「北アイルランド」の版間の差分
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[[イギリス]],[[アイルランド島]]北東部を占める地域。[[イングランド]],[[ウェールズ]],[[スコットランド]]とともにイギリスを構成する。首都[[ベルファスト]]。地形は中部東寄りにあるイギリス最大の湖[[ネー湖]]を底面とした深皿にたとえられ,縁にあたる部分は北東部のアントリム高原,南東部のモーン山地,北西部のスペリン山地などからなる。最高峰はモーン山地のスリーブドナード山(852m)。[[氷河作用]]による浸食で山容は全体に穏やかで,低地には漂礫土による[[ドラムリン]]が発達。気候は暖流である[[北大西洋海流]]と[[偏西風]]の影響で,夏涼しく冬暖かい[[西岸海洋性気候]]を示す。経済はイギリス本土と密接に関連し,基本的に農業国である南の[[アイルランド]]に比べて工業が発達,輸出品の大半は工業製品である。主要工業は機械,造船,自動車,繊維,食品,化学などで,ベルファストを中心に立地する。17世紀頃スコットランドなどからの移住者によって始められたリンネル工業は世界的に有名であったが,安価な化学繊維に押されて需要が減少した。全体の約 4分の3が農地となっており,農業も盛ん。混合農業が中心であるが,特に牧草地が広く,畜産に重点がおかれ,農業生産の 80%以上が畜産物による。ネー湖周辺と南東部の低地では酪農が発達。 | [[イギリス]],[[アイルランド島]]北東部を占める地域。[[イングランド]],[[ウェールズ]],[[スコットランド]]とともにイギリスを構成する。首都[[ベルファスト]]。地形は中部東寄りにあるイギリス最大の湖[[ネー湖]]を底面とした深皿にたとえられ,縁にあたる部分は北東部のアントリム高原,南東部のモーン山地,北西部のスペリン山地などからなる。最高峰はモーン山地のスリーブドナード山(852m)。[[氷河作用]]による浸食で山容は全体に穏やかで,低地には漂礫土による[[ドラムリン]]が発達。気候は暖流である[[北大西洋海流]]と[[偏西風]]の影響で,夏涼しく冬暖かい[[西岸海洋性気候]]を示す。経済はイギリス本土と密接に関連し,基本的に農業国である南の[[アイルランド]]に比べて工業が発達,輸出品の大半は工業製品である。主要工業は機械,造船,自動車,繊維,食品,化学などで,ベルファストを中心に立地する。17世紀頃スコットランドなどからの移住者によって始められたリンネル工業は世界的に有名であったが,安価な化学繊維に押されて需要が減少した。全体の約 4分の3が農地となっており,農業も盛ん。混合農業が中心であるが,特に牧草地が広く,畜産に重点がおかれ,農業生産の 80%以上が畜産物による。ネー湖周辺と南東部の低地では酪農が発達。 | ||
− | 古くから[[アルスター]]と呼ばれる地方で,17世紀初め頃まではアイルランド島のほかの地域と同じ歴史をたどるが,17世紀半ばアルスターの反乱が鎮圧されたのち,この地方にイングランドやスコットランドからプロテスタントが入植するようになってから別個の道を歩みはじめ,カトリック系の南部に対してプロテスタント的色彩が濃くなった。1886年 | + | 古くから[[アルスター]]と呼ばれる地方で,17世紀初め頃まではアイルランド島のほかの地域と同じ歴史をたどるが,17世紀半ばアルスターの反乱が鎮圧されたのち,この地方にイングランドやスコットランドからプロテスタントが入植するようになってから別個の道を歩みはじめ,カトリック系の南部に対してプロテスタント的色彩が濃くなった。1886年[[ウィリアム・E.グラッドストン]]がイギリス議会に[[アイルランド自治法案]]を提出して以降,アルスターのプロテスタントはカトリック多数派による支配を恐れ,1912年第3次自治法案が成立しそうになると決起し,アルスターを自治から除外することを要求。この第3次自治法案は 1914年に下院を通過したが,第1次世界大戦の勃発により実施されないまま,1920年アイルランドに南北二つの議会を設置することを定めた[[アイルランド統治法]]が成立。南アイルランドはその後,アイルランド自由国と呼ばれる自治領を経て,1949年イギリス連邦から離脱し独立した共和国となったが,アルスター 9県のうち 6県は「北アイルランド」としてイギリスの統治下にとどまった。しかしその後,北アイルランドでは住民の約 3分の2を占めるプロテスタント系住民による少数派のカトリック系住民に対する政治的,経済的差別が続いたため,カトリック系住民の不満を招いた。1960年代末に始まった両者の武力抗争は 1980年代に鎮静化をみせ,1990年代に入り終息に向かった([[北アイルランド紛争]])。行政的には 1973年に県が廃止され,26地区に改編された。面積 1万4135km<sup>2</sup>。人口 177万5000(2008推計)。([[アイルランド史]]) |
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2018/9/6/ (木) 01:20時点における最新版
- 北アイルランド
- Northern Ireland(英語)
Tuaisceart Éireann(アイルランド語)
Norlin Airlann(アルスター・スコットランド語) - 地域の標語:Dieu et mon droit
(フランス語: 神と私の権利) -
国花:シャムロック
守護聖人:聖パトリック
公用語 | 英語、アイルランド語、 アルスター・スコットランド語 |
---|---|
主都 | ベルファスト |
最大の都市 | ベルファスト |
発足 | アイルランド統治法 (1920年) |
通貨 | UKポンド (£) (GBP) |
時間帯 | UTC GMT (UTC+0)(DST:UTC+1) |
ISO 3166-1 | GB (GB-NIR) |
ccTLD | .ie, .uk |
国際電話番号 | 353 48, 44 28 |
北アイルランド(きたアイルランド、英語: Northern Ireland)
イギリス,アイルランド島北東部を占める地域。イングランド,ウェールズ,スコットランドとともにイギリスを構成する。首都ベルファスト。地形は中部東寄りにあるイギリス最大の湖ネー湖を底面とした深皿にたとえられ,縁にあたる部分は北東部のアントリム高原,南東部のモーン山地,北西部のスペリン山地などからなる。最高峰はモーン山地のスリーブドナード山(852m)。氷河作用による浸食で山容は全体に穏やかで,低地には漂礫土によるドラムリンが発達。気候は暖流である北大西洋海流と偏西風の影響で,夏涼しく冬暖かい西岸海洋性気候を示す。経済はイギリス本土と密接に関連し,基本的に農業国である南のアイルランドに比べて工業が発達,輸出品の大半は工業製品である。主要工業は機械,造船,自動車,繊維,食品,化学などで,ベルファストを中心に立地する。17世紀頃スコットランドなどからの移住者によって始められたリンネル工業は世界的に有名であったが,安価な化学繊維に押されて需要が減少した。全体の約 4分の3が農地となっており,農業も盛ん。混合農業が中心であるが,特に牧草地が広く,畜産に重点がおかれ,農業生産の 80%以上が畜産物による。ネー湖周辺と南東部の低地では酪農が発達。
古くからアルスターと呼ばれる地方で,17世紀初め頃まではアイルランド島のほかの地域と同じ歴史をたどるが,17世紀半ばアルスターの反乱が鎮圧されたのち,この地方にイングランドやスコットランドからプロテスタントが入植するようになってから別個の道を歩みはじめ,カトリック系の南部に対してプロテスタント的色彩が濃くなった。1886年ウィリアム・E.グラッドストンがイギリス議会にアイルランド自治法案を提出して以降,アルスターのプロテスタントはカトリック多数派による支配を恐れ,1912年第3次自治法案が成立しそうになると決起し,アルスターを自治から除外することを要求。この第3次自治法案は 1914年に下院を通過したが,第1次世界大戦の勃発により実施されないまま,1920年アイルランドに南北二つの議会を設置することを定めたアイルランド統治法が成立。南アイルランドはその後,アイルランド自由国と呼ばれる自治領を経て,1949年イギリス連邦から離脱し独立した共和国となったが,アルスター 9県のうち 6県は「北アイルランド」としてイギリスの統治下にとどまった。しかしその後,北アイルランドでは住民の約 3分の2を占めるプロテスタント系住民による少数派のカトリック系住民に対する政治的,経済的差別が続いたため,カトリック系住民の不満を招いた。1960年代末に始まった両者の武力抗争は 1980年代に鎮静化をみせ,1990年代に入り終息に向かった(北アイルランド紛争)。行政的には 1973年に県が廃止され,26地区に改編された。面積 1万4135km2。人口 177万5000(2008推計)。(アイルランド史)
脚注
外部リンク
- 北アイルランド議会 (英語)
- 北アイルランド政府観光庁 (英語)