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'''上告'''(じょうこく)とは、[[民事訴訟]]・刑事訴訟の[[裁判]]過程における[[上訴]]の一つ。[[日本]]において、(1)第二審の終局[[判決 (日本法)|判決]]若しくは[[高等裁判所]]が第一審としていた終局判決(原判決)に対して不服があるとき又は(2)飛越上告の合意がある場合において第一審のした終局判決に対して不服があるときに、上級の裁判所に対し、原判決の[[取消し]]又は変更を求める申立てをいう。
 
  
上告審となる裁判所は、原則として[[最高裁判所 (日本)|最高裁判所]]であるが、民事訴訟において第一審の裁判所が[[簡易裁判所]]の場合、高等裁判所が審理を行う。
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'''上告'''(じょうこく)
  
==概要==
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(1) 民事訴訟法上,[[控訴]]審の終局判決に対する不服申立をいう。上告審は控訴審判決において適法に確定された事実に拘束され,もっぱら控訴審判決における法令適用の当否についてのみ審査する。したがって,法令違背を理由とする場合にのみ認められていたが,1996年の改正で法令違反でも最高裁判所は重要なケースだけを受理することができるようになり,最高裁の負担軽減がはかられた。上告裁判所は,高等裁判所が控訴審である場合には最高裁判所,地方裁判所が控訴審である場合には高等裁判所である。例外として,第1審判決に対し当事者の合意により跳躍上告する場合,および高等裁判所が第1審裁判所の場合は,控訴審が省略され1審の終局判決からただちに上告できる。
上告理由は[[控訴]]理由と比べ限定されており、[[刑事訴訟法]]・[[民事訴訟法]]によってそれぞれ以下の場合に限られている。
 
  
*刑事訴訟の場合(刑事訴訟法405条)
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(2) 刑事訴訟法上,判決に対する最高裁判所への上訴をいう。上告は,高等裁判所の控訴審判決およびその第1審判決に対して認められるほか,地方裁判所,家庭裁判所または簡易裁判所の第1審判決についても跳躍上告が認められる場合がある。上告の理由は,原則として憲法違反および判例違反にかぎられるが,最高裁判所は重要な法令解釈上の問題を含むと認められる場合には事件を受理することができるし,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するような法令違反,量刑不当,事実誤認などがあるときには,職権で判決を破棄することができるものとされている。最高裁判所の裁判に対しては上訴は認められない。判決訂正の申し立てが許されるだけである。
**判決に[[日本国憲法|憲法]]の違反があること又は憲法の解釈に誤りがあること(1号)
 
**最高裁判所の[[判例]]と相反する判断をしたこと(2号)
 
**最高裁判所の判例がない場合に、[[大審院]]若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又は刑事訴訟法施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと(3号)
 
*民事訴訟の場合([[s:民事訴訟法#312|民事訴訟法312条]])
 
**判決に憲法の解釈の誤りがあること、その他憲法の違反があること(1項)
 
**法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと(2項1号)
 
**法律により判決に関与することができない[[裁判官]]が判決に関与したこと(同項2号)
 
**[[日本の裁判所]]の管轄権の専属に関する規定に違反したこと(同項2号の2)
 
**専属[[裁判管轄|管轄]]に関する規定に違反したこと([[特許権]]等に関する訴えにつき、民事訴訟法6条1項により定まる[[東京地方裁判所]]か[[大阪地方裁判所]]かの選択を誤った場合を除く)(同項3号)
 
**法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと(追認があった場合を除く)(同項4号)
 
**[[口頭弁論]]の公開の規定に違反したこと(同項5号)
 
**判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること(理由の不備・理由の齟齬)(同項6号)
 
**(高等裁判所にする上告の場合)判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があること(3項)
 
  
以上のように上告理由が限られているため、上告審では「上告理由に当たらない」として上告が棄却される場合が多い。
 
 
民事で、上告すべき裁判所が最高裁判所である場合は、上告理由がなくても、[[上告受理の申立て]]をすることができる。判例違反やその他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については、最高裁は、上告審として事件を受理することができ、その場合には上告があったものとみなされる([[s:民事訴訟法#318|民事訴訟法318条]])。
 
 
また、刑事では、上告理由がなくても、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については、上訴権者の申立てにより、自ら上告審としてその事件を受理することができる(刑訴法406条、刑訴規則257条~264条)。
 
 
このほか、民事訴訟では'''[[特別上告]]'''(とくべつじょうこく)、刑事訴訟では'''[[非常上告]]'''(ひじょうじょうこく)という例外的な上告がある。
 
 
==上告審の性格及び上告審での審理==
 
上告審の法的性格は'''[[法律審]]'''であり、原則として上告審では原判決に憲法違反や法律解釈の誤りがあるかを中心に審理される。原則として上告審は、下級審の行った[[事実認定]]に拘束されるが([[s:民事訴訟法#311|民事訴訟法311条]]1項)、民事訴訟においては事実認定に[[経験則]]違反がある場合、事実認定の理由に食違い(矛盾)がある場合には原判決を破棄することがある。刑事訴訟においても、判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があって原判決を破棄しなければ著しく[[正義]]に反すると認めるときには、原判決を破棄することができる。
 
 
上告審が法律審であるとの性格から、原則として[[証拠調べ]]を行うことはない<ref>もっとも、刑事事件について証拠の顕出という形で原判決の事実認定の当否を判断する資料に供することはできる(最高裁昭和34年8月10日大法廷判決)。また、職権調査事項については上告裁判所が事実を認定し得る(民訴法322条)。</ref>。
 
 
このこともあり、上告を棄却するときは、口頭弁論を経る必要はないとされており([[s:民事訴訟法#319|民事訴訟法319条]]、刑訴法408条)、実際に上告審で弁論が行われることはほとんどなく、書面での審理に限られるのが普通である。これに対し、原判決を変更する場合には、被上告人にも反論の機会を与える必要があるから、口頭弁論を開催する必要がある([[s:民事訴訟法#87|民事訴訟法87条]]1項本文、刑訴法43条1項)。そのため、上告審で口頭弁論が開かれるということは、原判決を何らかの形で見直すことを事実上意味するといえる。ただ、[[日本における死刑|死刑]]判決に対する上告事件と[[大法廷]]の審理は原則として[[公判]]ないし口頭弁論が開かれる慣行があり、公判ないし口頭弁論が開かれたからといって原判決が見直されるとは限らない。なお、上告審で死刑判決が破棄されたのは2009年9月時点で12例(11件・16人)だけである。例外として1992年10月20日に発生した[[国立市主婦強盗殺人事件]](第一審は死刑判決も控訴審で破棄され[[無期懲役]]に減軽)では無期懲役判決の上告に対し1999年に最高裁[[小法廷]]で口頭弁論が開かれるも、上告を棄却して無期懲役を確定した<ref>1998年1月まで[[求刑]]死刑に対して二審で無期懲役判決が出た5件について検察側が上告した(連続上告)の一つ。本件含め4件は上告棄却されるも、[[福山市女性強盗殺人事件]]([[強盗致死傷罪|強盗殺人]][[前科]]による無期懲役の[[仮釈放]]中の犯行)についてのみ上告を認めて破棄差し戻しし、その後死刑判決が確定した。</ref>事例もある。
 
 
なお、原判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が判決書に署名押印していることを理由として原判決を破棄し、高等裁判所に事件を差し戻す場合には、口頭弁論を開催しなくてもよいという判例がある(最高裁平成19年1月16日判決<ref>最三判平成19年1月16日集民223号1頁[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=34001 最高裁判例情報] 2014年8月20日閲覧</ref>)。
 
 
==上告審における裁判==
 
民事訴訟において、上告が不適法である場合には[[裁判#裁判の形式|決定]]で上告を[[却下]]することができる([[s:民事訴訟法#317|民事訴訟法317条]]1項)。上告理由が、上告が許される事由に明らかに該当しない場合は決定で上告を[[棄却]]することができる(同条2項)。上告に理由がない場合には判決で上告を棄却する([[s:民事訴訟法#319|同法319条]])。
 
 
最高裁判所が上告審の場合については、最高裁判1999年3月9日第三小法廷決定によると、上告の理由が明らかに民事訴訟法312条1項及び2項に規定する事由に該当しないことが明らかな(最高裁判所への)上告であっても、「上告裁判所である最高裁判所が決定で棄却することができるにとどまり(民事訴訟法317条2項)、原裁判所又は上告裁判所が民事訴訟法316条1項又は317条1項によって却下することはできない」。
 
 
[[刑事訴訟]]においては上告が不適法である場合には決定で上告を棄却する(刑事訴訟法414条、385条、395条)。上告に理由がない場合には判決で上告を棄却する(刑事訴訟法408条)。
 
 
上告が却下又は棄却された場合には、原判決が[[確定判決|確定]]する。
 
 
上告に理由がある場合又は最高裁判所の職権調査で原判決を維持できないことが判明した場合には、原判決を'''破棄'''する。法律審としての建前からは、原判決を破棄する場合、原裁判所(控訴審が行なわれた裁判所。高等裁判所が第一審の場合にはその高等裁判所)に差し戻して審理させることが普通である([[s:民事訴訟法#325|民事訴訟法325条]]。刑事訴訟法413条本文)。このことを'''破棄差戻し'''という。これは、民事事件の上告審では法律審であるため事実調べができず、刑事事件でも事実認定が不十分な場合は事実審である下級審で再度必要な審理をさせる必要があるからである。これに対して、判決を確定させないことによって、当事者の双方に主張を述べさせる機会を与えるためである、あるいは、上告審は書面審理が原則のため、書面審理のみで判決を確定させるのは問題があるためであるという見解もある。差戻し後の判決にさらに上告することも可能であり、上告→差戻し→上告→差戻し、と繰り返し、[[長期裁判|裁判が長期化]]した例もある。
 
 
また、管轄違い等により原判決を取り消し、原審とは別の裁判所に移送すること(民事訴訟法第325条第2項、刑事訴訟法第412-413条)を'''破棄移送'''という。
 
 
原裁判所に差し戻さず、原判決を破棄して最高裁判所が自ら判決し、上告審で判決を確定させることを'''[[自判|破棄自判]]'''という。これは、
 
*裁判が長期化することにより不利益がある場合
 
*民事事件において下級審の認定した事実だけで原審と違う判決が下せる場合
 
*刑事裁判において[[被告人]]に有利な方向に判断を変更する場合で、これ以上審理する必要がない場合
 
などに行われることがある([[s:民事訴訟法#326|民事訴訟法326条]]、刑事訴訟法413条ただし書)。
 
 
== 上告審の例 ==
 
=== 死刑判決に対する上告審で死刑判決が破棄された例 ===
 
{| class="wikitable"
 
|+'''死刑判決の上告審で死刑判決が破棄された例'''
 
|- style="background-color: #eee;"
 
!rowspan="2"|最高裁破棄判決日||rowspan="2"|被告人||rowspan="2"|事件||colspan="2"|最高裁判決内容||rowspan="2"|発生日||rowspan="2"|二審死刑判決日||rowspan="2"|最終判決
 
|- style="background-color: #eee;"
 
!種類||事由
 
|-
 
|1953年6月4日||1人||競輪殺人事件||破棄自判||量刑不当||1951年9月11日||1952年9月29日||無期懲役
 
|-
 
|1953年7月10日||1人||京都八坂老女将強盗殺人事件||破棄差戻||法令違反||1949年10月18日||1950年8月9日||無期懲役
 
|-
 
|1953年11月27日||1人||[[二俣事件]]||破棄差戻||事実誤認||1950年1月6日||1951年9月29日||無罪
 
|-
 
|1957年2月14日||3人||[[幸浦事件]]||破棄差戻||事実誤認||1948年11月29日||1951年5月||無罪
 
|-
 
|1957年10月15日||1人||[[八海事件]]||破棄差戻||事実誤認||1951年1月25日||1953年9月18日||無罪
 
|-
 
|1959年8月10日||4人||[[松川事件]]||破棄差戻||事実誤認||1949年8月17日||1953年12月22日||無罪
 
|-
 
|1968年10月25日||1人||八海事件||破棄自判||事実誤認||1951年1月25日||1965年8月30日||無罪
 
|-
 
|1970年7月31日||1人||[[仁保事件]]||破棄差戻||事実誤認||1954年10月24日||1968年2月14日||懲役6ヶ月<ref name="muzai">死刑事案では無罪</ref>
 
|-
 
|1978年3月24日||1人||高知大方7人殺傷事件||破棄差戻||事実誤認||1969年1月4日||1975年4月30日||無期懲役
 
|-
 
|1989年6月22日||1人||[[山中事件]]||破棄差戻||事実誤認||1972年5月14日||1982年1月19日||懲役8年<ref name="muzai"></ref>
 
|-
 
|1996年9月20日||1人||[[日建土木事件]]||破棄自判||量刑不当||1977年1月7日||1988年3月11日||無期懲役
 
|-
 
|2010年4月27日||1人||[[平野母子殺害事件]]||破棄差戻||事実誤認||2002年4月14日||2006年12月15日||無罪
 
|}
 
 
=== 死刑を求めた検察官の上告を認容した判決 ===
 
過去に最高裁が死刑判決を求めた上告を認容して原判決を破棄にした例は3例([[永山則夫連続射殺事件]]・[[福山市女性強盗殺人事件]]・[[光市母子殺害事件]])あるが、全て控訴審の無期懲役判決を破棄差し戻しとしており、その後いずれも差し戻し控訴審で下された死刑判決が第二次上告審で確定している。
 
 
==脚注==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
<references />
 
  
 
==関連項目==
 
==関連項目==
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*[[飛越上告]](民事事件において、控訴審を経ずに上告すること)
 
*[[飛越上告]](民事事件において、控訴審を経ずに上告すること)
 
*[[三行判決]]、[[三行決定]]
 
*[[三行判決]]、[[三行決定]]
 
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[[Category:司法]]
 
[[Category:司法]]

2018/9/26/ (水) 23:35時点における最新版

上告(じょうこく)

(1) 民事訴訟法上,控訴審の終局判決に対する不服申立をいう。上告審は控訴審判決において適法に確定された事実に拘束され,もっぱら控訴審判決における法令適用の当否についてのみ審査する。したがって,法令違背を理由とする場合にのみ認められていたが,1996年の改正で法令違反でも最高裁判所は重要なケースだけを受理することができるようになり,最高裁の負担軽減がはかられた。上告裁判所は,高等裁判所が控訴審である場合には最高裁判所,地方裁判所が控訴審である場合には高等裁判所である。例外として,第1審判決に対し当事者の合意により跳躍上告する場合,および高等裁判所が第1審裁判所の場合は,控訴審が省略され1審の終局判決からただちに上告できる。

(2) 刑事訴訟法上,判決に対する最高裁判所への上訴をいう。上告は,高等裁判所の控訴審判決およびその第1審判決に対して認められるほか,地方裁判所,家庭裁判所または簡易裁判所の第1審判決についても跳躍上告が認められる場合がある。上告の理由は,原則として憲法違反および判例違反にかぎられるが,最高裁判所は重要な法令解釈上の問題を含むと認められる場合には事件を受理することができるし,原判決を破棄しなければ著しく正義に反するような法令違反,量刑不当,事実誤認などがあるときには,職権で判決を破棄することができるものとされている。最高裁判所の裁判に対しては上訴は認められない。判決訂正の申し立てが許されるだけである。


関連項目



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