政府

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政府(せいふ、: government, : rectio)とは、近代国家において国家もしくは国家の一部分となる地方における統治機構(国家の意思決定及び統治のための組織)の総体。

広義には、統治に関わる立法司法行政すべての機関および機構の総称を指し、狭義には、行政を司る内閣とそれに付属する行政機関執行機関)から成る行政府を意味する。それぞれ、アメリカイギリスなどの英米法系の国家では広義の意味で、ドイツ日本などの大陸法系の国家[注 1]では狭義の意味で、用いられる語である[1]。なお、マルクス主義の立場からは「支配階級の政治委員会」に位置付けられる。

明治時代以降の日本政府の関係者(行政関係者)が「日本国政府」を指す場合に、省略して「政府」と言う場合がある[注 2]

政治学上の概念

政府の分類について

政治学では、政体(国家の政治形態)の類型や分類をつくることは長きにわたり目標でありつづけた。というのも、政治システムの類型というのは明快なものではなかったからである[2]政治学の中でも、特に比較政治学国際関係論の分野で重要である。

表面的には、政府の形態がどのようなものか分類することは容易であるかのようにみえる。というのは、どんな政府であれ一応、外部に対して謳っている“公式の形態”というのはあるからである。例えば、「アメリカ合衆国は連邦共和制国家で、かつてのソビエト連邦社会主義共和制国家である」などと言ってしまうことはできるわけである。しかし、政府自体が言っていることには客観性が無く、KopsteinやLichbachが指摘しているように、政体の定義を行うということは油断がならないことなのである[3]。例えば、「選挙は民主主義の特徴だ」などとされることがあるが、旧ソ連で行われていた実際の選挙は "自由かつ公正" ではなく、一党制の下に実施された。この例からもわかるように、実際的な分類をするならば、選挙が行われていたとしても、それを根拠に「民主的な政府」と分類することはできないのである。[注 3]

政府の形態を決定づけることの難しさは、そもそも政治体系の多くが社会経済的な運動を基としており、ある社会経済的運動を旗印として掲げる特定の政党によって、それらの運動が政府内に持ち込まれていることにもある。そして、社会経済的運動というのは、どれも政治的イデオロギーを含んでいる。それらの運動を推進する者が政権を取った場合や、政党が特定の形態の政府と緊密な関係を持つ場合は、それらの運動も含めて政府の形態とみなされることにも成り得る。

さらに理解を難しくしている背景にあるのは、政治的イデオロギーと関連する統治の形態に対して、一般的に見解が一致しない場合や、合理的で専門的な定義があっても故意に「歪曲または偏見」として捉えられる場合であり、これらは現代の政治学の本質のためである。例えば、アメリカ合衆国では「保守主義」を意味するところが、他の国や地域で使われる語義とは、その用法において、ほとんど共通しないことである。2011年にRibuffoが指摘したように、「いま、米国人が『保守主義』と呼んでいるものは、世界のほとんどの地域で自由主義または新自由主義と呼んでいるものに他ならない[4]」のである。1950年代以降、アメリカ合衆国の保守主義は第一に共和党と結びついてきた。しかし、人種差別English版の時代には、南部の民主党員English版の多くは、むしろ保守的な人々であった。これらの人々は保守連合English版で重要な役割を演じ、1937年から1963年まで連邦議会を支配下に置いた。[5]

世界のすべての国々は、次に挙げる少なくとも2つ(ないしそれ以上)の特質を合わせた統治機構により統治されている。(例えば、アメリカ合衆国は真の資本主義社会ではない。というのも、実際には政府は社会的サービスを市民に提供しているからである。)加えて、政府の類型に対する人々の意見は様々である(例えば、アメリカ合衆国は民主国家というよりも金権国家である、という議論があり、米国は富により支配されていると信じる者もいる。)[6]。いかなる政府にも、常に(白黒のつかない)不確かさが存在する。最もリベラルな民主主義国家でさえ、対抗する政治活動をある一つの範囲または別のもう一つに制限する。一方で、最も専制的な独裁国家でさえ、幅広い支持基盤を組織するに違いない。したがって、各々の政府を分類・整理して細分化された区分に当てはめようとすることは困難を極める。

政府の弁証法的形態

古代ギリシア哲学者プラトンは、対話篇の中で国制の5分類を提示した。これらは、アリストクラティア(優秀者支配制)、ティモクラティア(名誉支配制)、オリガルキア(寡頭制)、デモクラティア(民主制)、そしてテュランニス(僭主独裁制)である。プラトンはこれらの各国制に対して人を割り当て、これらが意味するところを例証した。例えば、専制的な人は僭主政治を代表するであろう。これらの5つの国制分類は、一番上のアリストクラティアから一番下のテュランニスへと降りるにつれて堕落していく。

国家』の中で、プラトンはソクラテスと多くの時間を過ごし、彼がグラウコンやアデイマントスと共に創設した都市についての会話で述べた。対話はついに、4つの国制について考えるようになった。この4つは現実に存在し、連続して互いに堕落するに至る。すなわち、ティモクラティア、オリガルキア、デモクラティア、そしてテュランニスである。

代表的な政府の形態と分類

政府は、様々な基準に基づいて分類されるが、この節ではその代表的な例を示す。

  • 議院内閣制国家の行政府において、内閣に参与する議員(首相閣僚等)の属する政党(政権与党)の様態による種別
    • 一党独裁制(単一の政党あるいはそれに準ずる)
    • 少数党政府English版(議会では少数派であるが、多数の議員に支持された政党あるいは政治集団が政権を握る)
    • 多数党政府English版(議会で絶対多数の議席を占める政党あるいは政治集団が政権を握る)
    • 連立政府(単独では絶対多数を占めることができない、2つないしそれ以上の複数の政党が政権を握る)
    • 翼賛政治体制(議会を占めるすべての政党および議員が政権に集中する)

経済における政府の機能

政府の経済的役割は、資源配分の調整(公共財公共サービスの供給)、所得の再分配累進課税社会保障)、景気の安定化、の3つに分類される[7]

政府の活動は、収入(歳入)面と支出(歳出)面の両方で構成されており、どちらも経済全体の資源配分・所得分配に大きな影響を及ぼす[8]。政府の支出は、教育・福祉などの政府消費と呼ばれるサービス道路・港湾などの公共施設を建設する公共投資から構成されている[9]

政府の財源には、1)税金、2)国債、3)貨幣発行益、の3つがある[10]。政府の収入の基本となるのは税収であり、政府は様々な税金を課すことにより、政府活動のための資金を確保する[8]経済学者岩田規久男は「政府の仕事とは公共事業を除けば、大部分が消費である。税金と国債の違いは、いま税金を払うか将来税金を払うかという点だけであり、それ以上の違いはない」と指摘している[11]

脚注

  1. ただし、戦後日本国憲法は、大陸法の源流ともいうべきドイツが英米法への移行を企図したように、英米法を指向したもので、警察制度や司法制度に特徴づけられる。このように地方の自治権を尊重する英米法を採用している。
  2. 特に(江戸幕府と対比する文脈などで)明治期の日本の政府を指す場合は「明治政府」と呼ばれることがある。
  3. 類似の例のひとつに、香港での選挙を巡る2014年~2015年の出来事もある。香港での選挙の候補者が、そもそも誰でもなれず、北京の政府の認めた者しか候補者になれないようにされてしまい、学生たちが、非民主的な圧力に抗議し、民主的な選挙を求めて座り込みを行った出来事である。これなども、選挙が形式的に行われたとしても、実態としては特定の勢力に支配されてしまっており「民主的」とはいえない事例のひとつである。

出典

  1. 新村出広辞苑岩波書店、2008年、第六版上巻(あ-そ)。ISBN 978-4-00-080122-5。「【政府】近代国家における統治機構。英米系の国家では、立法・司法・行政の総称だが、ドイツ系の国家と日本では、内閣とその下の行政機構を指す。」
  2. Lewellen, Ted C. Political Anthropology: An Introduction Third Edition. Praeger Publishers; 3rd edition (30 November 2003)
  3. Comparative politics : interests, identities, and institutions in a changing global order, Jeffrey Kopstein, Mark Lichbach (eds.), 2nd ed, Cambridge University Press, 2005, ISBN 0521708400, p. 4
  4. Leo P. Ribuffo, "20 Suggestions for Studying the Right now that Studying the Right is Trendy," Historically Speaking Jan 2011 v.12#1 pp 2–6, quote on p. 6
  5. Kari Frederickson, The Dixiecrat Revolt and the End of the Solid South, 1932–1968, p. 12, "...conservative southern Democrats viewed warily the potential of New Deal programs to threaten the region's economic dependence on cheap labor while stirring the democratic ambitions of the disfranchised and undermining white supremacy.", The University of North Carolina Press, 2000, ISBN 978-0-8078-4910-1
  6. "Plutocrats – The Rise of the New Global Super-Rich and the Fall of Everyone Else" Chrystia Freeland is Global Editor-at-Large at Reuters news agency, following years of service at the Financial Times both in New York and London. She was the deputy editor of Canada's Globe and Mail and has reported for the Financial Times, Economist, and Washington Post. She lives in New York City.
  7. 大和総研 『最新版 入門の入門 経済のしくみ-見る・読む・わかる』 日本実業出版社・第4版、2002年、134-135頁。
  8. 8.0 8.1 伊藤元重 『はじめての経済学〈下〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、33頁。
  9. 伊藤元重 『はじめての経済学〈下〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、33-34頁。
  10. オピニオン 政治経済 国の借金は減っている アベノミクスに増税は必要ない教育×WASEDA ONLINE 2014年12月22日
  11. 岩田規久男 『経済学的思考のすすめ』 筑摩書房、2011年、178-179頁。

関連項目