作用を持つ群
数学の一分野、抽象代数学において、集合 Ω の作用を持つ群(さようをもつぐん、英: group with operators)あるいは単に Ω-群とは、群自己準同型からなる集合を備えた群として定められる代数的構造である。群作用を持つ集合と混同してはならない。
作用を持つ群は1920年代にエミー・ネーターによって広く研究され、講義が行われた。ネーターはこの概念を三種類の同型定理の独自の定式化に用いた。
定義
集合 Ω の作用を持つ群 (G, Ω) は、群 G とその上の写像
- [math]\omega\colon G \to G[/math]
で群演算に対して分配的であるようなものからなる族 Ω を合わせて考えたものである。このとき Ω を作用域 (operator domain) といい、その元を G 上の作用素 (operator) あるいは G の相似変換 (homotheties) などという。
変換 ω による群 G の元 g の像を gω と書けば、作用の分配性は
- [math](gh)^{\omega} = g^{\omega}h^{\omega} \quad (\forall \omega \in \Omega, \forall g,h \in G)[/math]
と表せる。また、G の部分群 S が Ω の作用に関する固有部分群もしくは安定部分群 (stable subgroup)あるいは Ω-不変部分群または簡単に Ω-部分群であるとは、
- [math]s^\omega \in S \quad (\forall s \in S, \forall \omega \in \Omega)[/math]
が成り立つときに言う。
注意
作用を持つ群を圏論の言葉を用いて言い換えれば、M を単一対象圏とするときの函手圏 GrpM の対象である。ここに Grp は群の圏を表す。
作用を持つ群は、G の群自己準同型全体の成す集合 Endgrp(G) を用いれば、写像
- [math]\Omega\to\operatorname{End}_{\text{grp}}(G)[/math]
としても捉えることができる。
例
応用
群に対するジョルダン・ヘルダーの定理は作用域を持つ群の文脈で考えても成立する。群が組成列を持つという仮定は位相幾何学におけるコンパクト性に似て、しばしば強すぎる条件を与える。コンパクト性の代わりに相対コンパクト性を考えるほうが自然であることがよくあるのと同様に、組成列についても各正規部分群が考えている群の作用域 X に対して相対的な作用部分群となっているものだけを考える。
関連項目
参考文献
- Bourbaki, Nicolas (1998). Elements of Mathematics : Algebra I Chapters 1-3. Springer-Verlag. ISBN 3-540-64243-9.