「ダランベールの収束判定法」の版間の差分

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ダランベールの収束判定法(―のしゅうそくはんていほう、ratio test) とは、実数複素数にもつ級数が、収束するか発散するかを判定する方法である。級数における、前後の項のを考える。もし、この比の極限が 1 未満であれば、級数は絶対収束する。

この判定法は、ジャン・ル・ロン・ダランベールによって発表された。

判定法

厳密には、ダランベールの収束判定法は、次のように述べられる。

[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right|\lt 1[/math]

であれば、級数

[math]\sum_{n=1}^\infty a_n[/math]

は絶対収束する。また、

[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right|\gt 1[/math]

であれば、級数は発散する。

もし、極限がちょうど 1 であれば、級数は収束する場合もあるし、発散する場合もある。従って、この場合は、ダランベールの収束判定法ではどちらとも言えない。

収束する場合

次の級数を考える。

[math]\sum_{n=1}^\infty\frac{n}{e^n}[/math]

これに、ダランベールの収束判定法を適用すると、

[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right|[/math] =[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{\frac{n+1}{e^{n+1}}}{\frac{n}{e^n}}\right|[/math]
=[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{n+1}{e^{n+1}}\cdot\frac{e^n}{n}\right|[/math]
=[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{n+1}{n}\cdot\frac{e^n}{e^n\cdot e}\right|[/math]
=[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|(1+\frac{1}{n})\cdot\frac{1}{e}\right|[/math]
=[math]1\cdot\frac{1}{e}[/math]
=[math]\frac{1}{e} (\lt 1)[/math]

[math]\frac{1}{e}[/math] は 1 より小さいため、級数は収束する。

発散する場合

次の級数を考える。

[math]\sum_{n=1}^\infty\frac{e^n}{n}[/math]

これに、ダランベールの収束判定法を適用すると、

[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right|[/math] =[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{\frac{e^{n+1}}{n+1}}{\frac{e^n}{n}}\right|[/math]
=[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{e^{n+1}}{n+1}\cdot\frac{n}{e^n}\right|[/math]
=[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{n}{n+1}\cdot\frac{e^n\cdot e}{e^n}\right|[/math]
=[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|(1-\frac{1}{n+1})\cdot e\right|[/math]
=[math]1\cdot e[/math]
=[math]\!\, e (\gt 1)[/math]

e は 1 より大きいため、級数は発散する。

どちらとも言えない場合

もし、級数が

[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right|=1[/math]

を満たす場合、ダランベールの判定条件から、収束するか発散するかを推定することは不可能である。

例えば、級数

[math]\sum_{n=1}^\infty 1[/math]

は発散し、

[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{1}{1}\right| = 1.[/math]

である。一方で、

[math]\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2} [/math]

は絶対収束するが、

[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{\frac{1}{(n+1)^2}}{\frac{1}{n^2}}\right| = 1.[/math]

である。最後に、

[math]\sum_{n=1}^\infty (-1)^n\frac{1}{n} [/math]

条件収束するが、

[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{\frac{(-1)^{n+1}}{(n+1)}}{\frac{(-1)^{n}}{n}}\right| = 1.[/math]

である。

どちらとも言えない場合には

以上の例で見たとおり、比の極限が 1 である場合は、ダランベールの収束判定法ではどちらとも言えない。しかし、ラーベによるダランベールの収束判定法の拡張(ラーベの収束判定法)では、このような場合を扱うことも考慮に入れることができる。ラーベの収束判定法は、次のように述べられる。もし、

[math]\lim_{n\rightarrow\infty}\left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right|=1[/math]

で、かつ正数 c が存在して

[math]\lim_{n\rightarrow\infty} \,n\left(\,\left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right|-1\right)=-1-c[/math]

を満たす場合、級数は絶対収束する。

関連記事

参考文献

  • Knopp, Konrad, "Infinite Sequences and Series", Dover publications, Inc., New York, 1956. (§ 3.3, 5.4) ISBN 0-486-60153-6
  • Whittaker, E. T., and Watson, G. N., A Course in Modern Analysis, fourth edition, Cambridge University Press, 1963. (§ 2.36, 2.37) ISBN 0-521-58807-3

it:Criteri di convergenza#Criterio del rapporto (o di d'Alembert)