イグサ

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イグサ(藺草、Juncus effusus L. var. decipens Buchen.)は、単子葉植物イグサ科の植物である。標準和名(藺。「イグサ」を使うこともある)。最も短い標準和名としても知られている。別名:トウシンソウ(燈芯草)。畳表を作るのに使われる。俳句では季語とされる。

特徴

湿地や浅い水中に生える植物で、泥に根を下ろす。植物の姿はちょっと変わったもので、先のとがった細い茎ばかりが束になったような姿をしている。ヤマアラシを頭から泥に突っ込んだようなものである。

実際にはこの針状のものは花茎に当たる。茎は地下茎となっており、泥の中で短く這う。多数の花茎を地上に伸ばす。葉はその基部を包む短い鞘状のものに退化しており、外見上はないように見える。花茎は円柱状で真っすぐに伸びる。緑色で表面にはつやがあり、すべすべしている。

花は花茎の途中から横に出ているように見える。これは花が出る部分までが花茎で、そこから先は花序の下から出る苞にあたる。この植物の場合、苞が花茎の延長であるかのように太さも伸びる方向も連続しているので、花序が横を向いているのである。

花序は短い柄をもった花が多数つく。花は緑色でごく目立たない。ただし、よく似た姿のカヤツリグサ科イネ科のものとは異なり、通常の花である。よく見れば、目立たないなりに6枚の花被がある。花被は三角形で先がとがり、開いている時は星形に見える。花被は果実が成熟しても落ちないで、その基部を包む鞘のような姿になる。果実には細かい種子が多数入っている。

利用

畳表ゴザはイグサの茎で作られる。イグサの茎は帽子の素材としても利用される。そのために使われるのは栽培用の品種でコヒゲ(小髭: cv.Utilis)と呼ばれる。野生種より花序が小さいのが特徴である。水田で栽培される。

ちまきを笹でくるむ際に、結わえる紐としても用いられる。

また別名のトウシンソウというのは「燈芯草」の意味で、かつて油で明りを採っていたころにこの花茎の髄を燈芯として使ったことに由来する。今日でも和蝋燭の芯の素材として用いられている。

茎の髄を乾燥したものを利尿剤とすることがある。

他に花茎がバネのように巻く品種があり、ラセンイ(螺旋藺: cv. Spiralis)と呼ばれ、観賞用に栽培される。

イグサは加工すれば食用にもなる。熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会は2017年、丸繁製菓(愛知県碧南市)の協力を得て、食事に使った後は食べられるイグサのを開発した[1]

主な生産地とシェア

イグサの日本における主な産地は熊本県八代地方であり、国産畳表の8~9割のシェアを誇り、また歴史的文化財の再生にも使用される高級品を出荷する。他には石川県岡山県広島県高知県福岡県佐賀県大分県でも生産されている。

いっぽう近年、中国などの外国産の安価なイグサが多く輸入されるようになって(セーフガードまで発動した)、全流通量に対し国産畳表のシェアは3~4割ほどに低下している。さらに住宅居室の洋化によって畳の需要が低下し、イグサ生産農家の減少が危ぶまれていたが、近年になり自然素材の見直しや健康志向の高まりによって再びその価値に注目が集まっており、国内産地ではさらなる品質の向上~高級化を目指している。

近縁種

ファイル:JuncusEffusus.jpg
イグサ(ドイツ産の基本変種) Juncus effusus

種としては北半球の温帯に広く分布する。基本変種はヨーロッパから北アメリカに分布し、やや大柄で果実の形が少し異なるなどの違いがある。

日本では全国に分布し、平地から山地まで生育範囲も広い。種内の変異が大きく、山地に出現する小柄なものをヒメイ(姫藺)と呼ぶが、中間型があって明確な区別はできない。また、花の柄がごく短く花序が頭状になるものをタマイという。

イグサ属は日本に十数種ある。しかし、イグサに似た姿のものは多くない。コウガイゼキショウ(笄石菖:J. leschenaultii Gay)やクサイ(草藺:J. tenuis Willden.)などが普通種であるが、これらは根出葉が発達し花序は茎の先端について苞が発達しないので、普通の草の姿に見える。コウガイゼキショウは湿地などに生えるがよく似た近縁種が多く、分類は難しい。

イグサに似た姿の種としてはホソイ(細藺:J. setchuensis Buchen. var. effusoides Buchen.)やタカネイ(高嶺藺:J. triglumis L.)などがある。

似た名称のもの

○○イという名をもつ植物は他にもあり、特にカヤツリグサ科に多い。フトイ(太藺)、サンカクイ(三角藺)、シカクイ(四角藺)、ハリイ(針藺)、マツバイ(松葉藺)、シチトウイ(七島藺)など、いずれもイグサと同様に花茎が多数伸び葉が退化したもので、その構造もよく似ている。多くは花茎の先端に花序をつけるが、サンカクイなどではイグサと同様に苞が花茎の先端の延長となって花序は脇に出る。これらはイグサとは異なり花被は退化し、多数の花が集まって小穂を形成する。つまり、鱗片が折り重なって小さな松かさのような形になっている。

脚注

関連項目

外部リンク