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(当て字の例)
 
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前者では、侮蔑・揶揄などの意味で同じ発音で「悪い意味」のある字を使ってできた当て字も存在する。
 
前者では、侮蔑・揶揄などの意味で同じ発音で「悪い意味」のある字を使ってできた当て字も存在する。
 
== 当て字の例 ==
 
日本語においては、漢字と[[仮名 (文字)|かな]]の混用によって語の切れ目を表示するため、かつては[[借用語]]を含め[[自立語]]は全て漢字表記する傾向があった。このため、[[表音文字]](かな)で転写できるにもかかわらず、[[固有名詞]]の借用語を中心に漢字による当て字の事例が大量に存在する。[[固有名詞]]の語形は[[中国語]]からの借用が多いが、日本語独自の例も見られる(中国語については[[中国語における外国固有名詞の表記]]も参照)。
 
 
*中国語と同形の例:[[ギリシャ]] - 「{{読み|希臘|ギリシャ}}」、[[メキシコ]] - 「{{読み|墨西哥|メキシコ}}」、[[キリスト]] - {{読み|[[基利斯督]]|キリスト}}({{読み|[[基督]]|キリスト}})<!--四史攸編耶穌基利斯督福音之會編-->など。
 
*日本語独自の語形の例:[[ドイツ]] - 「{{読み|独逸|ドイツ}}」「{{読み|独乙|ドイツ}}」(中国語表記は「徳意志」)、[[ベルギー]] - 「{{読み|白耳義|ベルギー}}」(中国語表記は「比利時」)など。中国語では用いられなくなった形が日本語に残存したものが多い。
 
 
また、これとは別に音訓を混用して表記するものもある。
 
*日本における音訓混用の語形の例:[[ウルグアイ]] - 「{{読み|宇柳'''貝'''|ウルグアイ}}」「{{読み|宇柳'''具'''|ウルグアイ}}」(前者は当て字の一つ、後者はそれから変化したもの('''貝'''と'''具'''の書き誤り))、[[パラグアイ]] - 「{{読み|巴羅貝|パラグアイ}}」など
 
 
このほか、自立語に対する当て字の例には以下のようなものがある。
 
 
*{{読み仮名|出鱈目|でたらめ}}
 
*{{読み仮名|滅茶苦茶|めちゃくちゃ}}
 
*{{読み|珍紛漢紛|ちんぷんかんぷん}}・{{読み|珍糞漢糞|ちんぷんかんぷん}}・{{読み仮名|陳奮翰奮|ちんぷんかんぷん}}
 
*{{読み仮名|珈琲|[[コーヒー]]}}
 
*{{読み|咖喱|カレー}}・{{読み仮名|咖哩|[[カレー]]}}
 
*{{読み|目出度い|めでたい}}・{{読み仮名|芽出度い|めでたい}}
 
*{{読み仮名|型録|[[カタログ]]}}
 
*{{読み仮名|出来る|できる}}
 
*{{読み仮名|多分|たぶん}}
 
*{{読み仮名|滅多|めった}}
 
*{{読み仮名|商鋪|ショップ}}
 
<!--{{safesubst:ルビ|3=非表示|銀杏|イチョウ|表示}}これは熟字訓では?-->などがある。
 
 
また、[[夏目漱石]]が、当て字をよく用いていた作家として有名である。
 
*{{読み仮名|沢山|たくさん}}
 
*{{読み仮名|場穴|ばけつ}}
 
*{{読み仮名|兎に角|とにかく}}
 
*{{読み仮名|浪漫|ろうまん}}
 
 
現在の日本語では、漢字に加え[[平仮名|ひらがな]]と[[片仮名|カタカナ]]の混用によって語の切れ目を表示するようになり、[[外来語]]はカタカナ表記されることが通例になっている。
 
 
上記の例からも分かるとおり、漢字の仮借による当て字は、必ずしも字義を無視するとは限らず、特定の意味をもつ字を意図的に選ぶことがある。人名に漢字を当てる場合は特にこの傾向が強い。また逆に、特定の字(自立語的な意味では使われない字が多い)を特定の音を表す当て字用の文字として多く使う(例えば「亜」「阿」 - 「ア」、「斯」 - 「シ」「ス」、「加」 - 「カ」など)ことによって、意味の喚起を抑えようとする用例も見られる。また、当て字の使用が字義に移った例もある(例:「欧」は本来「体を曲げてかがむ」という意味であり、「吐く・もどす」「殴る」「うたう」の意味にも用いられたが、現在ではこれらの用例はほとんどなく、当て字としての「ヨーロッパ」の意味で用いられている)。
 
 
<!-- 以下は固有名詞の為、一応コメントアウト
 
[[中国語]]で使われている漢字表記と違う場合もある。
 
 
=== ア行 ===
 
*[[アイルランド]] - 愛蘭(中国語表記は「愛爾蘭」)
 
*[[アジア]] - 亜細亜
 
*[[アテネ]] - 雅典
 
*[[アフリカ]] - 阿弗利加(中国語表記は「阿非利加」・「非洲」)
 
*[[アメリカ]] - 亜米利加(中国語表記は「美利堅」・「美洲」)
 
*[[アラビア]] - 亜剌比亜(中国語表記は「阿拉伯」)
 
*[[アルゼンチン]] - 亜爾然丁(中国語表記は「阿根廷」)
 
*[[アルタイ山脈]] - 阿爾泰山脈・阿勒泰山脈
 
*[[イギリス]] - 英吉利
 
*[[イタリア]] - 伊太利亜・伊太利(中国語表記は「義大利」・「意大利」)
 
*[[イラン]] - 伊蘭・義蘭(中国語表記は「伊朗」)
 
*[[イングランド]] - 英蘭(中国語表記は「英格蘭」)
 
*[[インド]] - 印度
 
*[[ウィーン]] - 維納
 
*[[ウラジオストク]] - 浦塩斯徳
 
*[[エジプト]] - 埃及
 
*[[オーストラリア]] - 濠太剌利(中国語表記は「澳大利亜」・「澳洲」だが、韓国語でも「濠州」の略を使う)
 
*[[オーストリア]] - 墺太利(中国語表記は「奧地利」)
 
*[[オランダ]] - 和蘭・阿蘭陀(中国語表記は「荷蘭」)
 
 
=== カ行 ===
 
*[[カナダ]] - 加奈陀(中国語表記は「加拿大」)
 
*[[カリフォルニア]] - 加利福尼亜
 
*[[ガイアナ]] - 害孔(中国語表記は「圭亞那」・「蓋亞那」)
 
*[[カンボジア]] - 柬埔寨
 
*[[キューバ]] - 玖馬(中国語表記は「古巴」)
 
*[[ギリシャ]] - 希臘
 
*[[キリバス]] - 基里巴斯
 
*[[コロンビア]] - 哥倫比亜
 
 
=== サ行 ===
 
*[[サイゴン]] - 西貢
 
*[[シカゴ]] - 市俄古(中国語表記は「芝加哥」)
 
*[[シベリア]] - 西比利亜(中国語表記は「西伯利亞」)
 
*[[バタヴィア|ジャガタラ]] - 咬{口+留}吧(現[[ジャカルタ]]、(中国語表記は「雅加達」))
 
*[[ジャワ]] - 爪哇・闍婆
 
*[[シンガポール]] - 新嘉坡(中国語表記は「新加坡」、日本軍占領期にはシンガポールを[[昭南市]]と改称していた)
 
*[[スイス]] - 瑞西(中国語表記は「瑞士」)
 
*[[スウェーデン]] - 瑞典
 
*[[スコットランド]] - 蘇格蘭
 
*[[スペイン]] - 西班牙
 
*[[セイロン]] - 錫蘭(現[[スリランカ]](中国語表記は「斯里蘭卡」))
 
 
=== タ行 ===
 
*[[タイ王国|タイ]] - 泰
 
*[[チベット]] - 西蔵
 
*[[チリ]] - 智里・智利
 
*[[デンマーク]] - 丁抹(中国語表記は「丹麦」)
 
*[[ドイツ]] - 独逸・独乙(中国語表記は「徳意志」・「徳国」だが、韓国語でも「独逸」使う)
 
*[[トビリシ]] - 梯弗里斯
 
*[[トルコ]] - 土耳古(中国語表記は「土耳其」)
 
*[[トンガ]] - 東加
 
 
=== ナ行 ===
 
*[[ナウル]] - 瑙魯
 
*[[ニュージーランド]] - 新西蘭
 
*[[ニューヨーク]] - 紐育(中国語表記は「紐約」)
 
 
=== ハ行 ===
 
*[[パナマ]] - 巴奈馬(中国語表記は「巴拿馬」)
 
*[[バヌアツ]] - 瓦努阿図
 
*[[ハノイ]] - 河内
 
*[[パラオ]] - 帛琉
 
*[[ハリウッド]] - 聖林(中国語表記は「好萊塢」)
 
*[[パリ]] - 巴里(中国語表記は「巴黎」)
 
*[[ハワイ]] - 布哇(中国語表記は「夏威夷」)
 
*[[ハンガリー]] - 洪牙利・匈牙利
 
*[[バンコク]] - 盤谷・曼谷
 
*[[ビルマ]] - 緬甸(現[[ミャンマー]])
 
*[[ブータン]] - 不丹
 
*[[フィジー]] - 斐済
 
*[[フィリピン]] - 比律賓(中国語表記は「菲律賓」)
 
*[[フィンランド]] - 芬蘭
 
*[[ブラジル]] - 伯剌西爾(中国語表記は「巴西」)
 
*[[フランス]] - 仏蘭西(中国語表記は「法蘭西」・「法国」)
 
*[[ペルー]] - 秘露(中国語表記は「秘魯」)
 
*[[ベルギー]] - 白耳義(中国語表記は「比利時」)
 
*[[ペルシャ]] - 波斯
 
*[[ベルリン]] - 伯林(中国語表記は「柏林」)
 
*[[ポーランド]] - 波蘭
 
*[[ボリビア]] - 暮利比亜・保里備屋・玻里非・波力斐(中国語表記は「玻利維亜」)
 
 
=== マ行 ===
 
*[[マルセイユ]] - 馬耳塞(中国語表記は「馬賽」)
 
*[[マレーシア]] - 馬来西亜
 
*[[メキシコ]] - 墨西哥
 
*[[メリケン]]=アメリカ - 米利堅(中国語表記は「美利堅」)
 
*[[モスクワ]] - 莫斯科
 
*[[モンゴル]] - 莫臥児(中国語表記は「蒙古」)
 
 
=== ヤ行 ===
 
*[[ヤンゴン]] - 仰光
 
*[[ヨーロッパ]]- 欧羅巴(中国語でも「欧洲」の略を使う)
 
 
=== ラ行 ===
 
*[[ラオス]] - 老檛(中国語表記は「寮国」・「老挝」)
 
*[[ラングーン]] - 蘭貢
 
*[[ローマ]] - 羅馬
 
*[[ロシア]] - 露西亜(中国語表記は「俄羅斯」・「俄国」)
 
*[[ロンドン]] - 倫敦
 
 
=== ワ行 ===
 
*[[ワシントンD.C.|ワシントン]] - 華盛頓
 
-->
 
=== 読みの意味に漢字を当て字した例 ===
 
古くから[[漢語]]に[[大和言葉]]が[[熟字訓]]として当てられてきたが、大和言葉から[[和製漢語]]が生まれることもあった。例えば、「ものさわがし」に「物騒」、「よりあい」に「寄合」、「よりみち」に「寄道」<ref name="ayamareru">[http://books.google.co.jp/books?id=gRIjCULboygC&pg=frontcover 誤れる文字文章] 大町桂月 1915年</ref>などである<!--候文由来か? 漢文にも使われたか?-->。なお、誤解や漢文方言などの定着、漢語及び日本語の単語の意味の変遷なども合わさって、和語と漢字の対応には曖昧さがあった。
 
 
<!--TODO: 歌舞伎-->
 
 
明治から始まる[[言文一致]]と[[文明開化]]による西洋文化の流入によって、欧文音写したカタカナにその意味から漢字を当て字する例も増えた。借用語を和語として扱い、[[熟字訓]]を[[和魂洋才]]したものとも言える。例えば、大正においては、
 
*{{読み仮名|接吻|キッス}}、{{読み仮名|厨夫|コック}}、{{読み仮名|背景|バック}}、{{読み仮名|覇王樹|サボテン}}、{{読み仮名|頁|ページ}}、{{読み仮名|骨牌|カルタ}}<ref name="hakushu">[http://books.google.co.jp/books?id=95HbGZtHdQ4C&pg=frontcover 白秋詩集] [[北原白秋]] 1920年初版 1924年第21版</ref>。
 
*{{読み仮名|憂鬱症|ヒステリィ}}、{{読み仮名|情調|ムウド}}、{{読み仮名|憂鬱|メランコリイ}}、{{読み仮名|郷愁|ノスタルヂャア}}、{{読み仮名|衝撃|ショック}}、{{読み仮名|異国趣味|エキゾチック}}<ref name="hakushu"/>
 
*{{読み仮名|麦酒|ビイル}}、{{読み仮名|火酒|ウォッカ}}、{{読み仮名|小酒杯|リキュグラス(リキュールグラス)}}<ref name="hakushu"/>
 
*{{読み仮名|外廊|ヴェランダ}}、{{読み仮名|露台|バルコン(バルコニー)}}、{{読み仮名|傾斜面|スロウプ}}、{{読み仮名|食卓布|テエブルクロース}}、{{読み仮名|帷|カーテン}}、{{読み仮名|喞筒|ポムプ}}<ref name="hakushu"/>
 
*{{読み仮名|緑玉|エメラルド}}、{{読み仮名|白金|プラチナ}}、{{読み仮名|石鹸|シャボン}}<ref name="hakushu"/>
 
*{{読み仮名|珈琲店|カフェ}}、{{読み仮名|牛乳|ミルク}}<ref name="hakushu"/>
 
*{{読み仮名|短艇|ボート}}、{{読み仮名|円弧灯|アークとう}}、{{読み仮名|洋灯|ランプ}}、{{読み仮名|裁縫機械/裁縫器|ミシン}}<ref name="hakushu"/>
 
*{{読み仮名|西洋手拭|タヲル}}、{{読み仮名|絹帽|シルクハット}}、{{読み仮名|羽毛頚巻|ボア}}、{{読み仮名|洋杖|ステッキ}}<ref name="hakushu"/>
 
*{{読み仮名|二声楽|デュエット}}、{{読み仮名|小歌|リイド}}、{{読み仮名|愁夜曲|[[ノクチュルヌ|ノクチュルノ]]}}<ref name="hakushu"/>
 
などが使われている。21世紀においても{{読み仮名|竜頭|リューズ}}が使い続けられている。
 
 
また、[[白話訓読]]において文脈に合わせてルビを振るのと同じように、和文においても文脈に合わせて当て字が行われていた。例えば、{{読み仮名|生活|くらし}}、{{読み仮名|衰弱|つかれ}}、{{読み仮名|爆発|はじか}}せ、{{読み仮名|灯火|あかり}}、{{読み仮名|洋書|ほん}}、{{読み仮名|懐中時計|とけい}}、{{読み仮名|墳墓|はか}}、{{読み仮名|肥満女|ふとっちょ}}、{{読み仮名|西洋操人形|あやつりにんぎょう}}、{{読み仮名|物語|レジェンド}}、{{読み仮名|並木道|アベニュ}}、{{読み仮名|北極光|オーロラ}}、{{読み仮名|湯沸|サモワル}}<ref name="hakushu"/>などがある。
 
 
なお近年、創作物におけるキャラクター名や、いわゆる[[キラキラネーム]]にもしばしば難解な当て字が用いられる。
 
  
 
== 脚注 ==
 
== 脚注 ==

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ファイル:SeimiKaisouChemistry.jpg
宇田川榕菴が著した「舎密開宗」の化学実験図。ガスなどの外来語には、当て字を使って漢字表記をした上で振り仮名をつけている。

当て字(あてじ、宛字、充て字)とは、の本来の用法を無視して、当座の用のために異なる語の表記に転用した漢字などの文字。字を当てるのではなく、代わりとなる字を充てるので、「充て字」と表記されることもある。

概要

当て字は、「(当座の)字を当てる」という日本語表現由来した概念であり、通例は漢字の転用について言う[1]。具体的には、

  • 漢字の字義を無視し、読み方のみを考慮して漢字を当てる場合。狭義にはこれのみを指す。借字ともいう[2]仮借を参照。
  • 漢字の読み方を無視し、字義のみを考慮して漢字を当てる場合。広義にはこれを含む解釈もある。なお六書の「転注」がこれを指すと考える学説がある。日本語の熟字訓も含まれる。

の両者をいう。

また、漢字を使う中国などでは、文字の画数が多く煩雑で[3]、正しい書き方が思い出せない場合、同音で簡単に書ける漢字や数字で代用することが行われる。中国語ではこの種の当て字を「白字」(バイズー)と呼ぶが、これも仮借の一種である。

当て字には、『学年別漢字配当表』(教育漢字)や『常用漢字表』に掲載されていない漢字や読みを使うものが多く、その場合、マスコミ等では法令の定めにより使用することを原則として避けている。

前者では、侮蔑・揶揄などの意味で同じ発音で「悪い意味」のある字を使ってできた当て字も存在する。

脚注

  1. 漢字以外の文字を使う場合もある。例えば現代中国語は原則として漢字のみで表記するが、最近の借用語の中にはローマ字を語の表記の一部に用いるものがある(例:卡拉OK拼音: kǎlā'ōkê̄)=カラオケ)。これも「当て字」と見なすことが可能である。
  2. 明鏡国語辞典による
  3. 例えば、香港茶餐庁ではレモン入りのコーラ「檸樂」(広東語でレンロク)を類似音の数字、漢数字「0六」(レンルク)と伝票に書くことがよく行われる。

関連項目