ブラックロック
ブラックロック(BlackRock Inc.、NYSE: BLK)は、世界最大の、資産運用会社であり、シャドー・バンキング・システムである。2014年末、政府系基金協会(Sovereign Wealth Fund Institute)が、ブラックロックの運用下にある資産の65%は機関投資家由来であると報告した。
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概要
アメリカ、ヨーロッパ、アジア、オーストラリア、中近東を含む世界24カ国にて拠点を構え11,400名超の社員を擁している(2011年現在)。ブラックロックのリーダーは2018年3月現在もローレンス・フィンクであるが、ブラックロックの創業者は主要株主の地位を世界金融危機までに交代している。世界不況と関係なくブラックロックの業績は伸び続けた。ブラックロックジャパンは2015年から会長として井澤吉幸(元三井物産代表取締役、元ゆうちょ銀行社長)が、2017年から社長として有田浩之がそれぞれ就任している。
運用資産は株式、債券、キャッシュ、オルタナティブ、不動産、アドバイザリー戦略と多岐にわたる。その運用資産総額は世界のGDP合計(75兆ドル)の約6%(4.6兆ドル、日本円で約500兆円)にのぼる(2015年時点)。独立ユニットであるブラックロック・ソリューションズ®︎を通じ、リスクマネジメント・テクノロジー(Aladdin®︎) 及びアドバイザリーを機関投資家へ提供する。2017年時点での運用資産は6.29兆ドルである。
主要株主の支配率は2007年時点で、メリルリンチ(バンク・オブ・アメリカの子会社)が34.1%、PNC(第二合衆国銀行の後身)が24.6%、バークレイズが19.9%である。数値は2011年スイス連邦工科大学が行った調査により明らかとなった[1]。そこではオービス(Orbis)というデータバンクが保有する2007年のデータが利用された[2]。大手多国籍企業43000社を調査の対象とし、うちブラックロックをふくむ1318社が全対象企業の80%を支配していることが判明した。総体として株式の持ち合いが行われているという。スチュワードシップ・コードの実効性に大きな疑問を投げかける結果となった。
歴史
- 1988年 ローレンス・フィンク(Laurence D. Fink)らが、ブラックストーン・グループ債券運用部門のブラックストーン・フィナンシャル・マネジメントとして設立した。創立者のうち4人がファースト・ボストン(現クレディ・スイス)出身者であった。フィンクが仕掛けたことで、不動産担保証券取引がファースト・ボストンモーゲージ部門でブームとなっていた[3]。ブラックストーン時代のフィンクは同社のパートナーとして、年金基金等の資産運用を受託していた(上述の債券運用部門)[3]。
オービス2007まで
- 1995年 メロン財閥の牙城ピッツバーグにあるPNC Financial Services Groupにより買収された。
- 1999年 PNCから1080億ドルの運用資産を継承、株式を公開しフィンクら共同経営者がブラックロックの86%を所有した[3]。彼らはミリオネアではなかったので、なんらかのつなぎ融資を受けて買収したものとみられる。
- 2000年 インターネット・バブルで利益を上げ、ブラックロック・ソリューションズ®︎を独立ユニットとして設立。
- 2002年9月 ボストンのヘッジファンド(Cylennius Capital Management)を買収[3]。
- 2003年4月 ヘッジファンドを束ねるファンド・オブ・ファンズ(HPB Management LLC)の主要株主となった[4]。
- 2005年1月 メットライフからステート・ストリート・リサーチ・マネジメント(SSRM Holdings Inc.)を買収した際、176億ドルのミューチュアル・ファンドをふくむ、およそ500億ドルの運用資産、およびエクイティ・ビジネスの営業網を継承[3]。
- 2006年10月 メリルリンチ・インベストメント・マネジャーズ[5]と経営統合。メリルリンチが49.8%を出資する筆頭株主となったが(PNCは34%)、その影響でブラックロックの力点がエクイティ市場に傾き、ミューチュアル・ファンドにおいてフィデリティ・インベストメンツに追い抜かれた[3]。
バークレイズの世界決済
- 2009年12月 バークレイズPLCより100%子会社のバークレイズ・グローバル・インベスターズ(当時の業界1位)を現金(借入を含む)と自社株式(19.9%)の合計135億ドルにて買収した[3]。バークレイズ・グローバル・インベスターズが提供していた指数連動型上場投資信託(ETF/Exchange Traded Funds)の、全世界におけるトップブランドである「Iシェアーズ(iShares)」を、ブラックロック証券が承継した。さらに、ブラックロック・ジャパンとバークレイズ・グローバル・インベスターズ株式会社が経営統合した(ブラックロック・ジャパン株式会社)[6]。
- 2010年11月 バンク・オブ・アメリカによる株式売却を受け、みずほフィナンシャルグループが2%相当のブラックロック・ジャパン株式を取得した。2010年PNCもかなりの規模でブラックロック株を売却している(支配率21%に低下)[3]。
- 2011年 バンク・オブ・アメリカが、自社で保有するブラックロック株を全て売却した[3]。
- 2012年 バークレイズによる株式売却を受け、ブラックロックが自社株を買い戻したり、ブラックロックの資金を融通した者が買収したりしたが、その結果翌年にかけて、40人いたファンド・マネージャーの半分以上がリストラされた[3]。
- 2015年11月12日 ユーロクリアおよびクリアストリームと共同で20のIシェアーズを国際決済網へ移管することになった[7]。上場投資信託市場は先のリストラがなされてから世界規模で一層めざましく発展していた。
脚注
- ↑ Stefania Vitali, James B. Glattfelder, Stefano Battiston, "The Network of Global Corporate Control", PLos one, October 26, 2011.
- ↑ オービスの提供元は2017年5月にムーディーズが買収した(Bureau van Dijk)。
- ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7 3.8 3.9 International Directory of Company Histories, Vol.159.
- ↑ International Directory of Company Histories, Vol.79.
- ↑ 2004年に郵便貯金と簡易生命保険の投資顧問会社となっている。
- ↑ 資産運用業務を展開している他、傘下のブラックロック証券も展開している。
- ↑ ユーロクリアがホームページ上で発表。