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ゴジラvsキングギドラ
Godzilla vs. King Ghidora
監督 大森一樹 (本編)
川北紘一 (特撮)
脚本 大森一樹
製作総指揮 田中友幸
出演者 中川安奈
豊原功補
小高恵美
原田貴和子
佐々木勝彦
チャック・ウィルソン
小林昭二
佐原健二
山村聡
西岡徳馬
土屋嘉男
音楽 伊福部昭
撮影 関口芳則 (本編)
江口憲一 (特撮)
大根田俊光 (特撮)
編集 池田美千子 (本編)
東島左枝 (特撮)
製作会社 東宝映画
配給 東宝
公開 日本の旗 1991年12月14日
上映時間 103分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
製作費 15億円
配給収入 14億5000万円[1]
前作 ゴジラvsビオランテ
次作 ゴジラvsモスラ
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ゴジラvsキングギドラ』(ゴジラたいキングギドラ、または、ゴジラ ブイエス キングギドラ)は1991年(平成3年)12月14日公開の日本特撮映画ゴジラシリーズの第18作、東宝創立60周年記念作品でもある。上映時間103分、カラー、ビスタビジョンパナビジョン)。観客動員数は約270万人、配給収入は14億5000万円(1992年邦画配収第8位)を記録した。

キャッチコピーは「世紀末、最大の戦いが始まった。」「お前だけには絶対負けない!」「12・14決戦!」。

概要

前作『ゴジラvsビオランテ』の成績が伸び悩んだことから、当初はモスラをメインに据えた『モスラVSバガン』が企画された。しかし東宝上層部はゴジラのほうが好成績を期待できると判断し、昭和ゴジラシリーズの人気怪獣で子供たちのリクエストが多かったキングギドラが登場することとなった[2][3]。ゴジラとキングギドラの対決は、1972年公開のシリーズ第12作『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』以来19年ぶりで、1対1の対決はシリーズで本作のみである[4]。改題再上映版ではないオリジナル作品のタイトルとして、初めて「キングギドラ」が冠されている。ゴジラは本作で、前作の身長80メートルから100メートルに巨大化した。

特撮撮影ではミニチェア・フル・セットではなく各シーン、各セットでの切り替えに合わせたミニチェア・セットとなった。第9スタジオで新宿副都心、福岡市街、札幌、綱走原野のセット、第7ステージでは海底、本編の MOTHER 内部の撮影[5]と厚みを増す撮影となった。特に新宿での最終決戦には撮影用カメラが3台使用され、撮影当時に完成したばかりの東京都庁を舞台とする戦闘を展開して破壊し、造られた都庁ミニチェアは完成に1か月を要したうえにその高さは5メートルを超えたため、東宝特撮史上最高の石膏ビルとして大きな話題となった[6]

DVDの大森一樹のコメントによれば、23世紀の日本の増長や一企業の原子力潜水艦の所有などは、当時バブル経済真っ只中の日本がどこまで肥大化するかわからないことに対する不安と警鐘の意味合いがあったという。ただし、ちょうど公開時期を境にして日本はバブル崩壊により長期の不況に突入したので、現実との食い違いが生じている。また、一部の台詞で23世紀でもソ連が存在することになっているが、劇場公開後にソ連崩壊が起きている[注 1]

物語は、タイムトラベルを経てゴジラ誕生の歴史を変えようとするなど、ゴジラシリーズの中でも意外性に満ちている。また、ゴジラが放射能を浴びて怪獣になる前の「ゴジラザウルス」という恐竜も登場するなど、ゴジラ誕生の秘密が明らかになっている。

本作品は東宝特撮で初めてタイムトラベルがストーリーの鍵となっていることが最大の特色であるが、タイムパラドックスに矛盾が多く、その点において批判もある[3]。後にタイムトラベルストーリーは、大ヒット映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ』からアイディアを流用したと関係者は語っている。本作はこのほかにも、「人間そっくりのアンドロイド」(『ターミネーター[7])や「クライマックスにロボットで戦うヒロイン」(『エイリアン2』)[3][注 2]、「「スピルバーグ少佐」なる人物の登場」など、ハリウッドのSF映画から影響を受けた場面も多岐にわたり見受けられる。

なお、プロットでのタイトルは『キングギドラVSゴジラ(仮題)』とされており、脚本内のタイトル登場場面では『ゴジラ3』と表記されていた[9]

ストーリー

1992年7月、東京上空に巨大なUFOが突如飛来。やがてUFOは富士山麓に着陸し、23世紀の地球連邦機関の使者を名乗るウィルソン、グレンチコ、エミーの3人が姿を現した。彼らはノンフィクションライターである寺沢健一郎が著書『ゴジラ誕生』の中で記した、「ラゴス島に生息していた恐竜が、1954年にビキニ環礁で行われた核実験によりゴジラへと変異した」との仮説に基づき、「恐竜が核実験に遭遇する前に別の場所に移動させ、ゴジラの存在自体を抹殺する」という計画を提案する。日本政府はこれを受諾し、寺沢、国立超科学研究センターの三枝未希、古生物学者の真崎洋典は、未来人のエミー、アンドロイドのM11と共に、タイムマシンKIDSで1944年のマーシャル諸島・ラゴス島にタイムスリップする。彼らが目撃したのは、恐竜ゴジラザウルスであった。ゴジラザウルスは自身の縄張りを荒らした米軍に襲いかかり、結果的に新堂靖明率いる日本軍ラゴス島守備隊を窮地から救ったが、艦砲射撃に傷つき倒れ伏した。新堂らが撤退したあと、寺沢らは物質転送装置で瀕死のゴジラザウルスをベーリング海に転送した。これにより、ゴジラは歴史から完全に抹殺されたものと思われた。しかし、寺沢たちが戻ってきた1992年の日本は、新たに出現した三つ首の巨大怪獣キングギドラの脅威に晒されていた。

23世紀の日本はアメリカ、ソ連、中国を凌駕する超大国に肥大し、圧倒的な軍事力と経済力で世界の国々を隷属させていた。そこで国力の格差是正を目指すグループに属するウィルソンらは、コントロール可能な怪獣キングギドラを使って20世紀の日本を脅迫し、23世紀の日本を弱体化させようと企んでいたのである。キングギドラは福岡に飛来し、周辺一帯を壊滅させた。一方、日本人の血を引くエミーは祖国の惨状に衝撃を受け、以後寺沢たちに内通するようになった。

この危機に対し、巨大コンツェルン帝洋グループの総帥で、かつてゴジラザウルスに命を救われた新堂は、ゴジラを復活させるべく、東南アジア某国に隠し持つ核搭載型原子力潜水艦むさし2号をベーリング海に派遣しようと企てる。そんな中で未希は、テレパシー能力によってベーリング海にゴジラザウルスとは異なる巨大な影を感知していた。ゴジラザウルスは、不法遺棄された核燃料の影響で既にゴジラへ変異していたのだ。復活したゴジラはむさし2号を撃沈し、北海道の原野でキングギドラと会敵する。「奴はもう一度、我々のために戦ってくれる……」と呟く新堂。ウィルソンの操るキングギドラにゴジラは苦戦を強いられるが、造反したエミーがキングギドラのコントロール装置を破壊すると形成が逆転、ゴジラはキングギドラをオホーツク海に沈め、ウィルソンのUFOも破壊する。しかしゴジラは日本に牙を向くかの如く、今度は首都東京への侵攻を開始した。

寺沢達はゴジラの脅威から日本を救うために、キングギドラを23世紀の技術で再生し、再度ゴジラと戦わせるという計画を思いつく。計画を実行するためにエミーは帰還を約束して未来へと帰っていった。ゴジラに破壊し尽くされた23世紀の日本は最貧国となっていたが、オホーツク海ではキングギドラもわずかながら生命力を残していた。

首都を蹂躙するゴジラは新宿の帝洋グループ本社ビルに接近。独り残る新堂を目の当たりにしたゴジラは一瞬沈黙するが、巨大な咆哮とともにビルを新堂もろとも破壊する。なおも侵攻を続けるゴジラの前に、時空を超えて再生を遂げたメカキングギドラがその姿を現した。

登場怪獣

登場人物

エミー・カノー
本編の主人公。23世紀・地球均等環境会議の穏健派メンバー。25歳。日本人女性で、1992年に MOTHER でウィルソンやグレンチコらと共にタイムワープしてやって来た。当初は現代人への警告名目でウィルソン達に同行し、ゴジラを抹殺する作戦に協力した。しかし、新たに出現させたキングギドラで、現代の日本を攻撃して国力を消耗させようとするウィルソン達に反発し、寺沢達に協力する。
自分を力ずくで連れ戻そうとしたM11に野次をぶつけまくりながら追い払おうとしたり、メカキングギドラに乗り込んでゴジラに戦いを挑むなど、気丈でアクティブな女性である。
実は、後述する寺沢の子孫である。本編では寺沢本人に言うことはなかったが、ノベライズ版では別れの直前に画面越しに述べている。
ノベライズ版では、寺沢と千晶の結婚パーティーにコッソリ現れ、受付に自分と母親の写真が入ったペンダントを千晶に渡すように頼んだ。
寺沢 健一郎
超常現象専門のノンフィクションライター。33歳。「太平洋戦争時代に恐竜を見た」というネタを追っていくうちに、ゴジラ誕生の仮説を立て『ゴジラ誕生』という本で出版しようとしたことから、今回の一件に深く関わっていく。
都会の外れに自らが書いた超能力の本での収入で建てた一軒家に住んでいるクールな青年ライターだが、ウィルソンを殴り合いで倒すほど、血気盛んで腕っ節も強い。
結局、『ゴジラ誕生』は記録に残るほど話題にはならなかったが、ノベライズ版ではエミーが歴史をいじったため、国際的な大ベストセラーとなった。
三枝 未希
超能力者で国立超科学研究センターのゴジラチームのメンバー。20歳。ビオランテとの戦いで日本海に追われたゴジラを2年以上監視し続けていた。
今回はゴジラ監視だけでなく、1944年のラゴス島へエミーや寺沢達と共にタイムワープしゴジラザウルスに遭遇するという体験をする。超能力を使用する場面は少ないが、今作でもベーリング海でうごめくゴジラを感知している。
森村 千晶
雑誌『ムー』の編集記者で、寺沢の恋人。29歳。寺沢と共に、真崎や新堂の元を尋ねて取材を行う。ゴジラやキングギドラの一連の事件には直接関わっていないが、ラストシーンで23世紀へ帰るエミーが乗る KIDS を寺沢と2人で見送る。
本編ではエミーとの血縁関係ははっきりしていないが、ノベライズ版ではエミーの母親が千晶と瓜二つであり、2人の血縁関係が示唆されている。
土橋 竜三
内閣安全保障室室長。50歳。保障室内にGルームを再編成した中心人物で、想像を超える2大怪獣の対策に就く。キングギドラに対抗するため、ゴジラを再び誕生させてはと提案してしまう一幕もあったが、自身で決行するには至らない。
次作『ゴジラvsモスラ』では国家環境計画局に出向する。
真崎 洋典
古生物学者で東都大学古生物学教授(ノベライズ版では、寺沢の大学の先輩でもある)。48歳。穏やかな人柄で、恐竜を専門とし、一部の恐竜は6550万年前の大量絶滅を生き延びたとする恐竜生存説を提唱している。寺沢の取材を受けたことから、寺沢や未希と共にゴジラ抹殺作戦に参加することとなる。その後も、国立超科学研究センターに出向して協力する。
ウィルソン
23世紀人で地球均等環境会議の過激派メンバー。40歳。20世紀の日本の国力を消耗させる作戦を遂行するため、地球連邦機関の MOTHER を奪い、1992年にグレンチコ達と共にやってきた。日本の将来を救うためと偽りゴジラを歴史から抹殺した後、自分達が操るキングギドラで日本を攻撃する。エミーの裏切りにより作戦は失敗するが、それを笑い飛ばし「キングギドラはもういらない。我々の目的はゴジラが達してくれる」と言い放つ(現に歴史改変後の23世紀では日本はゴジラにより滅ぼされ最貧国となっていた)。
最期はエミー達に殴り飛ばされた後、MOTHER ごと網走にいるゴジラの目前に転送され、熱線で吹き飛ばされて死亡する。
林田
内閣総理大臣。自らが中心となってウィルソン達と会談するが、彼らの本当の目的がキングギドラの力で現代の日本を支配することだと知ると、怒りをあらわにする。ノベライズ版では、新堂とは大学の同級生であり本編でも交流があり、映画より登場が多い。
池畑 益吉
博多で焼き鳥屋台「らごす」を営む老人。太平洋戦争中は新堂の部下の日本兵で、ラゴス島にてゴジラザウルスに遭遇する。その時の経験を博覧会「恐竜ワールド」で勝手に抗議・演説したことを機に、寺沢の取材を受ける。
「らごす」の屋台には東宝映画『連合艦隊』のポスターが飾られている。
グレンチコ
23世紀人で地球均等環境会議の過激派メンバー。30歳。ウィルソンの相棒的存在で、共にキングギドラを操る。ゴジラ復活を知り、20世紀の人類を「愚かな時代だ。救いようのない原始人どもだ」と評する。
最期はウィルソンと共にエミー達に殴り飛ばされた後、MOTHERごと網走のゴジラの目前に転送され、熱線で吹き飛ばされて死亡する。
M11
アンドロイド。見た目は表情まで変えられる外国人だが、機械の操作、戦闘等で人間を大きく超えた能力を発揮する。英語と少々片言の日本語で会話する。表面は焼かれるが、炎の中でも活動可能。
物語前半ではウィルソンの手先として暗躍するが、途中でエミーによりプログラムディスクを交換され、彼女の力強い仲間となる。終盤では、そのAIのみがメカキングギドラのコクピットである KIDS の操縦席に搭載される。
作中、車の爆発に巻き込まれて機械が露出するシーンは特殊メイクで撮影されたが、エミーがディスクを交換するシーンでは演者そっくりの人形が用いられた。
藤尾 猛彦
物理学者で国立超科学研究センター所長。45歳。突如出現した MOTHER に対する会議に参加したことで、内閣安全保障室に協力する。常識人で、新堂がベーリング海へ原潜を向かわせたと知った際には彼を強く非難している。
ゴジラが復活してキングギドラを一度倒した後はGルームを退席するが、一連の事件を寺沢達と最後まで見送る。
新堂 靖明
帝洋グループ会長。75歳。「恐竜博士」を自称する部類の恐竜マニアだが、太平洋戦争中は日本陸軍少佐、ラゴス島守備隊隊長だった。部隊はアメリカ軍の猛攻の前に玉砕寸前だったが、戦闘中に現れたゴジラザウルスがアメリカ軍を蹴散らしたために事実上救われ、ラゴス島撤退直前には傷ついたゴジラザウルスに涙を流しながら謝意と敬礼を送る。復員後は帝洋グループを創設して日本を経済大国として復興させたが、自らの企業に原子力潜水艦を所有させてしまうなど、その企業倫理は破綻していた。改変前の未来では、帝洋グループは世界最大の企業グループになっていた。
キングギドラへの対抗手段としてゴジラを復活させるため、前述の原潜をいち早くベーリング海へ向かわせる。自分を救ったゴジラザウルス=ゴジラを「救世主」と半ば神聖視していたが、やがて自らの認識錯誤を悟り、新宿の本社ビルに1人残ってゴジラと再会。見つめ合い、幾度かのうなずきの後に放射熱線を受け爆死する(ゴジラもすぐには熱線を吐かず、新堂を凝視し咆哮を上げた末に熱線を吐いた)。

登場兵器・メカニック

架空

未来
MOTHER(マザー)
地球連邦機関が開発した巨大円盤型タイムマシン
外観はきのこ雲に似た円盤型で当初はUFOとして認識された。元々は地球連邦機関 (EUO) の所有と思われ、ウィルソン等「地球均等環境会議」が強奪した模様。船内には西洋人風の武装アンドロイドが多数警備にあたり、KIDS やスカイモビル、フライングスクーター[注 3]等が収容できるパーキングドームをはじめ、三次元映像投影装置、エントランス中央の天井にはメインルームに通じる上階の通路へ乗員を上昇させる光を照射する装置など、現代の科学力を遥かに超えた設備を持つ。KIDS を搭載し、防御用のバリアも備えている。また、緊急時には20分後に元の時代に戻ることができる緊急避難装置がある。
ウィルソンらに反旗を翻し、現代人側についたエミー達の手で日本政府の政治を代行させるコンピュータを破壊された上、ゴジラの目の前に転送される。緊急避難装置は作動したが、タイムワープの直前に転送が完了し、ゴジラの熱線によって破壊される。
  • 全長:100メートル
KIDS(キッズ)
地球連邦機関が開発した3次元プロジェクターを持った小型タイムマシン。乗員数5名。普段は MOTHER のパーキングドームに収容されている。
潜望鏡のようなテレビカメラにより艇外を偵察。機体前部には他の物体を別の場所に移送させるテレポートビームが発射されるパラボラヘッドが内蔵されている。この移送は生物も可能だが、動かない状態であることが必要とされる。
後にメカキングギドラのコクピットに改造される。
深海調査艇
地球連邦機関所属の潜水艇で、3人乗り。エミーとM11、モールズが搭乗して、ゴジラに敗れ負傷し、オホーツク海に沈んだキングギドラの調査に向かう。
ミニチュアは『日本沈没』に登場したわだつみの流用[11]。MOTHER、KIDS に合せたデザインも描かれていたが未使用に終わった[12]
BABY
バックパック型飛行ユニット。使用者はこれを背負い同時に安全面も考慮してヘルメットを被り、手にした専用リモコンを操作することで、空中浮遊し低速移動出来る。劇中ではエミー、M11、寺沢が使用する。
脚本では一人乗り飛行マシーンのフライングスクーターが登場予定であった[10]
レーザーガン
MOTHER 内を警備する武装アンドロイドたちが装備する光線銃。赤いレーザーを発射するハンドガンタイプと、青いレーザーを発射するライフルタイプの2種類があり、前者はM11とエミー、後者は寺沢が使用している。
現代
むさし2号
帝洋グループが、日本が何らかの理由で核汚染した際に核シェルター代わりに極秘建造した原子力潜水艦核ミサイルを搭載している。常時は東南アジアの軍事施設に保管され、乗組員は軍事訓練を受けた帝洋社員が搭乗している。未来人の策謀により、ベーリング海に転送された「ラゴス島の恐竜(=ゴジラザウルス)」をゴジラとして復活させようとしたが、同海域で起きたソ連の大型原子力潜水艦の沈没事故による核燃料漏れにより怪獣として復活していたゴジラに遭遇し撃沈され、ゴジラは更に核エネルギーを吸収、強大化する。
劇中では「むさし」の名は使われず、「オペレーションG」と呼ばれている。小説版での艦名は帝洋コンツェルン総帥・新堂靖明の名をもじった「神童」となっている。
当初ミニチュアが新造される予定だったが、予算の都合により1984年公開の『ゴジラ』で使用されたソ連原子力潜水艦を若干修正し再利用された[13]
大森の当初の構想では「日本が実は核兵器を保有しており、日本の核で恐竜がゴジラになる」という案であった。しかし、これを知った田中友幸は「(被爆国の)日本が核兵器を持つとは何事だ」と反対意見を述べたため、日本国外に一企業が核を保有するという設定に変更になった。これに田中も「日本国内には無いんだな」と確認した上で同意したという。
92式メーサー戦車

実在

自衛隊
大日本帝国陸軍
アメリカ軍

設定

国立超科学研究センター
藤尾が所長を務める組織。ゴジラを監視・研究する「ゴジラチーム」を編成し、防衛庁と連携して対G兵器の研究開発も行っている。
後に人員の多くが国連G対策センターに統合され、対ゴジラ専門機関として発展する。
内閣安全保証室Gルーム
土橋が中心となって再建された日本政府のゴジラ対策のための総本部。前作『ゴジラvsビオランテ』の同名の部署より規模が拡大したため専用の司令室を持つようになり、有事の際には防衛庁長官や幕僚長らもここの席に着き、指揮を執る。
帝洋グループ
太平洋戦争後、新堂が創設した巨大コンツェルンで、新宿に本社屋を構える。戦後、日本経済を立て直し、大きく発展させたと言われており、むさし2号を東南アジアの軍事施設に保管するほどの規模を誇る。
歴史が改変されなければ、23世紀にはさらに巨大な力を振りかざし、右に出る者がいないほど肥大化しているとエミーが寺沢に語っている。しかし復活したゴジラにより、新宿の本社屋は新堂を巻き込んで破壊されてしまう。
恐竜ワールド
福岡県のシーサイド公園で開かれた帝洋グループ主催の恐竜博覧会で、ここで池畑が許可なく抗議・演説を行ったことで寺沢の関心を引く。
外観は、当時シーサイドももちにあった西部ガスミュージアム(2003年3月に閉鎖)で撮影されている。
ラゴス島
太平洋マーシャル諸島ルオット島クェゼリン島に挟まれた小さな架空の島。第二次世界大戦中にゴジラの前身であるゴジラザウルスが住んでおり、攻め込んで来たアメリカ軍や、本島の日本軍守備隊だった新堂と池畑たちに目撃されている。
池畑が博多で営んでいる「らごす」の名は、この島から採ったものと思われる。
23世紀の地球
エミーの話によると、ゴジラは23世紀まで出現しておらず、21世紀、日本は経済大国となり、南アメリカアフリカといった赤字国の国土まで買収して領土を拡張。22世紀末にはアメリカ・ロシア[注 4]・中国以上の国土を持つ地球一の大国となる。また、核兵器は21世紀末に地球上から全て破棄され、各国は武力で日本の暴走を抑えられなくなったという。
しかし、現代においてキングギドラの出現やゴジラの復活といったウィルソンらの干渉で歴史が改変してしまい、ウィルソンらを倒した後にエミーらが一度23世紀に帰還した時には、日本は繁栄に溺れた末に怪獣によって滅ぼされ最貧国になったとモールズが明かしている。
地球連邦機関
英語表記はEUO(Earth Union Organization)。23世紀の地球統合機関。しかし、この組織ですら日本の肥大化は止められなかった。20世紀の日本の国力を消耗させる作戦を計画したウィルソンらによって MOTHER を奪取されている。また、改変されてしまった23世紀ではキングギドラをサイボーグ化させる。
地球均等環境会議
23世紀の国家間の力の極端な差を無くすことを目的とする運動グループ。世界中から穏健派・過激派までさまざまなメンバーが参加している。

キャスト

スタッフ

作品解説

スタッフ

前作に引き続き脚本と監督には大森一樹が起用され、特技監督には川北紘一

今回の目玉は音楽。前々作、前作ではシリーズ刷新の意味合いも込めて当時の人気作曲家が映画音楽を担当したが、「やはり最も有名なテーマを超えるものを造るのは難しいので、やってもらおう」という意向から[16]、本作では『メカゴジラの逆襲』以来16年ぶりに音楽を伊福部昭が担当した。ゴジラのテーマ曲が前面に押し出されたほか、キングギドラのテーマ曲や『宇宙大戦争』『キングコング対ゴジラ』『怪獣総進撃』で用いられた旋律が伊福部自らによる編曲を経て再び用いられている。例外的に、戦闘機がキングギドラを追撃するシーンで、前作同様にアルバム『OSTINATO』から「ラドン追撃せよ」が流用された[17] が、これは監督の意図が自衛隊主体のシーンだったのに対して伊福部がギドラの主題を用意していたため、新たに作曲し直す時間がなかったことによる。また、伊福部は引き受ける条件として当時すでに廃れていた「撮影所でフィルムを上映しながら録音する」という方法を要望し[18]、大型ステージを貸しきってオーケストラの録音を再度実行するという、非常に手間のかかるレコーディング作業が行われた。

配役

ヒロインの中川安奈を筆頭に、主要メンバーには前作でサブキャストだった豊原功補佐々木勝彦原田貴和子と前作に引き続き三枝未希の小高恵美が固める。悪役の未来人及びアンドロイドをチャック・ウィルソンリチャード・バーガーロバート・スコット・フィールドら外国人が担当。それらに班参戦の西岡徳馬と『ウルトラマン』のムラマツ・キャップ役、『仮面ライダーシリーズ』の立花藤兵衛役などテレビ特撮で著名な小林昭二が、ゴジラシリーズに初出演した。そして創立60周年にふさわしく東宝特撮映画の顔である土屋嘉男が『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』以来21年ぶり(ゴジラシリーズでは『怪獣総進撃』以来23年ぶり)に、佐原健二が『メカゴジラの逆襲』以来16年ぶりに出演している。

その他の出演者

ノストラダムスの大予言』以来17年ぶりに山村聰が首相役を演じている。常連の上田耕一は軍人時代に恐竜を目撃した居酒屋の親父役を、その他、東宝特撮映画への出演は続・人間革命』以来15年ぶりとなる黒部進をはじめ、時任三郎ケント・ギルバートダニエル・カール、ゴジラファンの森末慎二風見しんごが主要部分でゲスト出演している。

受賞

第15回日本アカデミー賞
  • 特殊技術賞(特別賞):川北紘一
第11回藤本賞
  • 藤本賞:田中友幸「ゴジラ」他製作
第10回ゴールデングロス賞
  • 日本映画部門:優秀銀賞

備考

  • 避難する住民のシーンに、一部過去の作品の映像が流用され組み込まれている。
    • キングギドラが福岡を攻撃し、避難するシーン - 1989年公開の『ゴジラvsビオランテ』でゴジラが大阪を襲う可能性が高まり避難するシーンの一部。
    • ゴジラが札幌を襲う可能性が高まり避難するシーン - 1984年公開の『ゴジラ』でソ連の衛星から誤って核ミサイルが新宿へ向けて発射されたため地下へ避難するシーンの一部。
    • キングギドラが中京の石油コンビナートを破壊するシーン - 『東京湾炎上』の流用[19]。該当シーンはもともと絵コンテに存在しなかったが、絵コンテにはゴジラが東京湾に上陸して、コンビナートを破壊するシーンが存在する(こちらは撮影されていない)。
  • 予算の都合でキングギドラの引力光線でビルが爆散するシーンの一部は石膏板に引き伸ばしたビルの写真を貼ったものを爆破しているが、件のカットは映画のヒット後に新たに作られたテレビの宣伝でもオンエアされた。
  • 新宿のビル群での決戦シーンでは新宿住友ビル新宿センタービル新宿野村ビルヒルトン東京KDDIビル新宿グリーンタワー東京医科大学病院がない(実写のシーンではもちろん存在している)。これは各シーン、各カット後にセットを切り替える美術設定にしたためである。
  • この映画に関しては、予想以上のヒットであったらしく、公開後にも新たな宣伝が行われ、前述のテレビのキングギドラの都市破壊シーンをメインにしたCMの他に新聞に掲載された、寺沢とエミーが銃を構える、怪獣映画には珍しい人間がメインのSF映画風の広告(モノクロ)も作られた。
  • 写真ポスターのゴジラとキングギドラの瞳は色が暗かったので描き加えられている。もともとはゴジラの生物感を出すために前作から引き続いて、白目が分かりにくくなっていたが、それがきっかけとなり次作以降のゴジラは虹彩が明るく、瞳が分かりやすいように造形されるようになった。
  • 本作のラゴス島での米軍描写について米国の退役軍人団体等からクレームがついた[20] ほか、ゴジラ誕生の理由をアメリカの水爆実験と明言している点、さらに当時貿易摩擦で悪化していた対日感情からアメリカの配給会社も難色を示し、劇場公開されないどころか英語版すら製作されなかった[21]。本作が米国で公開・ソフト化されたのは1998年になってからである。

映像ソフト化

  • DVDは2002年2月21日発売。
    • 2005年4月22日発売の「GODZILLA FINAL BOX」に収録されている。
    • 2008年4月25日発売のトールケース版「ゴジラ DVDコレクションIV」に収録されており、単品版も同時発売。
    • 2014年5月14日には「ゴジラ60周年記念版」として期間限定の廉価版が発売。
    • 2016年6月15日、<東宝DVD名作セレクション>版発売。
  • Blu-rayディスクハイビジョンマスター)は2009年11月20日発売。

コミカライズ

ストーリーは映画とほぼ同じだが、三枝美希や新堂を始めとしたラゴス島守備隊関係者は登場せず、前作の主要登場人物である黒木特佐が登場する。

ノベライズ

コミカライズ版と同様にストーリーは映画に準じるが、冒頭には未来人が金星で「宇宙怪獣のキングギドラ」の死骸から体組織を回収するシーンが追加されていたり、帝洋グループ所有の原子力潜水艦の名前が異なるなど、細かな差異がある。

関連グッズ

ゴジラ怪獣軍団
ゴジラシリーズの歴代怪獣をディフォルメしたミニフィギュア。全20種類に各7色のカラーバリエーションが存在する[22]
入場者プレゼントとして配布されたほか、劇場内のカプセル自動販売機でも販売された[22]
入場者プレゼントに封入された当たり券が出ると「秘密のビッグプレゼント」としてクリスタルバージョン(5体セット)がプレゼントされた[22]

脚注

注釈

  1. ゴジラの特番で大森自身が時事的なものとして、自らネタにしている。
  2. エミー・カノー役の中川安奈は演技で『エイリアン』のシガニー・ウィーバーも意識したという[8]
  3. 劇中未登場の一人乗り小型飛行マシーン。デザイン画ではスクーター風の形状であった[10][7]
  4. 劇中では「ソビエト」と呼称している。
  5. 5.0 5.1 5.2 役名は小道具の名札に記載[15]
  6. 東部方面総監部の他に中盤での撮影地が北海道(網走方面)であった関係で美幌駐屯地もクレジットされている。

出典

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  2. 岩畠寿明 & 小野浩一郎 1991, p. 88.
  3. 3.0 3.1 3.2 野村宏平 2004, p. 339.
  4. 東宝特撮映画大全集 2012, pp. 224 - 227
  5. 岩畠寿明 & 小野浩一郎 1991, pp. 88 - 89.
  6. 『ゴジラvsキングギドラ』劇場パンフレットより。
  7. 7.0 7.1 平成ゴジラパーフェクション 2012, p. 31 「ゴジラVSキングギドラアートワークス」。
  8. 平成ゴジラパーフェクション 2012, pp. 32 - 33 「キャストインタビュー 中川安奈」。
  9. 1954-2004 『東宝特撮の世界』篇 - 電脳小僧の特撮映画資料室
  10. 10.0 10.1 岩畠寿明 & 小野浩一郎 1991, p. 101.
  11. 岩畠寿明 & 小野浩一郎 1991, p. 57.
  12. 岩畠寿明 & 小野浩一郎 1991, p. 98.
  13. 岩畠寿明 & 小野浩一郎 1991, pp. 55, 101.
  14. 14.0 14.1 役名は『東宝SF特撮映画シリーズVOL.6 ゴジラvsキングギドラ』掲載のシナリオに準拠。
  15. 平成ゴジラパーフェクション 2012 p.146「平成ゴジラバーニング・コラム」。
  16. 東宝SF特撮シリーズSPECIAL EDITION『ゴジラ FINAL WARS』CD-ROM付き特別プログラム より
  17. サウンドトラック>ゴジラ”. 東宝ミュージック. . 2015閲覧. ゴジラ・サウンドトラック・パーフェクトコレクション BOX4, BOX5
  18. 「ゴジラ映画の音楽 その3」、『宇宙船』Vol.118(2005年5月号)、朝日ソノラマ2005年5月1日、 81頁、 雑誌コード:01843-05。
  19. 平成ゴジラパーフェクション 2012, p. 148 「平成ゴジラバーニング・コラム」No.010。
  20. ウィリアム・M・ツツイ 『ゴジラとアメリカの半世紀』 神山京子訳、中央公論新社、2005年、。ISBN 978-4-12-003677-4。
  21. デビット・キャリシャー「社会的に観たゴジラ映画 -日米を通して-(上)」 『福岡市総合図書館研究紀要』第4号 2004年
  22. 22.0 22.1 22.2 平成ゴジラパーフェクション 2012 p.34 「Memories of ゴジラVSキングギドラ」。

参考文献

  • 『最新ゴジラ大図鑑 増補改訂版』 バンダイ、1991年。ISBN 4891891866。
  • 岩畠寿明 『ゴジラvsキングギドラ 怪獣大全集』 講談社〈講談社ヒットブックス〉、1991-12-5。ISBN 4-06-177720-3。
  • 『ゴジラvsキングギドラ』 東宝出版事業室〈東宝SF特撮映画シリーズVOL.6〉、1992年。ISBN 4924609382。
  • 『ゴジラVSキングギドラ 特集号』 近代映画社、1992年。雑誌コード:05406-12。
  • 『ゴジラVSキングギドラ 超全集』 小学館〈てれびくんデラックス〉、1992年。ISBN 4091014283。
  • 監修:田中友幸、責任編集:川北紘一 『エクサイクロベティア オブ ゴジラ 最新ゴジラ大百科』 学研、1992年。雑誌コード:62535-57。
  • 『ゴジラ画報―東宝幻想映画半世紀の歩み』 竹書房、1993年。ISBN 4884752678。
  • スタジオ・ハード 『ゴジラvsGフォース 超兵器マニュアル Anti“G”weapon manual』 メディアワークス、1995年。ISBN 9784073026983。
  • ヤマダマサミ 『大ゴジラ図鑑』 ホビージャパン〈幻想映画美術大系〉、1995年。ISBN 4-894250-59-4。
  • 『僕たちの愛した怪獣ゴジラ』 学研〈GAKKEN GRAPHIC BOOKS〉、1996年。ISBN 4054006574。
  • 『動画王 Vol.6 巨大怪獣特集 怪獣に関わった男たちの証言集』 キネマ旬報社、1998年。ISBN 4-87376-503-X。
  • 西川伸司 『日本特撮映画師列伝 (1) ゴジラ狂時代』 講談社〈KCデラックス〉、1999年。ISBN 4-06-334265-4。
  • 『ゴジラ大図鑑―東宝特撮映画の世界』 キネマ旬報社、2000年。ISBN 4-873765-58-7。
  • 野村宏平編 『ゴジラ大辞典』 笠倉出版社2004年ISBN 4773002921 
  • 監修:川北紘一 『平成ゴジラパーフェクション』 アスキー・メディアワークス〈DENGEKI HOBBY BOOKS〉、2012年。ISBN 978-4-04-886119-9。
  • 『東宝特撮映画大全集』 ヴィレッジブックス2012年ISBN 9784864910132 

外部リンク


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