クリ属

提供: miniwiki
2018/8/12/ (日) 23:45時点におけるAdmin (トーク | 投稿記録)による版 (1版 をインポートしました)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
移動先:案内検索


クリ属(クリぞく、学名: Castanea)は、ブナ科クリ亜科に含まれるの一つ。落葉樹種子を食用にする。

形態・生態

ほとんどのは樹高20 - 40mにもなるが、チンカピン類は小型で灌木状になる。

単葉で、卵型または倒卵形、葉の長さは10 - 30cm、幅は4 - 10cm。葉の縁には間隔の広い、鋭く尖った鋸歯があり、鋸歯と鋸歯の間は浅く凹んでいる。

は白っぽい尾状花序を成し、精液の臭いとも評される特有の臭いがある。蜜源植物でもあり、独特の味があり好みが分かれるが、ミネラル分の多い蜂蜜が採れる。

果実は直径5 - 11cmでいがに覆われ、1個から7個の種子が入っている。

花崗岩質や結晶片岩質の酸性土壌を好み、石灰岩質などのアルカリ性土壌には生えない。

分布

北半球の温暖で湿潤な地域に広く分布している。

人間との関わり

木材

ファイル:Kuri-table.jpg
栗の無垢一枚板のテーブル(クリア塗装済み)
ファイル:Castanea crenata - Japanese Chestnut floor.jpg
栗の無垢フロア(無塗装状態)

クリ属の樹は硬く耐久性が高く、木材としては銘木にはならないものの、比較的高級品の部類に入る。耐久性の高さから風雨にさらされる鉄道の枕木、同時に薄く引き剥がしやすい特性を生かし、屋根葺き用の薄板に使われた。また、かつては銃床の材料として広く用いられた。現在では産出量が激減し、テーブルや無垢フロア材として使用されることが多い。無塗装の状態ではのやや材質の黒っぽい感じであるが、クリア塗装すると力強い年輪が明瞭に現れるのが特徴である。漢字が「西」と「木」の組み合わせであることから西方浄土になぞらえて位牌などの仏具に使用されることも多い。

食用

ファイル:Roasted chestnut.jpg
夜店における甘栗の調理風景。高温の小石により蒸し焼きにして調理する。調理器具内には攪拌するための回転羽があり、クリの実に満遍なく火が通るようになっている。

果実は果皮が薄いため、考古遺跡においては遺存しにくいが、栗材は管理栽培されて大型化していることからドングリクルミなど堅果類が主要な食物資源であった縄文時代から食されていたと考えられている。戦国期から近世には蒸した栗果を扁平に加工した菓子である勝栗(打栗)が縁起物として重宝され、近世には地方名物として献上品にも用いられた。茹でたり焼いたりするのが一般的な食べ方。南ヨーロッパ森林地帯では、栗の実を乾燥して粉にしたものを小麦粉の代用品にしていた。

日本では、栗を干した後に搗(つ)いて殻と渋皮を除去したカチグリ(搗栗)が利用されていた。カチグリは名前が「勝ち」につながるため武家縁起物とされた。日本在来種の栗は渋皮が取れにくくカチグリにするための手間がかかるため、近年では渋皮の取れやすい海外産の栗が安価なカチグリの原料とされている。

渋皮

渋皮はタンニンが含まれており、石鹸などに用いられる(渋皮石鹸)。

下位分類

  • C. alnifolia
北米に分布、英名Bush Cinkapin。
日本および朝鮮半島南部に分布し樹高は20mほどに達する。葉の形など全体的にクヌギQuercus acutissima)に似るが、葉はクヌギよりも細長く樹皮はより平滑(特に若い木ではその差が著しい、クリも老木では垂直方向に深い亀裂が多数入る)。種小名crenataは「鋭い鋸歯のある」の意味[1]。果実は食用として縄文時代から利用されていた記録が残る他、硬く腐りにくい材は建築や鉄道の枕木に利用された。
アメリカ合衆国東部原産。幹の直径3m、樹高は30mに達する巨大種だが種子はやや小ぶり。食用の他にタンニン採取用としてもきわめて有用であったが、クリ胴枯病(chestnut blight)に感受性が強く元々の分布地では数が激減した。
  • C. henryi
中国に分布するチンカンピンの仲間で樹高25mになる大型種。他のチンカンピン同様イガの中で実が分割せず、1つのイガには丸い実が1つだけ入っている。中国名は錐栗。
中国原産。種小名mollissimaは「非常に柔らかい」ことを示す[1]。樹高は20mに達する。種子は大きいうえに、表面の渋皮を剥きやすく味も良いという優良食用種。一般に天津甘栗は本種を使用する。中国名は板栗。
  • C ozarkensis
アメリカに分布するチンカピンの仲間
アメリカ合衆国原産。種小名のpumilaは「小さい」ことを示し、実際に樹高は10mに満たない。チンカピンの仲間共通で1つのイガの中には1つの丸い実が入っているだけで、他のクリの様に複数は入っていない。
ヨーロッパ南部を中心に分布し、樹高は30mに達する大型種。種小名sativaは「人が栽培する」の意味[1]で実際に古くから栽培されていた。樹皮は成長するにつれて亀裂が入るが、日本のクリが垂直方向に亀裂が入るのに対して本種はやや斜めに入る。アメリカ産のクリ程ではないがクリ胴枯病には弱い。
  • モーパングリ C seguinii
中国原産、現地名は芽栗

脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 林弥栄・古里和夫・中村恒夫(1985)原色木材大図鑑, 北隆館, 東京.

参考文献

  • 茂木透写真 「クリ属」『樹に咲く花 離弁花1』 高橋秀男・勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年、278-281。ISBN 4-635-07003-4。

関連項目

外部リンク