徴として、[[聖書]]の言葉を大変重んじていることが挙げられる。彼が最も愛読して感化を受けた書物は聖書であった。彼の著作の中では、聖書の語句を大変頻繁に引用しており、それを通して、キリスト教信仰者としてのあり方や、神への揺るぎない信頼と愛による忍耐を自身の経験を通じて述べている。聖書内でしばしば引用される書籍として、各[[福音書]]、[[詩篇]]、[[イザヤ書]]等の[[預言書]]などが挙げられる。聖書では、福音書内のキリストの御言葉を最重要視し、その他の書は添え物にすぎないとも言っている。ただし、これは聖書内のその他の書物を軽視するものではない。
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| − | 聖書以外でもヒルティがしばしば引用する著作として、[[ストア哲学]]の[[エピクテトス]]や[[マルクス・アウレリウス]]、詩人の[[ダンテ]]などがある。
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| − | 確固とした信仰に根付いた生活を世の中でしていくために、さまざまな処世術や思考法、対処法などが著されており、中でも摂生的生活を旨としたヒルティが強調しているのは享楽を避けることである。ヒルティが避けるべきと繰り返し主張することとして、[[飲酒]]が挙げられる。彼は[[禁酒運動]]に力を入れ、『禁酒運動における大学生の使命』『禁酒運動における主な障害について』等の論文を著し、彼の助力で、1907年にはスイス国会で大多数をもってアブサント[[禁酒令]]を可決させている。<br>
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| − | しかしまた、その一方で、ごく少量のアルコールは健全な薬剤であり、精神に益するものである、との記述もある。その他、享楽と呼ばれるあらゆることを避けることを奨励している。これは、彼が、神経病や[[精神病]]についても造詣が深く、その疾病を避けるための、質素な信仰生活を尊ぶためである。
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| − | キリスト教信仰による生活が最良のものとしながらも、他宗教に関しての知識も深い。代表として[[仏教]]、[[インド哲学]]、[[シナ哲学]]、[[イスラム教]]に関しても言及がなされている。同時に、当時のキリスト教の状態にも苦言を呈しており、形式的な[[教会]]通い、[[修道院]]生活、[[瞑想]]漬けの生活などの形だけの信仰のあり方を批判しており、教会制度の欠陥についても述べている。
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| − | ヒルティの思想で指摘されることとして、キリストの死によって罪が赦されたという[[贖い|贖罪]]意識が薄いということ、[[社会主義]]や[[唯物論]]に否定的であることが挙げられる。
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| − | 諸宗教の聖典や哲学を比較の上、イエス・キリストの思想こそが最上の思想であり、人が救われるのはキリストの福音によってのみだとした。また、この古い思想には永遠の価値があり、現代のどのような先進文明国にも必要なものであると明言した。
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| − | ブレームガルテン墓地にある墓碑銘には「AMOR OMNIA VINCIT（愛はすべてにうち勝つ）」と刻まれている。
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| − | ==エピソード ==
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| − | *享楽生活を捨てる前のゲッティンゲン大学時代には、普通の学生と同じく奔放な生活を送って、少しは酒も飲み、決闘をしたこともあった。
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| − | *大学の講義は早朝に行うことを好み、冬は8時、夏は7時に行った。大学が彼の75歳の誕生日を祝う催しについて時間の都合を聞いたところ、「最も都合のよいのは朝の7時」と答えたという。
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| − | *[[万国平和会議|ハーグ平和会議]]については、「この会議はあまりにも大規模なので、鈍重であって敏活にははたらくことができない。英独間の経済競争や、日米間の野心や勢力意識の相違のような深い隙間は、どんな平和会議をもってしても到底除かれない。平和はまず、心から平和を愛し、そして平和でありうる多数の個々人の間で成立するのでなければならない。そうすれば次第に国民の間に平和が実現するのであって、それまでは決して平和は成立しない。」と述べている。
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| − | *ヒルティは、愛妻であるヨハンナ・ゲルトナーの優秀さを間近で見たことも関係し、婦人解放運動に積極的にかかわった。
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| − | *日本には、東大の哲学講師であり愛読者であった[[ケーベル]]博士によって初めて紹介され、以後親しまれてきた。
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| − | == 著作 ==
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| − | *『ヒルティ著作集』全11巻、[[白水社]]
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| − | :第1巻『幸福論1』[[氷上英広]]訳
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| − | :第2巻『同2』[[斎藤栄治]]訳
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| − | :第3巻『同3』[[前田護郎]],[[杉山好]]共訳
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| − | :第4巻『眠られぬ夜のために1』小池辰男訳
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| − | :第5巻『同2』[[登張正実]],[[小塩節]]訳
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| − | :第6巻『愛と希望』[[秋山英夫]]訳
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| − | :第7巻『同情と信仰』[[岸田晩節]]訳
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| − | :第8巻『悩みと光』[[国松孝二]]等訳
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| − | :第9巻『キリストの福音』中沢洽樹訳
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| − | :第10巻『人間教育』[[高橋三郎 (無教会)|高橋三郎]]訳
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| − | :第11巻『永遠の平和』[[秀村欣二]],[[荒井献]]訳
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| − | *『ヒルティ選集』東京創元社、1956-59
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| − | :第1-2巻『眠られぬ夜のために』[[前田敬作]]訳（のち筑摩叢書）
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| − | :第3巻『幸福論 第1』[[矢内原伊作]],塩谷饒訳
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| − | :第4巻『幸福論 第2』[[吉村博次]]訳
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| − | :第5巻『人生論』塩谷饒訳
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| − | *[[草間平作]]・[[大和邦太郎]]訳『幸福論』全3巻（[[岩波文庫]]）
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| − | *草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』全2巻（岩波文庫）
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| − | *渡辺義雄訳『眠られぬ夜のために』角川文庫、1959
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| − | *樺俊雄訳『眠れぬ夜のために』新潮文庫、1959-63
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| − | *[[秋山英夫]]訳『人生論』角川文庫、1968
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| − | *秋山英夫訳『幸福論』角川文庫、1968
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| − | *[[齋藤孝 (教育学者)|齋藤孝]]訳『自分の人生に一番いい結果を出す幸福術』三笠書房、2007.6
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| − | などがある。
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| − | 『幸福論』の最初の訳者は[[平田元吉]]（1913）。
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| − | == 関連項目 ==
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| − | *[[救世軍]]
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| − | *[[キリスト教神秘主義]]
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| − | *[[回心]]
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