公衆無線LAN

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無線LANを使用したインターネットへの接続の概要図

公衆無線LAN(こうしゅうむせんラン)とは、無線LANを利用したインターネットへの接続を提供するサービスを指す。そのアクセスポイントから受信できる場所を、無線LANスポットWi-Fiスポットフリースポットホットスポット[2]などと呼ぶ。一つのアクセスポイントから受信できる範囲は半径20m程度。

概要

ノートパソコンスマートフォンタブレットコンピュータといったモバイル機器の所有者が、主に外出先や旅行先で、誰でも無線LANを利用してインターネットに接続できるサービス。このサービスには有料で利用できる場合と無料の場合がある。

無線LANのアクセスポイントは、主に人の多く集まる商業施設、公共交通機関、公共施設、宿泊施設、学校等に設置される事が多い。公共交通機関では駅構内・空港施設内・バス停のみならず、鉄道車両内、バスの車内、航空機内にアクセスポイントが設置される場合がある。屋外でのアクセス向上のため電力柱電信柱にアクセスポイントが設置される例もある。多くは事前契約を伴う特定多数の人にサービスを提供しているが、施設の利用者の利便の為に、無償かつ事前契約の必要のないアクセスポイントが設置される場合もある。FONのように、自宅をアクセスポイントとして提供する形態の登場により、住宅地域でも公衆無線LANのサービスが提供されつつある。

歴史

一般開放された無線LANを使ったインターネット接続サービスの構想は、ネットワーク研究者のブレット・スチュワートによって、1993年8月にNetWorld+Interopカンファレンスで発表された[3][4]。ただし、スチュワートは“ホットスポット”という用語を使用していなかった。1994年に、スチュワートは公衆無線LANアクセスを提供するPLANCOM社を設立した(PLANCOMは後にT-モバイルの無線LANサービス部門となった)。

公衆無線LANが整備された背景は国や地域により大きく異なる[5]

2000年前後に起こったアメリカドットコムバブル期間中、同国では数多くの無線インターネット接続業者が設立された。また、アメリカやフランスのパリなどではスマートフォンが普及する前の2000年代半ばには自治体が公衆無線LANの整備に乗り出していた[5]

アメリカ国外でも、2000年過ぎごろから公衆無線LAN接続の実証実験が始まり、その数年後からサービスが開始されている。例えば、日本では2002年中にNTTグループやソフトバンクによって無線接続サービスの提供が始まった[6]

無料の公衆無線LANの整備はイギリス、ブラジル、ロシア、日本などではオリンピックやFIFAワールドカップの開催を契機に進展した[5]。また、香港や台湾では主に外国人観光客への配慮のために無料の公衆無線LANの整備が進められた[5]

有料・無料を問わず、公衆無線LANアクセスポイントの数は増加し続けている。2006年には、全米300以上の都市で無線インターネット接続が可能となった[7]

各国の整備状況

日本

日本でも有料で利用できる場合と無料の場合がある。

有料で提供される場合は、提供者は電気通信事業者に限定される。サービスの利用には電気通信事業者との会員契約が必要な場合がほとんどである(そのことが、来日旅行者が日本国内の公衆無線LANを利用できない原因となっている)。自ら伝送路を有する電気通信事業者(旧第1種電気通信事業者、以下、キャリアという)がサービスを提供する場合は、全国的に大規模にアクセスポイントを設置する事が多い。これには、急激なスマートフォンの普及で、回線容量が不足する状況となった移動体キャリアが、トラフィックを公衆無線LANにオフロードする目的で、積極的にアクセスポイント拡大に走った事が背景にある。

公衆無線LANの開始からしばらくの間は、料金形態は従量制と定額制であったが、移動体キャリア(携帯電話会社)のスマートフォンの普及による回線容量の逼迫を契機とした公衆無線LANへのオフロード促進の為、自社の契約顧客に対する付加サービスとして、主契約の包括料金(実質的に無料)で提供される場合や、廉価の付加料金で提供する場合が多くなっている。この為、従前よりの公衆無線LAN事業者は、料金的にも、アクセスポイントの面でも対抗が困難な状況となり撤退する業者も現れている。

電気通信事業者が自ら設置する形態の他に、施設管理者との提携により設置される場合もある。提携による設置の場合は、同じアクセスポイントを有料・無料で兼用している場合がある。アクセスポイントを設置した施設に対し、アクセスポイントを共用する形で、無料の公衆無線LANサービスを提供する事が可能になり、これにより無料のアクセスポイントも拡大した。更に、日本においては移動体キャリアの1社であるソフトバンクモバイルが、個人客を中心とした自社の顧客に宅内でのトラフィックのオフロードを目的に、FON無線ルータを無償提供し、顧客宅をFONのアクセスポイントとした事で、住宅地域にも無料のアクセスポイントが拡大している。

一方、無料で提供される場合、飲食店や鉄道などの利用者へのサービスとして提供するもの、[8]、FON専用無線ルータの設置者間でのアクセスポイントの相互開放によるものがある。

無料の場合であっても、専用のWi-Fi無線ルーターの購入設置と他の会員への開放が条件であったり、登録メールアドレス宛に広告が送られてくるなど、利用者に幾分かの負担が生じる場合がある。またこれら以外に、会場などで一時的に利用できる形態もある。

現在では、有料とされる事業者でも、実質無料又は非常に低廉であり、無料との境界がなくなりつつある。

なお、日本においては、電気通信事業者と利用契約が必要な無線LANサービスが多いため、外国人旅行者から「契約をしていない外国人旅行者は公衆無線LANが使用できない」との声が多く寄せられ[9]、2020年の東京オリンピック開催を控え、

有料のサービス

無料のサービス

  • 一般
    • FREESPOT - 2013年12月現在、日本国内約11,000スポット。一部のアクセスポイントは初めて利用する際にメール認証が必要(事前のメール認証は可能。認証後、認証の際に指定した端末(MACアドレス)にて自動的にログインされる)。認証は最終利用日より半年間有効で、経過後は再認証が必要。なお、認証しなくても「ゲスト」として利用できるが1回10分までで、経過後は3時間経たないと利用することはできない(その間にメール認証することは可能)。
    • セブンスポット - セブン&アイ・ホールディングス傘下の店舗内に設置。アクセスポイントはフレッツ・スポット、docomo Wi-Fiとの共用。1日3回(1回60分)までだが、アプリ「セブン-イレブンアプリ」からだと回数・時間ともに無制限。初めて利用する際はセブンスポットかオムニ7への会員登録が必要(事前の会員登録は可能。登録後、利用したい端末(MACアドレス)でのログイン画面で、登録したメールアドレスと設定したパスワードを入力し、ログインすれば利用可能)。
    • LAWSON Wi-Fi - ローソンの店舗内に設置。アクセスポイントはau Wi-Fi SPOT、Wi2 300、docomo Wi-Fi、ソフトバンクWi-Fiスポットとの共用。初めて利用する際はメールアドレスの登録が必要。1日5回(1回60分)まで。登録は1年間有効で、経過後は再登録が必要。
    • Famima_Wi-Fi - ファミリーマートの店舗内に設置。アクセスポイントはdocomo Wi-Fiとの共用。1日3回(1回20分)までだが、アプリ「ファミリーマートWi-Fi簡単ログインアプリ」からだと1回分が60分まで延長できる。初めて利用する際はメールアドレスの登録とパスワードの設定が必要。
    • AEON MALL Wi-Fi - イオングループショッピングセンターの店舗内に設置。アクセスポイントはフレッツ・スポット、docomo Wi-Fiとの共用。1回60分までだが、経過後は再接続することで何回でも利用可能。初めて利用する際はメールアドレスの登録が必要。
    • ゲオ&セカストWi-Fi - ゲオセカンドストリートの店舗内に設置。初めて利用する際はアクセスポイントのパスワードの入力が必要(パスワードは店舗内に掲載)。
    • DONKI_Free_Wi-Fi - ドン・キホーテの店舗内に設置。アクセスポイントはWi2 300との共用。
    • TSURUHA Free Wi-Fi - ツルハホールディングス傘下のドラッグストアの店舗内に設置。アクセスポイントはWi2 300との共用。
    • at_STARBUCKS_Wi2 - スターバックスの店舗内に設置。アクセスポイントはフレッツ・スポット、docomo Wi-Fi、ソフトバンクWi-Fiスポットとの共用。SNSアカウントでログインした場合は1回60分までだが、経過後は再接続することで何回でも利用可能。at_STARBUCKS_Wi2のアカウントでログインした場合は最終利用日から30日間有効だが、経過後は再ログインすることで何回でも利用可能。at_STARBUCKS_Wi2のアカウントで初めて利用する際はメールアドレスの登録とパスワードの設定が必要(事前の会員登録は可能。登録後、利用したい端末(MACアドレス)でのログイン画面で、登録したメールアドレスと設定したパスワードを入力し、ログインすれば利用可能)。
    • マクドナルド FREE Wi-Fi - マクドナルドの店舗内に設置。アクセスポイントはソフトバンクWi-Fiスポットとの共用。1回60分までだが、経過後は再接続することで何回でも利用可能。初めて利用する際はメールアドレスの登録とパスワードの設定が必要。Facebookでのログインも可能。
    • すかいらーく Wi-Fi - すかいらーくグループの飲食店の店舗内に設置。アクセスポイントはWi2 300との共用。1日3回(1回60分)まで。初めて利用する際はSNSのアカウントかメールアドレスの登録が必要。
    • フレッツ・ポータル - NTT東日本の光ステーションを設置した店舗等で提供。アクセスポイントはフレッツ・スポットとの共用。1日2回(1回15分)まで。
    • Do SPOT - NTTメディアサプライが提供。アクセスポイントはフレッツスポットとの共用。1日4回(1回15分)まで。
    • E-NEXCO Wi-Fi SPOT - NEXCO東日本
    • C-NEXCO Free Wi-Fi - NEXCO中日本
    • W-NEXCO Free Wi-Fi - NEXCO西日本
      各会社が管轄する路線のSAPAに設置。1日3回(1回15分)まで。また、SA・PAによってはソフトバンクWi-Fiスポット・UQ Wi-Fi・FREESPOT(NEXCO西日本はソフトバンクWi-Fiスポット・docomo Wi-Fi)も設置。
    • FC2WiFiFC2
    • Osaka Free Wi-Fi - 大阪府内の各所に設置。
    • FreeMobile - 自動販売機に設置したWi-Fiスポット。自動販売機の販売・貸出しをするタケショウが運営しており、自販機飲料の販売促進を目的としている。
    • Wi-Fine - 他の公衆無線LANとは異なり、インターネット接続を行わない。アクセスポイントが置かれた場所の情報提供(チラシ等)を行っている。
    • wiffy - 店舗向け。個人経営の店舗に対しても、オリジナルのホットスポットを提供可能とするサービス。メールアドレス登録方式やSNS認証方式(Facebook、TwitterGoogle+InstagramWeiboLINEKakaoVKLinkedIn)だけでなく、ログイン回数制限やセッション時間制限、通信帯域制御もWeb管理インターフェースから自由に設定可能。
  • 設置者の相互コミュニティによるもの
    • FON - 自宅や店舗・事務所などのインターネット回線にFON無線ルーターを購入設置登録すると、一つのIDが設置者に提供され全世界の同様のFONルーター購入設置者のスポットが無料で利用できる(過去には、ソフトバンクモバイルのフラット型パケット定額サービスの契約者に対しては、ソフトバンクモバイルがFON無線ルーターを無償提供していた。2016年現在は、SoftBankブランド利用者に対し、分割払いを利用した「実質無料」での提供はあるが、完全なる無償配布はない)。2013年7月現在、全世界で1200万スポットに迫る。

アメリカ

「iPass Growth Map」によると、2015年2月現在の米国における公衆無線LANのホットスポット数は、コミュニティ Wi-Fiが3,107万8,609か所、商用 Wi-Fiが104 万9,151である[5]

米国の代表的な公衆無線LANの専業事業者としてiPASSとBoingoがある[5]

イギリス

イギリスの通信規制機関Ofcomの報告書「2014年インフラストラクチャ・レポート(Infrastructure Report 2014)」10によると、英国の公衆無線LANホットスポット(public Wi-Fi hotspots)数は2014年6月には4 万1,798か所となっている(大手通信事業者以外の事業者、BT FONサービス11、公共交通機関提供のものを除く)[5]

ブラジル

ブラジルでは2015年1月現在、公衆無線LANアクセスポイントが58万6,098か所あり、有料モデルが734か所、無料モデルが3,903か所、無料・有料モデルの混合が58万1,461か所となっている[5]

技術

セキュリティ

802.1x認証、WPA-EAP
2013年12月現在、日本の公衆無線LANで802.1x認証WPA/WPA2-EAPに対応しているものは少数であるが、au Wi-Fi SPOT(SSID:au_Wi-Fi2)、docomo Wi-Fi(SSID:0001docomoおよびdocomoの一部)、ソフトバンクWi-Fiスポット(SSID:0002softbank)といった移動体キャリアによるサービスでは対応が広がっている。しかし、端末を問わず利用できるのはdocomo Wi-Fiのみであり[11]、au Wi-Fi SPOTおよびソフトバンクWi-Fiスポットでは自キャリアの携帯電話端末によるUIMカードの情報を用いた認証(EAP-SIM/AKA)のみである。
暗号化方式
WPA/WPA2-PSKTKIPもしくはCCMPによる暗号化が提供されているものが多い。しかし、無料サービスのものや一時的に設置されるものでは暗号化をしていない場合が多く、有料サービスでも脆弱性が指摘されているWEPのみを採用している場合や[12]、暗号化されていない場合もある[13]

WISPr

公衆無線LANスポットを設置・提供するにあたっての技術的な指標として、WISPrEnglish版が存在する。

ローミング

公衆無線LANのアクセスポイントを保有しない電気通信事業者が、他の電気通信事業者のアクセスポイントを利用できるようにする事をローミングという。

無線LAN専業の電気通信事業者の内、自社ではアクセスポイントを全く保有していないか、又は利用可能なアクセスポイントの中で自社のアクセスポイントの割合が非常に少ない業者の事をローミングプロバイダと呼ぶ事がある(WIRELESSGATEや、au Wi-Fi SPOTに参入する以前のWi2 300はローミングプロバイダの例である)。

逆に、自社では利用者に対する営業活動を行わず、専らローミング提供を行う事業者も存在する。NTT BP(NTT東日本のWeb認証方式のフレッツスポットをローミング提供)やイッツコミュニケーションズ(東急線の駅構内の公衆無線LAN設備を移動体系キャリア3社とNTT東日本にローミング提供)はこの例である。

参照・脚注

  1. NTT Com、「ホットスポット」を商標登録
  2. が、近年では拡大解釈され、有償も含め街中で無線LANが利用出来る場所を指す言葉となっている。「ホットスポット」という名称は、NTTコミュニケーションズが提供する上記サービスの名称で、日本では商標として登録されているが、一般名称としても使用されており、NTTコミュニケーションズは「一般名称として使用することに制限を加える意図は無い」旨を表明している[1]
  3. Wi-Fi Timeline” (2002年8月). . 2011年11月閲覧.
  4. Wireless Technology
  5. 5.0 5.1 5.2 5.3 5.4 5.5 5.6 5.7 諸外国における公衆無線LANの整備状況 調査報告書 一般財団法人マルチメディア振興センター
  6. [1]
  7. December 2006 update of wireless cities and counties
  8. 広告料という間接収入であっても、他人の通信の対価とみなされるため、電気通信事業に該当する。
  9. 観光庁・公衆無線LANの整備状況について
  10. かつてSSIDにFONを使用していた時期があり、偽FONと呼ばれる事もあった。
  11. EAP-SIM/AKAだけでなくPEAP-MSCHAPv2やTTLS-PAPによる認証が可能。
  12. NTT東日本のフレッツ・スポットやソフトバンクテレコムのBBモバイルポイントなど。
  13. ソフトバンクモバイルのソフトバンクWi-Fiスポット(SSID:0001softbank)など。

外部リンク

業界団体
報告書
研究会
無線LANスポット地図
  • NAVITIME - 地図上に無線LANスポットを表示することができる。