B型肝炎ウイルス

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B型肝炎ウイルス(Bがたかんえんウイルス、Hepatitis B Virus)は、ヘパドナウイルス科オルソヘパドナウイルス属に属するDNAウイルスである。B型肝炎の原因ウイルスである。略してHBVと呼ばれる。

歴史

記録では1883年にドイツのLurmanによって最初の報告がなされている。1964年にアメリカのバルーク・サミュエル・ブランバーグらにより、オーストラリア原住民の血清から、後にHBs抗原とされる「オーストラリア抗原」が発見される。その後、1968年に、東京大学医学部の大河内一雄(後に九州大学医学部教授)によりオーストラリア抗原と肝炎の関連を報告された。

ヒト以外の感染例では、ドイツのミュンスター大学の研究チームは鳥類DNAに混入しているB型肝炎ウイルスの痕跡を研究することにより、鳥の感染例は古いもので8200万年前ごろの可能性が高いことを、科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに報告している。 哺乳類が感染するようになったのは1210万年前以降とされている[1]

構造

ファイル:HBV genome.png
HBVの環状のDNA。プラス鎖は不完全な状態で存在している。

DNAウイルスである。HBVは直径42nmで3.2kbの環状の二本鎖DNAとそれを包むエンベロープからなる。ただ、このDNAは完全な二本鎖ではなくプラス鎖のほうが一部欠けていて短い。内部にはコアを持つ(Dane粒子とも呼ばれる)。表面にある抗原 (HBs) によってadr・adw・ayr・aywなどの亜型が存在する。

種類

遺伝子配列の相違によって以下の遺伝子型(genotype)とその亜型(subtype)に分類されている。

解析方法

  • 直接sequencing法
  • EIA法(日本では特殊免疫研究所 IMMUNIS®が保険適応)
  • PCR-Invader法(日本ではBML社)
  • PCR-RFLP
  • INNO-LiPA法(日本ではFujirebio社)

遺伝子型

  • genotype A
    • Aa/1(Asian/African type) , Ae/2(European type) , Ac/3(Cameroon)
  • genotype B
    • Bj/1(Japanease type) , Ba/2(Asian type) , B3 , B4 , B5
  • genotype C
    • Ce/1(East Asian type) , Cs/2(South East type) , C3 , C4
  • genotype D
    • D1 , D2 , D3 , D4 , D5
  • genotype E
  • genotype F
    • F1 , F2 , F3 , F4
  • genotype G
  • genotype H
  • genotype J

生活環

HBVは細胞に感染するとまず、自分のDNAを細胞の核に送り込む。そこで、プラス鎖のDNAを修復して完全な二重鎖のスーパーコイルDNAになるとこれを鋳型として宿主細胞由来のRNAポリメラーゼを使ってプレゲノムRNAを合成する。そこから、ウイルスDNAポリメラーゼにある逆転写酵素活性をもちいてこのRNAからマイナス鎖のDNAを合成する。この過程ではRNAのプライマーが次々に転移し、全長のマイナス鎖DNAを完成させる。その後、DNAポリメラーゼにより、プラス鎖が合成されるが、合成が全て終わる前に小胞体内腔に出芽したウイルス表面分子のHBsに覆われ細胞外に放出される。

比較的熱に強く、60℃ × 10分間の加熱処理でも不活化されず、感染性を失わない[2]が、60℃ × 10時間では不活化される[3]

疫学

ファイル:Hepatitis B world map - DALY - WHO2002.svg
2002年のB型肝炎による人口10万人当たりの障害調整生存年数(en: disability-adjusted life year[4]
  no data
  ≤ 10
  10–20
  20–30
  30–40
  40–50
  50–80
  80–100
  100–120
  120–150
  150–200
  200–500
  ≥ 500

感染

B型肝炎ウイルスは血液を介して感染する。感染経路には垂直感染と水平感染とがあり、成人以降での水平感染の多くは一過性であることが多い。

臨床像

治療

慢性B型肝炎の治療の目的は、慢性肝炎の沈静化(ALTの正常化)と、その後の肝硬変への移行・肝細胞癌発症の阻止にある。急性B型肝炎は基本的に保存的加療がなされる。

出典

関連項目

脚注

  1. 8200万年前に鳥類感染か=B型肝炎ウイルス―独大学 時事通信(2013年5月1日)
  2. B型肝炎ウイルスの不活化 肝臓 Vol.18 (1977) No.8 P584
  3. 森泰樹、緒方正吾、阿多実茂 加熱人血漿蛋白液輸液とHBe抗原・抗体 肝臓 Vol.19 (1978) No.5 P510
  4. Mortality and Burden of Disease Estimates for WHO Member States in 2002 (xls)”. World Health Organization (2004年12月). . 13 November 2009閲覧.

外部リンク

ar:التهاب الكبد ب