|
|
| 1行目: |
1行目: |
| − | [[ファイル:Kaiji chopper control.png|thumb|450px|界磁チョッパ制御の回路図]]
| + | {{テンプレート:20180815sk}} __NOINDEX__ |
| − | '''界磁チョッパ制御'''（かいじチョッパせいぎょ）とは[[複巻整流子電動機|複巻電動機]]の分巻界磁電流を[[チョッパ制御|チョッパ]]方式で制御することにより[[回生ブレーキ]]を使用可能とする[[電気車の速度制御|速度制御]]方式である。回生ブレーキが使用できる制御方式には、界磁チョッパ制御登場以前にも直接に直流直巻電動機を制御する[[電機子チョッパ制御]]などがあったが、電機子チョッパ制御は製造コストが高いうえ、起動時では[[電気車の速度制御#抵抗制御|抵抗制御]]で存在していた抵抗損失分がないことによる省電力効果は、回生によるエネルギー回収分と比べて1/10 - 1/20と多くないため、抵抗制御による起動と[[力行]]はそのままに、安価に回生ブレーキを実現するために開発された。
| |
| − | | |
| − | [[1969年]]に、従来使用されてきた[[界磁]]調整器を小容量の[[チョッパ制御|チョッパ]]方式に置き換えるかたちで、[[阪急電鉄]][[阪急2800系電車|2800系]]2847にて長期実用試験が開始され、同年に[[東急8000系電車|東急8000系]]に量産形式として世界で初めて採用された。以来日本では従来から複巻電動機を使用していた会社を中心として[[大手私鉄]]各社への導入が進んだ。
| |
| − | | |
| − | [[日本国有鉄道|国鉄]]でも採用が検討され、[[車体傾斜式車両|振り子式]]試験車両の[[国鉄591系電車|591系試験電車]]を用いた界磁チョッパ制御の試験が行われたが、構造が複雑で[[ブラシ]]・整流子の点検周期の短い複巻電動機に対する保守現場からの反対もあり、結局界磁チョッパ制御は本格採用されることはなかった。
| |
| − | | |
| − | 国鉄で省エネ化が強く求められた1970年代後半には（制御器の製作・保守コストは跳ね上がるが）直巻電動機が使用できる電機子チョッパが201系・203系で採用され、それに続く205系では起動から高速域までの特性により優れる、従来の[[直巻整流子電動機|直巻電動機]]を用いた[[界磁添加励磁制御]]が開発・実用化された。後者の方式はJR初期の新型車両にまで幅広く使われることとなる。
| |
| − | | |
| − | 大手私鉄を中心に、界磁チョッパ制御を採用した車両が多数製作されたが、抵抗制御方式の延長線ゆえに熱損失のデメリットは依然変わらず、[[1990年代]]から[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]が主流となったため、現在では新造される車両に採用されることがなくなった。
| |
| − | | |
| − | == 方式の概要 ==
| |
| − | * [[電気車の速度制御#抵抗制御|抵抗制御・直並列組合せ制御]]で起動・力行する。
| |
| − | * 全界磁定格速度に達した後、分巻界磁側に流れる電流をチョッパ制御することで直巻界磁側に流れる電流を少なくして直巻界磁を弱めて（[[電気車の速度制御#界磁を制御する方法|弱め界磁制御]]）、電機子内での逆[[起電力]]による速度制御を行う。
| |
| − | * 減速時は分巻界磁側に流れる電流をチョッパ制御することで分巻界磁側の電流を大きくして分巻界磁を強めることで、電機子内で逆起電力を発生させて、回生制動を行う。
| |
| − | | |
| − | == 利点・欠点 ==
| |
| − | === 利点 ===
| |
| − | * [[電機子チョッパ制御]]が[[電流]]値の大きい電機子回路を直接制御するのに対し、本方式は容量の小さい分巻界磁電流のみを制御するため、[[半導体]]の容量を小さく抑えることができ、それによる価格面はもちろんのこと、[[誘導障害]]や騒音の面でも優位となる。
| |
| − | * [[回生ブレーキ]]が使用できることから、消費電力量の節減が期待できる。走行エネルギーを効率よく回生できれば直並列制御の起動抵抗損は最高速度のエネルギーに比べて1/18あまりであり（∵エネルギーは速度の2乗比例: （40キロ / 120キロ）^2 = 1/9、抵抗損は並列フルステップ運動エネルギーの1/2、∴1/18）、ごく小さな値なので、高価な大電力半導体を必要としない安上がり、かつ高効率の回生制動方法として[[私鉄]]に広く普及した。
| |
| − | ** 国鉄末期に[[国鉄205系電車|205系]]などに採用された[[界磁添加励磁制御]]は、別電源によって直巻電動機の界磁を制御することで、実質分巻特性を得て（= 特別の分巻巻線が不要）広範囲の回生制動を行う、同一アイディアの抵抗制御車の回生方式である。
| |
| − | * 電流0A（ゼロアンペア）制御を行うことにより、チョッパ制御を行う速度域では力行・制動操作に対する応答が極めて良好であり、これを利用して[[定速運転|定速制御]]を実現することも可能となる（例: [[京成AE形電車 (初代)|京成AE形]]等）。また、力行、惰行、制動の切り替わり時のショックを小さくすることができる。なお、定速制御は界磁チョッパ方式特有のものではなく、分巻電動機と[[磁気増幅器]]（マグアンプ）の組み合わせで[[1960年]]に登場した、「[[人工知能|人工頭脳]]電車（オートカー）」と呼ばれる[[阪急2000系電車|阪急2000系]]などの例がある。
| |
| − | * 分巻界磁電流を増やして逆起電力を高めて、その分[[回生ブレーキ]]の[[回生失効|失効]]速度を低くできる。使用する電動機が複巻電動機なので、回生制動による逆方向電流が直巻界磁巻線を流れて分巻界磁による磁束を減らし、発電電圧（逆起電力）を抑える自己平衡性を持つ。
| |
| − | * 弱め界磁起動をすることで起動時のショックを小さくすることができる。
| |
| − | | |
| − | === 欠点 ===
| |
| − | * 力行時の定引張力領域（起動時からおよそ全界磁定格速度の前後まで）では抵抗制御であるため、抵抗器の発熱による損失は免れない。そのため、エネルギー消費の観点からは、始動抵抗の使用時間・回数の多い用途には適さない。また、電機子チョッパ制御のような連続制御による粘着性能の向上、ならびに加速時の前後衝動の改善は[[バーニア制御|バーニア抵抗制御]]を併用しない限り期待できない。
| |
| − | * 直流複巻電動機は架線電圧が急激に変動した時に、一時的に大きな電流が流れる特性があり、過渡特性がやや悪いため、直流直巻電動機よりもブラシの摩耗が激しく、点検・交換周期が短くなる。
| |
| − | | |
| − | このほかに、低速域で回生ブレーキの効く範囲が狭く、回生「打ち切り」速度が高いという欠点がある。このため、理論上、電力回生効率の点からは電機子チョッパ制御に劣るが、実際の回生効率の優劣は線区ごとの列車運転パターンに左右されるといえよう。
| |
| − | | |
| − | == 採用事例 ==
| |
| − | [[ファイル:Tokyu8000 red.jpg|thumb|250px|東急8000系]]
| |
| − | [[ファイル:Tokyu-8500-field-chopper-control.jpg|thumb|250px|東急8000系の界磁チョッパ制御装置]]
| |
| − | * [[日本国有鉄道]]・[[JR]]
| |
| − | ** 採用事例なし
| |
| − | * [[長野電鉄]]
| |
| − | ** [[長野電鉄8500系電車|8500系]]（元東急8500系）
| |
| − | * [[アルピコ交通]]
| |
| − | ** [[松本電気鉄道3000系電車|3000系]]（元京王3000系）
| |
| − | * [[秩父鉄道]]
| |
| − | ** [[秩父鉄道7000系電車|7000系]]（元東急8500系）
| |
| − | ** [[秩父鉄道7500系電車|7500系]]（元東急8090系）
| |
| − | * [[京成電鉄]]
| |
| − | ** [[京成AE形電車 (初代)|AE形（初代）]]（全車廃車）
| |
| − | ** [[京成3400形電車|3400形]]（上形式の制御装置をはじめとした走行機器類を流用し車体は新製）
| |
| − | *** 3400形の主制御器はAE形のものから定速制御機能をはずしたもので、本来が特急専用車用のため、制動時の直並列制御が無く低速では回生ブレーキを使用できない（回生失効速度45km/h）。
| |
| − | ** [[京成3600形電車|3600形]]（当初は6連×9本だったが、8連×6本と余剰の先頭車をVVVFに改造した6連×1本(2017年に4連化)が存在する。）
| |
| − | * [[芝山鉄道]]
| |
| − | ** [[芝山鉄道3600形電車|3600形]]（京成3600形を[[リース]]。現在は消滅。）
| |
| − | * [[新京成電鉄]]
| |
| − | ** [[新京成電鉄8000形電車|8000形]]（3次車 (8506F) 以降、2次車までは[[電気車の速度制御#抵抗制御|抵抗制御]]、また現在全車両が[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]]素子の[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]に改造されている。）
| |
| − | * [[北総鉄道]]
| |
| − | ** [[北総開発鉄道7000形電車|7000形]]（全車廃車）
| |
| − | ** [[住宅・都市整備公団9000形電車|9000形]]（全車廃車）
| |
| − | * [[京浜急行電鉄]]
| |
| − | ** [[京急800形電車 (2代)|800形]]
| |
| − | ** [[京急2000形電車|2000形]] (全車廃車)
| |
| − | ** [[京急1500形電車|1500形]]
| |
| − | *** 1500番台・1600番台で採用。1700番台では[[ゲートターンオフサイリスタ|GTOサイリスタ]]使用のVVVFインバータ制御が採用されている。また現在1600番台の一部が順次IGBT素子のVVVFインバータ制御に改造されている。
| |
| − | ** [[京急デチ15・16形電車|デト17・18形]]（事業用車、改造で取り付けられた<ref>[http://railf.jp/news/2010/06/01/162400.html 京急デト17+デト18が改造を終えて出場] - [[交友社]]『[[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]]』railf.jp 鉄道ニュース 2010年6月1日</ref>。）
| |
| − | ** [[京急デト11・12形電車|デト11・12形]]（事業用車、改造で取り付けられた<ref>[http://railf.jp/news/2010/09/30/151500.html 京急デト11+デト12が出場] - 交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2010年9月30日</ref>。）
| |
| − | * [[東京急行電鉄]]
| |
| − | ** [[東急8090系電車|8590系]]
| |
| − | ** [[東急8090系電車|8090系]]（全車廃車）
| |
| − | ** [[東急8500系電車|8500系]]
| |
| − | ** [[東急8000系電車|8000系]]（量産車としては世界初、全車廃車）
| |
| − | * [[京王電鉄]]
| |
| − | ** [[京王7000系電車|7000系]]（現在は全車IGBT素子のVVVFインバータ制御に改造）
| |
| − | ** [[京王6000系電車|6000系]]（1次車は抵抗制御、全車廃車）
| |
| − | ** [[京王3000系電車|3000系]]（第9編成までのデハ3000形・デハ3050形は抵抗制御、全車廃車）
| |
| − | *** 第16編成以降とデハ3100形は新製時から界磁チョッパ制御。第10 - 15編成は界磁抵抗制御から改造。
| |
| − | * [[小田急電鉄]]
| |
| − | ** [[小田急8000形電車|8000形]]（現在順次IGBT素子 ([[インテリジェントパワーモジュール|IPM]]、一部[[炭化ケイ素|SiC]]) のVVVFインバータ制御に改造中）
| |
| − | ** [[小田急9000形電車|9000形]]（全車廃車）
| |
| − | * [[西武鉄道]]
| |
| − | ** [[西武2000系電車|2000系]]（モハ2197・2198はVVVFインバータ制御）
| |
| − | ** [[西武3000系電車|3000系]]（全車廃車）
| |
| − | * [[東武鉄道]]
| |
| − | ** [[東武10000系電車|10000系･10030系]]（11032FはVVVFインバータ制御）
| |
| − | *** [[バーニア制御|超多段式バーニア制御]]を併用することで加速のショックを減らした。
| |
| − | * [[伊豆急行]]
| |
| − | ** [[伊豆急行8000系電車|8000系]]（元東急8000系）
| |
| − | *** JR伊東線に乗り入れるため、JR線内を走行する唯一の界磁チョッパ制御車である。
| |
| − | * [[岳南鉄道]]
| |
| − | ** [[岳南鉄道7000形電車|7000形]]（元京王3000系）
| |
| − | ** [[岳南鉄道8000形電車|8000形]]（元京王3000系）
| |
| − | * [[名古屋鉄道]]
| |
| − | ** [[名鉄1000系電車|1000系]]
| |
| − | ** [[名鉄1000系電車|1030系]]（1230系は界磁位相制御）
| |
| − | ** [[名鉄1200系電車|1200系]]
| |
| − | ** [[名鉄5700系電車|5700系]]（モ5750形とモ5850形のペアのみ、モ5650形は、[[界磁添加励磁制御]]）
| |
| − | ** [[名鉄6500系電車|6500系]]
| |
| − | ** [[名鉄5000系電車 (2代)|新5000系]]（上記1000系の機器流用車）
| |
| − | * [[近畿日本鉄道]]
| |
| − | ** [[近鉄1400系電車#1201系（旧1200系1201F - 1210F）|1200系]]
| |
| − | *** 一部車両は抵抗制御の2410 (2430) 系車両と編成を組んでいる。
| |
| − | ** [[近鉄1400系電車|1400系]]
| |
| − | ** [[近鉄1400系電車#2050系|2050系]]
| |
| − | ** [[近鉄1400系電車#6600系|6600系]]
| |
| − | ** [[近鉄8810系電車|8810系]]
| |
| − | ** [[近鉄8810系電車#9000系|9000系]]
| |
| − | ** [[近鉄8810系電車#9200系|9200系]]
| |
| − | * [[阪急電鉄]]
| |
| − | ** [[阪急2800系電車|2800系]]（1969年3月31日竣工の2847に分巻界磁制御器を置き換える形で東洋電機製の試作品が搭載され、長期実用試験に供された。世界初の実用界磁チョッパ制御車である。1988年廃車）
| |
| − | ** [[阪急2300系電車|2300系]]（1978～1981年の更新時に順次既存の分巻界磁制御器と交換で搭載された。また2311・2331は1978・1979年にAFE[[電機子チョッパ制御]]試験車となっている。全車廃車）
| |
| − | ** [[阪急6300系電車|6300系]]6330F（2009年11月廃車）
| |
| − | ** [[阪急7000系電車|7000系]]（2016年度のリニューアル車はIGBT素子によるVVVFインバータ制御車へ改造）
| |
| − | ** [[阪急7300系電車|7300系]]（7310のみGTOサイリスタ素子によるVVVF制御車。現在順次IGBT素子によるVVVFインバータ制御車へ改造中）
| |
| − | * [[阪神電気鉄道]]
| |
| − | ** [[阪神3000系電車|3000系]]（改造で取り付けられた。全車廃車）
| |
| − | ** [[阪神8000系電車|8000系]]
| |
| − | * [[南海電気鉄道]]
| |
| − | ** [[南海8200系電車|8200系]]（現在は全車IGBT素子のVVVFインバータ制御（6200系50番台）に改造され形式消滅）
| |
| − | ** [[南海9000系電車|9000系]]（バーニア制御併用）
| |
| − | * [[富山地方鉄道]]
| |
| − | ** [[富山地方鉄道17480形電車|17480形]]（元東急8590系）
| |
| − | | |
| − | == 出典 ==
| |
| − | {{Reflist}}
| |
| − | | |
| − | == 関連項目 ==
| |
| − | * [[電気車の速度制御]]
| |
| − | ** [[電気車の速度制御#界磁制御への適用|界磁制御への適用]]
| |
| − | * [[チョッパ制御]]
| |
| − | | |
| − | {{rail-stub}}
| |
| − | {{デフォルトソート:かいしちよつはせいきよ}} | |
| − | [[Category:鉄道車両の制御方式]]
| |