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[[ファイル:Heracles Geryon Louvre F55.jpg|thumb|320px|ヘーラクレースと闘うゲーリュオーン。E群の[[アンフォラ]]。[[紀元前540年]]ごろ。[[ルーヴル美術館]]蔵。]]
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'''ゲーリュオーン'''({{lang-grc-short|'''Γηρυών'''}}, {{ラテン翻字|el|Gēryōn}})は、[[ギリシア神話]]に登場する[[怪物]]である。[[クリューサーオール]]と[[カリロエー]]の子で<ref>[[ヘーシオドス]]、287行-288行。</ref><ref>ヘーシオドス、979行-982行。</ref>、[[エキドナ]]と兄弟<ref>ヘーシオドス、295行-297行。</ref>。
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'''ゲーリュオーン'''({{lang-grc-short|'''Γηρυών'''}}, {{ラテン翻字|el|Gēryōn}}
  
 
ゲーリュオーンは[[アイスキュロス]]および[[ラテン語]]による表記で、[[叙事詩]]中では'''ゲーリュオネウス'''({{lang|grc|'''Γηρυονεύς'''}}, {{ラテン翻字|el|Gēryoneus}})、[[イオニア]]・[[アッティカ]]散文作品や[[アリストパネース]]、[[ピンダロス]]などでは'''ゲーリュオネース'''({{lang|grc|'''Γηρυόνης'''}}, {{ラテン翻字|el|Gēryonēs}})、[[ステーシコロス]]の[[抒情詩]]では {{lang|grc|'''Γαρυόνας'''}} 、[[カルキディア]]の壺絵の表記では {{lang|grc|'''Γαρυϝόνης''''}} となっている。[[エトルリア語]]では'''ケルン'''(Cerun)。[[日本語]]では[[長母音]]を省略して'''ゲリュオン'''、'''ゲリュオネウス'''、'''ゲリュオネス'''とも表記される。
 
ゲーリュオーンは[[アイスキュロス]]および[[ラテン語]]による表記で、[[叙事詩]]中では'''ゲーリュオネウス'''({{lang|grc|'''Γηρυονεύς'''}}, {{ラテン翻字|el|Gēryoneus}})、[[イオニア]]・[[アッティカ]]散文作品や[[アリストパネース]]、[[ピンダロス]]などでは'''ゲーリュオネース'''({{lang|grc|'''Γηρυόνης'''}}, {{ラテン翻字|el|Gēryonēs}})、[[ステーシコロス]]の[[抒情詩]]では {{lang|grc|'''Γαρυόνας'''}} 、[[カルキディア]]の壺絵の表記では {{lang|grc|'''Γαρυϝόνης''''}} となっている。[[エトルリア語]]では'''ケルン'''(Cerun)。[[日本語]]では[[長母音]]を省略して'''ゲリュオン'''、'''ゲリュオネウス'''、'''ゲリュオネス'''とも表記される。
  
ゲーリュオーンの最大の特徴はその形態で、三頭<ref>ヘーシオドス、287行。</ref>、または三頭三体の怪物であるとされた<ref>[[アイスキュロス]]『[[アガメムノン|アガメムノーン]]』870行。</ref><ref>[[ルクレティウス|ルクレーティウス]]『物の本質について』第5巻28節。</ref><ref>[[ウェルギリウス]]『[[アエネーイス]]』第6巻289行。</ref>。古注によると、ステーシコロスはゲーリュオーンには6つの腕、6つの脚があり、そして翼が生えていた、と歌っていたらしい。[[アポロドーロス]]はさらに詳細に、「三人の男の身体が腹で一つになっていて、脇腹と太腿からは三つに分かれた身体を持っていた」と叙述している<ref name=Ap_2_5_10>『[[ビブリオテーケー]]』2巻5・10([[高津春繁]]訳、98ページ)。</ref>。
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ゲリュオネウスともいう。ギリシア神話に登場する三つ頭の巨人。ゴルゴのメドゥサがペルセウスに首を切られたとき,その傷口より出生したクリュサオルが,オケアノスの娘カリロエと交わってもうけた子で,腰から上が3つに分れていた。世界の西のはての海上に浮ぶエリュテイア島に住み,牛の大群を所有し,それをエウリュティオンという名の牛飼いと猛犬[[オルトロス]]に番をさせていたが,ヘラクレスによって退治され,牛も奪われたという。
 
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ステーシコロスによるとゲーリュオーンは鎧兜をつけ、盾と槍でもって武装する[[古代ギリシア]]市民の[[重装歩兵]]の格好をしていた。対照的に[[ヘーラクレース]]は[[ライオン]]の皮一枚を身にまとい、武器は棍棒か弓矢、剣といういでたちだった。この対比は多くの[[ギリシア美術]]に表現されている。ゲーリュオーンの牛獲りは古代ギリシアで非常に好まれたモチーフで、130ほどの事例が知られている。
 
 
 
== ヘーラクレースとの戦い ==
 
ゲーリュオーンは、[[オーケアノス]](大洋)の彼方にあり、まわりに海しかない[[エリュテイア]]の島(正確な場所は不明だが、[[スペイン]]南部の[[タルテッソス]]<ref>ステーシコロス、断片184。</ref>あるいは[[ガデイラ]]などの説がある<ref name=Ap_2_5_10 /><ref>[[レーロスのペレキューデース]]、断片18b。</ref>{{Refnest|group="注釈"|ガデイラは[[ヘーロドトス]]によれば[[黒海]]の外、[[ジブラルタル]]を出たところにある<ref>ヘーロドトス『歴史』第4巻8。</ref>。[[パウサニアース]]もそれに従う<ref name=Pa_1_35_8>パウサニアース『ギリシア案内記』第1巻35章8。</ref>}})で牛の群れを飼っていた<ref>ヘーシオドス、290行。</ref>。牛飼いは[[エウリュティオーン]]といい、牧犬は頭が2つある[[オルトロス]]だった<ref>ヘーシオドス、294行。</ref><ref name=Ap_2_5_10 />。[[ヘーラクレース]]は12の功業の十番目のものとして[[エウリュステウス]]王にこの牛の群れを奪ってくるように命じられ、途中でさまざまないさかいを起こしながらも、エリュテイアに到着した。彼の姿を認めたオルトロスが襲撃したが棍棒で殺され、さらに犬を助けに来たエウリュティオーンまでも殺害された。これを知った別の牛飼い[[メノイテース]]([[ハーデース]]の牛を飼っていた)がゲーリュオーンにこのことを告げ、ゲーリュオーンは牛を追っていたヘーラクレースに追いつき、戦いを挑んだ。しかし矢で射られて殺された<ref name=Ap_2_5_10 />。
 
 
 
ヘーラクレースは牛の群れを追っていたが、[[ローマ]]の伝説によると途中で[[カークス]]という怪物盗賊がこれを盗み出した。ヘーラクレースはカークスを殺して再び牛を我が物とした<ref>[[ティトゥス・リウィウス|リーウィウス]]『ローマ建国史』第1巻第7章4-7。</ref><ref>『アエネーイス』第8巻190行-275行。</ref>。
 
 
 
== ゲーリュオーンの死後 ==
 
ゲーリュオーンは死後、[[ウェルギリウス]]によれば冥界の住人となっていた。しかし[[スエトニウス]]の『ローマ皇帝伝』第3巻14によると、[[ティベリウス]]は遠征の道すがら[[パタウィウム]]の近くにあるゲーリュオーンの神託所に寄って[[おみくじ]]を引いたという。
 
 
 
パウサニアースが伝えているところによると、上[[リューディア]]地方の小さな町テメヌ・テュライの丘が嵐のために割け、そこから巨大な人骨のようなものが露出した。あまりに大きいので、これはクリューサーオールの息子ゲーリュオネースの骨だと評判になった。近くには玉座もある、という噂まで立った。パウサニアースによれば、山の突端の岩塊に玉座のようなものが彫られていたという<ref>パウサニアース『ギリシア案内記』第1巻35章7。</ref>。パウサニアースが「彼はカデイラにいたはずだ」と反論すると、当地の神官たちは彼に「あの骨は[[ガイア]]の息子であるヒュロスのものだ」と説明したという<ref name=Pa_1_35_8 />。
 
 
 
== 神話の変容 ==
 
ゲーリュオーンの物語はヘーシオドスにみられるものが最古だが、すでに基本要素(オーケアノスにあるエリュテイア島、犬・牛飼い・三身の戦士との戦い、牛追い)は揃っていた。それ以降の[[ペイサンドロス]](断片6)、[[パニュアッシス]](断片7A)にも基本要素は継承されている。
 
 
 
前6世紀初期、ステーシコロスは抒情詩『ゲリュオネイア』を書いた(現在では断片が残っているのみ)。そのなかではゲーリュオーンは非常に優雅で高貴な人物として描かれ(母カリロエーとの対話も行なわれている)、むしろ侵略者であるヘーラクレースが野蛮人で暴力沙汰を好み、その犠牲になってしまった、というように歌われているのが特徴的である。こうした同情はピンダロスにも影響を与えた<ref>ピンダロス、Snell-Maehler断片81。</ref>(上述のヘーラクレースとの外見の対比を参照)。ステーシコロスの書くところによるとゲーリュオーンのうちのひとつは矢で射られ、他の2つは棍棒で殴られたらしい。ギリシア美術でも1体だけ倒れ、他の2体は依然としてヘーラクレースに応戦しているという構図がいくつか見られる。ただし[[ヒュギーヌス]]によれば、ヘーラクレースはゲーリュオーンを一本の投槍で殺したことになっている<ref>ヒュギーヌス『神話集』30話。</ref>。
 
 
 
[[シケリアのディオドロス]]はゲーリュオーン神話を[[エウヘメリズム]]風に解釈した。彼によるとクリューサーオールはイベリアの王であり、ゲーリュオーンはその3人の息子のことだった。3人はそれぞれ軍隊を率いていたが、すべてヘーラクレースに打ち滅ぼされてしまった。ヘーラクレースは各地を回り、シケリア島の[[アイギュリオン]]においてゲーリュオーンと[[イオラーオス]]の祭儀を創始した<ref>シケリアのディオドロス『歴史叢書』第4巻17-24。</ref>。
 
 
 
[[image:Geryon Landino 1497.jpg|thumb|250px|ジェーリオンが上昇してきてウェルギリウス、ダンテと対峙する。『神曲』について書かれた絵画の一部。[[ヴェネツィア]]、[[1497年]]。]]
 
[[ダンテ・アリギエーリ]]は『[[神曲]]』の地獄篇第16~17歌にゲーリュオーン(『神曲』での[[イタリア語]]表記はジェーリオン、ジュリオーネ Gerione)を登場させている。『神曲』におけるジェーリオンは3頭の怪物ではなく、けばけばしい蛇の体を持ち、獣の脚、二股の[[サソリ]]の尾、そして翼が生えている(この姿は「三体」という要素を「人間、獣、爬虫類」という三性質をもった体として表現したとする説がある<ref>平川祐弘訳『神曲 地獄篇』河出書房新社、234ページ</ref>)。美しい人間の顔を出しながらその首から下は怪物であるジェーリオンを、ダンテは「虚偽瞞着の厭わしい権化」と呼び、欺瞞の罪を犯した亡者のゆく地獄第8圏に棲むものとしている。ウェルギリウスは第7圏と第8圏の間にある断崖絶壁を降りるためにジェーリオンを呼び出す。2人を乗せたジェーリオンはゆっくりとらせん状の軌道を描きながら第8圏へと降り立ち、それから再びどこかへと飛び去っていった。
 
 
 
== 学術的解釈 ==
 
ゲーリュオーンは本来大地あるいは冥界の精霊だったとされている。近くにハーデースの牛飼いがいること、冥界の存在となったこと、神託を行うことなどがその理由として挙げられる。
 
 
 
== 系図 ==
 
{{ポントスの系図}}
 
 
 
== 脚注 ==
 
===注釈===
 
{{reflist|group="注釈"}}
 
===脚注===
 
<references />
 
 
 
== 参考資料 ==
 
{{Commonscat|Geryon}}
 
* [[アポロドーロス]]『ギリシア神話』[[高津春繁]]訳、[[岩波文庫]](1953年)
 
* [[アルクマン]]他『ギリシア合唱抒情詩集』[[丹下和彦]]訳、[[京都大学学術出版会]](2002年)
 
* [[シケリアのディオドロス|ディオドロス]]『神代地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1999年)
 
* [[パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年)
 
* [[ヒュギーヌス]]『ギリシャ神話集』[[松田治]]・青山照男訳、[[講談社学術文庫]](2005年)
 
* [[ヘシオドス]]『[[神統記]]』[[廣川洋一]]訳、岩波文庫(1984年)
 
* [[ヘロドトス]]『[[歴史 (ヘロドトス)|歴史]](上)』[[松平千秋]]訳、岩波文庫(1971年)
 
* 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、[[岩波書店]](1960年)p. 122
 
* Philip Brize, 1988, "Geryoneus", ''Lexicon Iconographicum Mythologiae Classicae'' IV/1, pp. 186-90.
 
* Philip Brize, 1990, "L. Herakles and Geryon (Labour X)", ''Lexicon Iconographicum Mythologiae Classicae'' V/1, pp. 73-85.
 
  
 
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ゲーリュオーン古希: Γηρυών, Gēryōn

ゲーリュオーンはアイスキュロスおよびラテン語による表記で、叙事詩中ではゲーリュオネウス(Γηρυονεύς, Gēryoneus)、イオニアアッティカ散文作品やアリストパネースピンダロスなどではゲーリュオネース(Γηρυόνης, Gēryonēs)、ステーシコロス抒情詩では Γαρυόναςカルキディアの壺絵の表記では Γαρυϝόνης' となっている。エトルリア語ではケルン(Cerun)。日本語では長母音を省略してゲリュオンゲリュオネウスゲリュオネスとも表記される。

ゲリュオネウスともいう。ギリシア神話に登場する三つ頭の巨人。ゴルゴのメドゥサがペルセウスに首を切られたとき,その傷口より出生したクリュサオルが,オケアノスの娘カリロエと交わってもうけた子で,腰から上が3つに分れていた。世界の西のはての海上に浮ぶエリュテイア島に住み,牛の大群を所有し,それをエウリュティオンという名の牛飼いと猛犬オルトロスに番をさせていたが,ヘラクレスによって退治され,牛も奪われたという。





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