「シアン化カリウム」の版間の差分

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'''シアン化カリウム'''(シアンかカリウム)、'''青酸カリウム'''(せいさんカリウム)は、'''青酸カリ'''(せいさんカリ)、'''青化カリ'''(せいかカリ)とも呼ばれ、[[毒|毒物]]の代名詞的存在だが、[[工業]]的に重要な[[無機化合物]]である。[[毒物及び劇物指定令]]で「[[シアン化物|シアン化合物]]」として毒物に指定されている。
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'''シアン化カリウム'''(シアンかカリウム)、'''青酸カリウム'''(せいさんカリウム)
  
== 性質 ==
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化学式 KCN 。一般に青酸カリと呼ばれる。潮解性の無色粉末。融点 634.5℃。密度 1.52g/cm<sup>3</sup>きわめて有毒で,ヒトの致死量 0.15g ([[青酸中毒]] ) 。溶解度は水 100gに 41.7g (25℃) で,水溶液は徐々に,また加温や光照射下ではすみやかに分解する。酸により有毒なシアン化水素を発生する。空気中でも湿気と二酸化炭素のために徐々に分解するので,密封して暗所に保存する。銀や銅の電気メッキ,写真製版,分析試薬などに使われる。
[[化学式]] KCN で表される代表的な[[シアン化物|シアン化]][[アルカリ]]化合物で固体は[[カリウム]]イオンと[[シアン]]化物イオンよりなる[[イオン結晶]]であり、シアン化物イオン中の炭素と窒素は[[三重結合]]を形成している。
 
 
 
白色の粉末状[[結晶]]で[[潮解]]性があり、[[水]]に易溶、[[メタノール]]、[[エタノール]]、[[グリセリン]]に少溶。水溶液は強[[アルカリ性]]を示す。(溶解度は文献によっては41.7g/100g(25℃)という値が見られるが、これは溶液100g中に含まれる最大質量である。表には出典からのものをあげているが、これは水100gに溶解する最大質量である。)
 
 
 
乾燥状態では無臭だが、[[潮解]]により空気中の[[二酸化炭素]]と反応し、[[シアン化水素]]を放出しながら[[炭酸カリウム]]に変化するため、シアン化水素による特徴的な臭気を発する。特に日光に当たる状態では反応が進み易いため、空気に触れないように、日光に当たらないように保管する必要がある。
 
: <ce>{2KCN} + {CO2} + {H2O} -> {K2CO3} + 2HCN</ce>
 
 
 
[[シアン化ナトリウム]]と同じく、[[遷移金属]]と反応して水に可溶なシアノ[[錯塩]]を形成する性質をもつ。この反応のため、銀や銅のさび落としに使うことができる。また、銅貨を用いたシアンの簡易検出法の原理でもある。
 
: <ce>{2Ag2S} + {8KCN} -> {4K[Ag(CN)2]} + 2K2S</ce>
 
 
 
== 利用分野 ==
 
シアン化合物はカリウム塩とナトリウム塩が主に利用され、日本の場合、シアン化ナトリウムでは年間約3万トンが生産されている。
 
* [[冶金]]:青化法(1890年開発)による低品位鉱や廃材からの金、銀類の抽出。細かく砕いた金銀鉱石をシアン化カリウム溶液に投入、鉱石中の金・銀をシアン化カリウムと化合させた後、液体と固体([[鉱滓]])を分離。金・銀を含む液体に[[亜鉛]]粉末を加えて、金・銀を分離沈殿させる。回収した金・銀は冶金され、青金と呼ばれる金・銀の合金の地金として出荷される。ただし、このままでは商品として流通せず、金と銀を分離させる[[精錬]]が必要である。
 
* [[メッキ|鍍金]]:電解メッキ法のひとつである青化浴は、金、銀、銅、亜鉛、真鍮、カドミウムなどでのメッキに古くから利用されている(シアン化物を使わないジンケート浴、酸性浴への置換が進んでいるが、なお主流)。
 
* [[写真]]:[[ダゲレオタイプ|銀板写真]]の銀メッキや[[青写真]]。現代の[[フィルム]]製造や[[現像]]にはシアン化物はほとんど使われていない。
 
* [[漁業]]:川や海にシアン化物を流す「[[漁#日本で禁止されている漁法|毒物漁法]]」。当然環境に有害だが、国によっては[[観賞魚]]捕獲等に多用されているという。
 
* [[分析]][[試薬]]:硬度滴定などで、妨害イオンをマスキングするために使用される。
 
* [[合成]]:樹脂や医薬品、農薬の合成材料や安定剤として需要がある。
 
* [[昆虫標本]]:[[バッタ]]などの標本を作るときに使うと、標本の色が抜けにくくなる。
 
 
 
なお、シアン化カリウム(青酸カリ)は[[フィクション]]なども含めて毒物として有名であり、一般的な物質であるかのように思われる傾向があるが、産業的には[[シアン化ナトリウム]](青酸ソーダ)のほうが利用量が多く、工場などにありふれている。
 
 
 
== 毒性 ==
 
人体に有害な[[毒|毒物]]で、経口致死量は成人の場合150〜300mg/人と推定されている。体内で[[チオシアン酸]]に[[代謝]]され、30〜60mg-CN/hであれば、[[肝臓]]で解毒できるとされる。[[慢性中毒]]を起こす最小中毒量(TDL<sub>0</sub>)14mg/kg、[[許容濃度]] 5 mg-CN/m<sup>3</sup>。長期又は反復曝露による[[甲状腺]]、[[腎臓]]、[[肝臓]]、[[脾臓]]、[[中枢神経系]]の障害のおそれがある(参考: [[ラット]]経口 [[毒性学#毒性の種類|LD<sub>50</sub>]] 5〜10 mg/kg)。
 
 
 
[[胃酸]]により生じた[[シアン化水素]]が呼吸によって肺から血液中に入り、重要臓器を細胞内低酸素により[[壊死]]させることで個体死に至るとされる。このため中毒した人の呼気を吸うのは危険である。摂取した場合の症状としては、めまい、嘔吐、激しい動悸と頭痛などの急速な全身症状に続いて、[[アシドーシス]](血液のpHが急低下する)による痙攣が起きる。致死量を超えている場合、適切な治療をしなければ15分以内に死亡する。死因は[[静脈]]血が明赤色([[一酸化炭素中毒]]と同じ)などから判断できる。
 
 
 
また、皮膚から吸収することによっても中毒を起こす。これは、シアン化カリウムは水溶液中で[[電離]]してカリウムイオンとシアン化物イオンとなるが、このシアン化物イオンは[[一酸化炭素]]と同様に[[ヘモグロビン|ヘム鉄]]に[[配位結合]]して酸素との結合を阻害することにより、[[呼吸]]による酸素の供給ができなくなるためである。さらには細菌以上の動物[[ミトコンドリア]]の[[シトクロムcオキシダーゼ|シトクロム酸化酵素]] (COX) [[複合体]]と結合・封鎖し、[[電子伝達系]]を阻害することで[[アデノシン三リン酸|ATP]]生産量を低下させ細胞死を引き起こすとされる。この点で植物ミトコンドリアはシアン耐性経路であるAOX酵素 (alternative oxidase) を備えるため[[耐性]]を持つ。
 
 
 
[[水生生物]]への毒性が非常に強く、水質の[[環境基準]]では検出されないこと(定量限界0.1mg/L未満)、一律[[排水基準]]では1mg/Lとされている。分析法としてはJIS K 0102に [[吸光光度法]]と[[イオン電極]]法が規定されているが、いずれも蒸留操作が必須で熟練と操作時間を要する。そのほか、自動分析装置が各社にて開発されている。
 
 
 
== 治療法 ==
 
塩類の摂取による[[中毒]]は、[[シアン化水素]][[気体|ガス]]の吸入によるものに対し進行が遅く、救命できる可能性が高い。
 
 
 
まず医療機関に連絡する。シアンによる中毒であることを忘れずに伝える。救助者が患者の呼気を吸わないように対策を行ってから開始する。当然、マウストゥマウスの[[人工呼吸]]は厳禁。摂取量が少なく、患者に意識があるなら、吐かせて[[胃洗浄]]を繰り返す。用意があるなら、[[酸素吸入]]と[[亜硝酸アミル]]の吸入(15秒嗅がせ、15秒空気または酸素を吸入させる措置を、5回繰り返す)を行う。または[[亜硝酸ナトリウム]]を静脈注射するが、これは原則として医師の処置による(シアン化合物を扱う事業所では、小型酸素吸入器と亜硝酸アミルの試薬を用意しておくべきかもしれない)。[[シアン化物#シアン化合物の解毒剤]]も参照のこと。
 
 
 
== 廃棄処理 ==
 
シアン含有廃液の処理法としては、高濃度では電気分解法や燃焼法、中・低濃度ではアルカリ塩素法のほか、オートクレーブによる熱加水分解法、鉄・亜鉛塩による沈殿法(紺青法・亜鉛白法)などがあり、一般的にはアルカリ塩素法が広く用いられる。
 
 
 
;アルカリ塩素法
 
:一次反応:[[水酸化ナトリウム]]と[[次亜塩素酸ナトリウム]]によりpH10〜10.5、ORP+300〜350mVとし、[[シアン酸ナトリウム]]と[[塩化ナトリウム]]に分解する。
 
: <ce>{CN^-} + {ClO^-} -> {CNO^-} + Cl^-</ce>
 
:二次反応:[[塩酸]]によりpH7.5〜8.5、ORP+600mV超とし、[[二酸化炭素]]、[[窒素]]、[[アンモニウムイオン]]、[[塩化ナトリウム]]に分解する。
 
: <ce>{CNO^-} + {H2O} + { H^+} -> {CO2} + NH4^+</ce>
 
 
 
:共存金属イオンによってはシアノ錯体形成により効率が低下する(銅・亜鉛は容易、ニッケル・銀は困難、鉄・コバルト・金は不可)
 
;紺青法・亜鉛白法
 
:鉄や亜鉛イオンを加え、シアン化物イオンと難溶性のシアノ錯体を形成、沈殿分離させる。薬品・設備ともに安価だが、沈殿したシアノ錯体含有スラッジの処分が問題となる(漏洩防止の緊急処置用としては有効)
 
;日光分解
 
:少量の鉄シアノ錯体溶液などはほうろう引きの浅いバットに入れ、数日間直射光に晒すと分解して水酸化鉄になる。塩化鉄溶液を滴下して紺青が生じなければ、分解終了。
 
 
 
== その他 ==
 
経口・[[注射]]の両方で同程度の致死量である。また、胃酸と反応して発生するシアン化水素が中毒の主体であることから、青酸カリを舐めても、直後に口内を洗浄すれば毒性を発揮しない、あるいは胃を完全に切除した場合、青酸カリを摂取しても死に至らないとする説がある。しかし、[[粘膜]]からは皮膚以上に吸収されるため、危険である。
 
 
 
[[ミステリ|ミステリー]]などでは「あらかじめ塗っておいた」といった描写があるが、空気中では[[炭酸水素カリウム]]や[[炭酸カリウム]]に変化してしまうし、変化していなくても致死量を経口投与するには無理がある。同じく「食品に混入」という描写もあるが、風味は苛烈なうえ、強アルカリ性なので口内に激痛が走るため、通常は[[嚥下]]が困難で大半を吐き出すことになる。
 
 
 
摂取して胃酸と反応すると[[アーモンド]]または[[オレンジ]]臭、[[アンズ]]臭を発するという。ここでいうアーモンド臭とは、収穫前のアーモンドの臭いであり、製菓に用いるアーモンド[[エッセンス]]の甘い香りとは異なる甘酸っぱい香りである。
 
 
 
青酸化合物による中毒死体の[[死斑]]を一律に、ピンク色であるとする解説もあるが、実際の青酸塩類による中毒の場合にはそういった所見がない場合も多い。青酸ガス中毒の死斑であればピンク色というのは確かだが、青酸カリなどを服用した場合には体表面に特徴的な死斑が現れない場合も多く、見分けるポイントとはなりにくい。なお解剖時に胃が鮮紅色となっている場合は多い。
 
 
 
長期間空気中に置いておくと毒性を失う。これは空気によって酸化し、一部が炭酸カリへと変化したためによるものである。歴史上、青酸カリによる[[暗殺]]の事例は多数あったが、保存法が誤っていたために毒性を失った物を使用したことによる暗殺未遂もそれ以上に発生している。
 
 
 
== 法規制 ==
 
=== 毒物 ===
 
[[毒物及び劇物指定令]]で無機シアン化合物として[[日本の毒物一覧|毒物]]に指定されており、[[毒物及び劇物取締法]]に規定された取り扱いが必要である。
 
 
 
=== 労務管理 ===
 
[[労働安全衛生法]]で名称等を通知すべき有害物に指定されている。また、毒物のため、[[MSDS]]の交付などが義務付けられる。
 
 
 
=== 排出管理 ===
 
[[PRTR法]]で無機シアン化合物として第一種指定化合物となっている。[[化審法]]番号は (1)-1086。
 
 
 
=== その他 ===
 
[[船舶安全法]]、[[航空法]]に毒物類として、[[海洋汚染防止法]]にP物質として、[[水質汚濁防止法]]、[[土壌汚染対策法]]にシアン化合物として規定がある。
 
  
 
== 脚注 ==
 
== 脚注 ==
 
<references />
 
<references />
  
== 関連項目 ==
+
{{カリウムの化合物}}
* [[無機シアン]]
 
* [[シアン化ナトリウム]]
 
* [[シアン化水素]]
 
* [[フェロシアン化カリウム]]
 
* [[フェリシアン化カリウム]]
 
* [[シアン化第一金カリウム]]
 
* [[ニトリル]]
 
* [[ジシアン]]
 
* [[青酸コーラ無差別殺人事件]]
 
  
== 外部リンク ==
+
{{テンプレート:20180815sk}}
* 安全衛生情報センター 危険有害便覧 [http://www.jaish.gr.jp/user/anzen/kag/kag_main01.html]、モデルMSDS [http://www.jaish.gr.jp/anzen/gmsds/0123.html]
 
* 日本中毒情報センター 一般向けの「中毒情報データベース」青梅の項に、シアン化物中毒についての情報 [http://www.j-poison-ic.or.jp/homepage.nsf]
 
 
 
{{カリウムの化合物}}
 
 
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[[Category:無機化合物]]
 
[[Category:無機化合物]]

2018/10/5/ (金) 20:50時点における最新版

シアン化カリウム(シアンかカリウム)、青酸カリウム(せいさんカリウム)

化学式 KCN 。一般に青酸カリと呼ばれる。潮解性の無色粉末。融点 634.5℃。密度 1.52g/cm3きわめて有毒で,ヒトの致死量 0.15g (青酸中毒 ) 。溶解度は水 100gに 41.7g (25℃) で,水溶液は徐々に,また加温や光照射下ではすみやかに分解する。酸により有毒なシアン化水素を発生する。空気中でも湿気と二酸化炭素のために徐々に分解するので,密封して暗所に保存する。銀や銅の電気メッキ,写真製版,分析試薬などに使われる。

脚注





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