聖書

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Biblia Sacra; the Holy Bible

ユダヤ教キリスト教の聖典。キリスト教の聖書は旧約聖書新約聖書からなっているが,ローマ・カトリック版の旧約聖書はプロテスタントが外典とみなしている書を含むため,多少大きくなっている。ユダヤ教の聖書は,プロテスタントにとっての旧約聖書だけをさし,ユダヤ教とキリスト教とでは,正典の並べ方がかなり異なる。プロテスタントとローマ・カトリックの並べ方はほぼ同一である。

伝統的にユダヤ人は,聖典 (旧約聖書) を3つのパートに分けている。トーラー (律法) あるいはモーセ五書,ネビーイーム (預言書 ) ,そしてケスービーム (諸書) あるいは聖文学である。モーセ五書とヨシュア記の六書には,イスラエルの国がどのようにして成立し,またどのように約束の地を手に入れたかが解説してある。預言書に分類されている個所も,約束の地におけるイスラエル人の物語の続きが語られ,王政の成立と発展,さらに人々に対する預言者たちのメッセージが記されている。諸書は神の摂理の中で起る悪と死について思索する書 (ヨブ記 , 伝道の書 ) や詩的文学,そして追加されたいくつかの歴史書などが含まれている。

旧約聖書における外典には,さまざまな種類の文学が描かれている。外典の目的は,明らかに正典とされているものの間で生じる相違点と,紀元前2世紀までのイスラエルの歴史の狭間を埋めることにあるようだ。

旧約聖書と比べると,新約聖書はキリスト教の聖書の中で占める割合がかなり短くなっているが,キリスト教の広がりを通して,その影響力は多大なものとなっている。旧約聖書同様,新約聖書も数々の書を集めたもので,さまざまな初代キリスト教文学を含んでいる。四福音書は,クリスチャンによって思い起こされた形でイエスの生涯,人物像,教えなどが描かれている。使徒の働きは,イエスの復活からパウロの働きの最後までを扱っている。書簡は,使徒パウロをはじめとする初代キリスト教のさまざまなリーダーたちによる書状で,あらゆる必要と初代クリスチャンたちが抱えていた問題について書かれた教会宛のメッセージである。黙示録は,初代クリスチャンの運動に見られた終末論的文学を大きく取扱った唯一の正典である。

またユダヤ教の聖書,あるいは旧約聖書の原書は,ごく一部アラム語で書かれた個所がある以外はほとんどすべてヘブル語で書かれた。新約聖書は,ある部分だけ最初アラム語で書かれた可能性もあるが,当初おそらくすべてギリシア語で書かれたか,記録されたと思われる。ペルシア帝国が地中海流域を支配していたとき,アラム語はその地域の共通語となり,捕囚に連れて行かれたユダヤ人たちは,そうした言語的理由からトーラー (モーセ五書) を伝統的なヘブル語から共通語へ翻訳しなければならなかった。こうして生れたタルグムはオリジナルのヘブル語の巻物が失われた後も残ることになった。のちの紀元前3世紀中期にギリシア語が主流になると,ユダヤ教の神学者たちは徐々にヘブル語の正典からギリシア語へと翻訳していき,現在ではその翻訳は『七十人訳旧約聖書』 (セプトゥアギンタ ) として知られている。最終的に,キリスト教が広まるにつれてさらにコプト語,エチオピア語,ゴート語,ラテン語などに翻訳する必要が出てきた。聖ジェロームは 405年頃,ある部分を『七十人訳旧約聖書』をもとにして翻訳しはじめたラテン語版聖書ウルガタを完成させた。筆工によって変造がなされたにもかかわらず,『ウルガタ訳聖書』は 1000年以上もキリスト教の規範となった。

聖書の資料は,旧約聖書のほとんどの書の著者は判明しておらず,多くの場合編集が個人によってなされたのか,あるいはグループによってなされたのかもわかっていない。にもかかわらず,内部の証拠を丹念に調べた結果,神学者たちはある資料の特徴を把握し,書かれた年代順に並べることができるようになった。基本的な五書の資料を区別し,それらの年代を設定する方法によって,イスラエル文学と宗教的な進展は初めて明確に把握されるようになった。それらの資料の今日知られている名前を年代順に挙げていくと,まずヤハウィスト (J) 資料が挙げられる。ヘブル語による主の名前を英語に訳すと YHWH (Jと呼ばれるのはドイツ語の JHVHから) になり,発音するとヤハウェと言うのでそのように呼ばれる。次はエロヒスト (E) 資料で,主をエロヒムと呼ぶことから,そう区別される。第3番目は申命記的 (D) 資料で,他とは異なる特有の言葉や形式が特徴である。第4番目は祭司的法典 (P) 資料で,儀式の手引きについての詳細についてふれている。

旧約聖書の資料は,ほかにもその後多数確認されている。その中には,今日現存していない最も初期の頃のユダヤ文学の書で,部分的に早い時期に書かれた物語に取り入れられているものも2つほど含まれている。それら『ヤハウェの戦いの書』 Book of the Wars of Yahwehと『ヤシャーの書』 Book of Yasharは,おそらく詩文体で書かれたものと思われる。

新約聖書の資料は,先に興った口伝の伝統とともにキリスト教聖典から構成される原文からなる。初めの3つの福音書は,共観福音書と呼ばれ,同じ資料を共有している。『マルコによる福音書』は『マタイによる福音書』と『ルカによる福音書』の資料として用いられ,後者の2つはQ (ドイツ語の Quelle=資料から名づけられた) と呼ばれ,おもにイエスの格言からなる別の同じ資料をもとに書かれているという意見が現在ではいわれている。ヨハネの福音書は,明らかに独自の伝達方法をとっている。ほとんどの旧約聖書の著者は不明なのに対し,主要な新約聖書の出所は知られており,したがって研究において重要な仕事はもとの直筆原稿にできるだけ近い形で原文を保存することになっている。証拠の主要な資料は,2~15世紀にわたるギリシア語の新約聖書の写本,シリア語,コプト語,ラテン語,アルメニア語,グルジア語など他の言語の初期の頃の訳,初代教会の著者による新約聖書からの引用などである。

それらの資料は,ひとまとめに「証し」と呼ばれる。現代翻訳されているものの中で信頼できる聖書はたいてい,証しがさまざまな読み方を示す折衷主義的な原文をもとにしたものである。そのような場合,文脈と一般的に知られた著者の文体に最も合う読み方をするのが好ましい。原文をこえて口伝の伝統を再現しようという試みは,伝統批判主義として知られる聖書批判の分野である。最近の神学者たちは,伝えられていく過程で付け加えられていったものを取り除いて,イエスがまさに語ったと思われる言葉をよみがえらせようとするそのような方法を試みている。




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