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{{Redirect|地下鉄道|アメリカ合衆国の黒人奴隷解放組織|地下鉄道 (秘密結社) }}
 
{{Otheruses||日本の地下鉄道|日本の地下鉄}}
 
[[File:Lancaster Gate tube.jpg|thumb|250px|世界最古の地下鉄である[[ロンドン地下鉄]] (1863年開業)]]
 
'''地下鉄道'''(ちかてつどう)、略して'''地下鉄'''(ちかてつ)とは[[鉄道路線|路線]]の大部分が[[地下]]空間に存在する[[鉄道]]である。主に[[都市高速鉄道]]として建設される。
 
  
== 概要 ==
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'''地下鉄道'''(ちかてつどう)、略して'''地下鉄'''(ちかてつ)
=== 定時性・安全性 ===
 
地下を通る路線は地下を走行するため景色が存在せず[[観光]]用途には向かないが、[[高架橋]]の上を通る路線と同様に[[踏切]]や[[信号機|交通信号]]などの存在を介した[[道路]]など他の輸送システムとの相互干渉がないため、[[市街地]]が密集している大都市の中心部など本来、定時運行が難しい場所でも定時運行が可能であり、踏切事故などの[[交通事故]]の危険性も地上の鉄道路線に比べて低い。また地上を走る路線と異なり強風あるいは雨・雪・霧などによる影響も受けることがなく、この点も定時性確保に寄与している。運転時の視認性が悪いため、[[鉄道信号機|信号]]などの保安装置もより安全なものが採用されていることが多く、衝突事故の危険性も低い。
 
  
しかし、低所を走るため排水設備に不備があると水害の危険があり、近年は[[テロリズム]]の脅威が認識されている。また、欧米では防火設備の不十分な古い地下鉄も多く、木製の車両やエレベーターが存在しているところもある。
+
地下鉄道の省略語。都市鉄道の地下トンネル区間を意味するが,現在は地下トンネル区間の比較的多い鉄道全体を意味することが多い。都市市街部で鉄道用地取得が困難なため,やむなく地下にもぐった鉄道形態で,建設費は高価であるが,用地買収の手数が少く,沿線の騒音を小さくすることができる。 1863年ロンドンで初めて蒸気鉄道として建設され (1890電化) ,19世紀末から 20世紀にかけて世界の大都市に普及,電車運転方式が確立した。日本でも東京,大阪,名古屋,京都,神戸,札幌,横浜,福岡,仙台などにある。
 
 
=== 路線の構造 ===
 
工法にもよるが、地下路線の建設が終了すると地下鉄建設に関係する資材や地下鉄の構造物による地上の土地の占有はほとんど無くなる。地上の構造物に影響を与えることなく地下に路線を建設できる工法もあり、その場合は工事中に道路の車線が減少するなどの地上の交通や都市の景観への影響が少ない。また市街地の地下に路線を通す場合、国によって事情は異なるが多くの場合、[[法律]]や地上の土地所有権などが絡む問題を回避する都合から道路([[公道]])の地下に通すことが多い。道路の地下に路線を建設すると、路線の形状やルートが都市の構造に依存するため、長い直線的な道路が地上に存在しない場所では路線が複雑に曲がりくねったりするほか、細い街路の地下にしか通せない場合、小型の車両を採用した路線になることも珍しくない。そのため、一部の路線で地形の都合や建設費削減のために地上区間や高架区間を併用することもある。
 
 
 
=== 他の交通機関との連携 ===
 
[[ファイル:Stratford_x_pltfm.jpg|thumb|[[ストラトフォード駅]]の[[ロンドン地下鉄]] () 及び[[w:Abellio Greater Anglia|グレーター・アングリア]] (右) の乗り換え[[プラットホーム]]。同駅には[[ドックランズ・ライト・レイルウェイ]] (図示せず) も乗り入れる。]]
 
地下鉄と一般鉄道はハード面では互いに独立したシステムとなっている例が大半だが、[[ドイツ]]等では[[路面電車]]や[[バス (交通機関)|バス]]を含めた大規模な共通運賃制度が実施され、ソフト面で連係が進められている例が多い。一部の路線では交通機関同士で[[ダイヤグラム]]を調整したり、乗り場を同一平面に置くなど、円滑な乗換えが出来るように考慮されている。一方で相次ぐ路線の増設により、駅が離れていたり、経路の案内がわかりづらかったりと(同じ事業者の路線でも)乗継が不便になっている例もまま見受けられる。
 
 
 
郊外電車網が発達した[[日本]]とその技術協力で地下鉄を開業させた[[大韓民国|韓国]]では、地下鉄の軌道や電気方式などシステムを接続する一般鉄道のものと共通にして、相互に車両が乗り入れて[[直通運転]]し一体の路線を形成する例がある。フランスでも、これと似たようなものに[[RER]]がある。
 
 
 
なお、郊外電車の運営事業者が都心部で独自の地下線を有するケースがある。この場合、地下鉄と同じ役割を果たしていても地下鉄と認識されない場合が多い。
 
 
 
[[空港連絡鉄道]]としても重宝されており、世界の主要な都市の[[空港]]では地下鉄が乗り入れを行っているケースが多い。
 
 
 
=== 費用 ===
 
地下鉄は建設にも維持管理にも莫大な費用を費やす交通機関であることから、大量の輸送需要が見込める都市でないと建設・維持することが難しい。そのため、地下鉄のある都市の多くは100万人以上の[[人口]]を抱える[[都市圏]]である。さらに建設費の償還や維持費の確保のため、他の[[公共交通機関]]と比較すると[[運賃]]が割高な傾向がある。建設しても需要が予想をはるかに下回ったとき非常に大きな負担となる場合もある。最近では、建設費用や維持費用が安く[[バリアフリー]]で環境に優しい[[ライトレール|LRT]](次世代型路面電車)を導入する例が増えている。
 
 
 
さらに[[開発途上国|発展途上国]]の場合、維持していけるだけの需要が見込めるにもかかわらず経済的に建設できる能力がないとき、[[先進国]]からの[[政府開発援助]](ODA)や[[世界銀行]]からの融資によって建設されることがある。
 
 
 
=== 軍事利用 ===
 
[[第一次世界大戦]]・[[第二次世界大戦]]の際、ロンドン地下鉄が[[防空壕]]の役割を果たしたことから、[[戦争]]や[[自然災害]]などの[[有事]]の際の大規模な避難所としての利用が想定されていることがある。その例として休戦状態の[[大韓民国|韓国]]では[[ソウル特別市|ソウル]]や[[釜山広域市|釜山]]などで地下鉄と共に[[地下街]]や地下通路が多く整備されており、軍事都市の側面を持ち合わせている。[[朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮]]の首都・[[平壌]]の地下鉄は地下150mという大深度に建設され、[[核戦争]]に備えている。これは、ソ連期に作られた[[モスクワ]]や[[サンクトペテルブルク|レニングラード]]の地下鉄も挙げられる。[[ブルガリア]]の首都・[[ソフィア (ブルガリア)|ソフィア]]の地下鉄は駅の入り口に[[防爆扉]]がついている。軍事において兵力や物資の輸送も可能であるため、各国の軍隊によって物資輸送演習が行われることがある。
 
 
 
もっとも完全に安全というわけではなく、日本では[[太平洋戦争]]の際、(日本で最初にできたため)比較的浅いところを走る[[東京メトロ銀座線]]で空襲による損傷を受けており、現在でも[[銀座駅]]にその痕が一部に残存している。ロンドン地下鉄においても、直撃弾により大きな被害が出た例が複数ある。また、[[国会議事堂前駅]]や[[東京メトロ有楽町線]]のように有事を想定した建設が行われているという[[都市伝説]]が流布する例もある([[東京地下秘密路線説]]も参照のこと)。
 
 
 
== 歴史 ==
 
[[File:Constructing the Metropolitan Railway.png|thumb|[[キングス・クロス・セント・パンクラス駅]]における[[メトロポリタン鉄道]]建設工事の様子 (1861年)]]
 
地下鉄の歴史は[[19世紀]]の[[イギリス]]の[[ロンドン地下鉄|ロンドン]]から始まった。[[1863年]][[1月10日]]に[[メトロポリタン鉄道]]の[[パディントン駅]]から[[ファリンドン駅]]の間、約6kmが開通した(現在の[[サークル線]]の一部)。当時のイギリスは鉄道の建設が盛んであったが、ロンドン市内は建物が密集しており地上に鉄道を建設できなかったためである。この路線を計画したのはロンドンの法務官である[[チャールズ・ピアソン]]で、[[1834年]]に開通した[[テムズトンネル]]をヒントにしたとされる。車両は開業当初から[[1905年]]に[[鉄道の電化|電化]]されるまでは[[蒸気機関車]]を使用していた。[[硫黄]]を含む[[煙]]が発生するため、駅構内は密閉された地下空間ではなく換気性を確保した吹き抜け構造となっていたほか、路線の一部も掘割であった。
 
 
 
地下鉄を意味することも多い「[[メトロ]]」という単語の語源は、この「メトロポリタン鉄道」に由来している。そして、その「メトロポリタン鉄道」を語源として命名された、パリの地下鉄の略称である「Métro (Métropolitain)」から世界中にその呼称が広まったといわれている。
 
 
 
イギリスでの開業後はしばらく間があき、30年近くたった[[19世紀]]末 - [[20世紀]]初頭に欧米の各地で建設されていく。[[1875年]]にトルコの[[イスタンブール]]で地下ケーブルカー「[[テュネル]]」が開業した。[[1896年]]に[[ハンガリー]]の[[ブダペスト]]でも本格的地下鉄が開業。ブダペスト地下鉄は当初から電化されており、これは地下鉄としては世界で最初の電化路線であった。さらに[[1898年]]には[[アメリカ合衆国]]の[[ボストン]]、そして[[1900年]]には[[フランス]]の[[パリ]]において開通した。[[ドイツ]]の[[ベルリン]]でも[[1880年]]頃には地下鉄を通す計画が存在したものの反対勢力によって計画が遅れ、開通は[[1902年]]であった。
 
 
 
第一次世界大戦が開戦するまでには[[西ヨーロッパ]]や[[北アメリカ]]の大都市に、第一次世界大戦中から20世紀半ば頃までは[[ヨーロッパ]]各地の中都市や日本を中心に建設が行なわれていたが、[[1970年代]]以降は[[アジア]]などの発展途上国での建設が盛んになった。
 
 
 
== 構造 ==
 
=== 路線 ===
 
一般的に地下鉄と呼ばれる路線でも高架区間や地上区間を有することはあるが、トンネル構造物が区間の大部分を占める地下鉄では保守点検作業に多くの手間が掛かる。そのため、それを少しでも減らすために維持の手間が少ない[[直結軌道]]や[[スラブ軌道]]の路線を採用していることが多い。この方式では床や[[枕木]]に[[コンクリート]]を使用するため、砂利を敷き詰める[[バラスト軌道]]に比べ寿命が長く、車体への負担も少ないという利点がある。その代償に初期費用がバラスト軌道に比べて非常に割高である。
 
 
 
世界の全ての地下鉄が電化されている。その電源・集電方法は国や路線によって様々である。電源は直流600 - 1,500Vが主に使われている。交流を採用している路線は、[[インド]]の[[デリー]](25,000V 50Hz)のみである<ref>事実上地下鉄と同一の機能を果たしている都市の地下路線では、交流電化の例がある。ドイツの[[ミュンヘン]]、[[フランクフルト・アム・マイン|フランクフルト]]、[[シュトゥットガルト]]の[[Sバーン]](15,000V 16 2/3Hz)、韓国の[[ソウル特別市|ソウル]]市周辺の[[韓国鉄道公社]]([[首都圏電鉄]])[[果川線]]、[[盆唐線]](25,000V 60Hz)がこれに該当する</ref>。アジアでは750Vと1,500Vが、[[ロシア]]・[[東ヨーロッパ]]では825Vが、西ヨーロッパや北アメリカでは600Vから750Vが、南アメリカでは750Vや3,000Vが主流である。集電方法は[[第三軌条方式]](およびロンドンの四軌条方式)と[[架空電車線方式]]があるが、国や地方同士の中でも混在しており、分布の偏りは見られない。なお、第三軌条方式は鉄道が走行する2本のレールに平行して3本目のレールを敷設し、このレールを通じて電源を供給する方式である。地下鉄において集電方法に第三軌条方式を採用すると架空線の場合よりもトンネルの断面積が狭くなり、建設費用が抑えられる。同じ目的で日本などの一部の国では鉄輪式[[リニアモーターカー]]も採用されている。
 
{{gallery|lines=5|width=125|height=125
 
|File:Circle-system.png|環状路線 (例: [[グラスゴー地下鉄|グラスゴー]])
 
|File:Circle-radial-system.png|放射環状路線 (例: [[北京地下鉄|北京]]、[[w:Dhaka Metro|ダッカ]]、[[ロンドン地下鉄|ロンドン]]、[[マドリード地下鉄|マドリード]]、[[モスクワ地下鉄|モスクワ]]、[[首都圏電鉄|ソウル]]、[[上海軌道交通|上海]]、[[名古屋市営地下鉄|名古屋]]、[[東京の地下鉄|東京]])
 
|File:Secant-system.png|割線路線 (例: [[アテネ地下鉄|アテネ]]、[[ブカレスト地下鉄|ブカレスト]]、[[ブダペスト地下鉄|ブダペスト]]、[[w:Hyderabad Metro Rail|ハイデラバード]]、[[ハルキウ地下鉄|ハルキウ]]、[[キエフ地下鉄|キエフ]]、[[w:RapidKL Light Rail Transit|クアラルンプール]]、[[リスボンメトロ|リスボン]]、[[ミュンヘン地下鉄|ミュンヘン]]、[[プラハ地下鉄|プラハ]]、[[サンパウロ地下鉄|サンパウロ]]、[[タシュケント地下鉄|タシュケント]]、[[テヘラン・メトロ|テヘラン]])
 
|File:Intermeshed-system.png|複合格子路線 (例: [[ベルリン地下鉄|ベルリン]]、[[デリー・メトロ|デリー]]、[[ニューヨーク市地下鉄|ニューヨーク]]、[[深セン地下鉄|深セン]]、[[大阪市高速電気軌道|大阪]]、[[メトロ (パリ)|パリ]], [[台北捷運|台北]])
 
|File:X-system.png|X路線 (例: [[メトロ (アムステルダム)|アムステルダム]]、[[ブラジリア地下鉄|ブラジリア]]、[[ブリュッセル地下鉄|ブリュッセル]]、[[T-bane|オスロ]]、[[w:Porto Metro|ポルト]]、[[リオデジャネイロ地下鉄|リオデジャネイロ]]、[[バート (鉄道)|サンフランシスコ]]、[[ストックホルム地下鉄|ストックホルム]]、[[横浜市営地下鉄|横浜]])
 
|File:Diameter-line.png|直径路線 (例: [[アルジェ地下鉄|アルジェ]]、[[ヘルシンキ地下鉄|ヘルシンキ]]、[[リマ地下鉄|リマ]]、[[ムンバイ・メトロ|ムンバイ]]、[[エカテリンブルク地下鉄|エカテリンブルク]])
 
|File:Air-bladder-system.png|気泡路線 (例: [[カイロ地下鉄|カイロ]]、[[メトロ (リール)|リール]]、[[ミラノ地下鉄|ミラノ]]、[[ニュルンベルク地下鉄|ニュルンベルク]]、[[w:Rotterdam Metro|ロッテルダム]]、[[メトロ (ソフィア)|ソフィア]] (一部)、[[w:Tyne and Wear Metro|タイン・アンド・ウィア]]
 
|File:Cross-system.png|十字路線 (例: [[アトランタ・マルタ|アトランタ]]、[[バンガロール・メトロ|バンガロール]]、[[w:Isfahan Metro|エスファハーン]]、[[高雄捷運|高雄]]、[[京都市営地下鉄|京都]]、[[ミンスク地下鉄|ミンスク]]、[[南東ペンシルベニア交通局|フィラデルフィア]]、[[ローマ地下鉄|ローマ]]、[[札幌市営地下鉄|札幌]]、[[仙台市地下鉄|仙台]]、[[ワルシャワ地下鉄|ワルシャワ]])
 
}}
 
 
 
=== 駅 ===
 
[[File:Yokohama-municipal-subway-G08-Takata-station-platform-1.jpg|thumb|[[横浜市営地下鉄]][[横浜市営地下鉄グリーンライン|グリーンライン]][[高田駅 (神奈川県)|高田駅]]にて、安全対策のため設置された[[ホームドア]]]]
 
地下鉄の他に地上の鉄道路線や[[高速鉄道]]などの複数の路線が乗り入れる[[ターミナル駅]]は地上構造物を共有している場合があるものの、地下鉄のみの駅は地上に[[駅舎]]の設備を備えず全てを地下に備えている駅が多いことが特徴的である。
 
 
 
多くの[[地下鉄駅]]の場合、地上の構造物は簡易的な構造となっており、地下へと繋がる[[昇降設備]]、つまり駅への入り口のみで構成されている。だが、地上・地下への階段の昇り降りは、障害者や高齢者にとっては地下鉄を利用する際の妨げとなっている。そこで、近年各国で新設されている路線ではこれらの人を対象に、[[エスカレーター]]や[[エレベーター]]を設置するなどして駅を[[バリアフリー]]化する試みが行われることが常である。
 
 
 
地下鉄しか乗り入れていない地下鉄駅の入り口は[[バス停留所]]のように歩道へ設置されていることが多く、一目で地下鉄駅だと認識できるような工夫がされている。この例として、地下鉄を運営する団体や路線のロゴを掲げたり[[ペイントアート]]を行ったりする例が挙げられる。また、駅構内の広大な壁面を利用し、[[広告]]の掲示や[[絵画]]などの美術作品の展示が行われることもある。
 
 
 
地下鉄の[[プラットホーム]]は地下にあることが多い。地下にある場合、換気設備や消火設備の重要性が特に高いため、常に整備する必要がある。しかしながら、駅の構造や予算の問題等で十分に整備が行き届いていない路線が多いのが現状とされる。[[1990年代]]以降に建設された一部の路線には、落下防止柵や[[ホームドア]]の設置といった安全対策も行われている。また、地理や言葉に不慣れな乗客のために構内の放送だけでなく、プラットホームに列車の行先・種別を表示したり、駅名をアルファベットで表記したり、案内用として各駅に固有の番号を付けたりする([[駅ナンバリング]])など各種の配慮が講じられるようになってきている。
 
 
 
=== 車両 ===
 
[[File:Tokyo Metro 1000 LCD.jpg|thumb|[[東京地下鉄]][[東京メトロ銀座線|銀座線]][[東京メトロ1000系電車|1000系]]車両内にて、現在地及び次の停車駅を示す情報パネル。各駅には固有の[[駅ナンバリング|英数字の記号]]が付されている点に注意 (例: G-18 田原町)]]
 
開業当初のロンドン地下鉄の車両は蒸気機関車だったため、[[石炭]]を燃焼した際の煙を水槽内の水に通過させることによりトンネル内に排出される[[煤煙]]と[[熱]]を抑える構造を備えていた。
 
 
 
その後は[[電気鉄道]]となるが、概ね幅2,500mm程度、長さ15,000mm程度の小柄な車両が用いられた。その後、幅2,800mm、長さ18,000mm程度までに大型化する。[[第二次世界大戦]][[戦後|後]]はさらに車両が大型化し、[[東アジア]]では幅2,800 - 3,200mm、長さ20,000mm程度の大型車両が用いられる例([[東京都|東京]]、[[ソウル特別市|ソウル]]、[[シンガポール]]など)もある。一方で建設費の点でトンネル断面を小さくした結果、車両も特殊な小型車とする例(イギリス・[[ロンドン]]のチューブ、[[グラスゴー]]、[[ブダペスト]]など)もある。
 
 
 
車両性能は高速性能より高加減速性能や登坂性能が重視される。このため、[[MT比|電動車の比率]]が高い。既存の[[構造物]]を避け、[[道路]]下などの狭隘な土地に建設されるため、急曲線と急勾配が多く、駅間距離も短いためである。
 
 
 
車体は大量の人員を輸送する関係で多くの[[扉]]が取り付けられている。全長18,000mm以上の車両を中心に片側4扉以上の車両もあるが、世界的には1両当たり片側3扉が主流である。また列車の編成長は欧米で100 - 120m前後、アジアでは200m程度のものもみられる。
 
 
 
座席は欧米では[[鉄道車両の座席|クロスシート]]の例が多く、アジアでは[[鉄道車両の座席|ロングシート]]が多い。
 
 
 
素材には外板には燃えにくい[[金属]]材料を使用するのはもちろんのこと、内装材にも[[耐燃性|不燃性、難燃性]]の[[素材]]が推奨されている。これは避難経路の限られた地下空間での[[火災]]の発生が大惨事を招く可能性が高いためである。しかし内装材については、日本などの一部の国を除いては依然として可燃性の素材が用いられていることが多い。中には古い全木製の車両が使われている[[鉄道路線|路線]]もある。なお、地下鉄の運転士は、運転室と客室間の仕切り部分はカーテン(遮光幕)を閉めて運行する。まれに地下鉄であるが、一部地上区間にも駅がある路線が存在する。
 
 
 
地下鉄車両の[[冷房]]化はそもそも[[ヨーロッパ|欧州]]では必要なところが少ないが、それ以外の地域でも遅れていた。これには以下の理由がある。車内を冷房すればそれによって発生する[[熱]]と[[ドレン]][[水]]が車外に放出され、トンネルと駅が蒸し暑くなる。次に冷房用の[[電源]]([[第三軌条]]や[[架線]]より[[電圧|低圧]]の[[交流]]電源が一般的)が必要であり、[[電動発電機]]を大容量のものに換えるか別に搭載する必要があり、その場所を確保できなかった。そもそも第三軌条を採用した地下鉄は[[車両限界]]が小さく、[[エア・コンディショナー|冷房装置]]を積むだけの空間も無かった。
 
 
 
しかし、技術の進歩によってこれらは解決された。大きな要因は、[[発電ブレーキ]]から[[回生ブレーキ]]への進化で大容量の[[抵抗器]]が不要となったことと、[[電気車の速度制御|制御方式]]に抵抗器を用いない[[サイリスタチョッパ制御]]や[[インバータ]]による[[可変電圧可変周波数制御]](VVVF制御)が普及したことが挙げられる。これによって車両から熱源を無くすことが可能となり、さらに冷房用の電源を積むスペースもできた。その電源にも、電動発電機より小型の[[静止形インバータ]](SIV)を採用することで、より省スペース化が進んでいる。冷房装置そのものについても小型・高効率化がすすみ、第三軌条集電の車両でもその屋根に薄型のものを置けるようになった。
 
 
 
現存する特殊な車両を用いる例として、[[ゴムタイヤ式地下鉄|ゴムタイヤ式]]が挙げられる。[[フランス]]と日本でそれぞれ異なる方式が[[開発]]された。フランスのものは[[カナダ]]の[[モントリオール]][[国際博覧会|万国博覧会]]の開催に合わせて建設された。これはゴムタイヤを使用した最初の路線であった。通常の[[軌条|レール]]と[[輪軸 (鉄道車両)|車輪]]を案内とし、その外側にゴムタイヤとその踏板を設ける方式である。他にパリ、[[メキシコシティ]]でも同様の方式が採用されている。これに対し、日本の[[札幌市|札幌]]で実用化されたものは、走行用のゴムタイヤのほかに中央に1本の案内軌条を作り、それをゴムタイヤで挟む方式で、鉄軌と鉄輪を持たない。ゴムタイヤ方式では[[騒音]]の発生が少なく、発車時の加速度や停車時の減速度が高く、その変化も滑らかであるという特徴を持つが、消耗した[[タイヤ]]の[[粉塵]]が舞うことから[[健康]]被害を心配する声もある<ref>鉄粉は体内に取り込まれても問題は無く、吸収できない分は体外に排出されるが、[[合成ゴム]]の粉塵が及ぼす影響に関しては解明されていない所も多い。</ref>。また、[[転がり抵抗]]が鉄輪式に比べ大きいので[[消費電力]]が多く、タイヤの交換周期も短いためランニングコストが鉄輪式よりも高くなる。タイヤには荷重負担力の大きい[[ラジアルタイヤ]]が用いられており、パリでは過去に[[パンク]]した際、内部のスチールコードが第三軌条と接触して[[短絡]]する事故も起きている。
 
 
 
建設費を抑える為、[[1980年]]頃からは性能を保持したまま車両を小型化することが可能な[[リニア誘導モーター]]による[[非粘着推進]]の車両が登場した。
 
 
 
車両の搬入については地上に置かれた[[車両基地]]へ送る、地下の車庫の直上に搬入用の穴を設けて[[クレーン]]で下ろすといった方法がある。車両メーカーからの車両基地への[[車両輸送|輸送方法]]は乗り入れ先の地上を走る鉄道線経由で送り込む、他の鉄道路線との物理的な接続がない場合には一般道路を[[牽引自動車|トレーラ]]による陸送で送り込む方式が採られている。
 
 
 
== 建設工法 ==
 
地下鉄の建設方法は他の地下構造物の建設と同様に様々な種類があるが、その中でも特に主流を占める工法は[[開削工法]](オープンカット工法)と[[シールド工法]]の2種類である。
 
=== 開削工法 ===
 
[[ファイル:Taoyuan_International_Airport_Access_MRT_SystemTTI_Airport_Terminal_3.jpg|thumb|開削工法による地下鉄建設現場([[桃園機場捷運]]桃園国際空港敷地内)]]
 
地面の土を掘り返し、路線を建設した後に埋めなおすという工法。'''オープンカット工法'''、'''切り開き工法'''とも呼ばれる。工事費が安く工期が短いのが特長で、1980年代まで世界各地の地下構造物の建設工法として主流であった。一方で地面を開削することに起因する制約も多く、地面から深い場所や路線の上に建造物や河川などがある場合は使えない。日本の[[京都市営地下鉄|京都]]のように地下に多量の[[埋蔵文化財]](遺跡)を抱えている都市では開削工法による工事の前に埋蔵文化財の[[発掘調査]]が必要になり、その分の経費と時間が必要となる。また道路上を開削するため道路交通の障害になるという問題もあるが、交通量の多い時間帯には工事を止め、開削した穴を一時的に鉄板で覆って上部を通行可能とすることである程度緩和することができる。
 
 
 
=== シールド工法 ===
 
[[ファイル:Hanzomon-Kinshicho1.JPG|thumb|[[東京メトロ半蔵門線]]の[[錦糸町駅]]付近のシールド工法で造られたトンネル]]
 
[[シールド工法]]は横から掘り進むことによってトンネルを掘る工法。地下鉄の深さまで垂直に穴を掘った後、路線を建設する予定の空間に[[シールドマシン]]と呼ばれる円筒状の機械で掘り進みながらトンネルを造っていく。複数の路線が地下で立体交差する場合や既設の地下鉄路線や下水道などの地下構造物が近くに存在したり、[[鉄道駅|駅]]の地下空間に既に何らかの建造物が存在する場合には有利であり、さらに地上の交通に殆ど影響を与えないといった利点を持つ。さらに、埋蔵文化財(遺跡)を持つ地域においても、文化財の存在する[[地層]](日本考古学用語では「[[土層 (考古学)|土層]]」)よりも深い部分を掘削することによって文化財に影響を与えないことが可能であり、開削工法では必要となる埋蔵文化財の発掘調査にかかる費用と時間を省くことができる。現在では地下にも多くの構造物があり地下鉄路線自体も以前に比べて地下深くに建設されるようになってきたため、地下鉄路線の建設はシールド工法が中心になってきている。しかし面積が広大である駅舎や地面から浅い場所で特に地上交通に配慮する必要がない路線は開削工法が有利であり、どちらの工法も状況に応じて利用されている。
 
 
 
=== その他の工法 ===
 
岩盤が特に固い場所などでは掘削した部分を素早く[[コンクリート]]で吹き付けて固め、[[ボルト (部品)|ボルト]]で固定する[[新オーストリアトンネル工法]](NATM)が用いられることがある。また河川の下では[[ケーソン|潜函工法]](ケーソン工法)や地上で造ったトンネルユニットを水中で連結する[[沈埋工法]]が用いられることもある。また、掘削部に近接してあるいは直上に既存の建造物の基礎や杭あるいは下水管などがある場合、その沈下を防ぐためそれらの荷重を代わりに受ける構造物を構築した後に掘削を行い、トンネルや駅設備を設けることがある([[アンダーピニング工法]])。いずれも限られた場所でのみ用いる工法である。
 
 
 
== 運営 ==
 
地下鉄の管理団体は2種類に大別される。一つは[[政府]]や[[自治体]]といった[[公営]]と呼ばれるもので、もう一つは[[民間企業]]の[[民営]](日本でいう[[私鉄]])と呼ばれるものである。また、そのどちらもが混在している[[第三セクター]]<ref>日本の「第三セクター」は国や地方公共団体と民間が合同で出資・経営する企業をさすが、世界的にみてThird Sectorは民間による非営利団体・慈善団体を意味するのが一般的となっている。地下鉄の運営にあたっているのは日本的意味合いの「第三セクター」である。</ref>と呼ばれる形態も存在する。もっとも、一見民営企業であってもその出資者は地元自治体のみで実質公営という事例が欧州を中心に多数存在する。また、逆に一見公営の地下鉄だが、運営は民営企業に一括して委託するケースがある。該当する例として、フランスのリヨンとリールの地下鉄があげられる。これらは対外的には市営地下鉄として案内されるが、実際には市から委託された民営会社が運行している。
 
 
 
ロンドンでは当初、民間のいくつかの鉄道会社が地下鉄路線を建設し、統一性や計画性のないまま各々の会社が運営していた。しかし[[1933年]]に全ての路線が公的な団体として統合された。その後現在では1社の民間企業として運営している。このように運営団体が変わることも珍しくないほか、地下鉄路線の建設が非常に高額なために公的な団体が路線を建設し、民間企業が運営にあたる例もある。
 
 
 
運賃は乗る時間・距離を問わず定額である場合が一般的であるが、日本を中心とするアジアの路線では距離(区間)に応じて運賃が増加するシステムを採用している。ドイツを中心とするヨーロッパでは、地下鉄を含めた交通機関に対してゾーン制と呼ばれる統一の料金システムをとっている。ゾーン制では中心部とそこから同心円状にゾーンを設定する。同じゾーンの中では料金は均一であるが、ゾーンをまたぐにつれて運賃が増加するというものである。なお、欧州を中心に、交通事業者の連合体が結成され、交通機関の共通運賃制度がとられている例も多い。
 
 
 
=== 自動改札 ===
 
[[File:Iccard.gif|thumb|日本の鉄道[[自動改札機|改札]]での非接触型[[ICカード]]の使用方法]]
 
多くの路線では[[自動改札機|自動改札]]が導入されている。これは大量の人員を捌くためだけでなく、維持費を削減する目的もある。自動改札には専用の切符やカードといった[[乗車券]]を挿入して扉を開けるものと[[硬貨]]を入れることで回転棒が回るものの2種類が一般的である(後者は運賃均一料金制の場合に導入される)。
 
 
 
日本の地下鉄では[[磁気]]情報が記録された切符を自動改札で読み取り、入出場の記録を取って運賃不足を自動判断できる改札機がひろく使用されており、また交通系[[ICカード#交通分野での導入|ICカード]]を用いた運賃収受システムも急速に普及しつつある。
 
 
 
一方で、ドイツ、オーストリアなどでは[[信用乗車方式]]が実施されている。これは駅の改札等を一切廃止する代わりに、抜き打ちの車内検札を行うものである。この場合、正規の切符を所持していない場合、正規料金に加え、その8倍以上の罰金が請求される(これらの国では、他の市内交通機関でも同様の制度が敷かれている)。
 
 
 
== 列車運行 ==
 
地下鉄は大都市における大量輸送を第一の目的としているため、「待たずに乗れる」ことが要求される。そのため多くの地下鉄網では日中の列車運行間隔が5 - 10分程度に設定されている。特にモスクワなどでは混雑時に1分程度に設定されている。
 
 
 
列車は各駅に停車するものが大半だが、東京などでは日中に一部の駅を通過する緩急運転を実施している路線があり、その例として[[東京メトロ東西線]](但し、地上部に限るが)、[[東京メトロ副都心線]]、[[都営地下鉄浅草線]]、[[都営地下鉄新宿線]]などがある。ニューヨークでは、上下線に各駅列車用の軌道と急行列車用の軌道がある[[複々線]]区間や、上下線の複線軌道に午前と午後で進行方向が逆になる単線軌道を加えた[[複々線#三線|複単線]]区間が多く存在することから、ほとんどの路線で各駅停車と急行の2種類の列車を走らせている。
 
 
 
世界の大多数の地下鉄網では、保守点検のため深夜から早朝にかけての時間帯には運転を行なっていない。ニューヨークの地下鉄などは数少ない例外で、複々線や複単線区間では深夜や週末に1軌道に保守点検を施しながら残りの軌道で営業運行ができるため、24時間の[[終夜運転|終日運行]]を行なっている。
 
 
 
日本や韓国の地下鉄では、営業母体の異なる郊外の通勤鉄道線と地下鉄網の軌道規格を統一することにより、多くの通勤列車を郊外から都心へ[[直通運転]]させていることが特徴的である。
 
 
 
== 地下鉄の安全性 ==
 
地下鉄は[[雪]]や[[雹|ひょう]]、強風、[[台風]]、[[竜巻]]などには強いものの、[[地震]]や[[水害]]、[[火災]]、人為的危険などには弱く、地下鉄の構造上、これらの被害にあった場合大惨事になる可能性が極めて高い。そのため安全に関する取り組みは開業以前から研究され続けている。
 
 
 
=== 地震 ===
 
かつては地下鉄は地震に強いとされていた。しかし、[[阪神・淡路大震災]]で[[神戸市営地下鉄]]と[[神戸高速鉄道]]が多大な被害を出した(特に神戸高速鉄道の[[大開駅]]は上の道路が陥没するほどの被害となった)。後の研究で路線が地下を走行する都合上、路線区間はトンネルとして建設されているため、地形が大きく変動することのある地震には弱いことが分かっている。地盤の柔らかい土地<ref>三角州が土地の大部分を占める[[広島市]]で地下鉄が開通していないのはそのため(ただし[[広島高速交通広島新交通1号線|アストラムライン]]は例外)。</ref>では特に注意が必要である。また、路線上の地面が低海抜の場合は、防波堤の決壊により海水が流入することが想定されるので下記の水害を併発する恐れがある。
 
 
 
=== 水害 ===
 
地下鉄のシステムは地面よりも低い位置にあるため、地上に降り注いだ[[雨]]などの水が地下鉄の設備に浸入してくる。例えば、2012年10月には[[ハリケーン・サンディ]]による浸水によりニューヨークの地下鉄が全面的に停止した<ref>[http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2012103102000096.html 米ハリケーン死者33人 証取停止 NY、都市機能まひ] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20121101232545/http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2012103102000096.html |date=2012年11月1日 }}東京新聞2012年10月31日朝刊</ref>。そのため十分な防水・排水設備を持たない場合、水没することもあり得る。このため、地上の駅への出入口を一段高くしたり大雨の時などは駅出入口の防潮板や線路上の防水扉を展開して閉鎖されることがある。[[東海豪雨]]などの浸水などがその例である。
 
 
 
=== 火災 ===
 
古くに建設された地下鉄などでは、駅や車両の火事対策が十分になされていない例もある。また狭い地下空間で火災が発生した際、十分な給排気設備が整っていない場合は瞬時に煙が充満して被害が一層深刻化することも問題視されている。
 
 
 
[[1987年]][[11月18日]]、ロンドン地下鉄[[キングズ・クロス・セント・パンクラス駅|キングズクロス駅]]で起きた火災([[キングス・クロス火災]])で31名が死亡した事件では、ロンドンの地下鉄には古い[[木構造 (建築)|木造]]の構造物が多く残っていた事が指摘されたが、これをきっかけにして日本では地下鉄駅構内の終日[[交通機関の喫煙規制|全面禁煙]]が実施された。
 
 
 
[[2003年]][[2月18日]]に[[大韓民国|韓国]]の[[大邱広域市]]の駅構内で発生した[[放火]]による地下鉄火災([[大邱地下鉄放火事件]])では2編成12両を全焼し死者192名、負傷者148名を出したが、被害がここまで深刻化した原因としては車両の内装に可燃性の素材を使用していたことと駅構内の排煙設備の不備によることが主で、車両の材料が燃焼した際に生じた[[一酸化炭素]]などの有害な物質による[[中毒]]により死亡した者が特に多かった。また、死亡者には火災現場に後から入線した列車の乗客で当該列車が延焼しはじめた際、運転士が逃げ出すときに運転キー(マスコンキー)を抜き、自動的に扉が閉まった状態になってしまったため、車両に取り残されて焼死した者も多い。
 
 
 
=== 人為的災害 ===
 
[[1995年]]3月に東京で起こった[[オウム真理教]]による[[地下鉄サリン事件]]や、同年7月のパリ・メトロの爆破事件、[[2005年]]7月にロンドンで起こった[[ロンドン同時爆破事件]]など、地下鉄には人為的危険行為に対する脆弱性がある。また、[[2001年]]9月の[[アメリカ同時多発テロ事件]]では倒壊した[[ニューヨーク世界貿易センタービル|世界貿易センタービル(WTC)]]の直下に地下鉄の駅があったため、建物の下敷きになって押し潰されたことで駅が破壊された。
 
 
 
=== 人身事故 ===
 
前述の様に、トンネルの断面積を狭くすれば地下鉄の建設費用は安く済む傾向にある。同様に地下駅のプラットホームもなるべくなら狭い方がよい。しかしここで問題になるのが[[鉄道人身障害事故|人身事故]]である。通勤・通学の[[ラッシュ時]]、[[イベント|催事]]のある時などには大勢の人がプラットホームに集まり、人身事故の起こる確率が高くなる。これを解決するために、[[ホームドア]]や可動式ホーム柵が採用されることが増えてきている。ロンドン地下鉄の一部駅などではレールを道床から高くかさ上げして敷設し、転落者を道床に落とし込んで触車させないような構造がとられている。
 
 
 
== 世界の主要な地下鉄 ==
 
<!-- 4-5つの地下鉄路線を保有する(建設中を含む)国の地下鉄を簡単に記述するのが望ましい。-->
 
{{See also|地下鉄一覧}}
 
=== ヨーロッパ ===
 
ヨーロッパでは[[ロンドン]]での開通以来、20世紀半ばまでに主要大都市の多くに地下鉄路線が建設された。
 
; イギリス
 
[[File:Farringdon station MMB 22 S-Stock.jpg|thumb|[[ロンドン地下鉄]][[ロンドン地下鉄S7・S8形電車|S7・S8形]]]]
 
: 世界で最初に開業した地下鉄である[[メトロポリタン線]]は[[1860年]]に工事に着手し、3年後の[[1863年]]に開業した。営業状況は開業当初から大変良好で、開業初年度は約950万人の乗客を運んだ。当初は車両に蒸気機関車を採用していたが、[[1905年]]に電気を動力源とする[[電車]]に切り替え、20世紀前半までにほぼ現在の路線網が完成するに至った。ここまで盛んにロンドンに地下鉄が建設された背景にはロンドンの市街地は道が細く入り組んでおり、地面や高架橋に走らせることが困難であったことに加え、地上の景観を損ねるわけにいかなかったことなどがある。
 
: [[グラスゴー]]など他の都市にも地下鉄があるが、多くはロンドンの場合と同様、狭いトンネル断面に合わせた小型の車両を用いている。
 
; ドイツ
 
[[ファイル:U5-Triebwagen-607.jpg|thumb|[[フランクフルト地下鉄]]U5型]]
 
: [[Uバーン|U-Bahn]](ウーバーン)と呼ばれるものが一般的に地下鉄と認識されている(同じ[[ドイツ語]]圏である[[オーストリア]]でも同様)。他国の地下鉄と形態の近いUバーンは現在、[[ベルリン]]、[[ハンブルク]]、[[ミュンヘン]]、[[ニュルンベルク]]に存在する。これら4路線とも、第三軌条集電方式を採用している。
 
: 首都のベルリンに地下鉄を建設する案は1880年に浮上していたが、地下水が多く地下鉄には不適な地質だとされた。それが理由の反対運動によって計画が進まなかった。しかし建設技術の発達や他所での成功から建設推進の動きが活発化し、1902年に[[ベルリン地下鉄]]が開業した。その後、[[1912年]]にハンブルクで開業。残る2都市は、東西分裂時代にいずれも西側で建設された。
 
<!--いわゆる[[ベルリンの壁]]でベルリンが東西に分断されていた時代には、西側から壁をまたぐことになる路線も運行されていたが、東側の駅には停車しないという運用がされていた。-->
 
: 一方、[[フランクフルト・アム・マイン]]、[[ケルン]]、[[シュトゥットガルト]]、[[デュッセルドルフ]]、[[エッセン]]等には、パンタグラフ集電の小型電車を使用した[[ライトレール|シュタットバーン]](Stadtbahn:軽快電車網)の地下線が存在する。既存の路面電車を都心区間では主に地下化、郊外では専用軌道化することで高速化を図ったものである。北米での[[ライトレール]]に影響を与えた<ref>カナダのカルガリー、エドモントン、アメリカのサンディエゴ等が該当し、フランクフルトと同型の車両を使用した。</ref>。なお、これらシュタットバーン地下鉄のトンネルや車両断面はベルリンなど同じ基準に従って設計されており、法制度上も地下鉄であるがU-シュタットバーン(U-Stadtbahn)として区別されることが多い。
 
; フランス
 
[[ファイル:Metro-Paris-rame-MP89-ligne.jpg|thumb|[[パリ地下鉄]][[w:MP 89|MP89系]]。金属[[車輪]]の[[案内軌条式鉄道|案内軌条]]と走行用の[[ゴムタイヤ]]の両方を備えるのが特徴。]]
 
: [[メトロ]]と呼ばれ、[[パリ]]、[[リヨン]]、[[マルセイユ]]、[[トゥールーズ]]、[[リール (フランス)|リール]]、[[レンヌ]]、[[ルーアン]]の7つの都市に存在する。このうち、ルーアンのものは地下区間を持つ[[LRT]]([[路面電車|トラム]])であり、統計上では地下鉄ではなくトラムに分類されている。リール、トゥールーズ、レンヌの地下鉄はVALと呼ばれる[[新交通システム]]を用いた地下鉄であり、小形車両・全自動運転を特徴としたミニ地下鉄である。この中でも[[首都]]のパリは14本の地下鉄路線を持っており、フランスでは飛びぬけている。[[パリ地下鉄|パリの路線]]では1から14号線まである路線のうち1、4、6、11、14号線の5路線が金属車輪とゴムタイヤを併用した[[案内軌条式鉄道]]であり、14号線では無人運転に加え、安全対策のためホームドアが設置されている。パリではこれらの路線は総称して「[[メトロ (パリ)|メトロ]]」と呼ばれている。パリおよびリヨンの一部路線とLRTであるルーアン以外の地下鉄は、すべてゴムタイヤ式である。
 
: フランスの地下鉄全てに共通している点として、[[運賃]]制度が均一制であることや直流750Vの電源を使用していることが挙げられるが、[[軌間]]や集電方式、運転保安システムにはばらつきが見られる。また、パリ、マルセイユ、トゥールーズ、リール、レンヌでは進行方向に対し右側通行であるが、リヨンにおいては左側通行となっている。
 
: パリにはメトロ以外にも[[RER (イル=ド=フランス)|RER]](首都圏高速鉄道)と呼ばれる地下線で都心に直通する鉄道網が存在している。地下鉄とは別個のシステムであるが、都心部ではRERも地下鉄のネットワークの一部として利用されており、都心部のみの利用ならば運賃もメトロの路線と共通の均一料金で利用できるため、パリの地下鉄の一部として扱える存在である。RERは5路線あり、路線毎にRATPとSNCF担当に分かれているが、料金は共通である。
 
; ロシア
 
[[ファイル:Vertical panorama of the Mayakovskaya Metro Station.jpg|thumb|180px|[[モスクワ地下鉄]][[w:Mayakovskaya (Moscow Metro)|マヤコフスカヤ駅]]]]
 
: [[1935年]]に[[モスクワ]]に開通したのが最初である。モスクワの地下鉄は世界的に見た場合、地上から非常に深い区間が多く、駅構内は豪華な内装で飾られている。多くが[[花崗岩]]や[[大理石]]で装飾され、壁面や天井にはタイルアートや彫刻が施されている。軌道はロシア鉄道と同じ軌間1,524mm。建設は[[ヨシフ・スターリン|スターリン]]の厳命の元、昼夜を問わず突貫工事で進められ、[[革命記念日]]祝賀行事に間に合った。
 
: [[サンクトペテルブルク]]や[[トビリシ]]、[[バクー]]、[[タシケント]]など他のロシアおよび旧ソ連の都市にも地下鉄が存在する。構造は概ねモスクワのものと類似している。
 
; ベルギー
 
: 首都・[[ブリュッセル]]に第三軌条式の地下鉄路線があるほか、路面電車の一部区間を地下化したプレメトロ(Premetro=先行地下鉄)が存在する。これは都心部の需要の多い区間のみトンネルを建設し、地下鉄開業までの間は路面電車のトンネルとして利用するものである。そして、全線のトンネルが完成した段階で、本格的な地下鉄に移行するものである。現在運行中の第三軌条式の地下鉄も、当初はプレメトロとして段階的に整備されたものである。
 
; オランダ
 
: 首都[[アムステルダム]]に第三軌条式の地下鉄ネットワークが、[[ロッテルダム]]には架線集電式と第三軌条式の地下鉄ネットワークが存在している。アムステルダムの地下鉄は路線の大半が地上の高架区間である。また、51系統は郊外部でトラム5系統と線路・駅を共有しており、パンタグラフと集電靴の両方を備えた複電圧車が専用で使用される。この路線は、シュネルトラム(オランダ語で急行路面電車の意味)と呼ばれる。ロッテルダムの地下鉄ネットワークの一部は[[ランドスタット鉄道]]として[[デン・ハーグ]]郊外のゾーテルメアまで運行されている。
 
; スペイン
 
: [[マドリッド]]、[[バルセロナ]]、[[ビルバオ]]、[[バレンシア (スペイン)|バレンシア]]そして[[セビリア]]に地下鉄がある。スペインの地下鉄は、すべて架線集電式なのが特徴である。ビルバオの地下鉄は既存の鉄道線を流用した関係上1mゲージになっている。
 
; ポルトガル
 
: [[リスボン]]と[[ポルト]]に地下鉄がある。リスボンの地下鉄は4路線あり、全ての路線間で乗り換えが可能になっている。ポルトの地下鉄はライトレールでAからFまで6路線あるが、D線以外は市内中心部の路線を共有している。また、両地下鉄とも空港に乗り入れている。
 
; ハンガリー
 
: 首都・[[ブダペスト地下鉄|ブダペストの地下鉄]]はロンドン、イスタンブールに次いで世界で3番目に開業したものであり、かつ、世界初の電気運転の地下鉄でもある。イスタンブールのそれはいささか方式が特異であるために、ブダペスト地下鉄を世界で第2番目、[[ユーラシア大陸]]初の地下鉄とみなす見解もある。ブダペストの地下鉄は3路線あり、一番古い1号線は架線集電・小形車両を用いた路線でトンネルも浅いところに掘られている。2号線・3号線は戦後ソ連の技術を用いて建設された第三軌条式の路線で、他のソ連製地下鉄同様のデザインの電車、深いトンネルが特徴である。
 
; トルコ(ヨーロッパ側)
 
: [[イスタンブール]]に[[テュネル]](1875年開業)とイスタンブール地下鉄(2000年開業)がある。テュネルは地下[[ケーブルカー]]という特殊な方式であり、かつ全長も573メートルという短いものであるが、ロンドン地下鉄に次いで世界で2番目、大陸ヨーロッパでは最初に開業した地下鉄である。
 
 
 
=== 北アメリカ ===
 
; [[アメリカ合衆国|アメリカ]]
 
[[ファイル:NYC Subway 8357 on the M.jpg|thumb|[[ニューヨーク市地下鉄]][[ニューヨーク市地下鉄R160電車|R160]]]]
 
: [[1870年]]に[[ウイリアム・ツィード]]の政治工作を免れるために「郵便配達チューブの実験」名目で、科学雑誌編集者&発明家であったアルフレッド・エリィ・ビーチ (Alfred Ely Beach) により、圧搾空気を利用したエアチューブ方式の地下交通機関が営業を開始し、一乗車25セント1年で延べ40万人の利用があった。一方で時速約10km/h程度の低速という技術的問題や、建設コストの割高な面など課題も多かった。ビーチは州政府に、路線を北のセントラル・パークまで延長する事業の申請を行った、[[タマニー協会]]のウイリアム・ツィードの妨害工作により否決され続けた。[[1873年]]に彼が汚職で失脚することでようやく認可されたが、同年アメリカ合衆国内において[[クレディ・モビリエ社事件]]を発端とする[[金融恐慌]]([[ブラック・サーズデー]])が起き、資金難により延伸計画も頓挫し、同年中にこの画期的な構想は営業を停止した。
 
: 現在の鉄軌道方式による最初の地下鉄が[[1904年]]に[[ニューヨーク市地下鉄]]が開業して以来、[[ニューヨーク]]では[[マンハッタン島]]を中心に路線を形成、総延長は1,000kmを超える。たびたび[[映画]]の舞台として登場する。他の都市でも地下鉄の建設が進められ、現在20都市以上にあるうちの大半は東部から中東部地方([[ボストン]]、[[フィラデルフィア]]、[[ワシントンD.C.]]など)に集中している。そのほか、中西部から西部([[ロサンゼルス]]、[[サンフランシスコ]]など)や海外領土の[[プエルトリコ]]([[サンフアン (プエルトリコ)|サンフアン]])にも地下鉄がある。
 
: 特にサンフランシスコの[[バート (鉄道)|BART]]は全米で最も優れた輸送システムである。また、首都・ワシントンD.C.の[[ワシントンメトロ]]はアメリカで最も近代化された地下鉄網を形成している。
 
: [[シカゴ]]のものは路線の大半が高架などで地上に存在し、地下区間は僅かだが地下鉄の範疇に含まれている。
 
; [[カナダ]]
 
: [[トロント市地下鉄]]は1954年に開業。アルミ車体の車両が実験的に導入され、軽量化による運行コスト削減を試みた。1966年にはカナダ第二の地下鉄として、[[モントリオール地下鉄]]が1967年の[[モントリオール万国博覧会|万国博覧会]]に合わせて開業した。さらに1985年には[[バンクーバー・スカイトレイン]]が1986年の[[バンクーバー国際交通博覧会|国際交通博覧会]]に合わせて開業。一部の路線は高架を通っているが、都心部及び住宅地では地下を通っている。
 
; [[メキシコ]]
 
: 首都・[[メキシコシティ地下鉄|メキシコシティにある地下鉄]]は[[1969年]]に開通した。フランスからの技術供与を受けた、金属車輪とゴムタイヤを併用した[[案内軌条式鉄道]]である。同地下鉄は世界で初めて各駅にシンボルを設けたことで知られる。また、料金が全区間均一であることでも知られる。[[グアダラハラ (メキシコ)|グアダラハラ]]と[[モンテレイ (メキシコ)|モンテレイ]]にも地下鉄がある。
 
; [[ドミニカ共和国]]
 
: 首都[[サントドミンゴ]]では[[スペイン]]の技術協力を得て、[[カリブ海]]で2番目(カリブ海上の独立国としては初めて)の地下鉄が[[2009年]][[1月30日]]に開業した。
 
 
 
=== 南アメリカ ===
 
[[南アメリカ]]で初めて開通した地下鉄は[[1913年]]12月、[[アルゼンチン]]の首都・[[ブエノスアイレス]]である。その他、南アメリカ大陸の中で地下鉄がある国は[[ブラジル]]、[[チリ]]、[[コロンビア]]、[[ベネズエラ]]、[[ペルー]]の合わせて6か国である。
 
; ブラジル
 
: 2018年現在、[[サンパウロ]]など主要7都市で地下鉄が運行している。これらの地下鉄は全て1970年代以降に造られたものであり、サンパウロはモノレールを含めると6路線で南米最大の規模である。その他の都市は1 - 3路線程度を保有している。軌間は全て広軌に分類される1,600mmを採用しているものの全ての都市に共通している点はこの点のみであり、他の技術面ではそれぞれの都市で大きく異なっている。
 
; アルゼンチン
 
: 首都ブエノスアイレスの地下鉄は[[メトロビアスS.A.]]による運営で、現在は6路線が存在する。開業期の木造車両、その後の各種新造車のほか、日本の地下鉄の中古車両(元営団500形、元名古屋市交通局250形など)が使用されている。2015年以降、新車両の導入や駅のリニューアルが進められている。
 
 
 
=== アジア ===
 
[[アジア]]で最初に地下鉄が走ったのは日本である。日本では大都市部に人口が密集しており、地下鉄を建設するには都合の良い都市構造であるため、特に地下鉄路線が盛んに作られる。アジアの地下鉄は[[20世紀]]後半以降に飛躍的に発展したが、これは交通渋滞緩和を目的とした地下鉄建設が主流であったためである。第二次世界大戦後の独立や経済成長などによって[[都市化]]が進み、地下鉄の需要が高まった。また、日本や[[石油産出国]]などを除いた場合、[[政府開発援助]]などによって建設された路線の割合が高いというのも特徴のひとつである。
 
; 日本
 
{{Main|日本の地下鉄}}
 
[[File:Tokyo metro 16000.JPG|thumb|[[東京地下鉄|東京メトロ]][[東京メトロ千代田線|千代田線]][[東京メトロ16000系電車|16000系]]]]
 
: 本格的な地下鉄としては[[1927年]]([[昭和]]2年)[[12月30日]]に「[[東京地下鉄道]]」により、現在の[[東京メトロ銀座線|銀座線]]の[[浅草駅]]と[[上野駅]]の区間が開通したのが最初である。この地下鉄銀座線は[[ブエノスアイレス地下鉄]]をモデルとしている。[[1933年]](昭和8年)[[5月20日]]には初めての公営地下鉄として[[大阪市営地下鉄御堂筋線]]の[[梅田駅 (大阪市高速電気軌道)|梅田駅]]と[[心斎橋駅]]の区間が開通した。それら以前にも、1915年([[大正]]4年)には[[東京中央郵便局]]と[[東京駅]]の間の地下を走行する郵便物輸送専用の地下鉄が存在していた。
 
: [[大阪市]]では戦時中も資材不足に苦しみながらも[[1942年]](昭和17年)まで路線の延伸が進められた。第二次世界大戦後は大阪市のほか、1957年開業の[[名古屋市営地下鉄東山線]]を皮切りに、公営[[路面電車]]が走っていた[[政令指定都市]]<ref>[[名古屋市]]・[[東京都]]・[[札幌市]]・[[横浜市]]・[[神戸市]]・[[京都市]]・[[仙台市]]など。他に政令指定都市では[[福岡市]]にも市内路面電車があったが公営ではなく、[[西日本鉄道|西鉄]]の[[西鉄福岡市内線|福岡市内線]]であった。</ref>での代替交通手段として、公営地下鉄の建設・拡充が進んだ。背景には、渋滞の深刻化に伴い路面電車の定時運行が難しくなったことがあるとされる。1980年代後半頃<ref>開業は1990年代以降。</ref>から、建設費圧縮のため[[リニアモーター]]による[[ミニ地下鉄]]も一部で建設されている。
 
; 中華人民共和国
 
[[File:The train of Airport Line, Beijing Subway.JPG|thumb|[[北京地下鉄]][[北京地下鉄機場線|機場線]][[3号航站楼駅]]]]
 
: [[1969年]]に[[北京市|北京]]で地下鉄が開業した。しかし地下鉄の整備は[[1978年]]の改革・開放政策まで十分には行われなかった。1980年代以降、外資の導入による近代化政策のもと都市部において地下鉄の建設が行われた。[[上海市|上海]]では1990年代以降の相次ぐオフィスビルの建設により地下鉄の路線網の拡充が急務となっていた。このため中国の地下鉄は、国産技術を主体とした[[北京地下鉄]]などの北方グループと外国技術を主体とした[[上海地下鉄]]などの南方グループに大別される。現在は前記の北京や上海のほか[[天津市|天津]]、[[広州市|広州]]、[[深セン市|深圳]]、[[東莞市|東莞]]、[[南京市|南京]]、[[武漢市|武漢]]、[[成都市|成都]]、[[瀋陽市|瀋陽]]、[[重慶市|重慶]]、[[西安市|西安]]、[[杭州市|杭州]]、[[青島市|青島]]、[[大連市|大連]]、[[長春市|長春]]などの主要都市で開通している。また[[合肥市|合肥]]や[[太原市|太原]]、[[蘭州市|蘭州]]などで地下鉄の建設や計画が進められている。
 
; [[台湾]]([[中華民国]])
 
{{Main|捷運}}
 
: 「[[捷運]]」([[英語|英称]] は'''MRT'''(Mass Rapid Transit))と呼ばれる都市高速鉄道網が存在する(一部は高架式の[[新交通システム]])。現在、[[台北市|台北]]地区を中心に走る'''[[台北捷運]]'''(TRTC, Metro Taipei)と[[高雄市|高雄]]地区に走る'''[[高雄捷運]]'''(KRTC, Kaohsiung Rapid Transit Corp)と'''[[桃園捷運]]'''(Taoyuan Metro)が開業している。[[台中市]]・[[台南市]]・[[新竹市]]も、捷運の建設が計画中である。
 
;[[ファイル:MTR Hong Kong K-Stock train.JPG|サムネイル|香港[[香港MTR|MTR]]の様子]]
 
;[[香港]]
 
[[ファイル:Central MTR Octopus gate.jpg|サムネイル|世界で初めて非接触型の軌道系交通カード『[[八達通|オクトパスカード]]』 (香港[[中環駅|セントラル駅]]での改札機)]]
 
{{Main|香港MTR}}
 
: [[香港特別行政区|香港]]では[[1970年代]]のイギリス統治時代より[[香港MTR|MTR]]が運営され、[[1979年]]の[[九龍]]地区の開通を皮切りに現在でも郊外路線を中心として新線が継続的に建設されている。[[1997年]]には世界で初めて非接触型の軌道系交通カード『[[八達通|オクトパスカード]]』を導入したほか、[[1998年]]には[[香港国際空港]]から市街間の[[空港連絡鉄道]]を開通させている。また運営会社の[[香港鉄路有限公司]](MTRC)は、イギリス、スウェーデン、アイルランド、オーストラリアや中国の地下鉄建設への投資や運営提携なども行っている。
 
; [[大韓民国|韓国]]
 
{{Main|韓国の地下鉄}}
 
: [[ソウル特別市|ソウル]]で、[[1974年]]に初の地下鉄路線が開業して以来、およそ30年の間に[[釜山広域市|釜山]]・[[大邱広域市|大邱]]・[[仁川広域市|仁川]]・[[光州広域市|光州]]・[[大田広域市|大田]]といった地方都市でも開業した。日本からの政府開発援助・技術援助などを活用して多くの路線が整備されている。北朝鮮との準戦時体制にある韓国では、有事の際の避難所として有効に使える地下空間の利用が盛んで、特に首都のソウルでは地下街と共に大規模な路線網が形成されている。韓国では、ほとんどの地下鉄が各地方自治体が出資する公営企業体が運営している。ただし、近年では民営、半民営の地下鉄も増えつつある。
 
; 北朝鮮{{Main|平壌地下鉄}}
 
 
 
: [[1973年]]開通の千里馬線、1978年開通の革新線の二路線がある。ソ連の技術援助により建設されたことから、東欧の地下鉄と類似しており、核シェルターの機能もあるため地下100メートル付近に建設されている。また社会主義建設の誇示する目的で、駅構内は豪華な装飾が施されているほか、駅名が北朝鮮の革命思想に基づいたものであるなど、政治的プロパガンタ色が強いという特色がある。
 
; シンガポール
 
: [[1987年]]より[[マス・ラピッド・トランジット (シンガポール)|MRT]]が[[SMRTコーポレーション|SMART]]により運営されており、現在でも新線建設や路線延伸が進められている。離島を除くシンガポール全土(主にシンガポール島)を網羅しているほか、[[シンガポール・チャンギ国際空港]]と市街間との空港連絡鉄道の役割を持っている。
 
; マレーシア
 
: 首都[[クアラルンプール]]で[[1996年]]に開業した[[ラピドKL]](MRT)は、中心部は地下区間となっている。
 
; [[タイ王国|タイ]]
 
: [[2004年]]に首都の[[バンコク]]で初めての地下鉄[[バンコク・メトロ]](ブルーライン)が開通した。この建設費は、そのほとんどを日本からの[[借款|円借款]]により賄った。[[2016年]][[8月6日]]には新路線であるパープルラインが開業したが、この路線は全区間高架である。それに合わせてブルーラインは延伸工事が行われ、将来的には6の字型の路線となる。なお、パープルラインの車両は全て日本の[[総合車両製作所]]で製造された<ref>{{Cite news|url=http://www.newsclip.be/article/2015/09/22/26950.html|title=日本製車両がタイに到着、バンコク都市鉄道向け|newspaper=newsclip.be|date=2015-09-22|accessdate=2015-09-27}}</ref>。
 
; インド
 
: [[1984年]]に[[コルカタ]]でインド初の地下鉄が開業した。その後、[[2002年]]には[[デリー]]でも[[デリーメトロ]]が建設された。前述の通り日本などの先進国から技術などの開発援助が行われたのが特徴である。デリーメトロはインド最大の都市鉄道網となっている。2010年代には急速に主要都市でも整備が進み、[[チェンナイ]]、[[バンガロール]]、[[グルグラム]]、[[ムンバイ]]、[[ハイデラバード_(インド)|ハイデラバード]]、[[ジャイプル]]、[[コーチ_(インド)|コーチ]]、[[ラクナウ]]に地下鉄が開業している。
 
; イラン
 
: [[1999年]]に[[テヘラン]]で運行が開始された[[テヘラン・メトロ]]は、7路線を持つ鉄道網となっている。2010年代に入り主要都市で建設が進み、[[マシュハド]]、[[シーラーズ]]、[[イスファハーン]]、[[タブリーズ]]で運行を開始している。
 
; ベトナム
 
: [[2018年]]に[[ハノイ]]で運行が開始される。また、[[ホーチミン市]]でも[[2020年]]の運行開始に向けて建設が進められている。これらの建設には日本からの開発援助が行われている。
 
 
 
=== アフリカ ===
 
[[アフリカ]]は第二次世界大戦後の[[1960年]]ごろまで多くが欧州先進国の植民地であったが、その間地下鉄は建設されなかった。
 
 
 
[[2010年]]までは、地下鉄が存在する都市は[[エジプト]]の首都である[[カイロ]]のみであった([[カイロ地下鉄]]を参照のこと)。エジプトでは痴漢対策および宗教上の観点から女性専用車両が導入されている。
 
 
 
[[アルジェリア]]の首都である[[アルジェ]]では、[[2011年]][[11月1日]]より、[[アルジェ地下鉄]]の営業運転が開始されている<ref>[http://www.jetro.go.jp/world/africa/biznews/4ec097f8beeb0 アルジェでアフリカ2番目の地下鉄が開通 (アルジェリア) - JETRO 通商弘報]</ref>。
 
 
 
[[ナイジェリア]]の[[ラゴス]]では、[[2018年]]の開業を目指し建設中である。また、[[エチオピア]]の首都[[アディスアベバ]]では、地下鉄建設は計画の段階である。
 
 
 
=== オセアニア ===
 
[[メルボルン]]の[[シティーループ]]が地下鉄道都市交通として機能している。
 
 
 
=== 特殊な地下鉄 ===
 
*アメリカ合衆国の首都・ワシントンD.Cには[[アメリカ合衆国議会議事堂]]と議員会館を結ぶ議員・議会関係者専用地下鉄である[[アメリカ合衆国議会地下鉄]]がある<ref>[http://www.clouse.org/capitol1.html]{{リンク切れ|date=August 2017}}</ref>。
 
*[[モスクワ]]には政府要人輸送用の地下鉄で、一般利用されていない[[:en:Moscow Metro 2|モスクワ・メトロ2]]があると言われている。
 
*[[ジョージア (国)|ジョージア]]の[[アブハジア自治共和国]]・[[グダウタ地区]]の[[ノヴィ・アフォン]]には世界で唯一の観光用地下鉄、[[ニュー・アトス・ケイヴ鉄道|ノヴィ・アフォン地下鉄]]が存在する<ref>http://metro-novyafon.narod.ru/</ref>。
 
 
 
== 脚注 ==
 
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{{Reflist|30em}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
*社団法人日本地下鉄協会編 『最新 世界の地下鉄』ぎょうせい、2005年5月、ISBN 4-324-07471-2
 
*社団法人日本地下鉄協会編 『世界の地下鉄 115都市の最新情報』山海堂、2000年6月、ISBN 4-381-01422-7
 
*[[中村建治]]『メトロ誕生〜地下鉄を拓いた早川徳次と五島慶太の攻防』[[交通新聞社]]、2007年7月、ISBN 978-4-330-93607-9
 
*谷川一巳著『地下鉄のフシギ!?』山海堂、1999年6月、ISBN 4-381-10335-1
 
 
 
== 関連項目 ==
 
{{Commons&cat|Rapid transit|Rapid transit}}
 
*[[地下鉄一覧]]
 
*[[バス・ラピッド・トランジット]]
 
*[[メガプロジェクト]]
 
*[[w:Rapid transit technology|Rapid transit technology]]
 
  
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2019/4/26/ (金) 23:09時点における最新版

地下鉄道(ちかてつどう)、略して地下鉄(ちかてつ)

地下鉄道の省略語。都市鉄道の地下トンネル区間を意味するが,現在は地下トンネル区間の比較的多い鉄道全体を意味することが多い。都市市街部で鉄道用地取得が困難なため,やむなく地下にもぐった鉄道形態で,建設費は高価であるが,用地買収の手数が少く,沿線の騒音を小さくすることができる。 1863年ロンドンで初めて蒸気鉄道として建設され (1890電化) ,19世紀末から 20世紀にかけて世界の大都市に普及,電車運転方式が確立した。日本でも東京,大阪,名古屋,京都,神戸,札幌,横浜,福岡,仙台などにある。



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